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暇人、魔王の姿で異世界へ ~時々チートなぶらり旅~  作者: 藍敦
六章

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六十九話

(ヽ´・ω・`)またせたな!(げっそり)

 火山の噴火の間隔がだいぶ広くなり、俺は一先ず地表へと降りる事にした。

 そこには先に避難したナオ君達と、我らが姫さん二人組の姿が。

 やはり先程の射撃はレイスの物だったようで、彼女は黒く染まった弓を片手にこちらを見上げていた。

 その反面、リュエは大規模な魔導の行使で疲れているようで、剣を杖のようにして立っている。


「リュエ、ある程度噴火の規模も収まったし魔導の解除を」


 俺はすぐ様、アビリティを旅道中用の物に切り替える。


[回復効果範囲化]

[コンバートMP]

[生命力極限強化]


 久々に登場の[回復効果範囲化]先生です。

 何気にこの効果も中々にぶっ壊れていると思うのですが、どう思いますか。

 まぁそれも[生命力極限強化]のおかげなんですけどね。

 この[回復効果範囲化]の実際の範囲なのだが、近くにいる相手で、自分が仲間だと認識した相手にのみ発動してくれる。

 つまり、かなり融通が効く能力だ。

 今回はみんな消耗が激しいので、周囲全体にその恩恵を与える。


「おかえり、カイくん。助かったよ、久しぶりだったから堪えたよ」

「……無理はするなって言ったはずだぞ」

「大丈夫、何年もやってきた事だからね。疲れはしたけど無理って程じゃないよ」

「これは……カイさん、この力も?」

「一応ね。レイスも疲れただろう? 援護射撃、助かったよ」


 実は旅の最中もこの力を使っていたのだが、こうして目に見える形で効力を実感したため、レイスも初めて気がついたようだ。

 そう考えると、何の疑いもなく俺に礼を述べたリュエの感応能力がいかに優れているか良く分かる。


「あの……おかえりなさいカイヴォンさん」

「よくぞご無事で……何のお役にも立てず、申し訳ありません」

「すまぬ……すまぬ……カイにばかりこんな役目を押し付けてしもうた……」


 何このお葬式ムード。

 シーン的に確かに俺はあそこで死んでもおかしくない状況だったけどさ?

 あれくらいどうって事ないんですよ本当。君たち重く捉えすぎです。

 ちょこっと自然災害を抑えて仲間の為に一人立ち向かっただけじゃないですか。

 別にそこで『俺の事なら心配するな! 必ず戻る、だから安心しろ!』なんてフラグを建てたわけでもなし。


「ごべんなざいガイヴォンざぁん! ぼぐはもう、ぜっだいにうだがいばぜんがらあああ」


 あ、でもそれっぽい事言ったわ。

 ヒロインで言う所の『私が戻ったら、アンタの好きなチキン南蛮作ってあげるから』とかなんとか。

 盛大な死亡フラグである。

 やだ、まさかの俺ヒロインルートなのこれ。


「まだ終わった訳じゃないから泣くのはまだ早い。エンディングまで泣くんじゃない」

「はい……」


 世代的にギリギリセーフだったようです。

 危ない危ない、ついね、つい。

 ネタを口にしないと死んでしまう病なんですよ。

 ともかく、一応勢いが収まりリュエが自由に魔導を使えるようになった事により、解決の糸口も見えている。

 幸い、ここには土属性の魔導使いであるケン爺もいる。

 いくらでもやりようはある。


「ケン爺、疲れている所悪いけど、協力してもらえないか? リュエも一緒に頼む」

「む、ワシか? 疲れは……あまり感じぬが、これもカイの力かの」

「私は構わないよ。ケン君も魔力の回復が済んでいるだろうし、いけるだろう?」

「ひょほ!? ケン君とな……しかし、お主は恐らくわしよりも年上なのじゃろうな……」


 そうなんです。年上です。

 ヘタしたらオネショタなんてレベルじゃない程の年齢差です。

 老人に向かってショタとはこれいかに。


「リュエがマグマを冷やしつつ、ケン爺に地面を掘り進んでもらいたい。あとは俺が崩れた岩盤を闇魔導で固定化して落ち着くまで放置」

「ず、随分大雑把じゃな……」

「けど、氷で冷やしてしまって大丈夫なのでしょうか? この辺りは温泉を売りにしているようですし、影響が出るのでは?」

「だから岩盤の固定化は俺が担当するんだけど、それでももし影響が出るならまぁ、諦めて貰おうか」


 町が滅ぶよりはマシでしょうよ。

 幸いこの町は温泉に頼りきっている訳じゃなく、他の産業も盛んなようだし。

 文句を言われたらその時はその時。全力で知らない振りをしよう。


 リュエ、ケン爺を連れて火山洞窟へと向かう。

 噴火の影響で入り口が塞がってしまっていたので、そこをケン爺の力で掘り進む。

 やはり外気に触れていない部分は相当な熱を溜め込んでいたので、今度はリュエの力で冷やし固めてさらに掘り進む。

 そして俺はソナーを使い、火口への道を割り出す。

 今回はこの三人以外は町へと戻り、状況の説明をしてもらっている。

 この役目は解放者として町に知れ渡っているナオ君が適任だ。

 そして彼らの両隣にはスティリアさんとレイス。

 彼女達なら混乱を収めることも可能だろうし、仮に住人が暴動を起こしてもすぐに鎮圧可能だろう。

 ……まぁ正直あのレベルの美女二人相手に怒りを振りかざす事が出来るか、俺には疑問だが。


「ケン爺、そろそろ空洞に出るみたいだ、気をつけてくれ」

「了解じゃ。リュエ殿、この先の温度はどうなっておるじゃろうか?」

「ふむ、ちょっと待っておくれ。……調べて正解だったよ。危なく三人揃って蒸される所だった」

「ケン爺ナイス」


 回復効果は持続中だが、熱いものは熱いのです。

 リュエが魔法を使い、溶岩石越しに空間を冷やした事を確認してから掘り進めると、俺が噴火の直前までいた火口の底付近へと出た。

 溶岩が噴出していた場所を見れば、まだボコボコと粘度の高い泡を吐き出しながら、力を蓄えているかのようにゆっくりと水域を上げていた。

 目で合図を送ると、リュエが再び剣を構え、氷の魔導を行使し一気に溶岩を冷やし固めていく。

 やりすぎに注意しながら、今度はケン爺が冷え固まった溶岩へと躊躇なく飛び降り、掘り進めていく。


「大丈夫かケン爺」

「問題ないようじゃ。ふむ、すさまじい速度で冷えていってるのう。ワシまで凍えそうじゃ」

「む、大丈夫かい? 少し緩めようか?」

「や、やめてくれい! 焼け死ぬよりはマシじゃ」


 リュエさんや、貴女が手を緩めたら溶岩がまた湧きだす事、忘れちゃいませんか?

 ケン爺が掘り進んでいくのを確認し、俺とリュエもその穴へと飛び込んだ。

 確かに寒いが、我慢出来ない程じゃない。

 そして掘り進む事数分、すでに上を見上げても火山洞窟の様子が分からないほど深く掘り進んだ所で、リュエが宣言した。


「どうやらこの先にマグマが溜まっているようだね。ここをカイくんとケン君が塞いでおしまいかな?」

「ふむ、そのようじゃな。ではワシが崩落した部分を塞ぐので、カイはその補強を頼むぞい」

「了解。たぶん一度しっかり塞がれば、後は勝手に溶岩が固まって塞いでくれる筈だ」


 いや詳しくは分からないんですけどね。

 しかし、一度噴火により溜まったガス等が抜けた筈なので、塞いでしまえばそうそう噴火の危険性はないと思うのだが。

 いっそのことマグマが湧いてくるプレートまで全て塞いでしまう事も考えたが、さすがにそこまでしてしまうと町に与える影響が大きくなってしまいそうだ。

 ヘタしたら温泉どころか湧き水すら枯れてしまいそうだし。


「ケン爺、どうだ?」

「今の所は順調じゃよ。どうやら中のマグマもだいぶ少なくなっているようじゃな……ダンジョン化の影響で無理やり噴火させられたのかもしれんのう」

「つまり、塞いでしまえばもう噴火の心配はないって事でいいのか?」

「おそらくのう。ただ、それこそ温泉の温度が下がってしまうかもしれぬが、どうしたものか」

「元々冷ましてから使っていたみたいだし、なんとかなるんじゃないか?」


 ほら、竹の上水道で冷やしていたみたいだし。

 その辺りは工夫次第でどうにかなるんじゃないかね?


「じゃあそろそろ俺も魔導で塞ぐとするかな」

「うむ、後は任せたぞ」


 ケン爺に魔導の痕跡を辿るように、闇を侵食させて行く。

 思いのほかすんなり魔力を通すことが出来たのは、俺がいつもリュエの魔導相手に侵食を行っている所為なのだろうか。

 ともあれ、あっさりと岩盤を塞ぐことに成功した俺達は、再びケン爺の魔導で上へと戻り、最後にリュエが魔導を解除したのを確認してその場を後にした。




「それで、町の混乱は収まったのかい?」

「はい。どうやら皆さん、地震の段階で避難準備を始めていたみたいだったんですけど、リュエさんの魔導で火山が覆われているのを見てどうするべきか迷っていたそうなんです」

「それで、町の代表がギルドへと向かい状況を説明した所、職員の方がギルド総長へと連絡を取る事になったそうで」

「オインクさんでしたか? 先日カイさんが連絡していたお陰で、すんなり話しが通ったそうですよ。彼女の指示でギルドの職員が町の住人の避難の先導を行ってくれたそうです」


 町へと戻ると、思いのほか混乱した様子も無く、皆町の外の畑付近へと避難していた。

 ナオ君達が状況を説明するまでもなく、住人達は年長者の指示に従い準備していたと言う。

 なるほど、長い間ここに住んでいるからこそ、か。

 しかも今回はオインクの指示もあったおかげでギルドとの連携もすんなりいったようだし。

 どうやら住人の皆さんも、地震が起きた段階で町の行く末をある程度予想し、覚悟していたとの事。

 しかし今回はほぼ被害がなかったお陰で、町の住人からは大いに感謝される事となった。

 ――主にリュエが。

 いいんだいいんだ、実際一番の功労者はリュエで間違いないし、見た目のインパクトも彼女の魔導が一番あったし仕方ないんだ。

 俺はひっそりと活躍して、町のみんなが無事だったらそれでいいんだ。


「カイさん、どうしたんですかそんな所で。地面に何か落ちているんですか?」

「いや、実際に『の』の字を書くとどんな気分になるのか試してた」

「ののじ……?」


 指紋が消えたような錯覚を感じただけでした。

 魔王、地面に指でのの字を書くの巻。


 その後、リュエとケン爺、そして魔王姿の俺の説明により、もう噴火の心配はないと伝えられ、今度こそこの一件は収束したのであった。

(´・ω・`)おかしいなぁ……しっかりご飯も食べてるのに……

(´・ω・`)ぶぅぶぅ最近お疲れ気味なので豚肉解禁するね?

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