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暇人、魔王の姿で異世界へ ~時々チートなぶらり旅~  作者: 藍敦
十六章

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三百五十八話

(´・ω・`)都市部の一部店舗では既に七巻が発売されているそうです

やっぱり東京は早いなぁ

【カースギフト】発動

対象者 ダリア   [魔導の極意]付与

対象者 シュン   [簒奪者の証(闘)]付与

対象者 レイス   [極光の癒し]付与

対象者 リュエ   [魔力極限強化]付与

対象者 カイヴォン [生命力極限強化]付与

対象者 チセ    [再起]付与


[魔導の極意]

使用する魔術、魔法、魔導の効果が増加する

ダメージ2倍 効果時間2倍 回復力2倍 範囲2倍 消費MP半減


[魔力極限強化]

MP最大値2倍 回復速度2倍 時間経過と共に魔力が強化されていく




 自分を含めた全員にアビリティを付与し、現在自分達がどんな状態になったのかを説明する。

 本来、付与出来るアビリティは制限されており、本人のスペックギリギリの物を付与すると大きな負担が掛かるのを知っている。

 例えば[生命力極限強化]は、リュエですら激痛を感じ、俺も初めての時は身体が悲鳴を上げたのを覚えている。

 その一方で[極光の癒し]はそういった負担がなく、回復力も[生命力極限強化]程ではない為か、レイスに付与しても拒絶反応が出る事はなかった。

 だが――さすがにシュン、ダリア、リュエはレベルがレベルだ。付与できるアビリティに制限がなく、どれでも好きな物を付与する事が出来た。

 そしてチセも、ゲーム時代の七星や、この世界の七星に関わるアビリティは付与出来なかったものの[再起]という、最高の保険を与える事が出来たのだった。

 本当ならば【サクリファイス】を発動させ、チセが受けるダメージを俺が肩代わりする事で、より安全を確保出来るのだが……けれども、今回ばかりは俺も万全の状態で挑みたいのだ。

 万が一、チセが重傷を負った反動でこちらが弱ったら。

 そしてその瞬間に不意を突かれたら。

 ……絶対に負けられない戦いなのだ。悪いが今回ばかりはナシでいかせてもらう。


「――以上が俺の与えた加護の内容だ。ダリアとチセはこれで出来る限り住人を助けて回って欲しい。チセ、一度は蘇るからと、絶対に無茶はしないと約束してくれ」

「分かりました。……本当、反則もいいところじゃないですか。どうやったら倒せるんですかカイヴォン君」

「不可能だ。まだまだ奥の手は沢山あるんでね」

「この力は……これなら怪我人がいてもその区域ごと治療出来ます。感謝しますカイヴォン」

「私のもこれ凄いねー……今もどんどん力が漲って来るのが分かるよ」

「私もこれは驚きです……そういえば以前も似たような感覚を味わった事があります」

「俺のこれは……懐かしいな、あの最後の日に入手したアビリティだな?」


 準備が済んだところで、目の前に迫る都市の入り口へと向かう。

 御者席には俺ではなく、シュンとダリアの二人がいる。

 思えば俺、一応この国で指名手配されていたんだっけ、王城破壊の罪と逃走だっけ?

 すると魔車が止まり、門番の声が外から聞こえてくる。


「止まれ。現在この都市は厳戒態勢に入っている。いや……もはやこれは異常事態だ。本日中に大きな決定が下されるかもしれん。悪いことは言わない、騒ぎに巻き込まれる前に立ち去るんだ」

「……いいえ、そうは行きません。私達二人は、この国を守る義務があります。貴方達こそお逃げなさい。愛すべき臣民を、この戦いに巻き込むわけにはまいりません」


 聞こえてくるのは、二人の正体を知った門番の驚愕の声と、この事態をどうにか出来るのか、という淡い希望のこめられた訴え。

 知らされていないのだろう。突然だったのだろう。だがそれでも、この国から逃げる事も出来ず、ただ上の指示を待っていた……と。

 そして魔車が再び動き出し、王都の中へと突入した。


「意外だったな? てっきりお前ら二人も、裏切り者か逃亡者としてフェンネルが手を回していたりしているんじゃないかと思ったが」

「……今にして思えば、私達は彼に使われる事はあっても、相談を受けたり、助力を請われた事は一度もありませんでした」

「俺達ですらそうだった。アイツが他の誰かに何かを頼む事はないだろうし、計画に加担させるとも思えない。……全部、全部自分一人で十分だって考えているんだろう」

「……部下も領民も兵士も全部、どうでも良い、か」


 そいつは、豪胆とは呼べない。ただただ……寂しいヤツなだけだ。

 自分一人しか信用せず、そして自分だけで全てを完遂させる為の計画。

 そこまでしてお前は何を望む。自分が作り上げた居場所、国をも犠牲にしてお前は何を目指す。


「……ダリア、俺は一人で先に城に向かう。リュエ、レイス、シュンは後から城に侵入、場内を探ってみてくれ。一応、七星の場所は知っているんだろ、シュンは」

「……ああ、知っている。俺達はそこに向かう。カイヴォン、お前はフェンネルのところへ向かうと良い。きっとアイツは……まだ玉座にいる」

「もう王様じゃないのに、未練がましいヤツだな。じゃあ今の国王はどこにいるんだよ」

「分からない。だが、恐らく城のどこかにいる筈だ。もしも玉座の間にまだいるようなら、脅してでも城外へ逃がしてくれ」


 魔車の速度を緩め、飛び降りる準備をしながら最後の打ち合わせをする。

 やはり都市内で出歩く人間の姿はまばらで、皆あの異形と化した城に恐怖を感じているのだろう。

 だが、それでも逃げ出さないあたり……もしかしたら、リュエが以前言っていたように彼らの感情や意思の一部が麻痺してしまっているのかもしれない、な。


「ダリアとチセはこのままアークライト卿の元へ向かえ。すぐに避難指示を出すんだ」

「分かりました。カイヴォン……ご武運を」

「負けないでください、カイヴォン君」

「……ああ、任せろ」


 気持ちが昂る。いよいよこの時が来たのだと、感情に呼応するかのように姿が変わる。

 魔王。ああ、そうだ魔王だ。魔の王。邪悪の頂点に立つべきは俺であり、あの禍々しい城も俺の下にあるべき物。

 断じてエルフのガキが我が物顔で城主を気取って良い場所ではないのだから。


「……俺にこそ相応しいと思わないか、あの城は」

「クク、そうだな。魔王の城に挑む魔王なんておかしな構図だ」

「えー私前のお城の方が良いんだけどなー……カイくん、あれ元の姿に戻してね?」

「ええ、そうですね。私もあのお城を見学したいとは思いませんから」


 そんな軽口を叩きながら、俺は魔車から飛び立つ。

 魔王の城、か。たしかにそうだな、断じてあれはエルフの国にあるべき物ではないさ。

 眼下に都市を据えながら、あの巨大で禍々しい、赤黒い大樹の城の頂上、玉座の間へと直接向かうのだった。






「俺達は正面門から直接向かう。リュエ、悪いが今の間だけフードを被ってくれ。余計な茶々を入れられたくない」

「分かった。じゃあ私達もここで降りるんだね」

「了解しました。チセさん、ダリアさん、後の事はお任せしましたよ」

「ええ、私も避難がひと段落ついたらそちらに加勢しに向かいます」

「わ、私も! だから、皆さん、絶対に死なないで!」


 何百年ぶりだろう。

 私の隣にシュンがいる。私の剣の隣には、いつだって彼の剣があった。

 神隷期での戦いを思い出しながら、私は闘士を燃やす。こんな戦いいつぶりだろう。

 不思議と、今ならあの龍神にだって勝てるような、そんな気持ちさえ湧いてくるんだ。


「シュン、七星について詳しい情報をお願い」

「分かった、走りながらでいいな?」

「うん。レイスも聞いておいて。たぶん、長期戦になると思うから」

「……分かりました」

「剣神ハイネルンは一般的な人間と同じ大きさのゴーレム種みたいな相手だ。動く騎士甲冑みたいな物だが、その強さは尋常じゃない。都市を丸ごと切り裂き、魔法を剣で打ち破り、俺よりも早く動き、また使う剣術も俺と同等」

「……一撃貰ったらおしまいだって思ってよさそうだね」

「そうだ。だから俺がかく乱するが……正直、俺の剣では攻撃力が低すぎる。こいつは対人用であり、あの化け物相手には分が悪い」


 そう言いながらシュンは、青黒い、まるで夜空のような色の刀を見せてくれた。

 あの不思議な攻撃。後はから発生する斬撃は、確かに一見すると強そうではあるけれど、その破壊力はそうでもないのだろうと私も思う。


「シュンの元々の刀はどうしたんだい? あれ、凄く強力な武器だったじゃないか」

「それだ。俺の刀はハイネルンの封印の楔として使われている。魔力を長い間受け止められる核が必要だったから、俺の剣が選ばれた訳だ」

「なるほど……じゃあ封印がもし解かれているなら……どこかにあるんだね?」


 私の時と同じだ。エルフ達に渡された青い剣。あれを楔にして、私も龍神を封印した。

 いつしかその剣は魔力を帯び、そして今私の腰にかかっている。

 ……なら、きっとシュンの剣もとても強力な物になっているはず。

 その事をシュンに伝えると、彼は少しだけ嬉しそうな表情を浮かべ――


「……なら、勝てる。俺の剣はカイヴォンの奪剣ほどじゃないが、反則級だ。あれさえ戻れば潰せる、絶対に」

「……分かりました。では私はその封印の場で戦いが始まり次第、周囲を調べてみます」


 レイスがその提案をし、私達もそれに頷く。大丈夫……私達なら勝てるよ。

 私とシュンが組んで負けた事なんて一度もなかったじゃないか。

 だから、今度だって……。


「……王城の門番がいない。さすがにこの状態でここに居続けるのは無理か」

「酷い瘴気だ……二人とも、補助を掛けるから止まっておくれ」

「……見えます。物凄い勢いで魔力が城の上部へと向かっているみたいです」


 二人に瘴気耐性を上げる補助をかけ、改めて城を見上げる。

 植物だったもの。赤黒く脈打つその表面を見て、私はある事を思い出していた。

 ……これ、見たことがある。たしか――


「……カイくんの剣と一緒だ」


 カイくんの剣が変化した事がある。

 マインズバレー、鉱山の町での事。私とカイくんは魔物の氾濫が起きた後、もう一度別な坑道に向かい、その最深部で……アレを見た。

 そして、カイくんがアレを切り裂いた後……彼の剣が今の植物と同じように、赤黒いオーラを纏い、そして血管の様な物が取りついたんだ。

 ……いつの間にか血管も薄れて、綺麗に戻っていたけれど。


「……なにか、この変化の核になっている物があるのかも」

「それが何かは分からないが、今は七星の元へ向かおう。こっちだ、付いてきてくれ」


 この禍々しい領域に、まだなにか隠されているような、そんな予感と共に、私もこの魔城へと足を踏み入れたのだった。






「唐突な訪問、どうかお許しください」

「ダリア様……いえ、このような事態に貴女様がお出で下さり、お恥ずかしい話ですが、救われたような気持ちでいっぱいです……」

「アークライト卿、あの城の変化は昨夜と見て間違いありませんか?」

「はい。そして今朝になり、宮廷貴族が集まり国王に指示を仰ぎに向かったのですが……王族の皆さまがどこにも見当たらず、それで皆手をこまねいている状態というのが実情で」

「分かりました。国王の事は気がかりですが、今すぐアークライト卿には全ての私兵を使い、他の貴族の方々に伝言を頼みます」

「は。了解致しました。して、その伝言とは……」

「皆、王都から避難してください、と。全ての私兵を以って、この都市にいる全ての人間を都市から避難させる様に動いてください、と」


 仕方のない事。貴族と呼ばれても、彼らは領地を持つでもなく、政治に参加するでもなく、ただ過去の繋がりを纏めるだけの存在。

 その中でも数少ない、要職を務めた事のある人間に私は協力を願い出る。

 それは、遠回しに『自分達の故郷を捨てろ』というもの。

 ようやく手に入れた安住の地。そしてそこで生まれた彼らにそれを告げるのは心苦しい。

 けれども、大事なのは居場所ではないと、そう言い聞かせる。

 私達だ。私達こそが国なのだ。人あっての国なのだ、と。


「……分かりました。直ちに向かわせます。周辺貴族の元へは私が直接出向きます。ダリア様もどうかご同行願えますでしょうか」

「そのつもりです。私が直接動いた方が説得力も増すというもの……今、この都市は滅亡危機に瀕しているという事実の」

「……この事態は、我らが引き起こしたものなのでしょうか。これは、我らの過去の罪が返って来た結果なのでしょうか……」


 彼の問いかけに、私はどう答えれば良いのかわからなかった。

 けれども――私の中にある記憶が、私が『俺』だった時の思いが表に出る。


「……いいえ、これはある一人の野望の結果。そしてそれを止められなかった昔の人間、つまり私の責任です。今を生きる貴方達には罪なんてありません」

「ですが……分かりました。では向かいましょう。不肖アークライト、ダリア様の贖罪にどこまでもついて行く所存です」

「……感謝します、アークライト卿。チセさん、一緒に行きましょう。もしかしたらおかしな動きをする人間が現れるかもしれません。その時は……お願いします」

「分かりました。お二人の事は私が責任を持ってお守りします」


 この空気にあてられたのか、チセさんもまた、本物の騎士の様に振舞う。

 頼もしく、そして同時に……心配で。

 けれども、同時にどこか彼に似ている彼女ならば、どんな困難にも打ち勝ちそうで。


「……向かいましょう。住人を全員無事に都市の外へと向かわせますよ」








 以前、俺達が城から逃げ出した時に使った窓を見つける。

 変色し、蠢く樹脈に埋もれつつあるその場所へと向かうと、目の前にあの時と同じ、大きな扉がそこにあった。

 ドクンドクンと、周囲全体から聞こえる鼓動の音に、まるで巨大な生物の体内に侵入してしまったのかと、そんな錯覚にとらわれる。


「[ソナー]を使うまでないか。居るな、この向こうに」


 扉越しでも分かる程の強い存在感に、ごくりと唾を飲み、不気味に変化した大扉に手をかける。

 ミシリと、嫌な音と共に開かれたその先には、あの時となんら変わらない、けれども確かに空気だけが変わっている玉座の間があった。

 そして――既に退いた筈の王が、かつてエンドレシアの森でエルフの族長を務めていた男が、その玉座に腰かけていた。


「ふん、想像通りとはいえ面白くないね。リュエ先生じゃなくてお前が来――」


 瞬間、駆け出し床を殴りつける。

 衝撃波と共に打ち出される床の破片が目の前を一瞬でズタズタに粉砕し、その余波で玉座が跡形もなく砕け散り、そして部屋の半分が爆弾でも放り込まれたかのような様相に変化する。


「口を開くな」

「っ――!」


 薄い障壁なようなもので身を守っているフェンネル。

 一瞬でこちらの間合いから逃れようとする男を、障壁ごと掴み取り床に叩きつけ、ガラスが割れるような音と共に、生々しい、グチャリとした音が響く。


「……なにもさせねぇよ」

「……ぐ……」


 頭を踏みつぶそうとした次の瞬間、吹き飛ばした玉座の辺りから猛烈な光の奔流が噴き出し、こちらを飲み込む。

 焼けるような痛みに目を瞑りそうになるが、その光の中で強く拳を突き出し、その光を弾き飛ばす。

 足元にいた男は既に蒸発してしまっていたが、その光が放たれた大本に目を向ければ、傷一つない状態のフェンネルがこちらに楽しそうな目を向けていた。


「いや驚いたね。やっぱり一筋縄じゃ――」

「剛拳『砕災』」


 一足に目の前まで迫り、今度は腹に拳を叩きこむと、またしても確かな手ごたえが手に伝わる。

 だが――次の瞬間目の前の身体が破裂し、こちらの皮膚を焼き爛れさせていく。

 ……なんだ、これは。実体があるはずなのに何故死なない。


「最後まで喋らせてくれないかな? 本当に君は無礼な男だよ」

「……何度でも殺してやる。俺が諦めると思うなよ」


 天井付近、シャンデリアの上に立つフェンネルが呆れたようにこちらに声をかける。

 ……なるほど、こいつはちょいと厄介だ。ただごり押しで殺すにゃ手間がかかりそうだ。


「……君も邪魔だよ。僕の目的に君はいらないんだ。だから――ここで沈め」


 そして次の瞬間、見えない圧力、まるで重力が増したかのような衝撃を受け、支え切れなくなった床が崩れ去ったのだった。


(´・ω・`)もう数話で今章も終わりです

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