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暇人、魔王の姿で異世界へ ~時々チートなぶらり旅~  作者: 藍敦
六章

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五十三話

(´・ω・`)遅れるから、遅れるから(しれ

 大広間手前、再び剣を手にし地面へと突き刺す。

 マップが更新され、さらに詳細な内部の様子が映し出される。


「敵の数は6匹、小型。それと間欠泉が壁の近くで噴き出しているみたいだ、注意してくれ」

「敵の配置は分かりませんか?」

「天井に張り付いているのが3匹、残りは広間の中央に固まっていますね」

「分かりました。では広間へと突入と共にマッケンジー老、魔法を中央へと放って下さい」

「了解した。ではカイ殿は天井にいる連中を警戒してくだされ」


 すぐ様作戦が整えられるが、ナオ君の役目はどうなっているのだろうか?

 まずは彼らが戦い、その強さを見極めるという事なのだろうか?


「マッケンジー老の魔法の後は私が引きつけます、ナオ様はその隙に一撃、倒せるようならば止めもお願いします」

「カイ殿、これが儂らの基本的な戦術じゃよ。儂が最初の一撃で隊列を崩し、スティリア嬢が引きつける。その後は臨機応変に、じゃ」

「了解。じゃあ俺は天井の警戒と……一応ナオ君の方にも注意しておきますよ」

「んむ、まかせた」


 恐らく、本気を出せばマッケン爺の"魔導"で殲滅させる事も出来るのだろう。

 しかしナオ君の成長の為にこの作戦に至ったという訳か。

 経験値という明確な数字が存在する以上、ある程度戦闘に貢献するだけで入手する事が出来てしまうが、それでは意味がないと彼らも分かっているようだ。

 ならば一安心か。




「封縛、地の戒め、砂塵と還す"サンドストリーム"」


 広間へと年齢を感じさせない動きで飛び込んだマッケン爺が、素早く詠唱を終え中心にいた大きなトカゲ型の魔物を蟻地獄のような渦へと引きずりこむ。

 威力が抑えられているのか、全てを飲み込むでなく、動きを鈍らせ体勢を崩すに留まる。

 そして、魔物は自分達へと攻撃した相手を探し――


「こちらです! はああああああ!!!」


 すかさず飛び込んだスティリアさんの叫び、恐らく『ウォークライ』により注目を集める。

 狙い通り敵はおぼつかない足取りで彼女を追い、そして見事に誘導され、入り口に背を向けた。


「い、行きます!」


 そこにナオ君が素早く近づき、無防備に晒された尾を切り落とすように剣を振るう。

 よし、じゃあ俺も自分の仕事を果たそうか。


「じゃあ俺も……"フレイムフェーン"」


 こっそりと小規模の熱波に闇を溶かしこみ、天井付近の酸素を薄くする。

 今更だけどこれ熱風っていうか薄い炎だよね、名前変えるべきかね?


 徐々に薄くなっていく酸素、すると天井に張り付いていたコウモリ、恐らくケイブバッドの亜種がポトリと落ちてくる。

 それを奪剣で止めを刺し、ナオ君の様子を確認する。


「お、尻尾は鱗が柔らかいのか。鑑定で弱点を調べられるのかね」


 無事にナオ君の攻撃で、3匹のトカゲは尾を失い、直接攻撃をされた事で敵意をナオ君に向ける。

 だが時すでに遅し、ナオ君へと振り向こうとした次の瞬間、スティリア嬢の攻撃が敵に突き刺さる。


 彼女はサーベル型の片手剣と、中型の盾を構える手堅いスタイル。

 盾を僅かにそらし、そこからすかさず剣を突き刺して止めを刺していく。


 俗にいう『盾チク』スタイル。

 これは防御優先の人間が使う戦法で、盾で攻撃を防ぎながらチクチクと刺すように攻撃して安全に相手を撃破する戦い方だ。

 いやぁ、激しく動いて戦うのが好きな俺とは真逆の戦法だな。


「はいお疲れ様。敵の反応は消えましたよー」


 俺が手を叩きながら戦闘の終了を告げると、ホッとした様子で武器を収める一同。

 スティリアさんは天井を眺め、一言。


「天井の魔物はどうなりましたか?」

「落として仕留めておきましたよ」

「んむ、儂も見ておったよ」


 そう告げると、少しだけ不服そうな顔をするも『そうですか』と告げる。

 もしかしてナオ君に攻撃させずに倒したのがまずかったのだろうか?

 いや、知らんがな。


「カイヴォンさんお疲れ様です。ここの敵はどうやら僕でも通用するみたいです」

「まだ入り口付近だからなんとも言えないけどね。とりあえず、次の敵を探してみようか」


 そうして、俺達はゆっくりとだが着実に、火山洞窟を進んでいった。




「はい次の分岐は左で。右は途中が間欠泉と硫黄のガスが大量に噴出する罠があるみたいだ」

「これで4度目ですね……カイヴォンさんがいなければ大変な事になっていましたよ……」

「そうですね。本当に罠があるのでしたら、間違いなく大惨事だったでしょう」


 蒸し暑い通路を進みながら、俺はソナーを頼りに分岐路の正解を選び続け、かなり早い段階で洞窟の序盤、最下層を踏破まであと一歩の所まで来ていた。

 この先には大きな空間が広がり、大きな穴が地面に空いているようだ。

 そしてその先にスロープが存在し、一つ上の階層へと向かう事が出来ると。


「ふむ、そろそろ最初の門番が出てきてもおかしくないのう。スティリア嬢や、今日はここまでにせんかの?」

「そうですね。思いの他早く到達出来てしまいましたが、これ以上は今日の目的から逸れてしまいます。一旦戻りましょうか」

「賛成。実はこの通路の先が大広間になっていたんだ。恐らくそこでやりあう事になる。宿に戻ったら分かる範囲で内部の様子を図にするよ」

「有難うございます! あ、僕も今日戦った敵の事をノートにまとめますからね」


 ナオ君も、自分に出来る事はなんでもやろうと挑戦して行く。

 その姿勢がとても好ましい。

 彼は鑑定の能力のお陰か、現れる初見の魔物にも有効打を与える事が出来ていた。

 さすがに一撃で葬る程の威力はないが、その攻撃が周りの目に留まり、早期撃破の手助けになっていた。

 非常にバランスの良いパーティーだと言える。


 尚俺は索敵と離れた敵の処理にまわっていました。

 マッケン爺は開幕の一撃以降は俺の側で全体の様子を眺めていたが、恐らく本来、俺の役目はマッケン爺の仕事だったのだろう。


「さて、帰り道は皆覚えているか? もし覚えているなら先導役を誰かに交代してもらいたいのだが」

「何故ですか? 帰りも魔物が出る可能性がある以上、貴方が先頭を務めるべきでは」

「修行ならこれくらい経験しておいて損は無いんじゃないか? 幸い罠は分かれ道の先にしかなかったし、魔物にさえ気をつければ問題ない」

「……確かに間違った道に行く可能性は低いですね。では私とナオ様が務めましょう」


 そう言いながら、彼女はナオ君と共に俺の前へと出た。

 本当はナオ君一人にやらせてみたかったのだが、彼女は意地でも彼の側から離れたくないらしい。

 仕事だから仕方ないね、と言いたい所だが、仕事だけじゃないように見えるのはゲスの勘ぐりだろうか?


「ほっほっほ、ヌシの考えている事は正解だと思うぞ?」

「年下好きなのか」

「そうなのかもしれんの」




 帰り道は魔物の数も少なく、時折現れるケイブバッドの亜種をスティリアさんが盾で弾き飛ばし、それをナオ君が止めを刺すという流れで処理して行く。

 俺はその間、今日手に入れたアイテムについて考えていた。


 アイテムボックスを持つ人間に、アイテムは自動的に振り込まれる。

 今までは恐らく、全てナオ君へと振り込まれていたのだろう。

 だが、俺が存在する事により、その儲けの半分は俺へと振り込まれている。

 よっしゃ、黙っとこ。


 まぁそんなドロップ品よりも、敵を倒した事により俺のアイテムボックスに少なくない量の『魔結晶』と呼ばれるアイテムがドロップしていた。

 これが『晶化』の効果なのかと、一人ニマニマしながらその説明文を読む。


『魔力が高純度に結晶化した物。魔力を貯めこむ性質を持ち、希少性が高い』


 これは金になる、間違いない。

 後でこっそり換金しておこう。

 そして『悪食』だが、今回は無機物を殴る機会なんてなかったので変化無しだ。

 場所的に、鉱物の体を持つ魔物でも出るかと期待していただけに拍子抜けだ。

 まぁ、どうやら最下層ではトカゲやコウモリ、そしてヘビに狸と生物的な魔物が中心のようだし、この先の階層で現れる可能性もあるか。


「見えてきました、出口です」

「お疲れ様、ナオ君、スティリアさん。先導ありがとう」

「いえ……どうやら貴方も殿を務めていたようですし、お疲れ様です」


 ありゃ、珍しく感謝された。

 まさか俺がサボりたいだけであんな提案をしたと思われたのだろうか?

 その通りです正解。

 殿と言う名の最後尾ダラけ組でした。


「これでわかったじゃろう? ナオ殿の人選は間違いじゃなかったと」

「そうですね、私も態度を改めましょう。本日は大変なお勤め、心より感謝します」

「急に態度を変えられるとお兄さん困惑してしまいます。もっと懐疑的で邪険に扱ってくれて構いませんよ?」


 卑屈になってみる。

 どうだ、やりにくいだろう。

 だが、俺の思った反応ではなく、何故か彼女は悲しそうな顔をする。


「本当に、申し訳ありませんでした。私はナオ様を護衛する身故、必要以上に周りを警戒していました。使命を理由にするのは卑怯だとは思います、ですがどうか、これからもお力を貸して頂きたく――」

「ああ、了解。しっかり契約は守るから安心して下さいな。さっきのはちょっとした冗談だから本気にしなくていいよ」

「……人は悪いですよ、カイヴォン殿」


 また少しだけ、彼女の表情が和らぐ。

 案外ツン期が短いようで何よりです。




 宿に戻ると、丁度温泉の解放時間と重なったため、一日の疲れを癒やすためにすぐさま入る事にした。

 同じことを考えていたナオ君とその仲間達も現れ、男女で別れて脱衣所へと向かう。


「今日は本当に助かりました。僕は余り周りを見ることが出来なかったんですけど、スティリアがカイヴォンさんの事褒めていましたよ?」

「へぇ、先導していた時にかい?」

「はい『あの方は敵の処理も早い、索敵能力も魔法の腕も申し分ない』って」

「そうじゃな。儂も側におったが、ピンポイントで敵を無力化する魔法を完璧に使いこなしておったよ。あれは何の魔法なんじゃ?」

「おや、マッケン爺さんでもわかりませんでしたか?」

「買いかぶるでない、儂にもわからん事はあるのじゃよ」


 意外や意外、すぐにバレてしまうと思ったが、闇属性については詳しくないようだ。

 なら下手にばらさないほうがいいかもしれないな。


「企業秘密です」

「企業なのかの? まぁ良いわい、優れた仲間がおると、儂の負担も軽くなるからの……」


 そうぼやきながら、心底疲れたように浴場へと我先に向かうその背中が、歳相応に見えた。




 ……いや騙されないぞ、先に浴場へと向かった理由、俺にはわかる。

 だがしかし、今日は見逃してやろう。

 感想を原稿用紙1枚にまとめて提出して下さい。

(´・ω・`)本当に徐々に遅れますから! 信じて下さい!

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