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三十七話

(´・ω・`)ちょっぴり短いの

 会館の中は特別変わった作りになっている訳でもなく、一般的な役所に会議室が設けられただけの簡単な物だった。

 だが迎賓館の役目も持っているのか、居住スペースのような物もあると教えられた。

 ウェルドさん、領主なのにここに泊まらなかったのは、やっぱり色街から遠いからなんですかね。


 会館を進む彼女の後に付き従う。

 気分は女帝の舎弟である。

 やがて、会館の二階にある大きな扉の前へとやって来た。

 彼女はノックをし、扉を開ける。


 中は大きな円卓が用意されており、恐らく上座に位置するであろう、窓際の席が一つだけ空いている。

 レイスさんは軽く会釈をしながらそこへ座り、俺は窓の直ぐ側に立つ。


「私が一番最後だったようですね、申し訳ありません」

「いえいえ、我々が早く来すぎただけですので」

「そうだな。なんせ普段は互いのツラなんて見る機会もねぇし、ちっと先に挨拶してただけでさぁ」


 彼女が声を上げ、ようやく静まり返っていた面々が声を上げる。

 ううむ、これは本当に女帝と言っても良いんじゃないか?



 それを皮切りに会議が始まり、それぞれが自分の商売、受け持ちである分野について報告をしあう。

 どうやら食品の流通を受け持つ商人に、農家の代表、娼館の各派閥の代表者に用心棒を斡旋しているギルド長、変わり種としては魔導具の職人までいるようだ。

 ……何に使うどういった魔導具なのか気になります!


「さて、では本題です。最近外部からの新規参入者が頻繁に騒ぎを起こしている件についてなのですが」


 瞬間、レイスさんの肩が震える。


「ここ数日はギルドの警備員が睨みを効かせているからだいぶ抑えられているわね。ギルド長、良い人をよこしてくれたね」

「ああいえその……あの人はまぁ……」

「ああ! あのエルフの姉ちゃんか! あんな上玉そうそうお目にかかれないぜ? なんとかモノに出来ないもんかね」

「一発ヤらせてもらえねぇかとうちの若い連中が声をかけたら、すぐにのされちまったよ。ありゃ相当お堅いな」

「およしよ! あの人のおかげで助かってるんだから」


 よーしそこの二人、顔覚えたぞー。


「んで、例の参入した連中を受け入れたのはアンタの所だってねぇ"タキヤ"」

「ええ、それが何か?」


 ここで話を振られたのが、先ほどから静かに事の成り行きを見守っていた一人の男。

 このメンツの中では恐らく最年少であろう、まだ四十路には届かない、少々冷たそうな印象の男。

 メガネをかけたその姿は『インテリヤクザ』と言う名称がしっくりくる。

 心なしか、彼の意識が此方に向いているようにも感じる。


「何かじゃないよ! アンタんところの傘下に入ったんだ、キチンとこの街の流儀を教えてやんな」

「流儀、ですか。そもそもそんな流儀を街の決まり事のように扱うのが疑問なんですけれどね。ねぇ、レイス殿?」

「……そうですね、私も絶対厳守の決まり事と決めた覚えはありません。ですが――」


 凛とした、まるで背筋に鋼が入れられたかのような姿勢で彼女は告げる。


「最低限のマナー、そして周りの人間の歩調に合わせるのは人としての常識です。そして何よりも、どんなサービスを提供しようが、私達の仕事の根本は『奉仕』それを乱すような『子』を諌めないのはもはや『親』ではありません」


 きっぱりと言い切る。

 その瞬間だけ、いつものどこか儚いような彼女が実像を持ったように感じられた。


「私の『娘たち』や独り立ちした『子たち』へも過度な勧誘を行っていると聞きました。流儀ではありませんが、私も『身内』の者が害されると言うのなら、それなりの対応を考えなければなりません。ねぇ、そうでしょう?」


 ここでなんと彼女は、俺へと振り返り同意を求める。

 ……やられた。彼女は咄嗟に俺を自分の後ろ盾、自分の陣営の人間だと周りに思わせるためここに連れてきたのだと理解した。

 まだ俺自信の知名度はこの街では低いだろう。

 だが、今の姿は十分に威圧的であり、そして何よりも……俺がリュエの仲間だと言う事に意味がある。

 先ほどすでに話題に出たが、わずか三日たらずで既にリュエの働きは色街に知れ渡っている。

 いやはや、さすがこの街に長年君臨してきただけはある。

 『グランドマザー』の名は伊達ではない、か。

 多少してやられた感はあるが、別に嫌な気分ではない。


「そうですね、レイスさん。私も貴女が心労で倒れるなんて事になってしまったら、悲しみでどうにかなってしまいそうですよ」


 そう言いながら、一瞬だけ全力で魔力を活発化させ、黒炎を背後に纏わせる。

 すぐにかき消すも、その効果は絶大。

 皆一様に唾を飲み込む音が聞こえてきそうだ。


「……いやはや、くれぐれもしつけておきます。どうやら貴女の力をまだ図りきれていなかったようだ」

「力だなんて。これもひとえに横の繋がりを大事にした結果です。タキヤさんだって『本当は』こんな事はしたくなかったのでしょう?」

「……なんの事ですかね。私少々野心家なだけですよ」


 ふむ、どうやらこの街も一枚岩じゃあなさそうだ。


 その後は再び近況の報告となり、話題に上がるのは先日この街を訪れたウェルドさんの話へと移る。

 彼のもたらした『今年は春が早く訪れる』という情報の共有から始まり、ちょっとした愚痴大会へ。

 先程まで剣呑な空気をかもしだしていたのが嘘のようだった。


「そういや姐さん。そちらの御仁は専属の護衛か何かですかい?」

「彼はうちのお得意様です。最近では毎晩来て下さっているのですよ?」

「うへぇ、あの屋敷に毎晩ってそんなん破産しちまう!」

「ちょっとお兄さん! だったらウチの店にもお金を落としてっておくれよ!」


 あ、飛び火した。

 やめて下さい、本格的に娼館に行こうものならウチの娘が何をしでかすかわからないんです。


「考えておきます」








「先程は利用するような真似をして申し訳ありませんでした」

「いえいえ、お役に立てたのなら」

「その代わりと言ってはなんですが……先ほどの質問にお答しても良いですよ。今日の営業はありませんが、明日来てくださればその時にでも」

「レイスさん自らがまたお相手してくれるなら、行かない理由はありませんよ」


 そう約束を交わし、彼女を屋敷へと送り、依頼終了の報告へ向かうのだった。





 やばい、すっかりリュエの事忘れてた。





「別に怒ってないよ? 他の人間はみんな護衛を連れていたし、彼女だけ誰もいないなんて心細いじゃないか」

「まぁそうなんだけどな。悪かったな、一緒に依頼を受けるって約束してたのに」

「一緒に草むしりしてくれただろう? それで満足してるよ」

「そうかそうか……ところでこの扉、開けてくれないか?」

「……ヒックヒック……駄目」


 女神様が天岩戸に閉じこもってしまいました。

 さて、では故事に習い餌で釣るとしましょうか。

 いやここでどんちゃん騒ぎをする訳じゃないけれど。


「頼む、今出てきてくれたら、許してくれたらなんでも一つだけ言うことを聞くから、な!」


 伝家の宝刀『なんでも言うことを聞く』

 その効果は絶大で、何よりも今すぐ行使される事がないので、そのうち有耶無耶になるという優れものである。

 そういえば以前にも一度使ったような。


「本当かい? なんでも言うこと聞いてくれるのかい?」

「ああ、勿論だ」

「わかった」


 ガチャりと扉が開くと、布団お化けと化したリュエがベッドに座っていた。


「じゃあ『ラーク』でも約束したし、今回と合わせて2つ言うこと聞いてくれるんだよね?」


 前言撤回、有耶無耶になりませんでした。

 ご利用は計画的に。


「まず一つ、絶対に次に私が言う命令に従うと誓う事」

「何気にえげつない使い方するな!」

「そうじゃないと何かと理由をつけて逃げるかもしれないからね」

「何させるつもりなんだよ……」


 さすがに身の危険を伴うお願いはないと信じてるが、この念の入れように身構えてしまう。

 というか、もしかしてこの瞬間を狙っていたのか?


「じゃあ今晩は私と寝る事! どうだ、恥ずかしいだろう? 頭も撫でてもらおうか」

「……よしわかった」


 意外と可愛いお願いでした。

 いいのか、恥ずかしいのはお互い様、いやむしろそっちの方だぞ。

 精神力がカンストしているようだが、それが発揮されるのは自分に危険が訪れた時だけだぞ!


「まったく甘えん坊だなぁ、よーしよしよし」

「やっぱりなし! やめ、やめろカイくん、うわああやめてーーー!」


 猫なで声でヨーシヨシヨシしてやんよ。

 気分は動物王国の国王様だ。




 翌朝、我ながら勢いに任せてお願いを聞いたことを後悔する事になった。

 リュエさん、貴女寝る時裸族なのって無意識で脱いでいた所為なんですね。

 裸の女とベッドを共にするというシチュエーションはさすがに来るものがある。

 ……ちょっと早いけど先に自分の部屋に戻りますね、色々やらねばならない事があるのです。


「くっ、娼婦が沢山いる街だと言うのに!」

(´・ω・`)明日明後日の更新は出来ないかもしれません

(´・ω・`)ごめんね

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