表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
暇人、魔王の姿で異世界へ ~時々チートなぶらり旅~  作者: 藍敦
第七章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

86/414

八十話

(´・ω・`)スターオーシャン5の新しい映像が公開されました

(´・ω・`)今度こそ主人公が空破斬を使えるといいのですが……


(´・ω・`)知ってる? 4にいたっては主人公どころか味方にいなかったんだよ?

「お仕事中申し訳ありません、ここで家政婦の募集をしているとギルドで聞き、参った次第なのですが……」

「む、そうか。少し待っていろ」


 街の最深部、坂道を登った先にある、大きなお城を思わせる領主の館。

 まるで、自分こそがこの地の、この大陸の王だと誇示しているかの様な佇まいが、相手がどんな人間なのかを曖昧ながらにも私に伝えてくれる。

 わざわざ街の外で二人と別れた私は、髪の色も淡いプラチナブロンドに変えてから一人で街へと入った。

 そして到着早々ギルドへと向かいその募集を見つけ、そしてその足で今ここにいる。

 契約内容はギルドから派遣されるという形でなく、直接領主に雇用されるという形のもの。

 さらに、冒険者という肩書を一時的にとはいえ返上しなければならないというものだった。

 たぶん、オインクや冒険者ギルドが口出し出来ないようにする為なんだと想う。

 けれども、私が返上しなければいけないのは冒険者という肩書だけ。

 カイくん同様、エンドレシアの公爵位と、セミフィナルでの領主待遇としての力はしっかりと残っている事、それをギルドから伝えられている。

 そうだよね、勝手に返上なんて出来ないよね。

 ……てっきりカイくんだけの物だと思ってたんだけどね。


「……それにしても、魔王、か」


 ここの領主は、一部の人間から魔王と呼ばれているらしい。

 ふふん、私はカイくんを知っているんだ、本物の魔王を知っている身としては、そんな肩書は失笑のもとにしかならないよ。

 ましてや、私の大切な妹を苦しめているんだ。いざとなったら、証拠も残さず終わらせる事だって出来る。カイくんも心配していたし、いっその事このまま終わらせたくなってしまうよ。


「お待たせしました。この館の家令をしている『イクス』と申します。家政婦としての雇用をご希望とお聞きしましたが、詳しい話は館の外、どこか別な場所でしたいと想うのですが、宜しいでしょうか?」

「はい、それで問題ありません。よろしくお願いいたします」


 現れたのは、黒い執事服を着こなした、私と同じエルフの女性だった。

 家令……てっきりお爺さんとかそういう人しかなれないと思っていたけれど、こんな綺麗な女の人もなれるんだね。

 私はイクスさんに連れられて、坂の下の飲食店街にある、ちょっぴり高そうなお店へと入る。

 店主と思われるキチっとした制服を着こなしたおじさんが、イクスさんの姿を見るなり店の外へと向かい、何やら看板を立ててから店を閉めてしまう。

 ……これは、どういう事なのだろう? 私は少しだけ警戒し、密かに身体強化の魔術を使った。


「マスター、いつもの部屋を使わせて頂きます」

「わかった」


 彼女に連れられて、私は店の奥の、恐らく特別なお客を持て成すために使われるであろう客室へと案内された。

 綺麗なふかふかしてそうなソファーと、飴色の半透明のテーブル。

 何で出来ているんだろうと触ってみたかったけれど、今日の私はいつもと違う。

 言葉遣いも、考え方も切り替えて臨む。


「貴女は街の外から来た方ですね? この街はヒューマンの方には驚かれるような文化が多々ありますが、エルフである貴女ならば……お名前を伺っても宜しいでしょうか?」

「申し訳ありません、先にこちらから名乗るべきでしたね。私は……ユエと言います」

「ユエさんですね。恐らく貴女でしたらそれほどギャップに戸惑うこともないかと思います」


 咄嗟に、偽名を名乗る。

 これって後でギルドに確認とられるのかな?

 そうなると、身分を証明してくれるものも無いし、そもそも実在しない人物なのだし問題になったりするのかな?


「ところで、失礼ですがユエさんは髪の色を見るにリヒトの末裔なのでしょうか?」


 そんな心配を他所に、話は進んで私の出自について問われる。

 わ、わからない! リヒトと言うのは私の所に残った子供たちの事だと思うけど、髪の色……?

 とりあえずはぐらかしておこうかな。


「その、察して頂けると幸いなのですが……」


 目を伏せ、気持ち声色を弱々しい物を意識してポツリと、それでも相手に聞こえるようにそう漏らす。


「失礼しました。私もかつての氏族名を捨てた身、お許し下さい」


 そう軽く下げた彼女の頭は、私と違って綺麗な、鮮やかな発色の金髪。

 そういえば、濃い金髪のエルフって今の時代は余り見かけないけれど、もしかしてサーディス大陸に渡った一族なのかな?


「それで本題なのですが、私はユエさんが館で働く事をお勧め出来ません」

「それは何故? エルフでは問題なのでしょうか?」

「いえ……その、貴女が美しいからです。正直に申し上げますと、アーカム様は見目麗しい家政婦をその……よく夜伽のお相手に選ぶ悪癖がございます。私は同じ女である身として、涙を流す同僚をもう見たくないのです」


 ……そっか。この人はいい人なんだね。

 私はどうしても、まだエルフと付き合う時に少しだけ身構えてしまう癖がある。

 もちろん、治そうと努力はしているんだけどね。ただ、イクスさんのように大人な、キッチリとした人を見ると、少しだけ怯えてしまう。

 けれども、この人は純粋に私の心配をしてくれている。

 たぶん、こんな場所まで私を連れてきたのだって、万が一の事を考えての事なんだろう。

 その心配りが、素直に嬉しかった。けどね、それじゃあダメなんだ。


「……お気遣い、誠にありがたく思います。ですが、私にも遂げねばならない大事な目的があるのです。その為に、なんとして館で働かせて貰いたいのです」


 正直にここで話してしまうのは、もしかしたら失敗だったかもしれない。

 私が何か腹心を持って入り込もうとしていると思われるかもしれない。けれども、私のいつも通り冴え渡る直感が、大丈夫だと告げている。

 ……大丈夫、たぶん大丈夫。どこからかカイくんの呆れた声が聞こえてきた気もするけど、おそらく大丈夫!


「それはお金が入用だからですか? それとも……屋敷の人間に恨みでも?」

「個人的にアーカム……様に思う所はありますが、何かしようとは思っていません。ただ、私の目的為にあそこで働くという事が必要不可欠なのです」


 真っ直ぐイクスさんの深緑の瞳を見つめながら、私は正直に話す。

 本当だよ、思う所はあるけれど『今は』何かしようとは思っていないよ。

 あそこに入り込んで、いつかやってくるレイスを陰から守る為だけにいるだけだよ。

 うん、嘘はついてないよ嘘は。なんだか最近考え方がカイくんに似てきた気がする。


「……もしもの時の覚悟があるのなら、私からは何も言いません。ですが、決してその時に抵抗はしない事です……私でも、一捻りでしたから」


 そう最後に自嘲気味に呟いた彼女の顔が、あまりにも儚くて、そしてまるで全てを諦めたような表情で、私の決意を新たにさせてくれた。

 レイスは絶対に守る。そして、もしも私に手をだそうとしようものなら、世にも恐ろしい目にあわせると誓った。


 働く事を許された私は、再び館へと連れられ、早速住み込みで働く使用人のための寮へとやってきた。

 まるで大樹のような、背の高い塔の形をしたその場所は、窓には鉄格子がはめられ、入り口には厳重な警備と物々しい鉄錠門と、どう贔屓目に見ても監獄にしか見えない様相だった。

 これって完全に管理されるって事なのかな? これじゃあ一度ここで働いたら、中々外に出られないじゃないか。


「荷物はそのカバンだけみたいだけど問題ないのかしら? 一度入ったら休暇願が受理されるまで自分から館の外へは出られないのだけど」


 働くことを決意した私に、少しだけ言葉使いを変えたイクスさん。

 近くに門番もいるし、その影響もあるのかもしれない。


「問題ありませんよ。全て覚悟の上ですから」


 大丈夫、たぶん鉄格子だって私が『んっ』てやれば外れるだろうし。

 これでも力持ちだからね、それくらい出来ると思う。

 大丈夫、私が本当にピンチになる時なんて、七星が現れてそれが人質をとって、さらに私の装備が無くなってさらに力が封印された時くらいだよ。

 最後の確認を取ったイクスさんは、門番に開門を指示して中へと入っていく。

 私もそれに続くと、急激な力の本流にさっきまでかけていた身体強化の魔術が打ち消されてしまう。


「言い忘れたけれど、この中および本館の中では許された者以外は魔術や魔法の行使は許されていないの。じゃあ、最後にこれを腕にはめてくれるかしら」

「……随分大事な事を言い忘れていたんですね……」

「申し訳ないとは思うけれど、これでも私は家令なので」


 良い人、なんかじゃなかったのかな? けれども、私にはあの時の彼女の顔が嘘をついてるそれに見えなかった。

 そして今も彼女は、申し訳無さそうに、辛そうに白いバングルを私の手首にはめようとしていた。


「これをはめると、万が一の時に身体の自由が効かなくなるわ。アーカム様に害をなそうとしても、これがある限り難しいと思って頂戴」

「……言ったはずです。私はそのような事をするつもりは無いと」

「その言葉、どうか信じさせてね。腕を」


 素直に手を差し出し、手首にカチャリとはめられたそれは、まるで陶磁器のように白く艶めき、美しい薔薇の彫刻がされていた。

 ……普通にお洒落じゃないか!


「じゃあ、今日は部屋がまだ用意されていないから、空き部屋に簡易的な寝床を用意させるわ。明日貴女の教育係を迎えに寄越すのから、その指示に従うようにね」

「わかりました」


 素直に全ての指示を飲み、長い螺旋階段を登り最上階の一つ下の階へと通された私は、用意された少しだけ埃っぽい部屋へと入れられると同時に、扉に施錠をされてしまった。

 ……さてと、じゃあ早速この邪魔な術式の改変と乱された身体能力強化の術をかけ直さないと。


「……例えるならそう! 獰猛な狼をネズミ捕りで捕まえようとするような暴挙!」


 誰もいない部屋で決めポーズ。だって退屈なんだもん。

 `\

(´/ω・`) キリッ

  ( / 

  /く

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ