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暇人、魔王の姿で異世界へ ~時々チートなぶらり旅~  作者: 藍敦
六章

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六十六話

(´・ω・`)そろそろタイトル変えようかしら……

 夕方、意外にも町の為に奔走していたと言うケン爺の帰還を合図に、明日の作戦会議を行う事になった。

 場所は初日に俺達が夕食を摂るために借りた離れの部屋だ。


「さて、食べ終えた所で早速明日の作戦会議を行いたいのですが、宜しいですか?」

「むぅ、そんな急かすでない。まだ宵の口、少しは晩酌に付き合ってくれても良いじゃろう……」

「いや、さすがに酔っ払って作戦会議って訳にもいかないだろ、我慢しろよケン爺。あれだ、無事に突破したら秘蔵の酒飲ませるから」


 仕方ない爺さんである。

 まぁ、今日は特別疲れている様子だし、間が悪いとしか言い様がない。

 どうやら日本酒が相当気に入ったようなので、俺も出来れば飲ませてやりたいとは思うんだがなぁ。


「じゃあ、カイヴォンさんからお願いします」

「分かった。じゃあ今日の探索のついてなんだが――」


 殆ど通路だけのような階層で、恐らく鍵を見つけないと突破出来ない場所だったと伝える。

 そしてその鍵を偶然早い段階で入手出来、さらにナオ君が隠された鍵穴を見つけた旨を話す。

 岩の話はしません、なんか呆れられそうだし。

 自分的には大手柄だとは思うんだけどね?


「では、その隠し扉の向こうが階層主の部屋と見て間違いないと?」

「少なくともあの階層にはもう他に部屋はないみたいだからね。ただ問題は――」

「うむ、どの程度の相手が出るか、じゃな」


 そう、それが問題だ。

 今でこそナオ君のレベルは47まで上がっている。能力的に見たらもっと上のレベルと言ってもいい。

 だが、それでも最下層の門番と比べると見劣りする。

 彼の最大の攻撃を当てることさえ出来れば、あのレベルの相手にも太刀打ち出来るだろう。

 しかし、実際問題まだ彼ではあの門番すら倒すことは出来ない。

 つまり、最初の門番ですらまだ苦戦するナオ君を、第二の関門である階層主と戦わせても大丈夫か? という問題だ。


「ナオ君、たぶんだけど今度の相手は相当強いと思うぞ」

「……ナオ様、正直申しますと、私も今回ばかりはかなり危険だと思います。この大陸のダンジョンのレベルを甘く見ていた私の落ち度です」

「最初の門番の段階で成体の龍じゃったからの……今回は空に近い場所じゃ、下手をすると翼龍が潜んでおるやもしれぬ」


 ただ、翼龍が鍵付きの扉の向こうで待ってるってのもおかしな話なんですけどね。

 まぁこれは言いっこなしって事で。

 そもそもダンジョン化って、自然の摂理や法則を無視したような物だし。

 それこそ、ダンジョン化って見えざる神か何かの影響で出来てるんじゃないんですかね?


「だけど僕はそれでも……強くなりたいんです。あのダンジョンを制覇して……」

「……たとえ俺の力を借りた勝利でも、勝って力を手に入れたい、そう言う事なのか?」


 当然、後ろめたさがあるのだろう。

 自分では明らかに倒せない敵を、自分より強い人間に手伝ってもらい倒し、その経験値を貰いたいと言っているのだから。

 それが悪いとは言わない。

 手っ取り早く能力だけを上げるのも一つの手だ。

 そしてそれが卑怯だと、恥ずべき行為だと自覚しているのなら、それも良いだろう。

 彼は努力家だ。少しくらい強くなる順番が逆になっても、強さに見合う努力をすると信じられる。

 もし彼に本気でその覚悟があるのなら、俺は彼の味方になろうじゃないか。


「よし、俺はナオ君の意思に従う。もし本気でヤバそうな奴が出てきたら、迷わず逃げるって約束してくれるなら付き合うよ」

「カイヴォン殿! それではナオ様が……本気なのですか?」

「ふむ……カイが良いと言うのならば、儂も本気で挑むとしようかの」


 だけどナオ君、君にもある程度自分の身の危険を賭けてもらうぞ?




 翌日、宿の前にて。

 今日はもしかしたら強敵が出るかもしれないとリュエとレイスに告げた為か、早朝にもかかわらず二人揃って見送りにきてくれた。

 初めは『念のため自分たちも同行しようか?』と聞かれたが、念には念を入れて町に残ってもらう事に。

 何せダンジョンの場所が場所だ、万が一があるかもしれない。

 リュエもそれを理解しているのか、今日はいつもより厳重な装備に身を包み、凛々しい表情を浮かべている。


「リュエ、レイス。非道い事を言うようだが、もしもの時は、わかってるな?」

「勿論だよ。私達は死ぬわけにはいかない。けれども、最善は尽くすつもりだよ」

「私も、微力ですがお手伝いします。幸い、私の再生術は広域魔導との相性も良いですから」

「くれぐれも無理はしないように頼む。レイスもリュエも、お互い無理をするようなら引っ張ってでも逃げてくれよ」


 ……なんで急に二人して引っ張り合いしてるんですかね?




 火山洞窟の前でナオ君達と合流する。

 同じ宿なのだし一緒に行っても良いのだが、彼らは俺達に気を使ってか、先に向かって待っている事が多い。

 だが今日に限っては、ナオ君の気持ちの問題も大きいだろう。

 何せ今日は本当に命を賭ける事になるかもしれないのだから。


「待たせたね。じゃあ、今日の先導はナオ君に任せようか」

「分かりました。では、出発しましょう」


 いつも以上に表情を引き締め、大きく一歩踏み出す彼の姿は、もはや異世界に来た元高校生とは呼べない程堂に入ったものだった。

 彼は毎日通いつめていただけはあり、もう完全に分岐路、そして罠の位置を把握している。

 現れる敵も、もはや彼の敵ではなく、全てを一刀のもとに斬り伏せる。


 思えばこのダンジョンは、門番に比べてその他の敵が弱すぎる。

 それはもしかしたら、調子に乗った人間を唐突な強敵で叩き潰すという、ある種の悪意が働いているのかもしれない。

 しかしナオ君はそれでも、毎日の鍛錬を怠らなかった。

 俺が居ない日もあの山で一人剣を振るい続け、ついには教えた技を自分の技へと昇華させるまで。

 そんな彼だからこそ、俺は……安心してこの力を使うことが出来る。


 念には念を入れ、本日のアビリティ構成はいつもと違う。


[簒奪者の証(闘)]

[生命力極限強化]

[龍神の加護]

[天空の覇者]

[HP+20%]

[HP+30%]

[アビリティ効果2倍]

[氷帝の加護]

[晶化]

[幸運]


 この構成で分かるように、俺は今日ナオ君に[サクリファイス]を発動させる。

 反動でHPが半減するのなら、増やせばいい。

 ダメージを肩代わりするのなら、回復すれば良い。

 彼の能力ならば、一撃で俺の全てのHPを持っていく程のダメージを受けるとは考えられない。

 説明文以上に複雑で考えさせられるこのアビリティは、なるほど俺には相応しい。


 結局の所、このアビリティの根底にあるのは『自分を犠牲にする覚悟』と『相手を信頼する事が出来るか』だ。

 俺は少なくとも、この短い期間で『ナオ君本人』の事は信頼しても良いと思っている。

 だからこそ、今回彼の意を汲んだ。

 だから、どうか俺に見せてくれ。

 見えざる神に選ばれた、いつか俺の敵となるかもしれない君の力を。




「ここがその隠し扉です、角の方に鍵穴があります」

「こんな所に……よく見つけられましたね」

「では、準備が良ければ解錠といこうかの」


 俺は自分のHPを確認する。

 職業が奪剣士から奪命騎士に進化した事により、俺のデフォルトのHPが9022から10055に増えている。

 そこに[HP+20%]と[HP+30%]さらに[アビリティ効果2倍]により20110に。

 さらに[生命力極限強化]により倍加し、40220ともう手が付けられない数字にまで増えている。

 その上で[サクリファイス]を発動し、HPを半減させる。

 これにより、いつものHPとほとんど数字を変えずにナオ君に加護を与える事が出来るという寸法だ。

 そして更に、戦闘中の行動速度が2.5倍になり、MP回復速度にも反映される[簒奪者の証(闘)]。

 もしやと思い以前検証した所、しっかりとHP自然回復速度にも適用されてくれた。

 これにより、0.5秒毎に最大HPの3%の自動回復得る事になる。


 すみません、さっき自分を犠牲にする覚悟とか言いましたけど、やっぱりやれる事は全部やって万全を尽くす方が良いですよね。

 チキンと言うなかれ、これは転ばぬ先の杖と言う奴です。


「ナオ君、行く前に君に補助魔法を掛けておくよ」

「なんと! カイは法術の類も使えるのか!」

「他者に掛けられるとなると、光属性でしょうか……さすがエンドレシアの最強の戦士ですね……」


 え、何その称号。初耳なんだけど。


「ありがとうございます! これはどういう効果があるんでしょうか……?」

「これは能力が上がる魔法じゃなくてね。君の勇気に呼応して、一度だけ君を助けるおまじない程度の物だよ。まぁお守り程度に思ってくれていい」

「勇気に……わかりました、頑張ります!」


 本当の効果は勿論教えない。

 慢心、油断、そして恐れに繋がる可能性もあるのだから。

 彼はきっと、自分よりも他の誰かが傷付く事に恐怖を抱く。

 それくらい彼は優しく、戦いに本来向かない気質なのだろうから。


 大きな物がこすれる鈍い音が響き渡り、目の前の岩壁が横にズレていく。

 その隙間から漏れ出る光は、恐らく日光による物。

 ソナーでは分からなかったが、どうやら広間の天井は吹き抜けになっているようだった。

 そしてそれは同時に、ケン爺の予想が限りなく正解に近いと言う事を、俺達に知らしめる事になるのであった。

(´・ω・`)友人に「この作品のタイトルって料理名じゃなくて材料の名前書いてるみたいだな」と言われました。

(´・ω・`)言い得て妙だなぁ

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