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暇人、魔王の姿で異世界へ ~時々チートなぶらり旅~  作者: 藍敦
第七章

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八十六話

(´・ω・`)きのこのーこーのこげんきのこー

 地下牢から戻りながら、改めて俺は魔族というものについて考える。

 序列とは、翼とは、角とは、瞳とはなんなのかと。

 これまでの反応やレイスに聞いた話を脳内でまとめると、だいたいこんな感じだ。


 黄金の角>大きな角>翼などの特異な器官>ちいさな角


 これが頭に生えているものの序列だ。

 そして、次は背面に生えているもの。


 大きな翼>小さな翼>背中に鱗などの種族の特徴>尾


 こんな具合です。

 以前、背中が大きく開いているセクシーな魔族のお姉さんがいたのだが、肩甲骨のあたりが綺麗なヒスイ色の鱗で覆われ、大層セクシーでございました。

 いやぁ、その話をしたら対抗意識を燃やしたレイスが翼をパタパタしはじめて可愛かった。


 そして、最後が目。

 魔眼は存在するだけで、ほかの部位の有無をひっくり返してしまうほどの稀少なものらしく、先ほどの二人のように片目にだけ顕現する事すら稀だと言う。

 さて、それを踏まえて俺の容姿を考えてみよう。

 ……そりゃみんなあんな反応しますわ。

 そもそも翼が二対っていうのがまず他にいないらしい。

 実は仮面さえ外せばアクセサリー枠が一つ空くので、さらに増やせたり出来るんですよね。

 この辺りの個数制限はゲーム時代から変わらない。

 あれですか、仮面で封印されたもう片方の魔眼の力で、最後の翼がはえちゃうんですか?

 今度お披露目したら面白そうである。


「おかえりなさいませカイヴォン様。本日の依頼、すべて受注されました」

「そうか、それは何よりだ。では私は視察をかねて保護区へと向かうとしよう」


 本日もギルドは盛況です。


 保護区へと向かう道も、以前とは違い活気に溢れている。

 護衛の冒険者向けの露天や、子供たち向けのお菓子屋、他にも子供たちが自分たちで作った手芸品を販売したりと様々だ。

 そして子供たちに手芸を教えているのが、暇な魔族という構図。

 魔族はもともと手先が器用で、レイスの前情報にあったとおり、今のような光景は本来なら前の街『ノースアル』で見られるべきだった。

 しかし、今の魔族はほとんど己の技術を振るわなくなり、物作りの楽しさを忘れてしまっていたそうな。

 まぁ、それでも年配の魔族さんが楽しそうに子供たちに教えるのを見て、徐々に本来の自分たちのあり方を取り戻してきているようだが。

 ステータス的には『技量』が上がりにくいはずなんだけどね、魔族って。

 手先の器用さとはまた別なんでしょう。


「あ! カイヴォン様!」

「む、ケージュじゃないか。どうした、今日は薬草摘みに行かないのか?」

「はい! 今日は日ごろの感謝もこめて、みんなで冒険者さんにご飯を作るんです」


 ケージュというこの少年、最初に俺が森の中で出会ったあの少年だ。

 名前聞くの、随分あとになってしまったんですよね。ほら、あの時暗い森の中だったし。

 頭からすっぽり抜けてたんですよ。


「そうか、それは良い考えだ。今は材料を集めている所か」

「はい!」


 見れば、少年の手には野菜の詰まったバスケットが握られ、さらに背負い籠の中にはキノコが入れられている。

 恐らくこの界隈の商店や、外に採取に向かった仲間から集めたものだろう。

 よしよし、じゃあ子供だけで料理をさせるのも危ないので、引率として俺が付こうじゃないか。

 別に久々に料理がしたくなったわけじゃないんだからね。

 さて、何を作るのか聞かねば。


「ケージュ、私にも手伝わせてくれ」


 彼に付き従い、次々に材料を集めて歩く。

 魔物の肉や調味料、牛乳やパスタなど、とにかく余った材料を集めて、それからメニューを考えるのだとか。なんとも楽しそうである。

 ちなみに発案者は区画長で、今日は久々にアーカムの屋敷へ住み込みで働きに出ている娘さんたちが戻ってくるそうなので、その歓迎と、今のこの区画の状況を簡潔に説明するためのものだとか。

 まぁ確かに、自分たちの作った料理を、魔族と一緒に食べる姿を見れば一発で納得するだろう。


「そういえば、ケージュの姉も戻ってくるのか?」

「そうなんです。一昨日手紙が来て、今日戻ってくるって書いてありました!」

「そうか、それはよかったな」


 ふむ、そのお姉さんに屋敷の中について聞いてみるのはどうだろう?

 先ほど牢の中で聞いた話は、恐らくレイスの事だ。

 あの言い方ではレイスが親子を追い出した用にも聞こえてしまうが、恐らくそれはないだろう。

 いつだって、レイスは保護する側。それがたとえ、己の敵の身内だとしても。

 まぁあの二人の母親の事を知ったら、間違いなく俺以上に怒り出すだろうけど。

 母性が強すぎるせいで、最近お兄さんもクラっときちゃうんですが、大丈夫なのかね。

 現状[サクリファイス]が発動した形跡もないので、身体的なダメージは皆無だと分かってはいるが、それでも心配だ。

 リュエが館に入り込んでいるのはギルドの方から聞いているのだが、それもそれで逆に心配である。

 是非ともケージュのお姉さんに屋敷の内部について詳しく聞かなければ。




 無事に材料を集め終え、保護区にある公園で料理の準備を始める。

 すでに公園には即席のかまどに調理台、大きな鍋を吊り下げた三脚と、アウトドアにはかかせない道具が一式出揃っていた。

 どうやら冒険者の一部が手伝いを買って出たらしく、子供たちと協力してテーブルや椅子、敷物を用意していた。

 なんだか小学校の収穫祭を彷彿とさせるその光景に、つい俺も昔を思い出す。

 母校である小学校の季節行事に呼ばれ、ボランティアとして一緒に芋堀りをしたり、キノコ狩りをしたり。

 一緒に料理をしたりしながら、交流を深めたのを今でも覚えている。

 ……そういえば、あの時も最初は子供たちが怖がって寄ってこなかったような……。


「……今の状況って昔と余り変わっていないのかね」


 大丈夫、今はこんな風に子供が寄ってきてますから!




「カイヴォン様! どうしたのですかそのお姿は」

「料理をする以上、いつもの格好でいるわけにはいかないだろう?」

「そんな、カイヴォン様にそのような事を……」

「構わんよ。こう見えても私は料理好きなんだ。手伝わせてくれ」


 いつもの仰々しい装備を外し、剣だけを背負った状態で登場した俺に、冒険者一同が驚きの声を上げる。

 仮面を外し、コートアーマーから私服に着替え、魔眼も解除した状態。

 長髪も紐で結わいでポニーテールにし、きっちりと三角巾も結んでおります。

 なお角が邪魔で不恰好になっている模様。


「それで、メニューは決まったのか?」

「いえ、今集まった食材を並べて考えているのですが……」

「ふむ、見せてみろ」


 シートに並べられているキノコと野草、山菜。

 調味料や乾麺に買ってきた野菜や乳製品。

 随分と豊富な品揃えに、逆に迷ってしまう。

 ううむ……キノコか。この時期でもうとれるとは。

 念のため、キノコ類は一度全てアイテムパックに入れて毒の有無を調べる。

 うん、問題なし。食べ合わせに難のあるものもないし、大丈夫だ。


「とりあえず、キノコをカテゴライズする。手伝ってくれ」


 焼くとおいしいもの、煮崩れしやすいもの、香り高いものと大雑把に分けたところで、本日のメニューを考える。

 鍋があるしスープもいいかもしれないが、せっかく乾麺があるのだし、パスタではないが、それらしい料理が作れそうだ。

 あれですよ、うどんのキノコあんかけみたいな。


 ついでに肉とキノコも付焼きにして、さらに余ったものは野菜と一緒に炒め合わせる。

 ……駄目だ米も食べたくなるな。乾麺だけでは足りないだろうし、ここはアキダルで購入した大量のお米の出番だ。

 秋になれば新米も出回るだろうし、なるべく早く消費したほうがいいだろう。

 やばい、ちょっと楽しくなってきた。


「よし、じゃあ手伝ってくれ、レイ……」


 言いかけて、思い出す。

 そうか……今回はレイスもリュエもいないんだったな。

 ……ああ、無性に会いたいな。

 あの二人が居ないとぼんぼんクッキングは成立しないんですよ。

 熱心にこちらの動きを観察するレイスと、何か手伝うことはないかと右往左往するリュエ。

 仲間の存在がどれほど大切で、俺に救いを与えてくれるか。

 昔からそうだ。誰か身近の人間のために作る事が、俺の何よりの癒しだった。

 今はリュエとレイス、彼女たちが。

 そして、かつてはあの野郎共が――


「誰か、私の補佐を頼む。料理の心得がある者は来てくれ」


 大丈夫、俺は大丈夫だ。

 だから、そっちも大丈夫だよな?




「じゃあさっき教えたキノコ、そのオレンジの丸いやつは綺麗に洗ったら水気を切っておいてくれ。玉ねぎは薄めのくし切りだ」

「了解だ旦那。じゃあ玉ねぎの皮むきは任せたぜ坊主ども」

「はーい!」


 俺の隣には、筋骨隆々のマッチョメンことゴトーさんが腕まくりしております。

 レイス、早く戻ってきて。

 というか魔族女性がこんなにいるのに、料理の心得があるのがゴトーだけってどういう事なの?

 みんな残念ガールなの? 将来は主夫を見つけるの?


「よし、誰か料理が出来なくてもいい、簡単な手伝いを頼みたい」

「ぜひ私が」

「いやいや某が」

「ここはアタシが」


 じゃあここは俺が、どうぞどうぞどうぞ。

 なんて事にはなりませんよね、みんな積極的に手を上げておりますし。

 そういえばこの世界に芸人っていないのかね……大道芸人でも可。



「このキノコ、傘の部分に包丁で切れ込みを入れて縦に裂いてくれないか」

「裂くんですか? 切るのではなく?」

「ああ、そのほうがうまい」


 菌類って金属を嫌うんですよね。俺の闇魔術の包丁なら関係ないが、こういう知識は少しでも広めておこう。

 花嫁修業ですよ花嫁修業。それに裂いたほうが味の染み込みも良いし。


「うわあ! カイヴォン様、このキノコ色がかわっちゃいました!」

「ああ、別に問題ない。なるべくやさしく洗ってくれ」

「カイヴォン様、こっちのキノコは煙をふいています!」

「それは捨ててくれ。その白いボールのようなキノコは指でつまんで硬い奴だけ残しておくように」


 ああ、これは中々骨が折れそうだ。

(´・ω・`)えりんーぎまいたけ




(´・ω・`)金! 暴力! S○X!

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