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暇人、魔王の姿で異世界へ ~時々チートなぶらり旅~  作者: 藍敦
三章

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二十八話

(´・ω・`)申刀N

 ガサ入れというか、こういう強制捜査っていうのもある種のロマンである。

 突然の侵入者に右往左往する職員達と、用心棒と思われるゴロツキ達。

 冒険者が嫌いなわりに、こういう人間を雇うとはこれいかに。


「てめぇ、なにもんだ!」

「申し訳ないが刀剣の類はNG」


 剣を向けられたら剣で返します。

 向けられた剣をこちらも剣を抜き弾き返し、返す手で剣ごと相手の手を切り落とす。

 そのままさらに突き込み、身体を穿ちながら大きく吹き飛ばす。

 そしてすかさず警告する。


「ギルドと王家の許可を得た正式な捜査だ! 歯向かう者へのあらゆる暴力行為、破壊行為を許可されている! 大人しく商会長を連れてくるならばよし、そうでなければこちらで勝手に探す!」


 実際王家の許可はとっていないが、権力を武力を持つ人間に渡すということは、そういう事だ。

 ましてや王家に次ぐ程の強権、これで自分達に責任はないと言い逃れはさせない。

 まぁ最悪責任を負うのはオインクなんですけどね?


「か、会長は地下の貯蔵庫にいます……どうかお助け下さい」

「地下か。中に閉じこもった場合の対処は? 内部に抜け道は?」

「あ、ありません」

「了解した」



 地下へと降りると、まるで銀行の巨大金庫のような扉が目に入る。

 分厚く重厚な、金像の塊。壊すのは簡単だろうが、折角なのでアビリティを変える。


『悪食』

『ソナー』

『五感強化』

『以心伝心』


 まずはソナーを使い内部の構造を把握する。

 証言の通り内部に抜け道の類はなく、生体反応が一つだけ。

 さらに五感強化で内部を探り、さらに以心伝心でお互いの声が聞こえやすくする。


『何故……私には王家が……何故強制捜査など……』

「諦めて出てきたらどうだ? 今なら楽に死ねるぞ」

『だ、だれだ! お前が捜査官か!?』

「まぁあの殺人鬼を捕まえてここに辿り着いたって意味じゃ捜査官だな」

『私をここから逃すつもりはないか!? 金ならいくらでも出す!』

「ここを開けて処刑されるか、中で野垂れ死ぬかどっちが良い?」


 実に往生際が悪い、そうこなくては。

 実際、このまま立てこもってもいずれ餓死するハメになるだろうし、楽に死ぬならここを出るのが一番だ。

 むしろそれ以外に救いの道はないと言ってもいい。


『こ、ここには食材が山のようにある! どうせ王家の許可なんて嘘っぱちだ! ここで私が粘ればすぐに助けが来る、そうすればお前はおしまいだ!』

「へぇそうかい。じゃあそうすると良い」


 闇魔導発動。

 熱のない炎をとびらの隙間へと滑りこませる。

 薄く、ひたすら薄く、気付かれないように。


「この扉を壊せるか試してみるとしよう」

『無駄だ! この扉はアダマンチウム合金で出来ている! 国宝級の剣でも傷すらつかぬわ!』


 マジでか。ステータス上昇に期待が持てます!

 いやぁ、岩じゃ全然上がらなかったし、もしかして無機物にもランクがあるんじゃないかって思ってたんだ。

 これはラッキー。

 すかさずアビリティを追加する。


『悪食』

『ソナー』

『五感強化』

『以心伝心』

『簒奪者の証(闘)』

『コンバートMP』

『硬直軽減』

『生命力極限強化』


 さて、どれくらい耐えられるかな?



 電動削岩機の様に繰り返される『剛波烈斬』

 見る見るうちに扉の表面の削れ、穴が開いていく。

 確かに硬い。下手したら龍神を覆っていた氷にも匹敵しそうだ。

 今回は武器の攻撃力を上げるアビリティはセットしていないが、武器の性能そのものが以前とは違う。

 多少溜めを少なくして威力を抑えてるとはいえ、この頑丈さはなかなかのものだ。


『ふははははは! 無駄だ無駄だ!』


 が、向こうにはこちらの様子が見えないので、呑気に高笑いを上げている。

 いいのかね、酸素の無駄遣いなんてしていて。


『はははは……はっはっはぁ! ああ! 苦し……はぁぁ……』

「どうした、苦しそうだな」

『なに……をした』

「さぁなんでしょう」


 ガッツンガッツン攻撃を加え、どんどん扉を変形させていく。


『たすけ……あかな……い』

「あーすまん、攻撃しすぎて変形してしまった。こりゃもう開かないわ」

『そ……な……はや……』


 ガッツンガッツン。

 さぁ扉に穴が空くのが先か、窒息死するのが先か。

 まぁさすがにここでこいつに死なれるのは困るわけだが。

 そろそろ止めをさすべきか。


「おい、扉から離れろ、でかいのお見舞いする」

『……たす』


 巻き込まれたらその時はドンマイだ。

 すかさずアビリティの構成を変化させる。


『簒奪者の証(剣)』

『与ダメージ+30%』

『与ダメージ+10%』

『クリティカル率+35%』

『クリティカル率+25%』

『攻撃力+15%』

『攻撃力+30%』

『全能力値+5%』

『チャージ』

『アビリティ効果2倍』


 新たに追加された枠も合わせて10個セット。

 実に脳筋な構成である。

 ちなみにこの『チャージ』は、剣術の発動時間を遅くする代わりに威力を1.5倍にする代物だ。

 『悪食』を外すか迷ったが、最後に壊すなら全力を試してみたいとこうなった。


「剛波烈斬!」


 十分に溜めを作り、全力で技を放つ。

 もはや衝突音ではなく、澄んだ音が響き渡る。

 剣は持ち手までめり込み、完全に貫通している。

 すると、遅れて扉が崩れ始める。

 崩れる勢いがどんどん増して行き、最後には破片が何かに引っ張られるように内側へと吹っ飛んで行く。

 ……衝撃を置き去りにした破壊力ってなんだよ。どんな物理現象だよ。


「ヒィハァァァァァ……いきが……いきが……」

「よしまだ生きてた」


 虫の息のカプルを引きずり出し、商会の外で待機していたホーク氏に引き渡し、宿へと戻る事に。

 後ろから呼び止める声がかかるも、まずはリュエに説明をせにゃならんし、別に良いだろう。

 こうして、活躍の機会が最後の最後の破壊活動だけという、なんとも言いがたい俺の初の対人討伐依頼は終了した。




「いい加減機嫌直してくれよ。俺が気がついた時にはもう、そっちだって戦闘が始まっていた訳だし」

「それは、分かっているさ。けれども、もっとこう、心配したーとか、無事でよかったーとかあるじゃないか」

「それは確かに。だけどこう言っちゃ卑怯かもしれないけど、リュエの事を信頼してたからこそ落ち着いて待っていられたんだぞ?」

「その言い方は本当に卑怯じゃないか……ふぅ、確かに今どうこう言ったって仕様がないし、もう交戦していたのは間違いないし、許してあげる」

「ごめんな。今度なんでも一つ言うこと聞くから、それで許してくれ」

「ん? よし、わかった」


 機嫌を直したリュエとギルドへと顔を出しに向かおうとしたら、宿の前までホーク氏がやってきていた。

 随分慌てた様子だが、問題でも発生したか。


「み、見つけた! 事後報告やら説明には君の存在が不可欠だ! このままでは私達騎士団が罪にとわれてしまうところだ!」

「あー、それもそうか。これは失敬」

「これは失敬じゃない! いいから早く詰め所まで来てくれ!」

「カイくん駄目じゃないか人様に迷惑をかけたら」

「いや本当申し訳ない。ではすぐに行きましょう」


 いやはや、さすがに無責任過ぎたか。

 恐らく、本来許可を与える立場である宰相か、よく利用している王家の関係者への説明だろうか?

 まぁ証拠不十分で逆にこっちが罪にとわれても、なんとかなるだろうさ。

 今更だけど俺みたいな適当な人間にこんな権力を与えてよかったのだろうか?


「ホークさん、商会で具体的な証拠とかって出ました?」

「ああ、幸いにして被害者達の身につけていた衣服が保管されていた」

「気持ち悪っ!」


 一体何に使っていたんですかねぇ?

 まぁとりあえず俺が罪に問われる事はなくなったか?

 しかし本当に穴だらけの、推理とも呼べないようなずさんな予測で解決してしまうとは。

 警備はしっかりしているが、内情調査や商人達への監査は甘いのだろうか?

 その結果、こんな大雑把な犯罪がまかり通って連続殺人にまで発展してしまっているのだし。

 というか王家御用達の商人なら、もうちょっと人格面を考慮するか、王家から人を寄越すべきじゃないだろうか?


「……オインクが戦争になったら勝てるって言ってたのはこういう事なのかね」


 そう独りごちる。



 詰め所へと着くと、てっきり取調室にでも連れて行かれるのかと思ったら、応接室へと通された。

 中にはこれまた立派なカイゼルヒゲを蓄えた、少々気難しそうなご老人が。

 少々剣呑な光を湛えた視線をこちらへと向けてきた。


「なんだその目つきは。貴様は私の敵か?」


 開幕魔王モード。

 ナメられたらイカンなこの手の人間は。

 突然の俺の変化にホーク氏も腰を抜かし、老人もまた目を見開く。


「貴様らの不手際で我が眷属の手を煩わせたのを理解していないのか? もう一度問う、その態度はなんだ?」


 やばい楽しくなってきた。


「この私が、共に依頼を遂行したよしみでこの場へ参ったのは分かっているのか?」

「カイヴォン……殿……どうかお気を鎮め下さい……」


 ようやく声を発した老人。

 よしよし、先制ジャブはこんなもんでいいだろう。

 直ぐ様魔王モードを解除。服装だけは後で自分で着替えないと行けないという微妙な不便さである。


「はい鎮めました。で、何が聞きたいんです?」


 今のやりとりを無かったかのように、普通に対面するソファーへと座り声をかける。

 勿論、笑顔で。


「……え?」


 ろうじんは こんらんしている!

 わけもわからず自分を

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