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暇人、魔王の姿で異世界へ ~時々チートなぶらり旅~  作者: 藍敦
第七章

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七十二話

(´・ω・`)ちょぴっと短いです

「早いね! まるで飛んでるみたいだ!」

「すごいですね、上下の揺れだけでなく車輪の振動も殆ど感じませんし」

「……窓開けて下の方見てみな、驚くから」


 俺は御者席から背後の客車へと声をかける。

 本当に飛んでるんだよなぁ……。

 魔物は種族によって走法が変わるため、それに対応すべく客車との連結部分が魔導具になっている。

 その効果により激しく魔物側が動いても、客車との連結部分が水平に保たれている。

 これにより、跳ねるように走る魔物が牽引しても、客車まで一緒に飛び跳ねるなんて事はなく、車輪がしっかり地面に着いたままという具合だ。

 だが、さすがに空を飛ぶ魔物には対応出来ないのか、水平にこそ保たれているが、車輪が地面から完全に浮いてしまっている。

 そりゃ揺れないだろうし、飛んでるみたいに速いだろうね!


「おお! 浮いてるよカイくん! すごいね、この子」

「……サスペンションの駆動が……車輪の回転が……」


 レイスさんや、もしかして機械大好きだったり?

 しかしさすがにこのままという訳にもいかないし、竜に話しかけてみる。


「人気のない場所なら構わないが、人が多い時は飛ぶのは控えてくれ、いいな?」


 言葉を理解したのかしっかりと鳴き声で返事をする竜に、外見とは裏腹に可愛いな、なんて事を思ってしまう。

 いやぁ、いくら数メートル程度しか浮いていないとは言え、さすがにこれは異質すぎるから。

 そして無事に車輪が地面に着いた事を確認し、町から走りっぱなしだった事もあり一旦街道脇の草原に魔車を停め休憩する事にした。


 二人が次第に落ち着きを取り戻し、今度は客車の内装をチェックしたり座り心地にうっとりしている最中、俺は一人自分のステータスを確認していた。

 奪命剣を取り出し、少しアビリティ構成を変更して頭のなかで計算をする。


[修行]

[簒奪者の証(妖)]

[生命力極限強化]

[与ダメージ+30%]

[与ダメージ+15%]

[簒奪者の証(剣)]

[龍神の加護]

[攻撃力+30%]

[攻撃力+15%]

[アビリティ効果2倍]


 さて、この構成はなんでしょう?

 答えは簡単! 火山洞窟で復活したフェニックスを倒した時の構成です。

 あの時俺が咄嗟に考えた『自分の為だけの構成に組み替えた剣』がこれ。

 いやぁ、だってあんな強い相手、絶対経験値たっぷり持ってるでしょう?

 だったら多少火力を落としてでも、がっつり稼ぎたいじゃありませんか。

 たしかに[天空の覇者]を外し[修行]をつけた事で与えるダメージは大幅に下がったが、それでもその甲斐はあった。

 元々ゲーム時代にないレベルになった所為か、次のレベルに上がるのに必要な経験値の量が文字化けしていた。

 だが、[簒奪者の証(妖)]と[修行]により一○倍にまで膨らんだ取得経験値で、なんとついに俺の中途半端なレベルが――


【Name】  カイヴォン

【種族】  人間

【職業】  奪命騎士(3) 拳闘士(50)

【レベル】 400

【称号】  救済と殺戮の魔王

      龍帝屠りし者

      神の敵対者


【スキル】 闇魔導 氷魔法 炎魔法

      剣術 長剣術 大剣術 簒奪

      格闘術 サクリファイス

      カースギフト ←New


『カースギフト』

『対象に自身の所持するアビリティを任意で一つ付与する』

『一度付与したアビリティは解除するか対象が消滅するまで持続する』

『付与するアビリティは任意で効果を反転させる事が可能』


 ついにキリのいい四○○に上がったのである。

 そして職業レベルも三になり、新たなスキルを習得する事が出来た。

 ……三九九から四○○に上がる程の膨大な経験値を貰っても二しか上がらない職業というのも考えものなんですけどね。

 そして習得した物は、予想通り補助に関する物。

 しかしこれはこれで随分ぶっ壊れていませんかね?

 使い方次第では極悪な状態異常攻撃にも、絶大な補助魔法にもなる。

 さらに――


「……アイテムに付与出来たりしないかね」


 そう、もしもアイテムにも付与可能なら、実質一度にセット出来るアビリティの枠が増えるのと同義だ。

 ちょっと後で試してみよう。

 ふと顔を上げると、いつのまにか対面する席に座っているレイスがこちらをじっと見ていた。

 あれ、いつの間にか魔車が動いていないか? 御者はどうなっているんだ? リュエの姿が見えないが、まさか?


「レイス、リュエにまかせて大丈夫なのか?」

「ええ、随分物分りの良い子なので、よく言うことを聞いてくれていますよ」

「それは魔物の事なのか、それともリュエの事なのか」

「……ノーコメントです」


 こうして密室で二人きりになると、やはり少し緊張してしまう。

 だが、それは向こうも同じはず。なにせもうすぐ――


「いよいよ、ですね」

「ああ。この街道の半分を過ぎたら、ウェルドさんの領地から出る。つまり――」

「中央の、アーカムが治める領地に入るんですね」


 そう、アギダルから続く次の街『ノースアル』が、アーカムの治める領地の始まりの地。

 もちろん辺境の街なので、まだ領主本人がいる訳ではない。だがそれでも、敵の領内には違いなく、やはりレイスも緊張しているのだろう。

 ……ああくそ、いっその事俺単独で乗り込んで大暴れしてやろうか。

 こんな事なら下手に権力なんて貰わなかった方がよかったか?


「凄く、恐い顔をしていますよ? 大丈夫です、私ならどんな事があっても戦えます。もう私は誰にも負けませんよ、カイさんがいてくれるだけで私は最強です」

「そんな顔してたか? ……俺の方が追い詰められてどうするんだろうな。よし、とりあえず全部到着してから考えよう。今は適度に肩の力を抜いて次の街を楽しむさ」

「そうしましょう。ノースアルは工芸品、手芸品、服飾品で有名な街ですので、少し私の装備を整えようと思います」

「ああ、そのドレスも防具だったっけ。ぱっとみ普通のドレスにしか見えないんだよなぁ」


 レイスは普段からドレスのような華やかな服を着ているが、依頼の際に着ているのはれっきとした防具。

 しっかりと魔法がかけられた布を利用した、一種のローブのような物だ。

 ゲーム時代は種類も少なく、性能も余り高くないので趣味の域を出なかった不遇装備でもある。

 そして、俺が魔王ルックで着てる装備も、同じカテゴリなんですよね。

 俺はもうあの姿が固定されているので、装備の変更しようがない。だがもし、先ほど確認した[カースギフト]を使う事が出来たら……。


「ところで、アーカムについてレイスからは余り聞いてなかったけど、どんな相手なんだ? 魔族だって事はなんとなくわかってるけど」

「そうですね。アーカムは魔族の中でも、辺境の地に住む王族の血を引く強い種族です。正直、今の私でも正面から戦えば無事では済まないと思っています。ですが、先ほど言った通りカイさんとリュエがいると思うだけで、私は誰にも負ける気がしません」

「俺も全身全霊で当たらせてもらうからあんまり気負わなくていいからな? にしてもやっぱり魔族か……評判はどうなんだ?」

「恐らくかなりの支持を得ているかと。今はわかりませんが、昔は多くの魔族が彼の元に集まっていましたし、今もああして魔族の刺客が送りこまれてくる以上……」


 ふむ、魔族であり、そしてかなり上位の種族、さらに多くの魔族を率いていると。

 となると、オインクの言っていた『俺と相容れない』という発言がどういう意味なのかもうっすらと分かってくる。

 ……なるほど、じゃあ俺も対策しておくかね。

 魔族は強い血脈に惹かれると言うのなら、いくらでもやりようはある。

 あれだよ、アイデンティティの崩壊は避けねばならんのですよ。


「レイス、今のうちにアーカムが一番ダメージを受けるシチュエーションだけ考えておいてくれ。精神的な奴で」

「……カイさん、今すごーく悪い顔してますよ? ふふ、ちょっと楽しみになってきました」


 緊張がほぐれたようで何よりです。


「う、うわあ! 飛んじゃ駄目だよ! 降りて降りて! ギャー!」

「……御者代わってきますね」

「お願いします」


 物覚えが良い子って言ってたじゃないですかー!

 そして、ようやく竜が地面を大人しく走りだした頃、俺達はノースアルに到着したのであった。

(´・ω・`)こちらはそろそろ夜の気温が下がって参りました

(´・ω・`)いつまでも夏気分で薄着に窓あけっぱなしで寝ると危険です

(´;ω;`)危険です

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