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暇人、魔王の姿で異世界へ ~時々チートなぶらり旅~  作者: 藍敦
四章

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三十三話

(´・ω・`)別の人間の視点が入ります

 気が付くと私は草原の中に立っていた。

 それがここに来て最初の記憶。

 そして追いかけてくるように思い出される、昔の記憶。


 楽しかったのかな、それとも悲しかったのかな。

 私はそれがよくわからない。


 綺麗な服を用意してもらった。

 素敵なアクセサリーを用意してもらった。

 着飾った私を、みんな『綺麗だね』『素敵だよ』そう言ってくれた。


 けれども、私はそれが誰からの物なのか、そして誰が言ってくれたのかわからない。

 ぽっかりと何かが抜けたような、誰かの事が私の記憶から抜け落ちたように存在していなかった。


 ねぇ、貴方は誰なの?

 どうして私に優しくしてくれるの?

 私、こんなに沢山の物を貰っても、何も返せないの。








 意識が浮上する。

 深い水の底から、ゆっくりと浮上するような心地良い感覚に包まれて、私は大きく伸びをする。

 随分昔の夢を見た。

 今の私が始まった、その瞬間の夢を。


 草原を抜け、街を渡り歩き、男を渡り歩き、日の当たる場所に辿り着く前の自分。

 私を綺麗だとみんなが言ってくれる。

 大昔に言われた言葉と同じそれが、今は違って聞こえてくる。


 私を満たし、そして何かを思い出させてくれる故郷の歌のように。

 私に故郷なんてないのだけれどね。


「さてと、今日もお仕事です」






『お母様、おはようございます』


 食堂へと行くと、長テーブルに掛けた娘たちから一斉に声が上がる。

 みんな私と同年代に見えるけれども、私はもう何年も何年も生きたお母さん。

 みんなを引き取って、強く生きる術を教えるお母さん。


「おはよう。今日の朝食は何かしら?」

「ブロッコリーのサラダと、ラタトゥイユとパンです」

「奮発したのね、凄く美味しそう。では皆席について」


 さぁ、みなさんご一緒に。


『いただきます』




 今日は月に一度の、領主の一団が街を訪れる書き入れ


時。

 みんな夜に備えて念入りにお化粧をして、自分の価値を上げている。

 私も一人、自分を磨き決戦に備える。

 私は今日も、守りぬく。

 かわいい娘たちが安心して今日の糧を得られるように。





「ようこそいらっしゃいました皆さん。本日は我が『プロミスメイデン』へお越しいただき誠にありがとうございます」

「これはこれはグランドマザー! いつも自らお出迎え頂き有難うございます。本日はエンドレシアから大切なお客人をお連れしました。今日はそのお客人に最高のおもてなしをして差し上げようと思い参ったのです」

「まぁ、それは光栄です。では精一杯おもてなしをさせて頂きます。ですが、ここのルールはお忘れなく」

「勿論。娘さん達には『手を触れない。言い寄らない。そして触れていいのは心だけ』ですな」

「ええ。心に触れて、通じ合ったのなら、どうか娘を末永くお願い致します」

「ははは、中々どうして娘さん達はしっかり者ですからな。私の兵ではその心に触れ、逆に骨抜きにされる始末です」

「ふふ、ではこちらへどうぞ」


 領主。

 私が家を守るように、彼はこの地に住む全てを守る父のような人。

 今どき堅いと言われている私の流儀を受け入れて、見守ってくれるよき理解者。

 彼は今日も私のお家にいらっしゃいました。


 大切なお客様をおもてなししたいと、彼は我が家を選んでくださいました。

 ならば家長として、その役目を全うしてみせましょう。


「本日はようこそいらっしゃいました。この娘達の母の『―――』と申します、お客様のお名前をお伺いしても宜しいでしょうか?」

















 俺は今! セミフィナル大陸への第一歩を踏み出した!


 という訳でやってまいりましたセミフィナル大陸。

 ここは大陸の窓口であり最北端の港町"エンディア"

 大陸の名前や街の名前的に、RPGでは最終盤に訪れる街のようなそんな気がしてならない。

 あれだ、きっと凄く強い装備とか売ってるんだろ。


「まぁ普通に過ごしやすそうな長閑な港町なんですけどね」

「どうしたんだい、突然」

「いやなんでもない」


 ここは本当に窓口として存在するだけの町のようで、さほど広くもなく店も宿が数件ある程度だ。

 ここへ来る前に聞いたのだが、すぐ側に宿場町が存在するらしい。

 まだ日も高いし、馬車を捕まえる事が出来れば陽のある内に辿り着くことも出来るだろう。


「兄ちゃん、岸壁釣りはしねーのかい? 俺達はここで一晩明かしてから移動するんだがよ」

「いやあすみません、俺は先を急ぎますので」

「そうか、いや残念だ。兄ちゃんの作る飯は最高だったんだがな……じゃあ、また会うことがあったら宜しく頼むわ」


 若干後ろ髪引かれる思いで断りを入れ釣り人さん達とも別れる。

 急いでるわけじゃあないけど、このまま捕まるわけにもいかないからなぁ。

 まずは移動手段である馬車を探すた為にこの町のギルドへと向かう。

 冒険者ギルドは依頼等の受注や申請、魔物の部位の買い取りの等の他にも、馬車の時間の確認や予約、宿の紹介まで幅広くサポートしてくれている。

 昔はここまで手厚いサービスを受ける事が出来なかったのだが、オインクが総長に就任してからこのような形態になったらしい。

 本当、いい仕事する豚さんだ。


「馬車の確認の前に奉納しておこうか。貰った魚とか釣り道具一式」

「奉納って言うけど、私達の場合倉庫に預けてるだけなんだよね。なんだか皆を騙してるみたいで悪い気がするよ……」


 今も釣り人や地元の漁師が、大漁祈願なのか感謝の気持ちなのか、大きな魚を奉納している所だ。

 後で頂きます、ありがとう!


「すみません、今日これから出る馬車を探しているのですが」

「ようこそいらっしゃいました。ギルドへの登録はお済みですか? ギルドの構成員ならば割引サービスを受けることが出来ますが」

「あ、はいどうぞ」


 さぁ、隣の大陸の反応はいかに。


「ヒェッ! し、失礼しました! すぐに専用の馬車を手配致します! あの……今この地方を治める領主であらせられる"ウェルド"様が視察に参られているのですが、もし宜しければ……」


 効果は抜群だ。

 すでにオインクから各ギルドに通達されていると見ていいのだろう。

 というか、離れた場所に連絡する魔導具があるのなら、DariaやSyunとも連絡がとれるんじゃないか?

 ……ああ、この大陸までが管轄だって言ってたな、だから無理なのか。


「リュエ、どうする? 一応俺もリュエも領主と同等の立場なわけだけど」

「うーん……いい思い出がないのだけれど、視察に来るくらいだし良い人なのかな?」

「今後この大陸で活動するんだし、顔を売って損はないな。んじゃ面会しようか」




 少しして、俺達はギルドの上階へと案内される。

 領主が治めるのはここ港町とその周囲一帯、そして隣にある宿場町と近隣の森林地帯だそうだ。

 港なんて大陸の玄関口だ。そこを任せられるとなると、そうとうやり手なのだろう。


「失礼しますギルド長、ウェルド様。エンドレシアよりSSランク冒険者のカイヴォン様とリュエ様をお連れし致しました」

「おお、どうぞ中へお入り下さい」

「むお!? 今話題にあがったお二人ですと!?」


 室内から聞こえる、人の良さそうな二人の男性の声。

 部屋の中へと通されると、好々爺然とした老人と、中年の少し小太りの男性がチェス板を挟んで座っていた。


「おお、貴方様方がオインク様肝いりの冒険者のお二人ですな! お初お目にかかる、ここのギルド長を任されている"ラント"ですじゃ」

「同じく、この辺りの領主を努めさせて頂いています"ブック・ウェルド"と言います。いやはや、こんなに若々しいお二人だとは」

「いやいや、聞けばお二人は創世記の人間と聞いておりますじゃ、ワシらの方が若輩者じゃろう」

「なんと! これは失礼致しました」


 あれだ、親戚の気のいいおっちゃん達だこれ。

 絡まれると厄介だが、面倒見の良さそうなそんな印象を受ける。

 昨今親戚づきあいを嫌う人間も多いが、俺は結構好きだったりする。

 色んな酒の話を教えてくれたりして楽しいんだよなぁ……。

 二人の仲も良好のようだし、どちらも顔を繋いでおいて正解だ。


「む、私のほうがおばあちゃんだと言いたいのかい? 心は永遠の……二十歳だよ私は」

「何故そこで言い淀む。お二人共、普通に年下扱いで問題ありませんよ」


 そもそも俺はまだこっちにきて1年、ここに来る前とあわせても28年しか生きてない若輩者だ。

 若輩者と言ったら若輩者だ。


「それに此方こそ視察、会談の邪魔をしてしまい申し訳ありません。折角ですので顔だけでもお見せして置かなければと参った次第なのですが」

「構いませんぞ! 毎月ラント殿とこうしてチェスを打つのが楽しみでしてな。会談など建前ですので」

「これこれブック殿……カイヴォン殿、今のはオインク様には内緒で頼みますぞ?」

「ははは、オインク様には頭が上がりませんからな。ではそうですな、少々真面目な話でもしましょうか」


 本当に和やかなまま始まる近況報告と、それに対するギルド側の対応、それについてが二人が協議する。

 そこに今回は俺も加わり、ついでに可能な限りこの大陸の情報を手に入れようとする。


「つまり、今年は例年よりも早く春が訪れるという訳ですな」

「そうですのう。エンドレシアからこちらに吹く風を計測しておるのじゃが、やはり幾分温かいのう」


 俺のせいじゃないよ?


「恐らくじゃが、エンドレシアの北方からの風が例年より幾分温度が高い影響じゃと思うのじゃ。ソルトバーグに向かったオインク様も、そのような事を言うておったでの」

「ほほう、では様子を見て、農家の人間にもこの話を広めておきましょう」

「しかしそうなると、収穫祭や七星祭のスケジュールを今のうちに調整せねばならんかもしれんの……」

「なに、これは嬉しい悩みではないですか。温かいのならば、収穫量も上がりましょう」

「そして税収を安定させ、こうしてお主が遊びにこれるというわけじゃね? この不良領主めが」

『はっはっはっはっは』


 ……俺のせいじゃないよ?


 その後聞けた話では、この大陸の中央には首都があり、そこで毎年領主達の集まりが行われそのタイミングで開放された七星を祭る催しが開かれると言う。

 開放された七星の名は『プレシードドラゴン』七星の一に位置する巨大な竜だと言う。

 やはり、初代七星と対応しているようだ。昔の七星の一も『ダスタードラゴン』と言う竜種だった。

 まぁ俺が倒したのはそのレア種だったわけだが。

 ……そのプレシードドラゴン、さすがに討伐する訳にはいかないよなぁ?

 どうやら現状、大人しくこの大陸のはるか上空を飛び回り、毎年祭りの時期に姿を表し実りを豊かにする光をまき散らし、封印されていた山で一月眠るだけだと言うし。

 本当に豊穣神のような事をしていて、なんだか拍子抜けしてしまう。


「おっと、そろそろ時間ですな! カイヴォン殿、それにリュエ殿、日が暮れる前に隣町に向かおうと思うのですが、是非一緒に参りませんか?」

「それは願ってもないです。お言葉に甘えさせていただきます」

「ありがとうブっくん、お世話になるよ」


 ブッくんておま。

(´・ω・`)みんな、夏か近づいてきたけど水の事故には気をつけるのよ?


(´・ω・`)あとすこし更新が遅れるかもしれません

(´・ω・`)季節外れの夜桜を求めて彷徨うのです(意味深)

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