100 小グマはかわらず
大変おまたせしました。
『先代魔王と例の帝国大将を二人同時に投入してきたって!?』
『…あ奴ら今回は本気のようじゃのう。こちらでも確認したが帝国の大将じゃったか、あれが異世界の闘神というのでも頭が痛いのに今度は邪竜の完全な復活を目論むか。なりふり構わなくなっとるのぉ』
『それでも片方を本国に残すのが定石だろうけど…それだけ無茶が出来るってことは闘神の配下の "四天王" も侮れないかな?調べ直した方が良さそうだね』
『それにしてもガウニスよ、よう生きてくれた。邪竜は当然じゃがあの闘神はイカン!あれは "神々" の中でも別格じゃ!あれが覚醒してしまえば止められるのは "全力の魔王" だけじゃろうて。そんな事になれば "世界" の歪は修復不可能になるわい』
「邪竜の野郎は片腕しか吹き飛ばせなかったが…あの "帝国大将" を追い詰めたのは俺じゃねぇぞ?魔王んトコの小グマのトランだ。…ただ、さっきも言ったが "封印" は破られちまった。二人とも…面目ねぇ!!」
『責められんよ。それほどの戦力、龍王境に来られても凌げるかどうか…主力は "以前の戦" で殆ど失ってしもうたからのう…いまは若者が頑張ってくれとるが…如何せん実戦経験が無さ過ぎる』
『その事なんだけどヴォー爺、ウチにある "冒険者ギルド" から何人かそっちに行くけど受け入れの許可くれない?』
『おー!構わん構わん。むしろワシらんトコだけ仲間ハズレはヒドくね?』
「『気のせいです』」
…
「なぁ兄じゃ、 "ナバル" たちはどこまで知ってるんだ?」
『彼らが知っているのは一般と同程度だよ』
「ならよぉ、俺から話しても良いか?アイツ等は嫌でも巻き込まれちまう。 "知らない事" がどんな不幸を招くかわからねぇからな」
『…やっぱりこうなっちゃうのかなぁ。彼には自由でいて欲しかったんだけどね』
『因果は巡る…か』
…
……
………
お久しぶりです、トランです。
いやね?あのヘッポコ大将に単身突撃とかオレもムチャかなぁ~とは思ったんよ?でもさ、あのアホ大将が自分から出ばって来たってことは獣王国を戦火にするの丸見えじゃん?足止め必要じゃん?イケメンクマ (自称) がやるしかないじゃん?だから仕方ないのさ。だからナバルの近況を聞いてお茶を濁すことにしたわけよ。
「いや~ナバル君、キミ少しはっちゃけ過ぎじゃない?海王と友達になるとか無いから。普通ないから」
「友達ってかよ、なつかれたんだ。どっちにしろ俺は巻き込まれた流れからだからな。オマエみたいに自分からゴタゴタに突撃かましたわけじゃねぇ」
濁せませんでした。ホルンはぶーたれてオレをしっかりホールドしてます。もう何処にも行かんからね?
「トランはハンセーするニャ。ぷんぷんニャ」
「トラン君、諦めよっか」
ナナイが人数分のドリンクを持ってきてくれた。暖かいこの島にはぴったりのシャーベット系のシャリシャリした食感がたまらん一杯だね。
「ところでトランよぉ、獣王元気なかったけど何か知ってるか?」
「正確には知らんけど…お前の言った “遺跡” が関係あるんじゃね?防衛に失敗したとか。どっちにしろオレたちから出来ることは無いよ」
「う~ん、そっかなぁ~。…そうかもなぁ」
…大方今頃は魔王と連絡とってんだろうな。でもなんで奴らは辺鄙な神殿なんか襲ったんかね?キレイな巫女さんでもいたんかね?
…テリオじゃあるまいしそんな理由で行かないか。
「よおナバル、無事だったみたいだな。クマ公はムチャし過ぎたみたいだな。お前アホなんだから自重しろよ?」
噂をすればなんとやら、テリオがいつものアホヅラ下げてやってきた。
「顔も中身も “アホ” のオマエに言われたくねぇよ」
「 あ” 」
「ハァ…やめろお前ら、ここ一応医療施設なんだから騒ぐなよ?ところでテリオ、ノベルさんは?」
「ああ、さっきまで獣王国ギルドマスターになる人と一緒に居てさ、ノベルさんは今もその人と話してる。獣王国が用意してくれた “ギルド支部予定地” がこの近くでな、俺はついでに顔見せに来たんだよ 」
「へぇ、そのギルドマスターはどんな人?やっぱり強そうなのか?」
「う~ん、強そうには見えねぇけど魔術師なら見た目じゃわかんねぇな。ただ獣人がスゲェのは良くわかった。デカイ建物なのに今もスゲェ勢いで建築進んでるもん。下手すりゃ2、3日で出来あがんじゃね?」
獣人凄すぎ!それはアレか?!建築シーンの5倍再生とかそんなことになってんの?スゲェ見たいんですけど!
「トランはお怪我を治すニャ!」
怒られました。車イスのタイヤを高速で回そうとしたのが不味かったのかね?さすがのオレでも車イスのドリフトとか決めないぜ?出来そうだけど…。
しばらくテリオはオレたちとバカトークに花を咲かせたあと「俺、そろそろ戻るわ」とあっさり出ていった。
本心はオレらが心配だったんだろうが、まったくテリオも素直じゃないよね。…ん?野郎のツンデレはいらねぇよ?
「やあ、みんなここに居たんだね」
入れ替わるようにやって来たのは絶世の美女系イケメンのゼノン・ルクソドールさんだった。
「ナバル君、陛下が呼んでいるんだ。少し時間をもらえるかい?」
オレとナバルは思わず顔を見合わせた。
ここまで読んで下さりありがとうございました