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三百五十五話

(´・ω・`)29にちまで連日更新は続けますが、それ以降はしばらく休憩します

「確か……このアーチをくぐらないようにして、反対側から通って……」

「ええ、そうです。出た時と逆の順番ですね。その後に道を進んで行くと池が現れるので、今度は半時計周りで二周になります。今思えば随分と複雑な術式ですよね、これ」


 隠れ里を目指して徒歩の行軍。疲労が出てくる事はないのだが、先程から森の中が珍しいのか、シュンと手を繋いだジュリアがしきりにふらふらとどこかに行きたそうに歩き回り、思いのほか時間がかかってしまっていた。

 まぁ気持ちは分かるがね。今の彼女は言わば子供、赤ん坊に近い状態なのだろう。

 好奇心いっぱい。仕方がない。


「ジュリアちゃん、ほらおいでおいで。お姉ちゃんと一緒に行こうか」

「ぅぁ~……ぁ~」

「すまない、リュエ」

「いいよいいよ。私に妹が出来たみたいで楽しいよ?」

「ふふ、妹ならもうここにいるではありませんか?」

「よーし、じゃあレイスも私と手を繋ごうか。三人で一緒に行こう」


 微笑ましいその光景を見ていると、シュンも一瞬だけ、珍しく表情を和らげていた。

 そうして、目的地である池に辿り着き、ぐるぐるとその周りを歩いていると、やはり不思議な事に、対面する岸にいつのまにか道が出来ていた。


「さて……一応ここは隠れ里で、その性質上無断で新しい人を連れて入るのは不味いと思うんだ。だから、先に俺が行って里長にお伺いを立ててこようと思う」

「あ、そういえばそうだったね。じゃあカイくんに任せても良いかい?」

「勿論。リュエはジュリアと一緒に待っていると良いよ。随分なつかれたみたいだね」


 両手でヒシッとリュエの手を握るジュリアの姿が、なんだか本当の妹のようだった。

 一先ず池で皆と離れ、俺はいつのまにか池から道に向かって伸びている川を辿り隠れ里へと向かう。

 たった一カ月半で再び戻って来る事になるとは。長いようで短い旅だったな。

 ここを出てから今日までの事を思い返していると、森の出口が見えて来た。

 相変わらず澄んだ小川がゆったりと流れ、どこか不自然な色の空をした、そんな不思議な場所。

 少し遠くを見れば、共和国側から来る商人の手続きをする為に存在する、今ではクーちゃんが暮らしている建物も見える。


「あの煙は……びっくりした、あれはスモーク作りの煙か」


 空へと昇る煙の姿に、一瞬あの惨劇を思い出す。だが、その規模から見て恐らく、俺が作った燻製機だろうと、そこを目指して歩く。

 すると、建物の裏手一生懸命作業をしている、薄緑色の髪をした小柄なエルフの少女が。


「今日も燻製作り、頑張っているみたいだね、クーちゃん」

「うん。燻製にんにくオイルの注文が凄くて、毎日作らないと間に合わないんだ」

「へぇ……あの試供品気に入ってもらえたみたいだね。凄い利益になっているんじゃないかい?」

「正直儲かり過ぎて恐いくらいだよ。お陰で里の暮らしもだいぶ豊かになった。足りなかった家具とか魔導具も行き渡ったし、もうすっかり里は元通り、ううん、元以上」


 せっせと手を動かしながら、そんな報告をしてくる彼女。

 相変わらず少しだけ眠そうな声で、その傍らには茶トラに似た模様の猫の姿も。

 よかった、変わりないようだ。


「これもかいぼんのお陰――あれ? かいぼんだ!」

「はい、かいぼんお兄さんですよ」

「戻ってきたの? 集中し過ぎて誰の声かわからなかった」

「ははは、そっかそっか。ただいま、クーちゃん。里長と面会したいんだけれど、今はどこにいるのかな?」




 クーちゃんに連れられてやって来たのは、里長が普段働いている動物や里の人間向けの診療所だった。

 今の時間は診断の最中のはずだが、最近体調を崩す人間もいなく、毎日暇を持て余しているそうだ。


「おや、今日は患者が来ましたか。はいはい、どうぞ入ってらっしゃいな」

「失礼します、先生」

「……なるほど、夜の相談ですか。そうですね……強い精力剤を出しておきますので、それでガンガンヤッちゃってください。はい、次の患者さんどうぞー」

「初手下ネタはやめてくださいよ里長……どうも、ご無沙汰しています」

「あら、夜は御無沙汰でしたか? ではそうですね……なにかおかずになる物を――」

「だから違いますって。ちょっと頼みがあって来たんですけれど」

「ええ、そうでしょうとも。お久しぶりですねカイヴォンさん。想像よりも早い再訪問、歓迎しますよ」


 ようやくまともに取り合ってくれる里長。今日も勤務中だからか、素敵な眼鏡美人になっております。

 ……ぱっと見、一四、五くらいの娘さんなのに、どうしてこう大人な魅力を醸し出しているんでしょうかね。


「実は今、里の外にリュエ達を待機させているんです。今回、サーズガルドに向かいたいので、ここを通らせてもらいたいのですが――」

「ええ、構いませんよ。そんな、わざわざ一人で聞きに来なくても――」

「いえ、実は今回、新たに三人、旅に加わりまして。無断で新しい人間をここに入れるのもどうかと思いまして……」


 すると、やはりどこか神妙な表情を浮かべながら彼女は考え込んだ。

 機密保持の為、この場所を知る人間を最小限に留めておきたいのだろう。

 すると、彼女は考え込んだ末にこう切り出した。

『……その新しい人間の中に可愛い子はいますか?』と――




「まぁまぁまぁ! なんと可愛らしいのでしょう。リュエさんの娘さんですか? あ、違う。そうですよねぇ……綺麗な銀髪ですし、私の子でしょうか?」

「ぁ~……」

「……なんだこの子供は」

「……彼女が里長だ。一応、アンドロイド的な存在なんだよ」

「どう見ても人間だが……本当なんだな?」


 里長に来客の内容を伝えると、直接出迎えにいくからと、こうして池の畔までやって来る事になったのだが……初めてレイスを見た時のような反応でジュリアに構いだした。


「おや、こちらは白髪の少年ですか。可愛らしいですね、お姉さんが優しく色々教えて差し上げますよ? さぁ、いらっしゃい」

「悪いが、これでも長生きをしている。里への入場許可を頂き、感謝します」

「あら? というと……ヒューマンですよね?」

「里長、そいつサーズガルドの剣聖とか呼ばれてるヤツですよ」

「名乗り遅れました。シュンと言います」

「まぁ……噂には聞いていましたが、こんな美少年だったとは」


 そして最後となる、我が妹に里長が目をつける。


「貴女は……珍しい瞳をしていますね。それにこの髪は意図的に色を抜いている様子……ダメですよ、乙女の髪はもう少しいたわってあげなければ」

「は、はい……」

「不思議な雰囲気の方ですね? とても興味深い……」


 どうやらお眼鏡にかかったようですね?


「分かりました。通り抜けを許可します。それと、例の件も了解しました。一応アレには生態診察の機能もありますからね。時間がかかるかもしれませんから、今夜は私の屋敷にお泊りくださいな」

「っ! 本当ですか……! 感謝します、里長殿……」

「まだ、なんとも言えませんけれどね。ただこの可愛らしい娘さんの為になるのなら、喜んで協力します」


 まだ泣くのは早いだろ、シュン。




 屋敷への道すがら、里がどんな様子か尋ねてみると、外部からの無理な侵入を試みる人間もおらず、平穏無事な日々を過ごせているそうだ。

 里の暮らしも、先程クーちゃんが言っていたように徐々に向上していき、今は各家がクーちゃんの真似をして燻製作りをするようになったそうだ。


「以前、行商人から買い取った、燻製したピクルスがあったのですが、この里でも作れないかと、大規模な燻製小屋も建造中みたいですね。良い意味で里も変わってきています」

「なるほど……それでしたら、年単位で仕上げる物なので、大量に取れた野菜の貯蔵も兼ねて、大量に作ると良いと思います」

「やはりそうでしたか。それにしても……自給自足から食品加工まで一気に進歩してしまうとは思いませんでした。やはり皆、新しい事に飢えていたのでしょうね」

「……少し、早急すぎますかね。余計な事をしてしまったでしょうか」

「いいえ。これも必要な進歩でしょう。それに、私も気に入っていますから、燻製」


 放任というか、過度の干渉をしない里長。だが、それでもこの流れが嬉しいのか、淑女然とした微笑みを浮かべながら、自分の屋敷の扉に手をかける。


「では改めまして。ようこそいらっしゃいました。お部屋は以前使っていた場所をお使いくださいまし。シュンさんとジュリアさんはその隣の部屋を用意しますので、それまで暫し、皆さんと一緒にお過ごしください」

「何から何まで、本当に感謝する。あまり出来る事は多くないが、なんでも言ってくれ。なんでもする」

「あら、そうですか? でしたら今晩にでも――」

「シュン、滅多な事言うもんじゃない。もっと自分を大事にしろ」


 食われちゃうぞ。

 と、ここで気になっていた事を里長に尋ねる。

 我が友人が今どこにいるのだろうか?


「アマミでしたら、自分の家で牛さんのお世話をしていると思いますよ。暫くここに居た方が良いという話なので、思い切って牛を増やしたんですよ」

「ほうほう。後で挨拶に向かわないとな」

「それと――例の件ですが、貴方とダリアさん。そしてシュンさんとジュリアさんの四人でお願いします」


 もちろん、本来の目的も忘れない。

 彼女としても、あまり人に見せたくないのだろう。

 里長は部屋の用意にとりかかるからと、俺達も一度一つの部屋に集まる。

 さて、これからについて打ち合わせをしなければいけないな。


「恐らく、今日の夜には診断が出来ると思う。検査に時間がかかる事を踏まえて、最短で二日は滞在した方が良いと思うんだが、どうだ?」

「……すまない。今は一刻を争うかもしれない時だというのは分かっているんだが……」

「いえ、構いません。シュンが万全の気持ちで挑める状況を作った方が、良い結果に繋がるでしょうしね」

「ジュリアちゃんの治療って私達は見せてもらえないのかい?」

「ああ、あれは里長としても、あまり見せたくない部分なんだ。彼女の気持ちを考えて、既に知っている俺とダリアが適任だと思う。勿論、必要になれば俺から里長を説得するつもりだけれど」

「そうですね、誰しも人に知られたくない事はあるでしょうし……ではその間、私はクーちゃんおところに戻って、ここ最近の取引の記録を見たりしてきましょうか」

「じゃあ私は~……そうだ、ちーちゃんに里を案内してあげよう! 一緒に後で出かけようか」

「分かりました。なんだか不思議な場所ですし、ちょっと楽しみです」

「んじゃあ俺は里長の準備が終わるまで、ちょいとアマミのところに顔を出してこようかな」

「では、私はシュンとジュリアと一緒にいましょう。念のため、裏の大樹の様子も見ておきたいですし」


 一先ず里での過ごし方を決めた俺達は、里長にそれぞれの予定を話し、夕食までには戻ると約束し屋敷を出る。

 俺も夕食の準備を手伝うと提案したのだが、どうやら初日の歓待は自分の仕事だから、と譲らない様子なので、今日のところは彼女のご厚意に甘える事にした。

 なんでも、俺が彼女に上げたレシピノートをしっかり研究したらしく、自慢の一品を出してくれるのだとか。

 料理上手な里長の事だ。期待が膨らんでしまう。


「じゃあ私とちーちゃんは子供達のところに行ってくるね」

「行ってきます。ここは日暮れが早いらしいので、早めに戻って来ますね」

「では私も行ってきます。帰りはクーちゃんも一緒になると思います」

「では、私とシュン、ジュリアは屋敷の裏へ行ってきますね」

「ああ、みんないってらっしゃい。じゃあ俺も行ってくるよ」


 皆と別れ、アマミ牧場を目指す。以前向かった時は『牛子』と呼ばれた牛さんが一頭いただけだった牧草地帯だが、今はどうなっているのだろうか?

 道を進むと、辺り一面の緑が広がり始める。そして、そこに点在する白と黒のまだら模様達。


「おお……凄いな、だいぶ増えているじゃないか!」


 のんびり優雅に草原をいく牛さんや、もしゃもしゃと牧草を食べる牛さん。

 横になり眠る牛さんや――一緒になって草の上に寝転ぶ牛乳の娘さん。

 ……アマミが寝てたでござる。


「おーい、そこの金髪の牛さんやーい」

「……ああー……なに、どうしたのー」

「ほら、寝ぼけていないでおきてくれよー」


 声を掛けると、まるで牛のような間延びした声を上げたアマミが、のそのそと起き上がった。

 目をこすりながら振り返った顔は、どこかぽややんとしていて、まるで双子のレイラのように見えた。

 ほら、アイツいつもぽややんと間延びした顔しているじゃないですか。


「ん……あれ? あれ!? カイヴォン!?」

「ああ、久しぶり。またここに戻ってきたんだ。今回は二日程――」


 するとこちらに気が付いたアマミが、両腕を広げて駆け寄ってきた。

 キラキラと満面の笑みを浮かべながら走る彼女の髪が風になびく。

 再会のハグなのか!? そんなに俺との再会が嬉しいなんて、ちょっとこそばゆい。

 ここは俺もしっかりと受け止めなければと、両手を広げて待ち構える。

 だが――直前で立ち止まった彼女が、広げていた両腕前に差し出した。


「お土産頂戴!!!」

「分かってたよチクショウ!」


 アイテムボックスから品を取り出す。

 女性へのプレゼントだからと、綺麗な包装紙で美しく仕上げられた小包を彼女に手渡す。

 すると、思いのほかしっかりとした梱包に彼女も驚いたのか、少しだけ畏れるように開いていく。


「これ……うわぁ……てっきり冗談で変な物渡されるかもって思っていたんだけど……凄い、綺麗でお洒落だね、これ」

「気に入ってもらえて何よりだよ。なんでも体温調整の効果もあるらしいんだ。普段使いとしてもいけるし、お洒落にもなるし、いいかなって」

「あ、本当だ……ありがとうカイヴォン、凄く嬉しい」


 面と向かってそこまで感謝されて、その上そんな顔されると……照れてしまいます。


「今夜は里長の屋敷に泊まるんだけれど、アマミも夕食一緒に食べるよね?」

「うん、もちろん。最近しょっちゅう里長のとこで食べているんだよね」

「なるほど。それにしても牛、だいぶ増えたね?」

「でしょう? 牛子Ⅱから牛子XⅢまでいるんだ」

「ネーミングよ」


 なーんで全部牛子なんですかね?




 夕暮れ前。あっという間に空の色が変わるこの場所の夕暮れ前は、昼の空となんら変わりはなく、アマミに言われるまで気が付かなかい程だった。

 そして屋敷に二人で戻ると、丁度レイスがクーちゃんと一緒に戻って来るところだった。


「レイスさんお久しぶりです」

「はい、アマミもお変わりない様子ですね。お久しぶりです」

「アマミアマミ、里長が今夜はごちそうだって。牛、一匹連れてきて」

「ダメ」


 相変わらずの『ダメ』を聞きながら、屋敷に入ろうとすると、丁度屋敷の裏庭の方からダリア達が現れた。


「おや、お久しぶりですアマミさん」

「ダリア様! お久しぶりです! そちらのお二人は……」

「初めまして。シュンと言う者です。今回、自分の縁者であるこの子の治療の為、立ち寄らせて頂きました」


 名乗りと同時に硬直するアマミー。仕方ないね、君一応サーズガルド側の間者でもあったし。

 何故あらかじめ彼女に教えていなかったか? そりゃこの反応が見たいからですわ。


「は、はじめましてシュン様! 御高名は兼ねてより……こうしてお目にかかる事が出来て、誠に光栄です!」

「いや……そんなに畏まられると……本当にただの客の一人にすぎないんだ」

「まぁアマミも剣士なんだ、仕方ないだろう?」

「むぅ……そうなのか」


 ジュリアに連れられるように先に屋敷に入っていくシュン。

 すると、アマミが猛烈な勢いでこちらに尋ねて来た。

『なんでシュン様がいるの?』『シュン様も友達なの?』と。

 それに正直に答えると、改めてアマミが『本当、そろそろカイヴォンの事いろいろ教えてよ、さすがに異常だよ』と。

 いやぁ……この上さらにセリューの領主に求婚されたーとか、ちょっと七星一体倒してきましたーって教えたらどうなるだろうか。

 ……リアリストの彼女の事だ。さすがに信じないだろうな。




 そうして、俺達の歓待の宴が開かれ、里長が独自に改良したという『ビーフカツカレー』に舌鼓を打つ事になった。


「これは!!!!!!!!!!! カレーライス、カレーライスがあるのか! ここには!」

「シュンうるせぇ。ほら、黙って食うぞ」

「お前……まさかお前が教えたのかカイヴォン……お前……道中で出してくれてもよかっただろうが――! 野営、テント……だったらカレーだろうが――!」

「衝撃でキャラ崩れてきてんぞ。……それにしても、めちゃくちゃ美味しいですね里長……俺もカレー作りには自信がありますが……このカレーは相当なものですよ」


 出されたのは、俺が作るよりも色の深い、非常に芳醇な香りのカレーライス。

 辛すぎず甘すぎず。それでいてコク深い、最高級のホテルカレーのような。

 ……ふぅむ、さては一部のスパイスやお肉も燻製したな里長……自分でその活用法に辿り着くとはさすがだ。


「……美味いな、本当に……おいダリア、お前は知っていたのか」

「ええ。既にごちそうになった事がありますよ、カイヴォンのカレー」

「そうだったのか……いや、確かに道中の食事はどれも美味しかった……その可能性に気が付けなかった俺が甘かったのか……」


 日本人は皆、カレーが好きなのだろう。皆は言い過ぎかもしれないか?

 ただ、少なくとも国民食として市民権を得てはいるだろう。

 それは勿論チセも同じで、久々に食べたカレーに、どこか切なそうな表情を浮かべていた。


「お口に合いませんでしたか?」

「い、いえ! 里長さん、美味しいカレーをありがとうございます。本当に、本当に美味しいです……なんだか、私の家族が作った味に似ていて……」

「っ!」


 その言葉に一瞬、こちらのスプーンの動きが止まる。

 そうだ、里長に渡したレシピは俺の個人的に書き留めて来た物だ……つまり『俺本来のレシピ』というわけだ。

 ……まぁ、さすがにそこから真実につながるとは思えないけれども。


 そうして、一人だけちょっと緊張しながらも、素敵な歓待の席は終わりを迎える。

 皆が寝静まるのを待ってから、例のワインセラーに向かう事になっている為、今の間ジュリアには部屋で眠ってもらう事になった。

 アマミもクーちゃんも自分の家に戻り、俺達もそれぞれの部屋で休憩をとる。

 深夜、万が一にも里の人間が尋ねてこない時間をご所望なのだ、里長は。


「美味しかったねぇ……サクサクのお肉って良いよね」

「はい……あの火の通り加減はさすがとしか言いようがありませんでした」

「そうですね。中がミディアムレアで、程よい弾力で、衣もカレーによくからんで……」


 そんな余韻に浸るような会話をしていた時だった。

 部屋にノックの音が響く。

 先にお風呂に入ったチセが戻ってきたのだろうか? というか、何故俺が女性だらけの部屋にいるのだろうか。

 だが、扉の外にいたのは――


「どうしたんだ? 待ちきれなくなったのか?」

「いや、少し話がしたい」


 そこにいたのは、どこか張りつめた様子のシュンだった。

 二人で話がしたいという彼の要望に応じて、俺達は裏庭へと向かう。

 そして彼が語り始めたのは……俺にとって、究極の選択となる、そんな残酷な話だった――


(´・ω・`)八巻の範囲どこまでになるかなぁ……結構ぎっしり詰めないと

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