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暇人、魔王の姿で異世界へ ~時々チートなぶらり旅~  作者: 藍敦
六章

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六十五話

(´・ω・`)お ま た せ

 目の前に転がる半分に割れた大岩。

 不思議と綺麗に割れた岩の断面をよく観察すると、キラリと光る何かがあった。

 もしかしたら綺麗な鉱石か何かと思い手を伸ばすと、どうやらそれは石ではなく金属。

 奇妙な装飾の施された、ボールペン程の大きさの緋色の金属の棒だった。


「カイヴォンさん大丈夫ですか!?」

「問題なし。ほら、何か出てきたぞ」


 慌てて戻ってきたナオ君に金属の棒を見せると、どうやら彼の[鑑定]が発動したのか、じっと見つめている。

 俺の場合は一度アイテムボックスに入れ、自分の物にしないと詳しい事が分からないのだが、彼はそうではないのか。

 ううむ、少し羨ましい。

 どう羨ましいのかと問われれば、古物商的な意味で、とだけ答えておきます。

 古道具屋とか一緒に巡ろうか、ナオ君。


「これ、どこかの鍵みたいですよ。これが岩の中にあったって事は……」

「下手したらこの岩が火口に落ちて詰んでた可能性が」


 第三の選択肢を選んで正解だったって訳だ。

 仮に火口側に落ちていたら、最下層に戻って別ルートで火口を目指し、鍵を回収して戻ってくるという遠回りをするハメになる。

 そんな面倒くさい展開、ある訳が――


「大いにあり得る展開でした」


 RPGで無理やりショートカットした感。

 良いんだよ、ゲームだって多少のバグがあった方が面白いだろ!

 なんて言い訳で自分を納得させ、先へと進むのであった。




 螺旋坂を登りきり、火口から離れる道を進んで行くと、マップ上では大きな広間の手前に位置する場所までやって来た。

 しかし、目の前にあるのは岩壁。つまり行き止まりだ。

 もう一度マップを確認してみても、やはり広間はこの先、壁の向こう側だ。

 どうした物かと考えていると、ナオ君が壁を調べ始めた。


 ペタペタと岩肌を触り、近くの岩の裏や、壁の角を調べたりと、さながら地質学者のような動きをしている。

 そういえば彼のスキルに[採掘]なんて物があったし、日本にいた頃はこういう事をするのが好きだったのかもしれない。

 あれですよ、ボーリング的な。

 誰だったかな、ボウリングとボーリングを間違えてた奴。

『ボーリングに連れてってやるよ』と言われボウリング場に連れて行って貰えると思ったら、山の中に連れて行かれたとかなんとか。


「あった! カイヴォンさん、こっちに来てください」

「お、温泉でも掘り当てたか?」


 ボーリング的な意味で。


「違いますよ、これです! ほら、さっきの棒と同じ材質だと思うんですけど」


 彼が指差す場所には、先ほどの棒と同じく緋色の金属で出来たプレートが壁に埋め込まれていた。

 その中央には小さな穴が空いており、ナニかを入れて下さいと言わんばかりの様子だった。


「カイヴォンさん、早く入れて下さい」

「入れるって何処にナニを?」

「そんなの、この穴にカイヴォンさんの棒を入れるに決まってるじゃないですか」


 ……狙っていたとはいえ、これは非道い。

 ダメだ俺、早く病院に行かないと。


 とはいえ、さすがに今すぐこれを差し込む訳にもいかないだろう。

 恐らくこの先が件の階層主の現れるボスフィールド的な場所だろうし。

 だったら、一度戻ってスティリアさんとケン爺と相談するべきだ。


 俺はソナーの反応や広間の説明をし、ナオ君に一度戻る事を勧める。

 彼もそれに従い、一度戻ることを了承してくれた。


 予定より早く戻ってきたので、スティリアさんが洞窟の外で待っているという事もなく、一先ず宿に戻る事にした。

 そういえば、うちの娘さん二人は何をしているのだろうか? 最近ではもう火山の資源を取り尽くす勢いで納品を行い、既に長期契約を打ち切られたと言っていたが。

 そりゃあ温泉や空気に溶け出した成分までレイスが再生術で個体化して納品するんだ、供給過多になるのは仕方ない。

 まぁおかげでリュエは働かなくて良いと喜んでいたが。


「そうだカイヴォンさん。今日も早く終わりましたし、また一緒にごはん食べましょうよ」

「いいね、もうすぐ昼だし丁度良い」

「じゃあ今日はえーと……あ、この間作って貰った唐揚げ、あれに似た料理を出してくれるお店があるんです、そこに行きましょう!」


 彼が案内してくれたのは、蕎麦屋だった。

 そば粉も挽きたて、麺も打ちたて、さらに茹でたてと、本当の意味の三タテ蕎麦。

 そして彼の言う唐揚げに似た物は、天ぷら。その中でも鶏肉を天ぷらにした物だった。

 よく『手打ち蕎麦』と謳い文句を掲げるお店を見かけるが、本当に挽きたての粉を使う店はそう多くない。

 さらに、蕎麦だけでなく麺汁にも相当力を入れているようだった。

 ああ、なんと官能的な喉越し。


「美味しいですね、カイヴォンさん」

「そうだね。いいお店を見つけたもんだ」

「道を歩いていたら、揚げ物のいい匂いがして……」


 唐揚げ好きなら反応するのは仕方ない。

 俺も久しく食べていなかった、本物の蕎麦を堪能出来たので満足満足。

 しかも、しっかり山菜の天ぷらを出してくれるからね、ここ。


 食事をしながら談笑していると、昼時なのもあってか、徐々に人が増え始めてきた。

 そしてその中に、珍しい取り合わせの三人組が。


「すみません、私までご一緒してしまい」

「いえ、構いませんよ。うちの人がお世話になっているのです、親睦を深めるのには十分な理由ですよ」

「そうだよリアちゃん。同じ宿なんだし、今日は休日なんだろう?」


 リアちゃんとはスティリアさんの事だろう。

 そう愛称を付けるのは勿論我が家のエルフさん、リュエ。

 そしてさり気なく『うちの人』とドキっとさせる事を言うレイスお姉さん。

 まさかの組み合わせの登場に、どんな会話を繰り広げるのか楽しみな事もあり、思わず頭を低くしてしまう。


「どうしたんですかカイヴォンさん」

「しー、静かに。珍しい組み合わせだからどんな事話すのか気になって」


 視線で彼女たちを指し示すと、彼も納得したのか、大人しく頭を低くしてくれる。

 都合の良い事に、彼女たちは俺達の座るボックス席のすぐ後ろの席に着いたようだ。

 俗に言うガールズトークでも繰り広げてくれるのかとワクワクしつつも、後ろめたさと見つかった場合の恐怖にドキドキし、軽く興奮してしまう。

 見れば、初心そうな彼もまた、目を泳がせながら聞き耳を立てていた。


「どれにしましょうか? ここはパスタの様な麺料理を出すお店だそうですが」

「むむ、でもライスも出してくれるみたいだよ。テンドンというのが美味しそうだ」

「これは……先日カイヴォン殿が作った唐揚げに似ているようですね。私はこのテンプラの乗ったソバにします」


 そういえばこのメニューは写真付きだったな。

 これも魔導具なのか、それとも普通のカメラも存在するのか。

 そういや、ゲーム時代のスクリーンショットって確かメニューから見ることが出来た筈だが、どうなってるんだろう?


「では私は山菜ソバにしましょうか」

「よし、店員さーん、注文お願いしまーす」


 どうやら注文を決めたようだ。

 とりあえず、俺達も自分の分を食べてしまおうか。




「カイくんの様子はどうだい? ちゃんと働いているのかな?」

「最近はナオ様と二人で仕事をする事が多いのですが、カイヴォン殿の働きは眼を見張る物ばかりです」

「それは何よりです。カイさんも、スティリアさんやナオ君、マッケンジーさんの事を褒めていらっしゃいましたよ」


 なんだろう、凄くムズムズするというか、気恥ずかしいと言うか。

 なんとも言えないこの気持ちを感じているのは、俺だけではないだろう。

 見ればナオ君もまた、いつ自分の話題が出てくるのかと戦々恐々としている。

 家庭訪問中の子供のようで微笑ましい。


「それにしても、少し話したことがあるけどナオ君は可愛いね、エンドレシアの……召喚者とは大違いだよ」

「お二人はエンドレシアの解放者と会った事があるのですか?」

「いえ、私はこの大陸で合流した身ですので。ですが、ナオ君が良い子だとは私も思います」


 ほら見たことか、その本人は顔を真っ赤にしている。

 男に可愛い可愛いと言うのは失礼にあたるかもしれないが、正直今のナオ君は俺の目から見ても可愛い。

 君生まれる性別間違えたんじゃないのかね?


「しかしどうしたもんか。もう食べ終わったのに出られないな」

「追加の注文も出来ませんしね……」


 なんとも言えない空気の中、彼女たちが食べ終わり、デザートを求めて他の店へと向かうまで二人で息を潜めていたのであった。






 ようやく宿へと戻り、ロビーで装備の点検等をしていると、丁度リュエ達三人が戻ってきた。

 俺は今日の探索で階層主の住処らしき場所を見つけたと報告し、夜にケン爺を含めて作戦会議をする事を約束し部屋へと戻った。


「今日は早かったんだねカイくん。私達は今日はリアちゃんとご飯を食べに行ったんだ」

「最近では私もリュエも仕事が減ってきたので、スティリアさんと訓練をしたりもしているんですよ」

「へぇ。彼女はどうだい? 結構守りが硬いと思うんだけど」


 やはり真面目な性分なのだろう。

 明らかな強者であるリュエへと手合わせを願う彼女の姿を、ありありと思い浮かべる事が出来る。

 彼女達はギルドで俺の事を調べた結果、同行者であるリュエとレイスもまた、自分たち以上の相手だと知っている。

 多少レイスの強さは俺とリュエに見劣りするも、その強さは今よりも魔物が活発だったこの大陸でAランクを取得する程。

 軽く組手をした事しかないが、俺自身彼女の強さはよく知っているつもりだ。


「私とは相性の問題があるからね、同じ持久戦に持ち込んだらどうしても私が有利になってしまうよ。剣術も守りに特化しているし、魔法系で攻められるとかなり厳しいんじゃないかな?」

「逆に私は彼女のようなタイプは苦手ですね。弓では大規模な技を使わないと中々ダメージを通すことが出来ませんから、訓練で彼女に勝つのは苦労します」

「へぇ、二人共戦ったのか。それとリュエは少し大人げない。どうせ冷気で体温を奪ったりしたんだろう?」

「く、訓練でそんな事はしないさ! ただちょっと足を凍らせて地面にくっつけてから回り込んだだけだよ」


 十分えげつないです。

(´・ω・`)卑怯者め! 正面から堂々と戦え!



(´;ω(.#)すみません調子のりました

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