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  作者: 千影
第1章
2/4

-1- 手紙

長い休みも終わり学校が始まる

9月になったとはいえ、暑さは8月と全く変わらない

むしろより暑くなった気もする

日陰に置いておいたはずの自転車はすっかり日光を浴びていた

熱くなった自転車にまたがり勢いよくペダルを漕いだ


校門を抜けようとした瞬間、遠くから僕を呼ぶ声がした


「平川くん、先生が呼んでたよ」

「え、なんで?」

「掃除サボったでしょ。先生教室で待ってるよ?」

「だるいな、でもとりあえず行くわ。伝言ありがとう」

「"とりあえず"じゃなくて絶対ね」


高橋さんは伝言を伝え終えたらすぐに歩き出した

長い黒髪がなびいたと同時にシャンプーの甘ったるい匂いがした


下校するクラスメイトとすれ違いながら来た道を戻る

廊下はほんの少しだけ外より涼しいせいか、汗で濡れたシャツが冷たくなっていた

また一段もう一段と階段を汗を拭きながら上り最上階まできた

廊下の窓からはグラウンドが見える

こんな暑い日なのに野球部は今日も練習している

暑苦しい声が校舎まで聞こえてくる


「平川じゃん。先生がお前のこと呼んでたぞ」

「ああ、さっき高橋さんが教えてくれた」

「だいぶキレてるけどあれは楽勝だわ」

「おう、じゃあな」

「またカラオケ行こうな」

「おうよ」


そう言ってサッカー部の斉藤はエナメルを抱えて階段を降りていった

あいつは運動神経抜群で頭も良くて背が高くて顔もそこそこイケてて、僕とは真逆だ

女子はそういう奴を好きになるよな

まあ、どうでもいいけど


「平川、探したぞ」

「あ、先生」

「お前日直の掃除と日誌書き忘れてるぞ」

「高橋さんと斉藤が教えてくれたんで知ってます」

「知ってるじゃないよ。早くやって、日誌は英語科まで持って来いよ」


先生はそう言って足早に廊下に消えた

教室はもちろん誰もいない

昼間の蒸し暑い空気が消えてカーテンがゆらゆら揺れている

適当にほうきで掃いて、適当にベランダにゴミ出せばいい

さっさと終わらしてしまおう


するとほうきの先が何か大きな軽いものにあたった

よく見ると机の近くに手紙が落ちていた

中を開けてみると女子が持っていそうなキャラクターのメモ帳に綺麗な字で書いてあった





斉藤くんへ


実は入学してからずっと好きでした

直接いうのは恥ずかしいから手紙にしました

返事は来週の委員会の集まりの後に下駄箱で


いい返事待ってます


高橋 美雨





見てはいけない気はしてたけど、これは落ちていたのが悪い

僕は日直として掃除をしていただけだ

だから見たまでだ


いや、もはや僕は何も見ていない

そういう設定にしておこう


僕はそっと元通りにして掃除を続けた


結局ゴミをちゃんと取ってゴミ箱に捨てた

あとは日誌だけだ

日誌を教卓から取り出して自席に座った


そういえば高橋さんの席って斉藤の隣だった

そりゃあ席が近ければ話もすることも出来るしいいところも見つけやすいし別に好きになってもおかしくない話だ

でも僕は少しだけあの手紙に違和感を感じた

ああ、見てないつもりだった

手紙のことはもう忘れよう


僕は書き終えた日誌を先生に届け家に帰った



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