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暇人、魔王の姿で異世界へ ~時々チートなぶらり旅~  作者: 藍敦
第七章

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七十九話

(´・ω・`)ウサギを飼ってる人は回れ右!

「では、今日は私の名義で護衛の依頼を出すが、次回からはギルド名義で頼むぞ」


 翌日、ギルドで俺は護衛の依頼を出した。

 今日は外に食料の調達に向かうので、そのついでに子供たちを連れ、薬草の採取地にも向かうつもりだ。

 俺の方は一人で魔物を狩るなり、果物や野草、山菜を探すつもりなのだが、そうなると子供たちに目を向け続けるのも難しく、それでこうして依頼を出すことにした訳だ。

 これでもし魔族が依頼を受けたら、しっかりと仕事をしているか監視する事も出来るし、俺と子供たちが仲良く過ごしている所を見せ付けることにより、今後の抑止力にも繋がると思ったのが……はてさて?


 ギルドを後にし、本日もやって参りましたヒューマン保護区画。

 今日はあらかじめ人手が必要だと言っておいたので、子供たちが集まっております。

 ……やめてくれ、その視線は俺に効く、やめてくれ。

 案の定向けられるのは不安そうな、緊張のこもった視線ばかり。

 が、その中に見覚えのある少年を見つけ、ついこちらから声をかける。


「少年、元気だったか? あの薬草はしっかりギルドで買取をした筈だが、買い叩かれたりはしなかったか?」

「カイヴォン様! ありがとうございました、おかげで一二○○ルクスになりましたよ! お母さんにも、妹にもパンとお肉を買って帰れました!」

「そうか、それはよかったな! 聞いたかみんな、今度から薬草はギルドが直接買い取ってくれる! 今までよりお金が貰えるし、ギルドから護衛の依頼を受けた人も来てくれるから安心だ!」


 俺がそう告げると、やはり身内の少年が実際にその恩恵を与っている事も影響してか、不安そうな表情から一変、わくわくとした子供らしい表情に彩られていった。

 さぁ、後はこれで護衛の人間が来たら問題ないのだが――




「ほらー、ガキんちょどもー! さっさとついてきなー」

「ちょっと、先に行くんじゃないよ! ほら、ちゃんと前の子の後ろについて!」


 あ! やせいの マンバガールズが あらわれた!

 はいそうです、先日の魔族の娘さん二人組みです。

 これはサファリなボールではなく石を投げざるを得ない。

 とか言いつつも、結構しっかり護衛……というか引率していらっしゃいます。

 道中子供たちが何か見つけては立ち止まり、採取が終わるまで辺りを警戒。

 歩調が乱れ始めたらしっかり休憩も挟んでいる。

 まぁ俺が近くにいるせいもあるのかもしれないが。


「一旦休憩すると良い。私はこの辺りの野草と山菜、獲物がいたら仕留めてくる」

「わかりました~! ほら、ガキんちょ共もちゃんといってらっしゃいって言いな」

「いってらっしゃいませかいぼんさま!」

「てらーさい」

「いてらしゃーい!」


 やだ、癒される。


 やはりこの大陸は全体的に魔物の数が少ないが、皆無ではない。

 鬱蒼とした森の中、俺は[ソナー]を発動させる。

 屋外では余り効果がないが、ここまで木の多い場所だとその効果は屋内とほぼかわらず、綿密なマップを表示してくれる。

 子供たちと護衛の娘さん二人の傍には、今のところ反応はない。そしてさらに周囲に目を向けると――


「小さいけどいることはいるんだな。そんじゃ久々に狩りでもしますかね」


 リュエと暮らしていた時代も、こうして森の中で魔術を使い狩りをしていた。

 今でこそ便利なアビリティがあるが、当時は生息地を教わったり、風下を意識して動いたりと、気をつけることが山ほどあった。

 まぁ今ではもう――


「反転して付与する分には制限ないからなぁ」


 マップを頼りに近づき、目視と同時に[生命力極限強化]を反転して付与。

 するとなんという事でしょう、かわいらしいウサギさんが見る見る衰弱し動けなくなってしまったではありませんか。

 ……えっげつな! 今まで俺が使った戦法、技の中で一番えげつないんですが。

 いや冷静に考えたらこれまずいって。見ただけで相手が瀕死になってしまいますよ。

 俺はすぐさまウサギが息絶える前に解除し、弱ったところを氷魔法で氷漬けにする。

 生きたまま氷漬けってマズいんだったか? ちょっと首の辺りに穴でも空けて放血するべきか。

 ああでも、闇魔法で解除すれば生きたまま解凍出来るのかな?


「その辺りは住人の皆さんにお任せしましょう」


 さすがにウサギ狩りは初めてなのでよくわからんとです。

 そうこうしながら、獲物の数を稼いでいくのであった。




「おねーちゃん、そっちの葉っぱ、手で触るとあぶないよー、はいこれ」

「……あんたらなんでそんな詳しいわけ?」

「みんなしってるよー! ごはんの事はみんなお母さんとお父さんにおしえてもらってるもん」

「魔族様のお仕事のお手伝いのときに、一緒にとってるんだー」


 子供たちの所へ戻ると、娘さんたちと子供たちが何やら話しこんでいた。

 せっかくだし、少し観察してみることに。

 見てない所でいじめたら先生許しませんよ?


「……お父さんとお母さんは何してんの? 子供に働かせといて」

「わたしのおかーさんはね! まえにアーカムさまのおうちで働いていたの! けど弟ができたからーってやめてきたの! そのあとお父さん、はしってアーカムさまのところにいって、そのまま戻ってこないの」

「……それっていつごろ? 昨日?」

「ううん、ずーっとまえ!」

「そっか……アンタは偉いね、お母さんにおいしいもん食わせてやんな」


 気の重くなる話を聞いた。

 ……それでも、中には気骨のあるヒューマンもいるという事を知れただけで、良しとしよう。

 ああ、あとあれだ、アーカムさんよ――残酷に死ね。




 それからも行軍は続き、無事にゼオ・フラウの群生地までたどり着くことが出来た。

 今回は今後の事を考え、回復効果を与えずじっくりと移動してきたわけだが、休憩を挟んだこともあり一人の脱落者を出すこともなくたどり着くことが出来た。

 相変わらず、一面の花畑のような幻想的な風景。

 深い森の先に唐突に現れるその場所は、もしも街に近い場所にあれば、絶好の観光スポットになりそうな程。


「私たち、こんな場所にまで行かせようとしてたんだよね……」

「稀少なの当たり前じゃん……楽して稼げるなんて、無理にきまってんだよね……」


 そして、その光景にはしゃぐ子供たちを見ながら、ポツリと呟く二人に声をかけてやる。

 昨日は俺も言いすぎた感があるので、下女だけは取り下げたいと思います。


「それが分かったお前たちは、立派な冒険者であり、子供たちの守護者であり、姉だ。これからも励むと良い。昨日の言葉は取り下げよう」

「カイヴォン様……分かりました、これから私たちは、このガキ……じゃなくて子供たちの護衛を生業としたいと思います」

「私も。……ちゃんと笑えるんじゃない、アイツら。いっつもおどおどこっちの顔色ばっかり窺ってたのに……」

「それも、この街が少々おかしな事になっているせいだろう。少しずつ、あの子供たちのように種族に捕らわれず、場所にも縛られず笑える街になっていくと良いな」


 自分で言っておいてなんですが、ちょっとクサいような気がしないでもない。

 若干笑われるのを覚悟して言った部分もあったのだが、どうやら二人はそう思わなかったのか、真剣な顔で頷いておりました。

 ……本当、少しずつだけど変わっていくといいな。

 今日のことで手応えは掴めた。後は断続して続けることが出来るかだな。


「ほら、ガキんちょどもー! あんまりいっぱい採っても持って帰れないんだから、程々にしとけー」

「はーい!」






「すっかり遅くなってしまったな区画長、これが今日の稼ぎだ。ウサギ……一匹ラピットラビットも混じっているが、全部で九匹に、よく分からない鳥が七羽だ。山菜と野草もこのカゴに入れてある」


 ところでウサギって一匹とも一兎とも一羽とも数えるから咄嗟に困るんですよね。

 まぁ少なくとも食材として運ばれてきた時は一羽って数えていましたが。

 さすがにまだ生きてるからね、匹でいいんじゃないかね?


「これは……まで生きているではありませんか! なんと凄い……さすがですなカイヴォン殿」

「絞め方がわからなかったのでな。それと、今日は子供たちがたっぷり薬草を納品してくれたからな、ギルドからお礼にと余った魔物の肉を貰ってきた」


 ギルドで子供たちが嬉しそうに小銭の詰まった袋を受け取り、護衛を受け持った娘さん達に『お姉ちゃん今日はありがとう!』と礼を述べた後、無事この区画まで送り届け今に至る。

 朝食を食べてすぐに街を出たにも関わらず、現在の時刻は夕方六時。

 だいぶ時間が掛かってしまったが、慣れない遠出だった事を考えれば、今後はもっと早く戻れそうだ。途中俺の狩りの所為で遅れてしまったしね。

 そして一日の成果を区画長に見せると、たいそう嬉しそうな様子で、中でも子供たちがしっかりと収入を得て戻ってきた事に驚いていた。


「これからは、安全に子供たちが働けるようになる。子供の護衛として、大人の冒険者が就くことも出来るようになる。少しは働ける場所も増えるかもしれない」

「そうですな……本当にありがたい事です……何から何まで、なんとお礼を言ったら良いか」


 この区画の人間にも、冒険者として活動している大人たちはいる。

 だが、振り分けられる仕事は建築現場での力仕事や、下働きのようなものばかり。

 採取依頼ももちろん受けられるが、どうしても魔族の冒険者にそれを譲ってしまったりしていたらしい。

 これも、安易に子供たちに代行をさせ、楽に稼ごうとしている彼らに逆らわないための事。

 しかし、これからはそうはならないだろう。

 恐らくまだ不満を持つ魔族もいるだろう。陰で不正を働く存在もいるだろう。

 それでも、少しずつ変わって……いやてっとり早く言うと、俺の傘下についた魔族に駆逐されていくだろう。

 力技大いに結構。どんな水面下の争いだろうと、どうせ最後には表沙汰になって武力にものを言わせるのは目に見えている。

 そうなれば今度こそ俺の出番だ。今に見てろ、気がついたら四面楚歌、誰も自分に賛同する人間がいない状況まで追い詰めてやるからな?

(´・ω・`)新雪にウサギの足跡が見える事が田舎では多々あります。

(´・ω・`)昔はそのあしあとに罠をしかけてたとかなんとか。

∩   ∩

(´・ω・`)

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