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暇人、魔王の姿で異世界へ ~時々チートなぶらり旅~  作者: 藍敦
六章

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六十四話

(´゜ω。`)更新おくれてごめんなしあ

 二日間の休日が終わり、本日もナオ君と二人で火山洞窟の入り口へとやって来た。

 昨日はケン爺と二人だったらしく、第五階層を突破し、今日は俺と二人で第六階層の探索だ。

 曰く、そろそろ第二の難関である『階層主』が現れてもおかしくないとの事で、この辺りがこのダンジョンの折り返し地点と思って良いそうだ。


 ふと、彼のステータスを覗いてみる。

 彼だけは毎日相手を変えてダンジョンアタックを繰り返していたので、その成長ぶりは目を見張る物がある。



【Name】  藍堂ランドウ 那央ナオ

【種族】  異世界人

【職業】  軽戦士 解放者

【レベル】 47  ←New

【称号】  ※※※※※の使徒

      お姉さんキラー

      光剣の担い手 ←New


【スキル】 裁縫 採掘 鑑定 メニュー画面表示 剣術 ←New



 初日から比べて、なんと40レベルアップである。

 パワーレベリングに近い物はあるが、それでもこの上がり方は異常だ。

 やはり異世界人というだけで、何か特別な補正でもかかっているのだろう。

 ましてや、ステータスの伸び方は俺達元プレイヤーとは段違い。

 いやはや末恐ろしい。


 ただ、正直俺も人のことが言えないんですよね。



【Name】  カイヴォン

【種族】  人間

【職業】  奪命騎士 ←New 拳闘士

【レベル】 399

【称号】  救済と殺戮の魔王 ←New

      龍帝屠りし者

      神の敵対者 ←New


【スキル】 闇魔導 氷魔法 炎魔法

      剣術 長剣術 大剣術 簒奪

      格闘術 サクリファイス ←New



 習得時『固有アビリティ』とメニューに出ていたが、個人のスキルとしてカウントされている『サクリファイス』

 かなり便利な能力のようだが、考えようによっては俺のウィークポイントにもなりうる諸刃の剣だ。


 仮に、赤ん坊のような何の抵抗力もない存在に加護を与え、その相手が即死級の攻撃を食らったとする。

 すると、俺の様な高いステータスで守られている訳ではないので、当然膨大なダメージが入り、それが俺へとダイレクトに伝わる。

 その結果、俺のHPは一瞬で0になり、文字通り即死と言う訳だ。

 故に、迂闊に使う事が出来ない。


 だが、今回俺が一番驚いた事は、剣の影響で変化していた俺の職業【奪剣士】が、もはや剣無しでも【奪命騎士】に固定化された事だ。

 元々職業にはキャラクターレベルとは別にレベルが設定されており、例えばリュエなら『聖騎士レベル50』の『魔導師レベル50』という状態。

 職業が育てば、当然それに応じた能力補正がキャラクターのステータスにかかる訳だが、俺の【奪剣士】だけは例外だった。


 レベルが設定されていない固有職で、その補正値はせいぜい【剣士レベル25】程度。

 当然能力も低く設定されており、武器の能力である『簒奪』以外に職業固有のスキルも存在しない。

 ただし既に他の剣士系職業を育てていれば、その技の一部を使えるという事だったので、そこまで苦労はしなかったのだが。


 で、本題に入るが、この【奪命騎士】にはレベルが設定されている。

 当然変化したばかりなのでレベル1だが、それでも【奪剣士】時代よりも高い補正を得ている。

 これが育てば、もしかしたら固有の技や、さらなる補正がかかるかもしれないと思うと、もはや笑うしかない。

 最初に覚えた『サクリファイス』から言って、恐らくサポート型の技を今後も覚えていくのではと予想するが、どうなる事やら。



 ステータスについて考察していると、ナオ君が今日の探索について話し始めた。

 いかんいかん、一応引率という名目で付いていくのだからしっかりしないと。


「スティリアからこの階層でもし階層主が現れても、戦わないで引き返すように言われました。後日皆で挑んで、それで一旦この方式での修行は終了だそうです」

「という事は、いよいよ本腰を入れてダンジョン制覇を目指す訳か」

「はい。なんだかんだでもう半月以上経っていますしね。カイヴォンさんとの契約が切れる前に決着をつけたいんだと思います」

「まぁ多少延長しても問題ないんだけどね」



 一応前金としてそれなりの料金を頂いているので、多少の融通は利かせるつもりですぜ。

 ギルドから俺の立場を聞いた彼らが、契約金をさらに上乗せしてくれたんですよ。


 実際、白銀持ちと契約しようとしたら、一般人の一年分の収入なんて吹き飛んでしまうくらいのお金がかかるそうですよ。

 尚、俺相手の場合だったらオインク曰く、本来は国が総出で歓迎して爵位を与え、さらに膨大な月謝を与えるレベルだとか。

 たぶん単独で国落とせるもんね、せやね。


 勿論彼らにそんな支払い能力はないので、個人契約の相場の2倍程度で良いと言ってあります。

 ただ、もしセカンダリア大陸を訪れる事があったら、是非一度彼らの王国に来てもらいたいとお願いされました。


 あれですか、王宮でご馳走に囲まれながら、美女が横から大きな葉っぱであおいでくれたりするんですか?

 勝手にセカンダリアの王国をアラビアンな感じでイメージしております。



 洞窟内を進み、すっかり罠の配置や敵の出現傾向を覚えたナオ君が次々に走破していく。

 俺はもっぱらソナーを使い、イレギュラーがないか確認するという手抜きっぷりです。

 そんな役割分担にもかかわらず、初日とは雲泥の差の進行速度で第五階層まで辿り着いた。


 先日までここがナオ君の主なレベリングポイントだっただけあり、魔物の数が随分と少ない。

 やはり苦戦などする筈もなく、俺が出るまでもなくナオ君の片手剣二刀流の連撃で次々に倒されていく。

 彼は元々俊敏だったが、レベル補正のお陰で今では空を飛ぶケイブバッドを苦もなく追い越し、壁を蹴って天井付近にまで斬撃を届かせるまでになっている。

 一体どこの忍者ですか君。


「凄いなナオ君。随分と動けるようになったじゃないか」

「はい! 身体が軽くって、ちょっとジャンプするだけでも――こんな感じです」


 【速報】垂直跳びで二メートルも跳躍する男の子がいるらしい【忍者】


 はい、ナオ君です。

 ちょっと俺も真似してみようと跳ねてみる。


「よっと」

「わ、僕の方が少し高いですね! ふふ、やっと一つ勝てました」

「……やるじゃないか」


 ……後でちょっと垂直跳びの特訓でもしようか。

 いいんだいいんだ、きっと魔王ルックならもっと跳べるからいいんだ。

 そういえば、羽根で空を滑空した事もあったな。また今度飛んでみようか。


 そしてついにやって参りました初見エリア第六階層。

 ここは火口に面している、大きな螺旋状の階層だ。

 その緩やかな坂道を進んで行くと、途中でまた火口から逸れ、そこに大きな空間があるようだ。

 ソナーでわかったのはそこまでで、内部にどんな魔物がいるかまでは分からなかった。


「うわ……こうして見ると随分高い所まできていたんですね」

「下で普通にマグマが沸騰してるな。最下層のどこかからあそこに行けるのかね」

「どうなんでしょう? もしかしたら毒ガスが出る分岐から行けたりするのかな……」


 となると、リュエやレイスはあのマグマの近くまで行った事があるのかもしれないな。


 螺旋の道を進んでいると、火口側からケイブバッドが飛来してきた。

 この階層は外部から飛行型の魔物が襲ってくるというのが常で、道そのものは緩やかな上り坂で疲れる以外、特にかわった所がない。

 途中、何度か分岐もあったのだが、その先は落とし穴だったり火口へと向かう崖だったりと、意味のある物には思えなかった。


「なんだか拍子抜けですね、さっきからケイブバッドしか出てきませんし」

「他に飛行型の魔物もまだ見ていないしね。案外ここって階層主の為だけの階層なのかもしれないな」


 ただね、この長い螺旋坂と分岐の落とし穴を見ていると、ちょっと思う所があるんですよ。

 ほら、鞭を持ったダンディなおじさんがね、大冒険を繰り広げるアレ。

 冒険って言葉を聞くと、真っ先にあのシーンを思い浮かべるんですよね。


「……カイヴォンさん、何か音が聞こえませんか?」

「大きな岩が前方から転がってくる音以外はとくに聞こえないな」

「ええ!?」


 お約束ですな。


 火口を挟んで反対側の通路を、大きな岩が転がってくるのが見える。

 これは全力で引き返して途中の分岐でやり過ごすか、もしくは岩がその分岐へと転がって行き助かるかの二択だ。

 だがしかし、ここはあえての第三の選択肢で行こうじゃないか。


「よーし、じゃあちょっと岩を止められるか試してみるから、ナオ君は走る準備してな」

「えええ!? 無茶ですよ! こう言うのは僕の世界では逃げる物だって相場は決まってるんです!」

「ここは俺に任せて先に逃げるんだ! なぁに心配はいらん、俺は約束したんだ、この任務が終わったらあの二人と田舎で……」

「うわああ! ダメです、それ以上喋っちゃダメです!」


 やっぱりこの手のネタが通じると嬉しい。

 セオリーを破り、盛大にフラグをたてる。

 大丈夫、何気に俺のテンプレ予想ってことごとく外れてるから。

 なんとかなるなんとかなる。


「そろそろ本気で逃げてくれないかナオ君。ちょっと本気であの岩壊すから」

「……出来るんですか?」

「たぶんいける。破片が飛ぶからちょっと離れてて」



 大丈夫、どこぞの金庫の扉程硬いなんて事もないだろうし、ましてや龍神の角より硬いなんて事もないだろう。

 さてさて、何で壊そうか。


「そろそろ拳闘士の技も試そうかね」


 岩を壊すのはいつだって拳って相場は決まってるんですよ。


 段々と岩の転がる音が大きくなり、振動で道の小石が跳ね始める。

 ゆるいカーブを描く道の先から、砂埃が見え始め、いよいよその時が来たと身構える。


 剣そのものは背負っているので、アビリティの効果もしっかり反映されている。

 それでも、魔王ルック封印の上剣を使わない今の状態で、どこまでの破壊力を出せるのか。

 それを試すのにも丁度いいだろう。


「来たな」


 それは直径4メートルはありそうな巨大な岩だった。

 タイミングを図りながら、両足を広げ、腰を少し下げてどっしりと構える。

 左腕を引き、右腕を伸ばしその時を待つ。

 あ、俺両利きです。


 転がる岩が目の前まで迫る。

 その瞬間を狙い、足を踏ん張り、腰を捻り、右腕を強く引きながら左腕を捻りながら前へと突き出す。

 俗にいう正拳突き。ゲーム時代の技名も『正拳突き』だ。


 握りこんだ拳の人差し指と中指がしっかりと岩にぶつかり、その威力を岩へと伝える。

 肩にガツンと衝撃が加わり、肩甲骨から背骨を伝って踏みしめた両足に重さを感じつつも、身体は下がらず、岩の動きが止まる。


『正拳突き』は拳闘士が最初に覚える技であり、熟練度が細かく設定されている技だ。

 使う程に威力があがり、その威力は熟練度がカンストするその瞬間まで上がり続ける。

 勿論、貴重な高火力技に化けるので毎日使いましたとも。

 それに初期技だけあり消費MPも少なく、非常にコストパフォーマンスが良い。


「毎日使ってよかった正拳突き」


 結果、岩は綺麗に真っ二つに割れましたとさ。

(´;ω;`)モニ○スは許さない、絶対にだ

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