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暇人、魔王の姿で異世界へ ~時々チートなぶらり旅~  作者: 藍敦
五章

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四十九話

(´・ω・`)久々にぼんぼんに

 温泉から上がり、レイスと頭を押さえたリュエと合流して食事と摂るために離れへと向かう。

 レイスの機嫌が随分と良いようだが、どうやら浴場でのやりとりがお気にめしたらしい。

 確かに俺もあのシチュエーションは中々来るものがあった。まさに昔ながらの夫婦のような。

 まぁ運悪く人にぶつかる事もあるから余りおすすめできないが。


「カイくんに傷物にされた。責任をとってもらおうか」

「仕方ないな」


 なでりこなでりこ。

 ほんのり温かくてうっすら濡れた髪がなんとも色っぽいじゃありませんか。

 リュエの癖に色っぽいとは、生意気な。

 なでりこなでりこ。

 とりあえず頭撫でとけばいいだろうという風潮。


「……実は私の頭にも石鹸があたったんです」

「増える魔球を習得した覚えはありません」


 レイスさん、だいぶリュエに毒されてきましたね?

 しかしさすがにレイスを撫でる度胸は俺にはありません。

 もうね、湯上がり巨乳浴衣美人とか破壊力高すぎなんですよ。

 リュエとは別のベクトルで俺の好みを凝縮した姿なんですよ貴女。

 ましてや、性格も俺のタイプであるお姉さんだなんて。




 夕食は、期待していた通り和食だった。

 若干アレンジされており、まるで創作和食のレストランのような料理だったが、いずれも満足のいく逸品ばかりだった。

 イグゾウさん何者だったんだ。このお吸い物とか本物の一番出汁だぞ。


「酒も美味いし言う事ないなぁ」

「本当に美味しいですね。凄く華やかな香りです」

「ここ良い宿だねカイくん。しばらくこの街に滞在しようよ」

「そうだな、しばらくこの街に留まるか」


 というわけで、明日からここの宿代を稼ぐ冒険に出るとしようか。

 お金に余裕はあるけれど、働かずに過ごすのが勿体無いと思えるのが不思議だ。

 危険があるのはわかっている。だが、やはりこの身体のスペックのせいで戦闘で金を稼ぐ事に積極的になってしまう。

 勿論自覚している以上、常に気持ちを引き締め直すように心がけているのだが。

 部屋に戻ったらちょっと装備の点検でもしようか。



 部屋へと戻ると、既に布団がしかれていた。

 だがしかし、敷かれた布団は変則的な大きさの物が一つだけ。

 わーすごい、こんな布団もあるんだー。

 なんで枕が3つ並んでるんですか?


 ほら見たことか、うちの最近はっちゃけ気味のお姉さんが目を輝かせてるじゃないですか。


「……公平にここはカイさんが真ん中、両隣に私とリュエで良いですよね」

「よくありません。真ん中はリュエ、異論は認めない」

「うん? 私の隣が良いならカイくんが真ん中でも良いんじゃないかい?」


 違う、違うんだリュエ。

 君は抱きまくらにされていると言っただろう、それが俺にも降りかかるとしたら、いよいよもって理性が消し飛ぶんですよ。

 だが、さすがにここで強く断るとレイスを嫌がっているようで可愛そうだ。

 ……やられた、有無を言わさず先に隅っこに寝転がってしまえばよかった。


 そして押し切られるように、俺は両隣を挟まれる形で寝ることに。

 これ普通に宿に言って布団なおしてもらえばよかったんじゃないか?




 深夜。

 足を誰かに蹴られたのか、衝撃で目が覚める。

 すると案の定リュエが寝苦しそうに片足を布団から出して寝ていた。

 そして、俺の右腕がレイスに抱きかかえられていた。

 幸せな感触を二の腕に感じながらも、そんなレイスの寝顔を覗き見る。


「……やっぱりまだ不安なのかね」


 まるで怖い夢でも見ているのかような、不安そうな顔。

 うっすらと涙を流しているその姿に、どうして彼女がいつも誰かと一緒の部屋を強請るのか合点がいく。

 きっとまだ、恐いのだろう。


 あまりに長い間待ち続けたせいで、まだ心のどこかで不安に思っているのではないだろうか。

 それはきっと、目が覚めたら全て夢で『また待ち続ける日々が待っているのでは』という彼女の無意識の恐怖。

 リュエが抱きまくらにされているのも、きっとそんな理由だろう。

 じゃあ今日くらい俺がその代役を買って出ようじゃないか。


 まるで父親にでもなった気分になりつつも、柔らかな感触につつまれた二の腕を意識しながら、再びまどろみに意識を溶かしこんでいった。





 翌朝、やはり途中で目が覚めた分眠りが浅かったのか、最初に起きたのは俺だった。

 リュエは、今度は出した足が寒くなってきたのか、布団を抱きしめるようにしてくるまっている。

 そのせいでレイスの身体が半分程出てしまっている。

 そしてその彼女様子は――


「安心しきってるな。こうしてると本当、ただのお姉さんなんだけどな」


 大勢の大人達に囲まれ、マザーと慕われ君臨してきた女帝。

 そんな彼女が、まるで父親に抱きつくようにして安心しきった顔で眠っている。

 相変わらず暴力的なまでの柔らかさに包まれている腕が幸せいっぱい過ぎてこっちは安心出来ないんですけどね!


 すると、そんな彼女の表情が動き始める。


「ぅん……うん……ん……」


 色っぽすぎる。

 さらに強く抱きしめられる腕が、もう完全に埋まってしまった。

 何に埋まったのかはお察し下さい。


「ん……?」

「おはよう、レイス」


 薄めを開けた彼女に、とりあえずなんでもない風を装って声をかける。

 なるべく爽やかに、別に俺はなにもやましいことは考えていませんよーと言わんばかりに。


「あ……わ!」


 慌てて自分の胸に抱き込んだ腕を放し、反対を向いてしまう。

 いやはや、なんともかわいい娘さんじゃありませんか。

 ようやく彼女に一矢報いる事が出来たか?





「では朝食後、ギルドで各自依頼を受ける形で良いんですよね?」

「う~ん、レイス一人だと不公平だし、私とレイスは二人で行動しようよ」

「2対1か。丁度いいハンデだ、二人で依頼を受けると良い」


 ようやくレイスが再起動し、リュエもスリープモードから復帰した後、今後の活動について相談する。

 その結果、以前同様各自一月分の宿代を稼ぐのを目標にして働くという事に決定した。

 尚この部屋の一月分の代金は、割引されているにもかかわらず3人で80万オーバーである。

 リュエとレイスのペアと俺でそれぞれ40万稼ぐのがノルマだ。


「では、先に顔洗ってきますね」

「いってらっしゃい」


 まだほんのり顔の赤いレイスが我先にと洗面所へと向かった。

 それを見計らい、リュエに切り出す。


「ありがとう。一応レイスも強いみたいだけど、俺達程じゃない。万が一があるからな」

「例の……なんだっけ? 閣下とか言う奴の手先が来るかもだしね」

「そういう事だ。リュエ、万が一の時は……全力で相手してくれ」

「了解、この辺り一帯を封印するつもりで凍らせるよ」


 過保護と言うなかれ。

 昨夜の事でもう俺は心に決めたんだ。

 何があってもレイスを守ると。

 と言いながら、守るなら常に一緒にいろって話なんですけどね?

 だが今回は、仮に相手が動くとしたら俺とレイスどちらを優先して狙うのか見極めるためにも別行動だ。

 それに俺がいなくても、女であるリュエなら常に一緒に行動出来る上に、その強さはもはや人外レベルにまで到達している。

 本当、普段あの調子のせいで忘れがちだが、最凶最悪の七星を数百年に及び封印し続ける程の猛者だからね。


「んじゃその間俺は装備の点検でもしようかね」








 久々に剣の詳細を調べると、いつの間にか攻撃力と魔力が変動していた。



【攻撃力】666 闇属性 → 711 闇属性

【魔力】 666     → 667



 これは恐らく、エンドレシアの首都での一件、金庫の扉を破壊した影響だろう。

 やはりただの岩ではなく、希少な金属や合金を破壊した方が能力の上昇が見込めるようだ。

 攻撃力が上がり、無事に不吉な数字から卒業していた。

 そして魔力も1だけ上がっている。あの材質じゃ余り上がらないのか。


「折角だし暫く『悪食』をセットし続けておこうかな」


 ついでにアビリティを全て見直していく。

 攻撃力関係は威力を抑える構成にして、残りは補助的な物にまわしておく。



『刀背打ち』

『弱者選定』

『修行』

『攻撃力変換』

『護剣』

『悪食』

『ソナー』

『五感強化』

『気配察知』

『幸運』



 久々登場の幸運さんである。

 これの効果はゲーム時代はアイテムドロップ率にしか反映されなかったが、もしかしたらこの世界ではそれ以外の効果もあるかもしれない。

 だがしかし、これをつけている間、何かとトラブルに巻き込まれたような気がする。

 主にソルトバーグでの一件。


「まぁおかげで大金が手に入ったとなれば……幸運なのか?」


 アビリティのお陰で攻撃力は大幅に下がり、さらに『刀背打ち』のおかげで万が一でも敵を即死させる事はない。

 本当の意味で修行するには最高の構成だ。

 ほぼ毎回セットしている『生命力極限強化』も今回は外してある。

 ステータスはLv200時より若干低い程度で、さらに攻撃力を可能な限り下げてその分防御と魔力が上がっている。

 この状態で魔法を使うとどうなるか逆に興味が湧く。


「一応このメガネもかけておくべきか?」


 さらにもう一つ、鑑定能力のあるメガネ。

 ……でもこれかけるとリュエの視線が厳しくなるんだよな。

 とても便利な能力なだけに、是非とも常用していきたいのだが。


 剣とメガネを見比べて唸っていると、背後から誰かの気配を感じる。


「カーイーさん!」

「グエッ」

「……今朝の事は忘れて下さいね? あれはたまたまです、決して私の寝相が――あ」


 幸せハグを背後から受けた俺は、その勢いで見事にメガネをモノクル×2に転生させてしまいましたとさ。

 わーお、キレイに真っ二つですよ。

 ……嘘だろ。


「あ、あの……私、なんて事を……ごめんなさい、怪我はありませんか、いえ、メガネが……」

「う、うそだろ……」

「あああああああ、あの! ごめんなさい、ごめんなさい!」


 嘘だろ、マジかよ、ありえないだろこんなん。

 レイス、お前さんなんて事を……!







『アビリティ習得』

『詳細鑑定』

『対象の能力の詳細を確認出来る 無機物は対象外』


 なんて素晴らしい発見をさせてくれたんだレイス!

 マジかよ、このメガネ今剣で壊しちゃったんだけど、悪食が発動してその効果を奪っちゃったのか!?

 嘘だろお前、無機物ならなんでもありですか!

 じゃあこれ……特殊な能力を持ったアイテムを壊すだけでアビリティゲット出来ちゃうんですか!?


「ごめんなさい……許してください……新しいメガネ、探してきます……お願いします……」

「あ、いや大丈夫、怒ってない。ちょっと思いもよらない発見が出来たせいで驚いただけだから」

「本当ですか……? でもメガネ、壊してしまって……」

「ああいやその、これは魔導具なんだ。観察力が上がる効果だったんだけど、壊したらその効果が俺の物になったみたいなんだ」


 とりあえず、ごまかそう。

 これでレイスのスリーサイズを含めた諸々を見たことがあるとバレるのはマズい。

 いや不可抗力なんです。本当にわざとじゃないんです。


「ほ、ほんとうですか?」

「本当です。だからきにしなくていいよ、むしろ大発見だよ、ありがとうレイス」



 さて、じゃあアイテムボックスの目ぼしい品を壊す事から始めようか。

(´・ω・`)強化フラグが立ちました

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