表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
373/414

三百六十五話

(´・ω・`)17章開始です。

予定ではこの章と次の章で完結予定です。

「恐らく、これが最初で最後のチャンスになるやもしれん……覚悟は良いな、ナオ殿」

「今を逃せば、我らとてこれ以上ナオ様をお守りする事は出来ません……どちらに転んでも我らに与えられた自由や特権を失う事になります」

「良いんだ。これは僕が決めた戦いだから」


 太古の昔に崩壊した大都市。かつて神話の時代に存在していたという伝説の場所。

 僕が呼び出された国の名前『ガルデウス』の由来となったここに、きっとこの戦争の真実を知る者がいる。

 その確信と共に、今一度僕は己の覚悟を自身に問う。

 僕は学んだ。ただ言われた事だけに従い力を振るう事が、いかに危険な事なのかを。

 もしかしたら、あの人、カイヴォンさんに剣を向けていたかもしれない。

 もしかしたら、戦いをより複雑化させてしまう事になるかもしれない。

 だから――僕もまた、あらゆる可能性を、全ての道を選ぶことが出来るように、さらなる力を求め戦って来た。


「……うん。行こう、二人とも。僕は、僕の選んだ道の終着を、この目で見るんだ」


 目の前にある、かつては大きな建物であったであろう廃墟の扉に手をかける。

 重く、そして今にも崩れそうなそれを押し開き中へ入る。

 するとそこは、まるでかつては何かのホール、例えるなら、日本のテレビで見たことのある、国会議事堂のような、議員さん達が会議する場所、そんな印象を受ける場所だった。


「これは……どうやらこの場所は元老院かなにかだったようじゃな……」

「……そのようですね。これほど大きな会議場、わが国でも類を見ない程です。やはり……神々の時代というのは本当にあったのでしょうね……」

「そう、だね。それに――どうやら、今でも使われているみたいだよ」


 かつて、僕達になかった斥候としての能力を使い、僕はそれに気が付く。

 カイヴォンさん程ではないけれど、数々のダンジョンを経て身に付けた力で、確かにこの場所に存在する、僕たち以外の気配を感じ取る。


「出てきたらどうですか? ようやく、追い付くことが出来たんですから」


 誰もいないはずの空間に向かい語り掛ける。すると、ホールの最深、崩れた一番高い場所にある席の陰から、赤いローブを纏った人物が現れたのだった。


「……いやはや、初めてお見掛けした時とは別人ですね、解放者様。各地のダンジョンを浄化して回り、そもそもの争いの種を断絶しようとするかのような働きぶりでしたが……なるほど、どうやら解放者の能力を増す為の物でしたか」

「……やっぱり、僕と同じように相手の強さを測れるんですね?」


 現れた人物の名前ですら、僕の目には映らない。

 けれども、それは一方的な物らしく、この現れた人物は僕の力を正しく見抜いているかのような物言いだった。


「各地のダンジョンに残った痕跡、ダンジョンの最深部には等しく同じ像があった。我が国でもそれの正体が掴めずにいたが……どうやら、何者かが暗躍している事は確かな様子」

「古い、古い呪術の名残を感じた。儂ですら分からぬ程古い術式、やはりこの地『旧都ガルヴェウス』由来の物と見て間違いないようじゃな?」


 二人がそれぞれの武器を構え、その人物に言葉を向ける。

 それでも、僕はまだ剣を抜かず、ただ話しかけ続ける。


「……貴方は、解放者ですか?」

「おや? 何故そう思うのです?」

「……各地のダンジョンに置かれた像は、明らかに後から設置された物でした。ただ――一部のダンジョンは、僕にしかその最深部への扉を開く事が出来ませんでした。きっと、七星解放と同じで、解放者じゃないとそこに辿り着けないから……違いますか?」


 答えは沈黙で返って来る。何が目的なのか、彼が何者なのか。

 本当は今ここで問答をする話ではないと分かってはいるけれど。

 でも――時間稼ぎは十分! これでようやく、力が溜まったから!

 瞬間、片方の剣を全力で抜き放ちながら、溜まりに溜まった力を乗せた技を、“ウェイブモーション”を男に向かい放つ。

 一瞬で粉塵と瓦礫が巻き上がり、男の姿が掻き消えるも、すかさずそこへ向かいマッケンジーさんの魔法が炸裂する。


「スティリア、回り込んで。まだそこにいる」

「了解しました」


 スティリアに一瞬遅れて、僕もまた粉塵へと向かいもう片方の剣に手をかけつつ駆け抜ける。

 前は飛ばす事が出来なかった光の刃。今では、片方ずつなら飛ばせるようになったんですよ、カイヴォンさん!

 この技で、僕は掴み取るんだ。真実を、そして本当の平和を――――








「タイミング的に全員揃っているとはいえ、ただの見送りにこんだけ集まるとか予想外なんだが」

「しかたないでしょう? ここにいる全員、多かれ少なかれ貴方のお世話になった方ばかりなんですから」

「そうだぞ。ある意味では国賓だ、見送られるのも仕事だと思え」


 旅立ちの日。ある意味では旅の最初の目的地であるここサーディス大陸から旅立つこの日に、俺達を見送らんと港に集まった面々につい、そんな言葉を漏らしてしまう。

 まぁ会談の直後だ。ある意味ついでのような物ではあるのだが。


「本当に行くのね。割と本気で引き留めたいのだけれど。カイヴォン、しついこいようだけど考えておいて欲しいのよ。私を律する事が出来るのは貴方だけなのだから」

「何か騒ぎを起こしたら今度は両翼なんて言わずに本気で潰しに行く。これでどうだ?」

「ひっ! 貴方ワザと言っているでしょ! 私のこれは方便、方便なんだから! 本音くらい分かってるわよね!?」


 求婚、もといこちらを手元に置こうとするアホ領主に釘を刺しておく。

 周囲の目もあるおかげか、今回はこれで引き下がってくれるようだった。

 お前さん、第一印象が悪すぎる。いや印象だけではなくある意味黒幕だったろうに。


「ところで、なんでそんな所に隠れているのかねアリシア嬢」

「……いやはやバレましたか」

「積み荷から尻尾が生えていたらさすがに気が付くんですがそれは」


 次に目に留まった次期ミササギ領主に声をかける。

 離れた場所にポツンと残されるように鎮座する小さなコンテナに尾が生えていたので声をかけてみたのだが、やはり正解だったみたいだ。


「いや面目なくて合わす顔がないというかですね……」

「あー……でも今朝の話なんだろ? まだこの街のどこかにいるんじゃないか?」

「そうだと良いのですが……」


 アリシア嬢が何を申し訳なさそうにしているのか。

 実を言うと、この街にはあの太陽少女ことはむちゃんも一緒に来ていたのだという。

 だが、今朝になって彼女の姿が消え、寝床には『はむは強くなったのでまた旅に出るはむ』というメモが残されていたという。

 それを知り、出発間際までリュエと共に探しまわっていたそうなのだが、やはり見つける事が出来なかったようだ。


「あの子の事だから逞しく旅を続けていると思うんだけどなぁ。たぶんそのうち見つかると思うぞ?」

「そう……なのでしょうか」

「リュエもそう言っていただろう? それにはむちゃん、大分術を覚えたんだろう?」

「ええ、一応新米の警備隊程度には……もっと色々教えてあげたかったのですが」

「いいや、十分さ。色々世話になったね、アリシア嬢」

「いえいえ、私の方こそぼんさんにはとてもお世話になりました」


 相変わらず俺を『ぼんさん』と呼ぶ彼女に、なんだか笑いが漏れる。

 ううむ、オンリーワンの呼び名というのも悪くない気がする。


「ところで……あの性悪が何やらぼんさんを口説いていたようですが、ここは私も口説く、もといスカウトしても良いのでしょうかね?」

「ん、なんじゃらほい?」

「ヒモロギの失墜で現在、領地の警備統括を失っているのです。ぼんさん、どうですか? 貴方の実力ならば側勤めも任せられますし、私の亡き父も母の側務めだった事がきっかけで結ばれたのですよ」

「巧妙なお誘いありがとう。が、残念ながらお断りさせて頂きましょう」

「でしょうねぇ……それに貴方を組織に組み込むと、色々面倒そうですしねぇ……」


 大げさに肩を落として見せる彼女。しかし個人的にあの領地は居心地が良いので、機会があれば是非立ち寄らせてもらうとだけ伝えて置く。

 次回、俺が伝えた料理の数々がどう進化しているか、シミズさんの新作がどうなっているか非常に楽しみである。


「して、そっちはそっちで……なんだか大変そうだねレイス」

「え、ええ……ですから、旅を続けるのは決定事項なので……」

「分かってはいるんですよ? ですがいざ遠くへ行くとなると惜しんでしまうものなんです。どうです、カイヴォンさんも一緒に、リュエさんにも良いお話だと思うんです。私の里に正式にシュンさんとジュリアさんの別宅を建てる事になりましたし」

「うーん、私としてはあそこに家があるのは歓迎だけどねー。でも、そこに永住となると、まだ決められないかなー」


 里長、絶賛勧誘中。そういえば初対面の時に随分とレイスにアタックしていましたね。

 いやまぁ彼女を手元に置きたい気持ちは良く分かるのですが。

 俺としてもあそこに別宅がある分には大歓迎なのだが。


「カイヴォン殿はあの里に住むおつもりなのですか?」

「コーウェンさんですか。どうやら正式にあの里の後見人……もとい協力者になるつもりのようですね」

「ええ。聞けば、私の祖先にあたる方が起こした里という話ですから。どうやら私の領からも移住した人間が多いという話ですし、ね」

「そういえば獣人の方も多かったみたいですね」

「……ええ。ダークエルフが生まれるかハーフの獣人が生まれるか、生まれてくるまで分かりません。ですが、中にはそれで生き辛い思いをする住人もいますから……ね」

「全力でバックアップをお願いします。俺は、貴方を全面的に信頼している訳ではないと、分かっていますよね? あの里は俺にとっても大切な場所、分かっていますよね?」


 一度でも争った相手を、すぐには信用しないと、釘どころか大剣をぶっさす気持ちで強く見つめる。

 野心を抱くなとは言わない。だが――抱いたのなら、相応の覚悟をしろと言外に告げる。


「……分かっています。どうやら、私は世界の広さを知らなかった。平和が訪れるのならば、それで良い。そんな事すら私は忘れていたのですから」

「元々、強国の狭間にあった地故に、ですか。まぁ今後は少しはやりやすくなると思いますよ。少なくとも、誰かを出しぬくことなんて出来ないでしょう」

「ええ、そのようです。ようやく、本当の意味で共和国になった……という事でしょうか」


 分かってはいるのだが、それでも俺は、彼が死者を冒涜する行いをした事については、まだ許す事が完全には出来ないでいた。それは勿論……ファルニルに対しても同じだ。

 だが、許すまではいかずとも、折り合いをつけなければ前へ進めない。

 そんな当たり前の事ですら、俺はこの世界に来てから見失いかけていた。

 それは力の所為なのか、はたまた俺個人の資質なのか。


「そういえば一つお知らせする事があります。先日の会談の後、晩餐会で少し話題になったのですが、カイヴォンさんは既にいらっしゃらなかったので」

「何か事件でもあったのでしょうか?」

「そうですね、割と大陸の今後に関わる出来事です。以前、カイヴォンさんが我が領地の海を大きく切り裂いた事がありましたよね?」

「ええ。今更ですが、謝るつもりはありませんよ」

「それは勿論、お礼を言いたいくらいです。あの一件で、海洋近くまで続く遠浅の海底が変化し、大型船も岸近くまで接近出来る様になったのです。つまり、外大陸と繋がる港がもう一つ出来たという事なんですよ。その他にも、大陸南部と北部から船を使って直接我が領に入れるようになるんです」


 大人しい印象を持っていたコーウェンさんが、俄かに瞳を輝かせ熱弁する。

『シンデリアと合わせて流通の要に』『観光客が増えて経済も活性化する』

『街を広げる計画も立ち上がりつつある』などなどと、未来への展望を語り続ける彼。

 ……終わりよければ全て良し、というやつなのだろうか。


「私としても大歓迎なんだよねー。前に私のとこが仕掛けた戦争でセリューに続く近道が出来ていたじゃん? あれ整備して正式な街道にして、国外の人間が入りやすくなった上に、最寄りの領地であるノクスヘイムにも大きい港が出来るんだもん。国外の強者が私のコロシアムに続々集まってくるようになるよ、将来」

「ははは……ブレないねぇヴィオちゃんも」

「まぁね。なんだかんだでお兄さんにはかなり助けられたよ。私個人の問題じゃなく、領の方でもさ。だから、本当にありがとうね、お兄さん」


 次に現れたヴィオちゃんもまた、その影響を受け喜びの様子を見せている。

 今はまだ治安の悪い、野蛮な領地と見られる事も多いだろう。

 だが、今回の一件で大陸全体の風通しもよくなるはずだ。

 いずれ、誰もが安心して出歩ける、多くの戦士が集う戦いの街となる事を俺も祈るよ。

 そうだな、いつかこっそり出場するのも面白いかもしれない。


「一通り話を聞いて歩いているのになんでまたお前が来るんだよファルニル」


 すると、再びファルニルが目の前に現れ、こちらの手を取り物陰へと引っ張りだす。

 なんだ何する気だこいつ。少々身構えるも、どうやらちょいと真面目な話らしい。

 露骨に周囲を警戒しながら、顔を近づけ小声で話し始める。


「……もう一つ、他には聞かれたくない話があるわ。ミサトの事なのだけど」

「……あれがどうした」

「表向きには言えない接待に彼女を使う……そういう案も確かにあったわ。けど、それが出来なくなったの」

「おい、まさか逃げられたとでもいうのか?」

「……ある意味ではそうなるわ。あの子……牢獄の中で死んでいたわ。それも、ただ死んだんじゃないの。老衰……なのかしら。原因不明の状態よ、今のところは」


 その報告に、何か不穏な空気を感じ取った。

 なんだそれは、まるで超常現象ではないか。


「念のため聞くが警備の方は万全だったのか?」

「現状、最も侵入が難しいのはあの牢獄よ。それくらい私だって警戒していたわ。本来なら、てっとり早く送り返すのも一つの手かも、なんて思っていたのだけど」

「まぁ利用するだけ利用して捨てるってんなら、それが一番良いだろうが」

「でも、結果はこれよ。警備は厳重で、侵入の形跡もなし。魔力も完全に遮断されている以上、術式を介した外部からの攻撃も不可能よ。だから……念のため警戒して頂戴」

「……他の人間に過度な警戒をさせたくない、か。少しは周りを気遣う事も出来るんだな、お前さんも」

「と、とうぜんじゃない! まぁ、これで私の話は本当に終わり。船もそろそろ出るみたいだし」


 気が付くと、周囲に積まれていたコンテナの数も減り、俺達が今隠れているコンテナへと向かい船員が向かってくるところだった。

 そろそろお別れの時間だと、急ぎ皆のところへと戻る。


「さて、そろそろ乗船の時間だ。みんな、色々お世話になったね。また絶対に立ち寄らせてもらうよ」

「ジュリアちゃんまたね! 今度は一緒にブライトネスアーチを見て回ろうね!」

「お世話になりました、皆さん。必ずまた来ます。ですから、リベンジマッチはまたその時にお願いします、ヴィオさん」


 別れの言葉を告げる。そしてそれぞれが思い思いの言葉をこちらに投げかけてくれる。

 因縁の地。運命の地。何かが変わった地、最初の目的地。

 様々な意味合いを持つここ、サーディス大陸に別れを告げる。

 ここから先は、まだ正体の掴めない、この世界の根底に関わる何かを求めるアテのない旅だ。

 だが……心配をする必要なんて、微塵もないのだと、こちらを見上げる面々を見て思う。

 求めれば手を刺し伸ばしてくれる。自分以外の誰かが、必ずどこかにいる。

 離れていても、そんな仲間がこんなにも沢山いる。

 それを、改めて思い知る。

 今は遠くにいるオインクやその仲間だって、きっとどこかで繋がっているのだから。


「シュン、ダリア! 改めてさよならだ! そのうちまた遊びに行くから今度はおすすめの店の一つでも用意しておいてくれ」

「ああ、善処する! リュエも是非また来てくれ。ジュリアも喜ぶからな!」

「もちろんだよ! じゃあねシュン、ジュリアちゃん!」

「レイス、再生術の修行はまだ終わっていませんからね、必ずまた来てください! どうか、二人の事をしっかり見ていてあげてくださいね!

「はい! ダリアさんもどうかお元気で! 無理はしないでくださいね!」


 タラップが外され、汽笛が辺りにこだまする。

 大きく手を振るのがなんだか気恥ずかしく、小さく手を振っていると、誰かがこちらの腕をガシリと掴み、勝手に大きく動かし始める。


「ダメ。こういう時くらいかっこつけないの」

「……なんで君が乗ってるんですかねアマミさん」

「一応怪しい人間が乗っていないかチェックしていたの。問題ないみたいだし、今から降りるとこ」


 そう言いながら手すりに足をかけるアマミ。

 港に姿を現さないと思っていたらこんなところにいたのか。


「アマミアマミ、せっかくならこのまま一緒に行くかい? カイくんどう思う?」

「うーん、気持ちは嬉しいけど私も仕事があるからね。また、絶対に里に遊びに来てね、みんな」

「ふふ、分かりました。あまり危ない事は……お仕事上そうも言えないと思いますが、自分の身を大事にしてくださいね、アマミさん」

「うん、勿論。じゃあ、私も降りるね、とう! ああ~~!」


 気の抜けた掛け声と共に灯台に着地するアマミ。

 少ししんみりとしていた空気が、彼女のお陰で和らぐ。

 ……本当、今までにないくらい多くの人と関り、絆を深める事になったな、この大陸では。

 ……ここか先は、かつての仲間の陰がない未知の領域だ。

 一体どんな旅路になるのだろうか……一抹の不安が胸に去来する。

 だが、それと同じくらい楽しみで、期待に胸が膨らんでいく。


「みんなまだ手を振っているね」

「ええ。また、絶対に戻ってきましょうね」

「ああ。きっと今よりもさらに素敵な国になっていると思うよ、俺も」


 すぐには変わらないとは思う。

 染みついた風習が簡単に消えるとは思えない。

 だが、同時に彼らなら、みんなが手をとりあえば、どんな障害も乗り越えられると、そう信じる事も出来た。


「……ダリア、シュンがいれば、何があっても大丈夫だ」

「ふふ、そうだね! あの二人だけじゃないしね」

「ええ。多くの権力者が、力を持つ人が手を取り合った今、あの国はきっとどんな国よりも強いはずです」


 皆の姿が消え、俺達も港に背を向ける。

 そしてゆっくりと歩き出し、船の先端へと向かう。

 目指すは次の大陸『セカンダリア』。

 遥か先の大陸を見つめる様に、潮風を受けながら海原を眺める。


「……ここまで、本当に色々あった」


静かに目を閉じ、思いを馳せる。

 多くの人に助けられた。

 多くの問題に直面した。

 多くの命を奪い、救った。

 そして、俺自身の問題にも直面した。


「本当に沢山の事があったね、私もカイくんも」

「ええ、本当に。お疲れさまでした、二人とも」

「レイスがいてくれたから、俺もリュエも最後の最後で踏みとどまる事が出来たんだよ。ありがとう、レイス」

「うんうん。レイスがいてくれて、本当に助かったよ、私も」


 静かに手を伸ばし、手を取り合う。

 本当の意味でようやく自由な旅に出たような、そんな気さえしてくる。

 きっとこれまでよりも苦労も多いだろう。だが、それが辛いだろうとは思わなかった。

 その苦労でさえも、楽しむ為のエッセンスになると確信を持って言える。

 俺達はもう、どんな旅だって乗り越えられるのだから――




「はー! 大きい船はむなー! 黒いにいちゃん達も乗っていたはむな!」


 ……なんだか少しだけ苦労が多くなりそうな気がしてきたぞ、早速。


(´・ω・`)なお今月の28日に書籍版暇人魔王の八巻が発売されます。

既に表紙イラストも公開されていますので、興味があれば見てみてくださいまし。

アマミさんおっぱい大きい(歓喜

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ