三百八話
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「さて、じゃあ俺はそろそろダリアの所に行ってくるから、後は任せても大丈夫かい?」
「ええ、大丈夫ですよ。その間にお魚、捌いておきますね」
「私はオーブン見張っておくよ。これ、中の温度上がらないようにしたら良いんだよね」
「私はどうしよう。もう全部終わっちゃった」
「なら、クーちゃんはアマミと一緒に食堂の飾り付けをお願いするよ」
キッチンに残る皆に声を掛け、それぞれの作業を確認する。
皆で協力して作るのは、今日帰って来る彼女――里長の快気祝いの料理の数々。
浄化作業が始まってから今日で二日目。ダリアの宣言通り、里長は今日戻ってくる。
時刻は午前一一時。まもなく昼食の時間であり、同時に料理が仕上がる時刻。
予定通りだ。
「じゃ、行ってくるよ」
いつも通りの暖かな気温と、雲一つない、どこか色の割合を間違えたかのような青空。
人工的に整えられた里だと知ってはいるし、今もこうして不自然だと認識しているにも拘わらず、この里を、居心地が良い場所だと感じている。
この大陸に来てからずっと張り詰めていた所為で、ある種の吊り橋効果で気に入ったのでは、と最初は思っていた。
けれども、その成り立ち、暮らしぶり、日々を伸び伸びと過ごす住人を見ているうちに、心の底から『ああ、こういう場所で余生を過ごしたい』なんて、少々気の早い事を考えるようになっていた。
「里長が目覚めて落ち着いたら、ここともお別れ……か」
俺が教えた、天然の重曹が混じった水を汲み上げて駆けていく子供。
採れたての野菜を籠いっぱいに詰めて笑う住人。
この光景とも、もうすぐさよならをしなければならない。
寂しいさ。妙にリュエに似た子供達が多いこの里だ。なんだか、凄く寂しい。
「リュエもレイスも、この里を気に入っていたしなぁ」
全てが終わったら、また、戻ってこよう。
そう心に決め、この場所の主を迎えに行くのだった。
「お、来たな。さすがに俺一人じゃ厳しかったんだ」
小屋へ到着すると、なんとダリアが大きな荷車を作り、そこにカプセルを乗せようとしているところだった。
おいおい、このカプセルってこの場所じゃないと動作しないんじゃなかったのか。
「ここの結界と地脈、その他諸々の環境が噛み合って動いていたが、そんな不安定なままにしておく訳がないだろ? 屋敷に専用の部屋でも作って、安全に保護しようと思ってな」
「だが、これをみんなに見せるのは……」
「あー……じゃあとりあえず乗せるだけ乗せておいて、後で里長に相談するさ」
すると今度は荷車の影から車椅子が現れた。
木製の、精巧に出来ているそれは、昨日今日作った物には見えず、少々年季が入っているように思えた。
「それは?」
「こいつは昔作ったものだ。色々日本にあった物を再現したりしていたんだよ。自転車だって一応この国にはあるんだぜ?」
「マジで。……舗装されてない道を木製の自転車で、ってのは少々キツそうだな」
「ご明察。こいつも含めてお蔵入りになったんだよ」
が、この里の中だけを押して歩くなら問題ないだろう。
ここで里長を目覚めさせ、一緒に向かう事も出来るのだが、やはり目覚めの瞬間を皆に立ち会ってもらいたいという思いもあるし、『今度も目の前にご馳走がない』と言われるのも悔しい。
早速彼女を車椅子に座らせる。……相変わらず人形めいた美しさだ。
「ドール、みたいだな。それに座らせている所為か余計にそう見える」
「はは、確かに。よし、じゃあ俺が押していくから、先導を頼む」
「あいよ。道の慣らしでもしておいてやるよ」
舗装されていく森を進む。
車椅子からは、油が乾いたからか、少しだけ軋むような音がするも、しっかりと車輪も回り問題なく稼働していた。
……カクンと、段差を越える度に里長の首が揺れる。
眠っているだけで、今もうすぐ目を覚ますのに、それでも、少しだけ気持ちに影が差す。
苦い思い出が、忘れたままにしておきたい過去が、朧気に輪郭を取り戻していく。
「……悪い、カイヴォン。俺の配慮不足だった」
「ん? ああ、気にすんな」
そうだったな。お前も知っているんだったな。
余計な心配をかけてしまったか、情けない。
たぶんきっと、俺の唯一のウィークポイントを、こいつは知っている。
それが、なんだか情けなくて、悔しくて、不甲斐なくて。
「ふむ……カイヴォン。今日リュエのレポートを見させてもらうが、その後時間あるか? もしかしたら深夜になるかもしれんが」
「構わんよ。どうした、改まって」
「ちょっと気になる事が出来てな。検証だ、検証」
屋敷の前の階段をどうやって車椅子で上るか。それを考ええいると、ダリアが階段をスロープに変えてみせた。
勿論、上った後には戻せるらしいのだが……凄いな、まるで魔法だ。
そう言ったら、真顔で『何を今更』と返されてしまった。
いやだって、火とか雷起こすよりよっぽどファンタジーな魔法じゃないか。
ほら、こんな風に階段が動いたりする魔法が出て来る映画があっただろ? 俺、あの作品のファンなんだよ。
「さて、里長のお帰りだ。じゃあ扉を開くぞ」
そして、本来の主を迎え入れる屋敷。
大きな扉を開くと、そこには既にみんなが出揃っていた。
エプロン姿の二人に、髪にリボンの切れ端や飾りが絡まっているアマミ、そしてエプロンのポケットに猫を入れたクーちゃん。
皆大急ぎで集まってきたのだと思わせる姿が、なんだか面白くて。
「ただいま、みんな。食堂で全ての準備を終わらせてから、里長に起きてもらうから」
「わ、わかった! クーちゃん行くよ、早く終わらせよう」
眠る里長を一瞥した後に駆けていく二人。
そしてレイスとリュエもまた、少しだけ浮足立ったようにキッチンへと戻っていく。
「ダリア、里長と一緒に食堂に行っててくれ。俺も料理の仕上げを手伝ってくる」
「分かった。なんだか凄い気合の入りようだな……何作ってるんだ?」
「里長も、そしてお前さんも絶対に喜ぶ料理だよ」
ダリアと別れ、料理を仕上げていく。
さぁ、今度は本当に、起きた瞬間目の前にご馳走が立ち並ぶのだ。
貴女は、喜んでくれるだろうか。どんな反応を見せてくれるのだろうか。
「カイくん、お肉そろそろ出しても良いかい?」
「ああ、大丈夫だよ。十分に寝かせたから、温度も丁度いいはずだ」
「カイさん、こちらの鍋も完成です。ふふ、とても美味しそうで楽しみです」
「これはきっとダリアだけじゃなくてみんなも気に入ってくれるはずさ。なんてったって俺の国でこいつが嫌いな人なんて聞いたことがないくらいだからね」
出来上がった料理を、次々に食堂へと運んでいく。
二十人程が席を共に出来るような長テーブルが、どんどん料理で埋め尽くされていく。
クロスの白が、丸で隠れていく様を、ダリアが興奮した様子で見つめていた。
さぁ、どれもこれも美味しいぞ。今日は今までで一番、気合を入れて作ったんだ。
お約束のローストビーフに、牛肉のマリネ。根野菜を煮込んで作ったポタージュに、スモークサーモンのロールサラダ。
そしてジャンルを無視するかのような牛肉の大和煮に、牛のチップス。
里で流行っているじゃがいも麺を牛のピリ辛スープに入れた、冷麺風。
スモークチーズと燻製牛肉を使ったピッツァに――ビーフカレーだ。
どれもこれも、文句なしに美味い。
「この匂い! カレー、カレーだろおい!」
「正解。特製ビーフカレーだ。なお中の肉はシャキシャキのステーキ状態だ」
「うおお……生きててよかった、長生きしてよかった」
「ほら、感動してないで席につけ。こっちの配膳も終わりだ」
レイスとリュエが席に着く。
そしてアマミとクーちゃんも里長のすぐ近くの席に着く。
ダリアは、俺の一緒に車椅子に座っている里長の隣だ。
「じゃあみんな。今から里長に目覚めてもらうよ」
一同が、唾を飲むことすら忘れたように、息を殺してこちらを見つめる。
ダリアが彼女の側へより、手元に浮かべた術式を彼女の首筋にあてがう。
その瞬間、ピクリと彼女の指先が動いた気がした。
「…………き」
口から漏れる声。
「……起動します」
彼女らしくない無機質な、そんな言葉。
「おはようございます。視覚情報取得にはもう暫くお時間を頂きます。その間に、マスターのパーソナルデータを入力してください……」
「里長!? まさかそんな……」
「……なんちゃって」
「さすがに心臓に悪いですよ!」
「すまん、俺の位置からだとにやけた口が見えていた。まんまと乗せられたなカイヴォン」
顔を上げた彼女が、少しだけ口をにやけさせながらこちらを見る。
悪戯に成功したと、少しからかうような。けれども……深い、感謝の念を感じさせる瞳で、まっすぐにこちらを見つめていた。
「おはようございます、皆さん。どうやら、思いの外短い眠りだったようですね」
言葉と同時に、椅子が転がる。
二人が、駆け寄る。
薄緑色の髪と、まばゆい金髪が、まるで押し付けられるように彼女の身体に触れる。
ダリア、少し離れよう。二人にこの場所を明け渡そう。
小さく聞こえる、里長を呼ぶ声。
困ったような表情を浮かべながら、大きな二人の愛娘を抱きとめる彼女。
苦手なんだ、こういう場面は。情けない表情を見せてしまいそうで。
「何泣いてんだよカイヴォン。感動に弱いヤツだな」
「うるせぇバカ。感受性豊かなんだよ」
離れた席で、俺と同じくハンカチで目を抑えたレイスの隣へと腰掛ける。
そしてリュエは――
「よがっだねえ゛え゛え゛」
「……ほらリュエ助。ハンカチやるよ」
あ、鼻かんだ。
「それにしても……まさかこんなに沢山のご馳走を用意して頂けるなんて」
「ははは、約束は守る人間なので。どれ、今日は俺が里長の給仕をさせて貰いますよ。まずはどれからにします?」
「ではやはり……王道を行くローストビーフからお願いします」
「ふふふ……以前里長に振る舞ってもらいましたからね、少しだけアレンジしているんです」
大きな肉塊にナイフを入れ、薄く削ぐようにして切り分けていく。
これは、先に肉にスモークで香りを付けた後に焼き上げた物だ。
ソースには燻製した醤油とはちみつを使い、さらにリンゴの果汁を混ぜたもの。
肉の風味と燻煙香を活かす、独自のレシピだ。
付け合せには、じっくりと火を通して、甘く、クタクタに柔らかくなったタマネギ。
こちらもソースによく合う。
「ははーん……なるほど、燻製ですか。良いですね……私も今度真似してみます」
口に運ぶ彼女を見れば、こう……男ならつい反応してしまうような表情をですね。
食べ方がエロい! 官能的とかじゃなくてエロい!
「はぁぁぁ……美味しいですね。では次に……先程から嗅ぎ慣れない、芳醇な香りがしますね。スパイシーで、目覚めの私には少々刺激的な。お願いします」
「あ! 俺も頼むカイヴォン!」
「あら、聖女様の好物なんですか?」
「そんな感じです。先に譲るので是非食べてみてください」
取り分けをしていると、自分の胃がグゥと鳴る。
仕方ないね。カレー、美味しいからね。
この里の野菜ってどれもこれも美味しいから、とろとろに煮崩れて消えるまで煮込んだソースに、スパイスをふんだんに入れたんですよ。
美味いに決まっているんですよ。もう人生におけるナンバーワンカレーなんですよ。
「ビーフシチュー……ではありませんね。では早速……」
「俺も頂く! ライス! ライスは持てい!」
「ダリア様、ライスです」
「ありがとうアマミ嬢! じゃあ頂きます!」
里長の表情や、皆の声。
『これも食べて』『こっちも美味しいよ』とい勧める、皆の思いの込められた皿の数々。
クーちゃんが作ったオイルを利用した物や、レイスの釣った魚を使った物。
リュエが得意なマッシュポテトやタルタルソースに、ダリアが勧める料理。
それを、目覚めたばかりの彼女が次々に、嬉しそうに平らげていく。
『どうやって作るのですか』『こういう食べ方も良いものですね』そんな風に、好奇心を覗かせながら。
飾り付けられた食堂が、まるで里長の帰りをおめかしして待っていたかのようで、屋敷が主を迎える為に、おしゃれをしたようで。
空間が、この時間が、喜びに満ちていて。
ずっと、ずっとこの時間が続けば良い――ではないのだ。
彼女がここにいる限り、これからも続いていくのだ。
長として彼女がこの里にいる限り、里の住人は、この里で喜びを、新たな発見を彼女と共有し、共に穏やかで、楽しくて、幸せな時間を紡いでいくのだから。
「リュエ、美味しいかい?」
給仕をする出番がもうなくなったからと席に戻ると、リュエもまた、喜びに満ちた里長達を見ながら料理を口に運んでいた。
「美味しいよ。幸せという名のスパイスが効いているね!」
「ドヤァ……って顔してるのがなければ完璧だった」
「むむ……自分でも上手い事言ったつもりだったのに……」
「ふふ、でもリュエの言うとおりです。凄く、胸が満たされますね」
レイスもまた、ニコニコと微笑みながら彼女達を見つめていた。
……皿の上のローストビーフの山から目を逸しながら。
「……レイス、食べすぎないようにね」
「そ、その、これは違うんです。あ、そうです、カイさんがまだ食べていないと思って」
「む? それは失礼。じゃあ遠慮なく……」
皿ごと受け取ると、目で後を追いかける彼女が可愛くて。
冗談だよ、と一枚だけ頂き、食べながら里長の様子を眺める。
……もう、大丈夫そうですね。
二人に挟まれた彼女と、一瞬だけ目が合う。
その時確かに、彼女の瞳が『もう、大丈夫ですよ』と語りかけたような気がした。
まだ、外は明るい。昼下がりの宴。
それでも、まるで今この瞬間に全てのエネルギーを、喜びを注ぐように。
なんだかお酒でも飲みたくなるよ、この空気は。
「カイヴォン、お疲れだな」
「ダリア、もう食べ終わったのか」
静かに見守っていると、ダリアが満足げな様子で近づいてきた。
口に横にカレーがついているな。
それを指摘する前に、我が家のお母さんレイスがダリアの口をハンカチで拭う。
「ぶぇ……じ、自分で出来るから」
「動かないでください。……はい、とれましたよ」
「……なんか完全に子供扱いされている気がする……」
「ダリアちっちゃいからねー」
満足気に席に戻るレイス。これは少し意趣返しも含まれているのだろうか。
まぁ、ダリアもまんざらではなさそうなので良しとしましょう。
「じゃあ改めて……カイヴォン、お疲れだな」
「そっからやり直すのかよ」
「と、とにかく、俺はちょいとリュエのレポートに目を通そうと思う。リュエ、見せてくれるか?」
「えーもうちょっと食べたいなー私は」
「ええ……まだ食べるの君。俺もうお腹いっぱいなんだけど」
「ダリアちっちゃいからねー」
「また言うか。じゃあレポートだけくれ、軽く目通しておくから」
「分かったよ。はい、このノートがそうだよ。ちょっとわかりにくいかもだけど、後で私も解説するからね」
「おう、サンキュー。ほいじゃ寝室で見てくる」
相変わらず働き者な友人を見送る。
気がつけば、確かに食卓の料理の量も減ってきていた。
カレーに至ってはダリアもたくさん食べたのだろう、既に空っぽだ。
そしてローストビーフは……言わずもがな。
里長もレイスも大好きだからね、仕方ないね。
俺はそんな中、お肉料理に比べて減りが遅いピッツァを摘む。
んむ……美味しい。少しジャンクな味付けが、なんだか懐かしい。
残りをこっそりとアイテムボックスにしまい込みつつ、この昼間から始まった宴を堪能するのだった。
一頻り料理を堪能し、里長の『そろそろ里の皆に顔を出してきます』という言葉に、一先ず宴の終わり宣言する。
まぁ尤も、夜には夜で別な料理を仕込んである訳なのだが。
「ああ、カイヴォンさん。夜にでも私の部屋にいらしてください。改めてお話があります」
「分かりました。あ、それともし調子が悪いなって思ったらすぐに屋敷に戻ってきてくださいね」
「分かりました。恐らく大丈夫だとは思いますが、その時はすぐに聖女様を頼ろうと思います」
アマミとクーちゃんの二人に付き添われながら屋敷を出る彼女を見送る。
相変わらず淑女然とした物腰で、静かに歩き去る。
まるでお嬢様と従者のような出で立ちだ。
「さてと……じゃあ私はダリアの部屋に行ってくるね」
「了解。俺とレイスは食堂の後片付けをしてから行くよ」
まずは、ここから。リュエが気がついた大陸を覆う結界の違和感がなんなのか。そしてそこに含まれたフェンネルの思惑や、これまで起きてきた問題の鍵が、分かるかもしれない。
俺も立ち会いたいが、決定的な何かが分かるまでは俺もレイスも、その会話についていけそうにないからな。
……少し勉強した方が良いのだろうか? 実は少しだけ本で読んだこともあったのだが、実際に魔法を使って学ぶのはともかく、学問として修めるのは俺には不可能だと、そうそうに諦めたのを覚えている。
ちなみにそれは、つい最近まで生活に使う程度しか魔術を扱えなかったレイスも同じく。
彼女も再生術や魔術を感覚的に使っているだけだそうだ。
「さて、じゃあ片付けと夜の仕込み、頑張ろうかレイス」
「はい。皆さんとても喜んでいましたし、夜も張り切らないといけませんね」
重なった食器を眺めながら一息ついていると、最後の一枚を拭き終えたレイスがぽつりと漏らす。
『そういえば、このお屋敷って随分と大きいですが、普段は里長しか住んでいないんですよね』と。
言われてみれば、一人で住むにしては部屋の数も、食器の枚数も多い。
まるで以前はもっと大勢で住んでいたかのような、そんな名残を感じる。
もしや、初代の里長は家族でここに住んでいたのだろうか?
今夜里長に呼ばれているのだし、彼女の過去についても聞ける機会があるかもしれない。
そういえば、ダリアにも夜に話せないかと言われていたなと思い出したその時だった。
屋敷の二階から、こちらまで響いてくる、尋常でない様子の声が届いた。
『ふざけるな! あってたまるか、そんな物! 貴女は……貴女は私を――』
声の主は――
(´・ω・`)ひどいゲーム