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暇人、魔王の姿で異世界へ ~時々チートなぶらり旅~  作者: 藍敦
六章

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五十八話

(´・ω・`)ビッグなピーチがリバーを DON'T BLACK CALL

 3人で町を歩いていると、思いのほか冒険者の姿を見かける機会が多かった。

 恐らくナオ君が俺を選んだ以上、酒場で待機する必要もなくなったので、観光と洒落こんでいるのだろう。

 なにせここは温泉も豊富で、更に過去の解放者所縁の町でもあるのだから。


 ナオ君一行はこの大陸の最南端からここまで北上してきたのだし、恐らく集まった冒険者達は彼らの旅の噂を聞いて集まってきたという所なのかね?


 いや、むしろ彼らの目的が最初からギルドに知らされていた為、どこからか漏れたと考えるのが妥当か。


 しかしそうなると、ギルドの総長であるオインクの耳にも入っていたと思うんだが。

 俺に知らせなかったのはわざとなのか、それともど忘れしたのか。

 ふむ、そういえば――


「レイス、ちょっと聞きたいんだけど」

「はい、どうかしましたか?」


 水路を追いかけるように進んでいくリュエに付き従っていたレイスが、こちらへと振り返り立ち止まる。


「今のギルドの総長を知っているか?」

「ええ、知っていますよ。直接お会いしたことはありませんが、街の会合などでよく議題に上がっていました」

「やっぱり前領主と繋がりがある人間だから警戒していたのかい?」

「そうですね……彼女はこの大陸の議会のメンバーでもありますし、直接前領主と顔を合わせる機会もある方ですので……」


 ふむ、じゃあとりあえずその不安だけでも取り除いておくとしよう。


「良い知らせだ。総長は俺と同じ"神隷記"の人間で、レイスとも一緒にいた相手だ。きっと味方になってくれるから安心していいよ」

「え……本当なんですか? 私を知る人が、他にもまだ……?」

「リュエの事も、俺の事も、勿論レイスの事もよく知ってる。レイスの弓だって、オインクと協力して手に入れた物なんだぞ?」

「そう、だったんですか……それなのに私は、一度も顔を出さずに……」

「今度会わせるから気にしなさんな。ドングリチラつかせれば海なんてひとっ飛びで会いにくるさ」

「ふふ、なんですかそれ」


 そうだ、一度俺も連絡を入れたほうが良いだろう。

 今知った情報によると、オインクの権力は前領主にも引けをとらないのだし、協力するに越したことはない。

 コネは最大限に使う。これ大事。


「で、リュエはどこに行ったんだ」

「……そのまま水の流れを追いかけていってしまったんでしょうか?」


 目を離すとすぐにこれです。

 じゃあ俺も大きな桃の様に水の流れに身をまかせるとしましょうか。



 町中の水路が合流し、徐々に大きな流れとなり町の外へと流れていく。

 どうやら町の外には川があるらしく、そこへ流れる水と、田んぼの用水路へとシフトチェンジする水とで分かれているようだ。

 さすがに川にそって行くとは思えないし、田んぼへと向かい進んでゆく。


 本日も晴天なり。

 田んぼには青空と一緒に白い雲が映り込み、明るい緑の苗がポツポツと良いアクセントになっている。

 そんな田園風景を望みながら、のんびりと歩いて行く。


「のどかですね……こうしてカイさんと二人で過ごすことが出来るなんて、今でも信じられないくらいです」

「そうだなぁ……俺もこうして美人と田んぼを眺めて歩く未来があるなんて、信じられないよ」


 余りに元いた世界に似た風景なので、そんな事を思ってしまう。

 田んぼなんてどこにでもある、特別見るものでもない、何の感傷もわかない物だと思っていたのに。


「私は、美人ですか?」

「わかりきったことを。レイス程の人になんて、そうそうお目にかかれないだろ」

「ふふ、ありがとうございます。……なんだかリュエに申し訳なく思えてきました」

「あ、そういえばそうだった。一体どこまで行ったんだ」


 すでに農作業をする人の姿も見えなくなり、田んぼではなく畑が見え始めている。

 とそこへ、用水路が畑の中へと向かっているの見つけ、それを追いかけてみることに。

 そしてその先に、我らが大きな桃、おばあさんに拾われること無く最後まで流れ着いたリュエの姿が。


「ほほー、へばあんだの友達が解放者様と一緒にいるってが!」

「うん、そうなんだ。今日はせっかくの休みだから一緒に歩いていたんだけど、迷子になっちゃったみたいなんだ」

「そんたごどあるってが! 解放者さんに選ばれる人が迷子だってが?」

「本当本当、嘘じゃないよ? たぶん今頃私を探して泣いているんじゃないかな?」


 聞き捨てならない事を話すリュエと、農家の皆さんが溜池の側で休憩していた。

 ゴザのような敷物に座り、おにぎりを頬張る一同の中に、純白のエルフが混ざる。

 なんという違和感、なんという場違い。全力でツッコミたい。

 足早に近寄り、そんな事をのたまう場違いエルフの脳天にチョップを叩き込む。


「迷子になったのはそっちだろう。勝手に一人で進むんじゃない」

「ずっと水路を辿っていったんですか? もう、ちゃんと周りを見ないと駄目じゃない」

「イタタ……だって気がついたら二人共いなかったんだもん。だったら水路の果てで待っていたら、きっと私の行動を推測して迎えに来てくれると思ったんだよ」

「水路を逆に辿ったら俺達と合流出来たとは思わなかったのか」

「……その発想はなかった」


 賢いんだか賢くないんだか。

 だが、おかげでとてもいい場所へと辿り着いた。

 綺麗な澄んだ池と、緑の生い茂る草原。

 山から近い為、程よく木に囲まれているそんな場所。

 まるで森の中の湖畔のようだ。


 俺もお弁当を持ってくればよかったか? いや、今ここで何か作ろうか。

 幸いにして、ここには農家の皆さんしかいないのだし、多少道具が飛び出してきても収納の魔導具だと言えばごまかすことが出来るだろう。


 じゃあ、また久々にやるとしようか。





「はい、と言うわけで久々にやって参りました、ぼんぼんクッキングのお時間です」

「ぼんぼん……? お料理をするんですか? でしたら私が――」

「レイス、カイくんはあれでも料理が得意なんだよ。今まではレイスが作ってくれていたけど、たまにはカイくんに作ってもらいなよ」

「そういう事なので、お二人は農家の皆さんと一緒にくつろいでいて下さい」



 さて、本日の食材はコチラ。


『リュエが素手で持ってきたっきり倉庫に眠っていたイカ』

 勿論鮮度は据え置きなので安心して下さい。

 今もいやらしく蠢く触手が姫騎士やら女騎士やらスティリアさんを求めております。


 そしてもう一つが農家の皆さんから分けていただいた『春キャベツ』

 淡い色の、葉の密度のゆるいやわらかな感触でございます。


 この二つをメインにして、残りは久々登場リュエのバッグから取り出した食材を使う事にしましょう。


「おお!? こんなどごさイガ出てきたは!(こんな所でイカが出てきた)」

「ほー、冒険者さんの道具はすげーごど!(冒険者の道具は凄いな)」


 多少驚かれはしたものの、怪しまれてはいないようだし、このまま続けよう。


「今日は手伝いはいらないのかい?」

「大丈夫、問題ない」


 幸いここには水も豊富にあるしな。





「おー、やっぱ春キャベツは柔らかいな」


 本日のメニューは、イカと春キャベツのアーリオオーリオです。

 俗にいうペペロンチーノだ。

 本当ならイカは塩辛にしてから使うのがベストだが、今回は肝とイカの切り身を塩であえただけだ。


 パスタ、素晴らしいよね。

 一人暮らしの強い味方であり、美味しく作れるとなんだか自分がかっこ良くなったように錯覚してくるオサレメニュー。

 尚そんなオサレなメニューを振る舞うべき相手はいなかった模様。

『盛り付け? そんなんフライパンのまま食べりゃいいんだよ』という状態でした。


 ニンニクと鷹の爪の香りを移したオリーブオイルで、イカの肝和えを炒めていく。

 香りが出てきたらザク切りにした春キャベツを入れ、茹で上がったパスタを投入。

 塩気はパスタのゆで汁で調整しましょう。


 なんという手抜き、そして漢の料理。

 最後に刻んだパセリと黒コショウを粗挽きにしてふりかければ完成である。

 尚、器は漆黒、毎度おなじみ闇魔術でございます。

 フライパンよりはマシだ。


「ほらね、あっというまに完成した」

「……長い間私も料理をしてきたつもりですが、それでも手際の良さに驚きました」

「まぁこれくらいなら簡単だよ」


 と言う訳で、農家の皆さんにも配り終えたので早速頂くとしようじゃないか。


「ほほー、キャベツとイカなんて初めでだ」

「んめごど! 兄さんじょんずだな」

「美味しいよカイくん、皆にも好評みたいだ」


 いつの間にかリュエが方言を理解している事に驚きを感じつつも、美味しいと食べてもらえたことが素直にうれしい。

 やっぱりこれだよ。食べた人間のダイレクトな感情を側で受けるのが何よりもの生きがい、やりがいだ。

 俺も止まっていた手を動かし、パスタを頬張る。


 イカと肝の濃厚な旨味が、ニンニクと炒めることにより引き立ち、尚且つ余計な臭いが消えている。

 その濃厚な旨味を含んだ塩分と、やわらかく甘いキャベツがベストマッチだ。

 春だからこそ食べられる逸品である。


 レイスもどうやら気に入ってくれたらしく、彼女自身も長年料理をしてきた事もあり、自分と共通の話題が出来たと喜んでいる。

 それは俺だって嬉しい。この手の話を語り合える友人なんて殆どいなかったし。

 まぁ食べ歩きなら昔よく“久司”や“一樹”としていたのだが。

 ううむ、懐かしい。アイツらは今何をしているのやら。

 そんな事を考えながら、ぼんやり今の仲間の姿を見つめる。



 なぁ、俺の料理を美味しいって食べてくれる仲間が、お前たち以外にも出来たぜ?


 最後に一緒に飲んだあの日から、俺にとっては一年とちょっと。

 けれどもお前たちにとっちゃ何十年も前の話なんだよな。

 少しばかり恐いな、お前達と会うのが。





「で、カイくんとの散歩は楽しめたかい?」

「まさか、ワザと一人で?」

「魔車で『のんびり散歩』したいって言っていただろう?」

「それは、リュエも一緒にという意味です。変に気を使わなくてもいいんですよ?」

「ふふ、お姉ちゃんの優しさだよ」

「まったくもう……ありがとう、姉さん」

(´・ω・`)そんな作者が好きなパスタはブロッコリーのペペロンチーノ


(´・ω・`)あとこれ貼っておきますね

https://translate.google.co.jp/?hl=ja#en/ja/DON%27T%20BLACK%20CALL

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