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北大陸の者  作者: るるる
3/18

ソン

町に戻りたかった。アーヘルゼッヘは、森の中より、あのソンの後を追って行きたかった。なぜか分からない。門のような彫刻されたポールの間に階段がある。上ると、板間が広がっている。柱ばかりで壁がない、まるで、テラスのように見えるが、木組の天井があるし、木彫りのソファーも敷物もある。居心地がよさそうな場所に見えた。いやだと思う理由は何もない。


アーヘルゼッヘは、チウや家人に促され、階段を上った。すると、森が見渡せる。明るい砂漠が幹の向こうに光って見えた。森は深く、屋敷も奥に長かった。回廊を渡ると広い壁のある部屋へと入って行った。ひざ丈くらいの高さの大きな窓が、板を上へ跳ね上げるようにしてあけられている。中は明るく、床には滑らかな絹の敷物にクッションがちりばめられて居心地よく見えた。しかし、アーヘルゼッヘは座りたくないと思った。理由は全く分からなかった。一緒に入ったチウが同じように入口に立ちつくしている。彼も何か感じているように見えた。


アーヘルゼッヘは部屋の中を見回した。天井からは色鮮やかな花々が蔓にはさんでつるされて、壁には明るい色彩の絨毯がかけられている。中央の大きな盆には水差しや房の果物がいまおいたばかりのみずみずしさで飾られている。居心地がよさそうに見えた。なのに、どうしても中へ入れない。


「埃を落とそう。果樹園を抜けて来たからね」

と言って、チウはアーヘルゼッヘを部屋からかばうように片手を上げて一歩下がった。すると狙い澄ましたかのように家人が一歩踏み出し、部屋とチウの間に入った。と、思った瞬間、部屋の中で光が爆発した。片手で目を覆って、光をさえぎる。が、光だと思ったのはアーヘルゼッヘだけらしい。家人もチウもゆるく身がまえたまま、視線を部屋の中央から動かさなかった。


そこには、小さな人間が座っていた。小柄な人間と言う意味ではない。盆に載るくらいの大きさになってしまった人間が、胡坐をかいて座っていた。小さな人間は、口髭を付け、黒い上下の身体にピタリとあった服を着ている。襟は高く真白で、上着の黒い襟と白い襟とを銀のチェーンで留めている。目が細く、神経質そうな雰囲気をまといながら、チウへ向けて一礼した。


「チウネルゼ・アーネ。お待ちしておりました」

「テンネか…」

と言ったまま、チウは動かなかった。


「お約束の期限は、あと一週間になりましたが。いかがおなりでしょう?」

「まだ、祭りも始まっていないのに、いかがも何もなかろう」

と冷たい突き放した声で答える。ぞっとするような冷たさだった。アーヘルゼッヘは、目の前の小さな人影に目をこらした。向こうからはチウ以外は見えないらしい。姿は小柄で透けている。まるで、北の者がよくやる遠映のように見える。実態は彼方にあって、姿だけ、相手先へ見せるものだが、その姿は人間だった。


「そうでしたか。まだ、祭りが始まっていないのですか」

「満月の夜と決まっている。後、三日は何も起こらんぞ」

「後、三日。あなたは何もせずにお過ごしになるとおっしゃるのですね」

「何を言いたい」

「いえ。別にあなたにお話しているわけではありません」

と小人の視線が、左に揺れた。誰か近くの人間を見ているらしい。アーヘルゼッヘには見えない。チウにも見えないようだった。向こうがアーヘルゼッヘを見えないように見えないのだろう。しかし、チウには誰だかわかったらしい。


「ご安心ください。約束は必ず果たされます。どうか心安らかに、その時をお待ちください」

と、その誰かに話しかけるように言った。小人は口の端のひげを指の先でなぞった。脇にいる人物を観察しているらしい。口の端を押えて小声で何か言っている。言ったあと、のけぞるようにはっと笑った。


「似た者同士とはこのことだな。何があっても気にするな、と言っているぞ。心憎いほど穏やかな顔をしている。できるなら見せてやりたいが、これは結構高価でな。二人も映す余裕はない。何せ、帝国は財政難だからな。少しは節約せねばならん」

そう言って、まるで自分の冗談に自分で受けたと言うように笑った。チウは表情を全く変えずに、立ち尽くしている。冷やかな顔は、怒りや憎悪が浮かんでいた方が、まだ、人間らしい温かさがあるような気がする冷たさだった。


「と、言うわけで、まだ、今は元気でここにおいでだ。約束は守ろう。しかし、もしもお前が約束をたがえたならば」

「わかっている。おまえはとても正直だ。嘘は言わない」

「そうだ。私はとても正直だ。その町から、水の種を持ち帰れ。ようはそれだけだ。それができなければ、お前の従妹を火の神に差し出す。燃え盛る紅蓮の炎に身を投じる、世紀の姫巫女の姿は、末代までの語り草になるだろう」

「約束にはあと一週間ある」

「そうそう。後、一週間しかないのだからな。忘れるな。待つ必要はないのに、待ってやっているのだ。我らの温情だと言うことをな」

アーヘルゼッヘはチウの顔をじっと見た。表情のない顔だった。感情をすべて押し殺したらこんな顔になるのではないかと言うような顔だった。目の前の小さい小人も気になったらしい。


「風雅な屋敷に滞在していると聞いた。そのまま、何もなかったことにして過ごしても、誰も気にはしないだろう。もともと無理なことだったのだ」

少し同情が滲んでいるような気がした。しかし、チウは冷やかに、

「待つという約束は、果たされるだろうな?」

「もちろんだ」

と小さな姿はうなずいた。思った以上に重々しい姿に見えた。チウは分かったようにうなずいて、

「都に水が必要だ。大地が枯れて久しいのは、何もお前だけが憂いているわけではない」

「ははは。姫巫女が、身を犠牲にしてまで欲しいと思う水だからな」

「犠牲にして水が手に入るなら、私の身を使うさ」

と低い声だった。アーヘルゼッヘ以外には聞こえなかったようだ。小人は、物足りなそうな顔をしたが、

「時間だ。まったく、北はせっかちでいかん。ではな」

と言って姿を消した。


アーヘルゼッヘは、姿の消えた盆をじっと見つめた。北はせっかちでいかん、と言った。向こうには北の者がついていたと言うことだ。都にいて、北の者が補助したいと思うような魅力的な人間がいるのだろうか、と疑問に思った。


あの小人が。つまりは、実物はたぶん小柄だが普通の体格の男のはずだが、あの神経質な針みたいな空気をあたりに飛ばしている人物が、北の者に好かれるような人間だとは思わなかった。空気で体調を崩すこともある北の者があんな者の近くに好んで立ちたいとは思わなかった。


すると、これは都の誰かと北大陸が勢力を上げて取引をしていると言うことか? とアーヘルゼッヘは思った。姫巫女と言う人間達の大事な地位の人物を犠牲にしようと決断できる人間に、北は肩入れをしているということだろうか、と不安に思った。


何が起きているのか分からない。それがなぜだかこわかった。この部屋に入りたくない、と思ったような怖さを感じた。

「と、言うことで、私は町中に入らねばならない」

とチウが言った。


あの小部屋は避けて、入口の広いテラスにやってきていた。木のソファーは人体に合わせているらしく思ったよりもすわり心地がよかった。水晶の椅子に座った時も同じような感じがした、とアーヘルゼッヘは思いながら腰かけていた。向いの座卓に胡坐をかいて、チウが座る。冷たい果物の汁をすすって、アーヘルゼッヘへ話しかけていた。


「と、言うことで、と言うことは?」

「水の種を借りねばならない。でなければ、従妹の命がない」

「借りる? 盗むものではなくて?」

「借りるだけだ。この森も、あの果樹園も。そして、あの大きな町も。水の種のおかげで、この砂漠の中建っているのだ。なくなれば半年で砂漠になるだろう」

「水脈を動かすことは、人間には不可能だ」

とアーヘルゼッヘは言った。チウの顔がくわっと歪んだ。が、声は穏やかだった。


「ここには水の種がある。それが、四年に一度の大祭の時にだけ表に出される」

「水の象徴か…」

「水の種だ」

「しかし、水は水脈があるから、地上へ噴き出しているだけで。地上に何があっても変わらない」

「いいや。水の種があるところには、水脈がやってくる、と言う言い伝えがある。だからこそ、ここが町になったのだ、と」


「言い伝えと言うのは、人間が心のよりどころにするために作った…」

と言ったところで言葉を止めた。チウの目が、アーヘルゼッヘを離れて森の彼方へ向けられていた。木々の向こうにあかる砂漠が見えた。アーヘルゼッヘは口の端をかんで言い直した。


「悪かった。申し訳ない。地下に何を見ても何も言わないと誓ったばかりだ。私は水脈が神だと思っていた。が、人間はもっと別の夢を見る」

そう言ってから、さらに言った。


「水の種を探すために町に戻りましょう」

チウは目を砂漠に向けたままだった。

「水の種を借りて、あとで返すのなら、人間にはできない力のある私が動けば良いのです」

と言った。言ったあと、あの光の爆発を思い出す。あれほど鮮やかに力の航跡が見える。ならば、きっと、動いたとたん、北の誰かが気づくだろう。


あの力のもとは、人の負の感情に沿うためのものだった。おかげで、近づきがたい気持ちになった。今度自分が力を使うと、悲しみに沿うものになるかもしれない。チウは、象徴であろうとも、水の種を持ち出したいとは思ってはいないらしい。そして、おそらく、友人であるアゼルを裏切ることになるのだろう。そんなことはしたくないと思っている。アーヘルゼッヘがやるなら、チウが盗んだことにはならない。


「あなたは、町でアゼルに守られなさい。水の種のことは忘れて」

「どうしてです、チウ?」

「私の使命です」

「でも、私がやったほうがずっと楽にできるはずだ」

「人の利権に北の方が絡んでいいのですか?」

「友人の家族の命を守るのに、力を尽くさない者はいない」

「友人、ですか」

「ええ。あなたは私の友人です。大事な友です」

と、言った。言った瞬間、大地の熱がアーヘルゼッヘの足もとからうねりとなって天空へと駆け抜けた。何か大事なものが通って行った。見ると、チウがおかしな顔をして見ている。


アーヘルゼッヘは安心させなければ、と言う気持ちになる。アーヘルゼッヘは嘘をつくことができない。なぜなら、言ったことが事実になって行くからだ。事実が変わる瞬間に、大きな力が大地と天とを行ききする。アーヘルゼッヘは自分は嘘をついたのだろうか、と不安になったが、すでに、彼は友人だった。それが嘘とは思えなかった。


「私が一方的に思っているだけでも、友人にはなれると思うのです。それに、私は一度あなたに助けられた。だから、これはその返礼です」

「返礼」

「ええ。気にしないでください。私たちの習性です。正の心には正の心をもって答えるのです」


そして、とアーヘルゼッヘは思った。都で負の心に力を貸していた者がいた。あれは、負の心でもって答えていたのだろうか。それなら、北の主はどう思っているのだろうか。人間との争いを、千年もの時をかけて収めた方が、再び火種になるような者を黙って見過ごしておられるとでもいうのだろうか。


そして、アーヘルゼッヘは、周囲の気配を探った。もう、館を出て三日になる。なのに、追手の気配もない。ここは、負の心に与した北の方の力の範囲なのではないだろうか。だから、手をつけることができないのかもしれない。だから。と思ってアーヘルゼッヘは不安に思った。


北の者が都にいる。それもあったことのない成人だ。だから、成鳥であるかもしれないし、そうでなくても、成鳥の居場所を知っているかもしれない。もちろん、そのために、水の種の約束をしたわけではなかった。しかし、もしもあったら、何か分かるかもしれないと言う思いもないわけではなかった。


ただ、北の大陸に戻されないように合わなければならないし、もしかしたら、とんだ勘違いで罠にはまりに行くようなものかもしれないのだが。それでも、漠然と探すよりはずっと良いと思ったのだ。

「私は人探しをしているんです。もしかしたら、都にいるのかもしれません」

「なぜ、ここにやって来たのです」

「ここだと思ったからです」

「なぜ、ここだと思ったのですか」

「それは…」


一番、気配が濃かったからだ。成鳥がいる場所なら、この大地でもっとも気配が濃い場所にいるはずだ、と思ったからだ。存在感の大きさ、と言うのだろうか。なのにここにはいなかった。あれほど遠くからいると思ったのに、この場に立ってみたらその気配は全くなかった。もしかしたら、あの都の映像を操っていた北の者が、ここの気配を探っていたからかもしれない、と思った。


北の者が、大陸の遠見をする先はどこもかしこも気配が濃くなってしまうのだが。多くの北の者がこの場を探っていたからこそ、気配が濃くなっていたのかもしれないと思うのだった。そして、だからこそ、誰もここへは追いかけてこれない。誰もが遠くからしかのぞけない場所だからこそ、ここは自由だ。もしかしたら、力を使っても、すぐに手を出せる場所ではないのかもしれない。そう思うと、この先の自由を約束されたような気がして、アーヘルゼッヘは手足を伸ばしたような気分になった。


「探している人物の気配に近いと思ったからです。大祭があったから、それで惑わされてしまったのだと思います」

その大祭で起こる出来事に注視している北の者がいるせいで、ここに落ち着いてしまったわけだ。と思うと、

「次の道しるべがここにあったのだと思います。北の者はそんな風に考えるんです」

と答えた。




一週間はあっという間に過ぎた。アゼル隊長は、町へ入る命令は出さなかった。命令どころか、許可も出さなかった。ソンは、大勢の部下を引き連れて、家の守護にあたったが、これと言って誰かが攻めてくることも、侵入してくることもなかった。北の者のあれだけ大きな力を使える人間が敵方にはついているのだ。外から守っていてもあまり意味はないと思うのだが、ソンは気にした様子もなく、何一つ見逃さないような警備体制を引いた。


「人間だったら、これで十分かもしれないですね」

とアーヘルゼッヘが言うと、チウが笑った。なんで笑うのかと聞くと、

「絶対など存在しませんよ。何であれ、攻めようと思えば攻め方があるものです」

と答えた。意味深な答えだった。


一週間、チウは屋敷の周囲を歩きまわるだけだった。アゼルに町に入りたいと何度か使者を出したのだが、帰って来たのは不穏な空気があるから来るな、と言うものだった。待つと言った、都の敵は、町に何か仕掛けてきたのかもしれない。しかし、木陰が涼しい避暑の家では、危機感もなければ焦燥感もわいてこない。そのくらい、穏やかな空気が漂っていた。


ただ一人、あと一週間と言う期限を聞いて、その間に水の種を手に入れなければ、チウの従妹の身が危ないと、アーヘルゼッヘが気をもんでいた。水の種は、この町の信仰だった。家を守備するソンが、町の神殿も同じように警備の者達が守っていて、町中の裏には外から来た怪しい人間がたまりだしていると言う話をしていた。


守りたい者はたくさんいるのに、警邏隊の人数は限られているからと愚痴られて、アーヘルゼッヘは、ついつい、ここには自分がいるから町へ戻ればいいといった。ソンは、アーヘルゼッヘがいるからこそ警備をしているのにそんなことはできないし、都の使者でもあるチウにもしものことがあれば、やはり町にとって大変なことになってしまうと断った。


と、言うよりも、物わかりの悪い異人に対してとうとうと説いて聞かせた。さらに、チウにもしものことがあれば、町の立場が悪くなると言うだけではなく、人類の大損失だと熱く語り、チウのこれまでの大活躍を語ってくれた。


しかし、北の者との大戦の中の話らしく、人を救う話ばかりで、敵を倒した話は出てこなかった。アーヘルゼッヘへの遠慮だろうが、ともあれ、その執心ぶりはすごかった。つまり、水の種は、そういう彼らにとって大切な人間と同じくらいしっかりと守らなければならないものらしい。


そのくらい、人間にとって大切なものらしい、と言うことが、アーヘルゼッヘにもわかった。だから、チウは動かないのだろう、と思った。結局、都からここへ来たものの、敵へ対して、絶対に取ってくると言ったものの、水の種を手に入れる気はないのかもしれない、と思うのだ。


彼の水の種への信仰は、従妹の命よりも重いのかもしれないと考えた。人間の思いは、アーヘルゼッヘには分からない。ソンなら、自分の命よりも、チウ閣下の命の方が重いのです、と平気で答えそうな気がした。チウにとっても、水の種は同じように、人間の命よりも重いのだろうか、と思うと、アーヘルゼッヘは落ち着かなくなる。


誰が何を思おうが、その者の自由である。が、手を出せば助かる者を見殺しにする気にはなれない。なぜ、チウは、アーヘルゼッヘが手助けする、と言うのに、町へ行こうとしないのだろう。また、なぜ、水の種を取って来てくれと頼まないのだろう、と思うのだった。


北の者の力を信じていないのだろうか、とも思ったが、大戦を経験したのなら力は信じているはずだった。一瞬にして町はおろか、海まで干上がらせる力がある。それを目の当たりにしてきたはずだ。となれば、彼が信じていないのはアーヘルゼッヘ自身かもしれない。十年前まで敵だった者を、自分の従妹の命を預けるほど信じる気にはなれないのかもしれない、と思うのだった。




「ソン殿。大祭とはどんなものか教えていただきたい」

とアーヘルゼッヘは言った。


 屋敷を背に、森の端に立って果樹園を眺めながら聞いた。巡回する警邏達と共に歩きながらだった。日が沈みかけている。白い砂塵が地平線を覆い、赤紫の太陽が横に広がる。後、半時もしないうちに、太陽は大地に溶け込み、天上を群青色の星空が覆う。北の白い雲に覆われた空とは全く違う。峡谷の谷間にある館から見る空は、小さく遠くに見えるのに、ここでは上から覆いかぶさるようだ。空が大きい。


「大陸中から要人が集まって、神を祭る祭りです」

とソンは答えた。それなら何度も聞いている。問題は、そこではなかった。

「神殿に人々が集まるのでしょう?」

とアーヘルゼッヘは続いて聞いた。聞きたいのは、神殿の位置関係と、水の種の位置だった。


チウは何を考えているのか分からなかい。動かない。彼の無口な家人に指示を出し、時々町にやっているようだったが、これと言って進展はないようだった。ソンの隊長のアゼルも、要人警護や町の警護で忙しいのか、この屋敷には全く来ない。一時間だけ、水の種を借りて、都へ飛んで見せつけて、用がすんだら持って戻ればいいではないか、とアーヘルゼッヘは思っている。向こうが北の力を使うなら、こちらも使っていいはずだ。そう言ってチウに話した。しかし、彼は相手にしない。


「アーヘルゼッヘ。それはありがたい話です。感謝したい。しかし、それでは何の解決にもならない」

「しかし! 姫巫女の命はそれで助かるではないですか」

「あの娘は、都を助けたいだけだ。今は強制されているが、一時、水の種があるだけでは、あの水不足は補えない。水不足で、都に死者が出始めれば、すぐに、火の神の元へ嫁ぎたいと言い出すだろう」

「しかし、水源を探すにしろ、水を都へ引くにしろ、時間がかかる。焼身したからと言って雨が降るわけではないでしょう!」

とアーヘルゼッヘが強い声で言うと、チウは苦い声で、

「姫巫女が神を信じなくて誰が神を信じるんです。あの娘なら、やりますよ。火の神に直接話に行けば、必ず願いを叶えていただける、と信じて。そして、あの娘が自分からやると言ったら止めれる者は、この世には誰もいない」

「あの世ならいるのでしょうか」

「いいえ。そうではなくて。止めれるのは神だけですよ」

と遠くを見つめるような声で言った。


人間の信仰は、アーヘルゼッヘには分からなかった。しかし、チウは打つ手はないと思っているらしい。ここから都へ帰らないのは、もしかしたら、火あぶりを見たくないだけなのかもしれない。人間の考える友人とは、どんなものなのだろうとアーヘルゼッヘは考えた。チウの苦しみを拭ってあげたいと思った。もし、チウが北の者なら、声を上げて悲しみを訴えるか、何もかも諦めて静かに時が来るのを待つかどちらかだろう。


心の声を隠す方法が北の者の中にはない。皆が皆、相手の声を聞くからだ。しかし、人間であるチウは、苦しんでいるような顔はしない。ちらりとも見せない。そばにいても、あきらめているのだろうと思うほど、穏やかだ。しかし、アーヘルゼッヘはチウの傍から立ち上がる陽炎のような怒気と言うのか、闘気と言うのようなものが見えた。本当に時折なのだが、ぱっと燃え上って、屋敷はおろか森を覆うような勢いで広がって消えていく。


本人は、気づいているのかどうかわからないのだが、闘気をごまかすかのように舌打ちをしたり、気配を散らすように腕や首の後ろをさすっている。諦めたわけじゃない。でも、彼には打つ手が全くない。アーヘルゼッヘの目にはそう見えるのだ。


「私の探し人もやってくるかも知れません」

とアーヘルゼッヘはソンへ言う。嘘ではない。しかし、たぶん来ないだろうと思っている。つまりは、本当の意味の質問でもない。


静かな夕暮れだった。遠く、町の鐘が鳴っている。町壁の門が閉まる時刻だ。果樹園に出ていた人も、篭を背負って家へ帰った。果樹園の中にぽつりぽつりと見える農家の煙突に、細い煙がたなびきはじめる。

「ええ。存じています。北の方や北になじみの方がいないか、アゼル隊長が念入りに調べておられますよ」

だから、ご安心ください、と言うように言った。アーヘルゼッヘは目をみはる思いがした。口実だと思っていたのだ。人探しに協力する、と言ったのは、アーヘルゼッヘを捕えるための方便だと。だから、聞きもしなかったのだ。ソンはアーヘルゼッヘの驚きを正確に理解したらしい。笑って、

「チウ閣下が、何度も使者を出しておられますからね。アゼル隊長もそうそうさぼってはいられませんよ」

「チウが」

ソンは当然だと言うようにうなずいた。


人間は嘘もつける。しかし、嘘をつかないように努力する。真実であろうと言う努力をする生き物なのだ、とアーヘルゼッヘは気がついた。


「私は仲介者であるはずです。もっと街中に入って、人々と北との橋渡しをすべきでは」

と今更ながらのことを言った。方便でないなら、こちらも彼らにとっては本当に望んでいたことかもしれない。もっと、積極的に、自分から動くべきだったのかもしれない、と今更ながらに気がついた。案の定、ソンはうなずいて、

「もちろん、おいでになっていただきたいとも思います。しかし、大祭は無礼講で、大陸中から人々が集まります。あなたの警護のみに人手を割くのは難しいのです」

と申し訳なさそうに言う。

「大丈夫です。私の警護にそんなに人手はいりません」

「いいえ。あなたは、今の町の様子をご存じないからそんなことがおっしゃれるのですよ」

とソンは言った。


「それほど、危険なのですか?」

「危険と言うより、雑多な人間の渦が出来上がっているようなものです。町の人間なら、チウ殿のお客人だというだけで、誰も手出しはしないでしょう。何かあっても、必ず誰かが見ています。いざと言う時の通報もあれば、危険がないように目配りする人々も出てきます。しかし、外の町の人間達ともなれば、大祭を祝いたいと言う人間達だけではありませんから」

「大祭なのに、それ以外の目的で来るのですか?」

「人が集まりますからね。商売目的だったり、犯罪目的だったり、さまざまです」

「犯罪者が集まっているから危険だ、と言うことですか」

「いいえ。そうではなくて」

と言ってから、ソンは立ち止まった。果樹園の枝は伸びて、棚に絡んでいる。ぶら下がっている房はまだ青味が強く、固そうだ。


森と果樹園との境には細い溝が掘ってあり、水がとうとうと流れている。見ると、果樹園の間には、溝が縦横に掘られている。森の水を引いているらしい。水の中で魚が跳ねた。小魚で、すぐに水草の陰に消えてしまう。ソンは、足もとの水を見るともなく見て、警邏達が見守るように、森や無人の果樹園に視線をやって警戒している。


ほとんど、習性のようなものかもしれない。そんなソンが、水草の中の魚をちらりと見ると、言いにくそうに、アーヘルゼッヘの顔を見た。ちらりと見ただけで、すぐに、四方へ視線をやってしまったのだが、申し訳ない表情がありありと浮かんでいた。


「まだ、大戦の記憶が生々しい者もいるんです。人間にとっても、十年はそれほど長くはありません」

「私を見ておびえる人間もいると言うことですか」

「おびえるだけならいいのですが、敵意を持つ者もいるでしょう」

「こんなに穏やかには歩けませんね」

「ええ。こんなに穏やかな場所は、この町ではここだけでしょう」

ソンはそう言って笑った。笑いながらも、森の中の暗がりや、果樹園の木々の陰に視線をしっかり向けていた。


「神殿と言うのは、町の中央にあるのでしょうか?」


アーヘルゼッヘは聞いた。人間に見られないようにしなければならない、と自分で自分に言って聞かせた。もし、北の者が、人間が大事にしている者を盗んだと気づけば、再び大戦になるのだろうか、と漠然とした不安が膨らむ。しかし、とアーヘルゼッヘは暮れゆく大地をじっと眺めた。地平線に金の筋が浮かび、最後の一筋の明かりを残して、大地に太陽が沈もうとしている。チウの従妹の命も、同じように沈んでしまう。一週間の期限は今日だ。


「やはり、人々が集まりやすいように?」

「いいえ。神殿と言っても、庁舎の一角にあるんですよ」

ソンは、町を見れないアーヘルゼッヘを気の毒に思ったのかもしれない。人間の敵意のせいで、人里離れた森の中で、祭りを過ごさなければならない。それが、警邏達の目から見て、気の毒なことだと映ったらしい。ソンは気軽に話してくれた。


「噴水広場の先に、もうひとつ庁舎の広場があるんです。四方を建物で囲まれていて、建物の下のアーチをくぐると、その広場に出るんです。建物は、町の庁舎で、通行証も租税も東西の交易価格も、町の苦情から、果樹園の繁忙期の人での手配まで、何でもそこへ行けば、解決できる場所なんですよ」

「それは広い場所でしょう」

「広場はね。周りの建物は、下は柱と木の机と椅子があるだけの、がらんとした広場ですよ。中央が青天井の屋根付き広場のようなところです。そこが、人々の心のよりどころでもあるんです」

「それで、その建物に、神殿があるんですね」

「いいえ。その広場の中央が神殿なんです」


アーヘルゼッヘは、足を止めてソンを見た。大事なものを中央に祭って、四六時中人の目があるようになっている。最大の警戒態勢ではないだろうか、と思った。しかし、

「小さな社が立っているんでしょか?」

それなら、中に飛んで、そこから再び出ればいい、と思ったのだが、ソンは笑った。

「外の人は、神殿と聞くと、みなさんそう想像するらしいですね。私たちからすれば、建物に入った神など、想像もできないのですが」

「野ざらしに立つ神ですか…」

アーヘルゼッヘは、大事にされている神が、外に放置される図、と言うのを想像しようとして失敗した。その失敗にソンはすぐに気づいたらしい。肩を揺らして笑いながら、

「大樹ですよ。我らの神は。屋根を作ったら、それこそ神が立腹なさる」

と言ったのだった。


 アーヘルゼッヘは、大樹。木、なのか。と聞いて、肩すかしをくらった。

「大きな木で、それこそ、庁舎の屋根を超えるほどの大きさなんです」

誇らしそうな声だった。

「その木に大切な神のもとをぶら下げているんでしょうか?」

水の種は、樹にぶら下がっているのだろうか、と思ったのだが、ソンは、

「まさか。もちろん、秋には実をつけます。実が硬く割れにくい為に、花押の材料として重宝されていますが、秋まではぶら下がりませんよ」

と言った。


「砂漠の中央にあるから、神の樹なんですね。それでは、水の種はどこに?」

「水の種? 大地の水脈のことですか?」

アーヘルゼッヘはソンの顔をまじまじと見た。水の種と聞いて、水脈と答えた。つまりは、そんなものはソンは知らない、と言うことだ。

「神殿を守っている、と言ったのは、木を守っていると言うことですか」

「もちろんです。枝を持って帰って庭に植えたいと言う者もいますが、中には、薪にしようとしたり、神の木の御利益として宣伝して彫り物をした者を売り飛ばそうと言う者もいますから」

中には、単なる腹いせや嫌がらせで、火をつけようとする人間もいる。ソンは、そこまで言いたくはなくて、苦い顔で口を閉じた。


 アーヘルゼッヘは、黒い大地と群青色の地平線をじっと見た。チウが諦めていたのは、もともと水の種などなかったからでは、と思うと首の近くから鳥肌が頭上へと走りあがった。もし、とっくの昔に従妹のことをあきらめていたのだとしたら。今、ここで怒りを抑え、闘気をのみこんでいるのは、あきらめきれない自分に対して怒りをぶつけているだけだったとしたら。今、この瞬間、都では一人の女性が、火に向かって飛び込もうとしているのではないだろうか。アーヘルゼッヘは唾をのむ。そして、聞いた。


「人間にとって、今日まで、と聞いたら、それはいつ頃までのことを言うんですか?」

「今日まで? 日没まで、と言うことですか?」

アーヘルゼッヘは舌打ちをした。北の者なら、日没は山々の向こうへ太陽が隠れるだけで、場所によって時刻が違う。だから、一日の終わりと言えば、月が天空を過ぎるまでの事を云う。しかし、ここは別大陸だ。

「一週間後に支払いを、と言われたら、一週間後の日没までに支払うのですか?」

と言うアーヘルゼッヘの唐突な問いに、

「北の方達なら、もっと待っていただけるのですか?」

とソンが問で返してきた。アーヘルゼッヘは、ソンを見た後、森を振り返った。森は闇の中に溶け込んでいる。空から降る月明かりが、木の陰を作りさらに暗く見える。


 水の種などなかったのだ。無いものだから、チウはアーヘルゼッヘに頼まなかった。いいや、頼めなかったのだ。もしも、ないと知られれば、その場で従妹の命が消える。だから、わざわざ、この町まで出向いて、あるような顔をし続けたのだ。

「チウは?」

とのどがからからになりながら、アーヘルゼッヘはソンに聞いた。

「お屋敷では?」

と言う当然の答えに、

「そう。そうですよね」

と答えて、アーヘルゼッヘは駈け出した。森と果樹園の間には溝があって、水がたゆたっている。


チウの怒りは、どうしようもない現実への怒りだ。この水が都にあれば、従妹の命は救えるはずだ。なのに、水を運ぶ手段がない。アーヘルゼッヘは、遠い都を思い浮かべる。もしも、北の者達だったら、都をさっさと変えただろう。必要な機能がそろえば、別にどこでもいいではないかと思うはずだ。


もしも、北の館に水がなくなり住めなくなったら、井戸を深く掘りなおすだろう。それでも水が見つからなければ、別に館を探すはずだ。住めない場所に住む必要はさらさならい。その場が恋しいならば、時々、やってくればいい。移動はそれほど苦ではない。


しかし、人間はそうはいかない。人の足か、馬車か、馬で動くことしかできない。大きな荷物は移動できない。それこそ、しばしの滞在用に水を湖ごと運んでしまえばいいではないか、と言う考え方は、人にはできない。


館は静まり返っていた。二本の柱の門柱に、ランプがぶら下がる。階段を駆け上がるといつもなら慌てて足の裏を拭いに来る家人の姿が見当たらない。柱しかない、森の中にあるようながらんとした広間。中央の木のソファーも、長庇の下のテーブルも、花や果物が添えられているだけで人気がない。


アーヘルゼッヘは中へ走る。奥へ続く回廊は、森の中を縦横に巡っている。東屋や、入口のような壁のない広間や、風をしのげる寝室替わりの葉の壁のある家が、回廊でつながっている。中には、レンガ造りの土台のある厨房もあれば、石造りの倉庫もある。


森の中に差し込む星明かりに照らされて、アーヘルゼッヘは部屋を探した。初日に、アーヘルゼッヘがどうしても入れなかった、負の感情の回線がつながっているあの部屋を。避けていたから忘れたのか、負の感情を感じられないから気づけないのか、アーヘルゼッヘに、見つけられない。部屋がない。そんなはずはないのだが、あの、居心地よさそうなクッションとはね上げた板窓の部屋を見つけられない。


「どうしたんです?」


慌ててついてきたソンが、立ち止まったアーヘルゼッヘに、やっと捕まえたというような顔で聞いた。アーヘルゼッヘは、ソンの声を聞きながら、首を振った。どうもしない。何も起きない。起こらない。チウの従妹を助けるために誰も動けない。アーヘルゼッヘは、回廊の手すりに手をおいた。


緑の香りが鼻を覆う。胸一杯に吸い込むと、どこからか水のせせらぎが聞こえてくる。さらに大きく息を吸う。横に立つソンの呼吸音が大きく聞こえ、早い鼓動が耳を打つ。アーヘルゼッヘは森を照らす銀の光をじっと見た。うっすらとアーヘルゼッヘの瞳の色が銀色へと輝き始める。ソンが驚いたように、半歩下がった。


しかし、アーヘルゼッヘは気付かなかった。やけに鼓動が速くなった、と思った程度だ。さらに、静かに息を吸い、そこで止めた。すると、森の虫の羽の音から、降り注ぐ星の光の音色まで、アーヘルゼッヘの全身に降り注ぎだし、獣の鼓動や葉擦れの音まで耳元で轟音のように湧き上がった。アーヘルゼッヘの全身は銀色に輝きだしていた。銀色の美しい彫り物が、森を背にして回廊にたたずんでいるように見えた。美しい、とソンが恐ろしさを超えた美しさに目を奪われた瞬間、あたりは真昼様に輝いた。あまりの明るさに、痛さを感じ、目を閉じた。


 アーヘルゼッヘは、音の渦の中にいた。土を潜るミミズの音を聞き、モグラの鼓動を聞いて、濁流のように流れる地底の水音を聞いた。そして、ソンの声を聞いた。

「私がテンネを説得しよう。貴殿にも、姫巫女が燃え尽きるより、貴殿にとって都合の悪い大陸の英雄が燃え尽きる方がよほどいいはずだ」

答える声は大きすぎ、アーヘルゼッヘは聞き取れなかった。チウはささやくような声で話しているようだった。


「なら、私がここから言うべきか? 水の種は盗まれた。その証拠に、都の日照りが続いている。そう、公言してまわろうか?」


「そうだろう。大祭には、水の種が必要だ。都の使者が持つ種があるはずだ、とだれもが思う。だから、都はちょっと日照りが続いている。そう思う思わせることができる。しかし、大祭が終わったら? そんな立派なことがいえるのか? こうやって話ている間にも、水は離れていくのだろう? なら、姫巫女を放せ。そうだ、ここへ飛ばしてくれ。私が説得してみせよう。おまえにとっても大事な姫だ。義理とはいえ、おまえの愛娘なのだからな」


アーヘルゼッヘは、手を差し出した。轟音のような声は否定しているように響いた。しかし、チウは根気よく相手を説得し続けている。


「できない? そんなはずはあるまい。人一人、砂漠の先へ送るくらい、簡単だろう。声を届けるのとさして差はない。私が逃げる? その力からいったいどうやって逃げ切れると言うのだ? え?!」

と言う声を聞いた。アーヘルゼッヘは、チウの声を聞きながら、鼓動を探した。


チウによく似た鼓動がどこかにあるはずだった。アーヘルゼッヘは伸ばした手で、似た心臓に触れた。が轟音が甲高い悲鳴に変わった。何か間違えたらしい。大きすぎる音は、アーヘルゼッヘの感覚を消してしまった。恐れとも恐怖とも言えない波が押し寄せたのだが、気づかなかった。アーヘルゼッヘはしびれる指先をさらに先へ延ばした。と、今度は暖かいものに触れた。触れたとたん、そっと掴んで抱き寄せた。


「まあ、お従兄様! ひどい。私は嫌だと申したのに」

若々しい女性の声が腕の中でした。アーヘルゼッヘは目を開けた。


 ソンは、まぶしさに目を閉じた。しかし、恐ろしい気配を感じ、すぐに開いた。開いた時には、目の前に、少女を抱えたアーヘルゼッヘが立っていた。ふくれっ面の黒髪の少女が、重厚な金糸銀糸で織られた着物に包まれて、アーヘルゼッヘの腕の中で暴れていた。



パソンと言う少女だった。皇家出身の巫女で、年は十四。母方の血筋が、チウの家とつながっていて、従妹と言うことになるらしい。正確には、もっと離れた遠縁らしいのだが、便宜上従妹と呼んでいるらしい。


「私の母は、恐れ多くも天神の血を引く御家柄です。その高貴な容姿に誰もがため息をついたと言うほどです」

月が照らす、入口近くのテラスで、衛兵たちが運んだお茶を手に、少女はソファーに座っていた。固い木の椅子に目を見張り、素朴な刺繍のクッションを物珍しそうな顔でいじっていたが、緑の香りが気に入ったらしい。機嫌よく背筋を伸ばして腰かけて、自分のことを語っていた。


「私は、父の宮殿で育ちましたけれど、本当は母の離れの宮で過ごす時間の方が多かったのです。ですから、巫女姫として、こうやって、お役目を果たすだけの素養を育てることができたのです」

と誇らしそうな声だった。


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