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暇人、魔王の姿で異世界へ ~時々チートなぶらり旅~  作者: 藍敦
十三章

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三百二話

(´・ω・`)ゼノブレイド2注文したのにコノザマ食らったから自分で買ってきた

届いた方はそのまま中古ショップにぶち込みます

「ただいまー……っていうのもなんか変な気がするけど」


 ダリアの元を離れ里長の屋敷へ戻ると、既にリュエやレイス達が戻ってきていた。

 そこには猫を頭に乗せたくーちゃんの姿もあり、どうやら里長の治療の件を説明しているところだったようだ。

 相変わらず少し眠そうな目をしているが、恐らくこれが彼女のいつもの表情なのだろう。


「あ、おかえりカイヴォン。ダリア様は?」

「ダリアは森の奥で絶賛治療中だよ。どうやら俺に手伝える事はもうないみたいでね、ちょっと作業用の小屋を建てる手伝いをしただけだよ」

「むむ、カイくんでも難しいのかい? なんだか里長の身体の事、詳しいみたいだったけど」

「んー……概念というか、どういう存在なのかは理解しているけど、詳しい話になると門外漢だよ」


 当然、皆は里長の事が気になり様子を訪ねてくる。

 彼女がどういう存在なのか。それをこの世界の人間に説明するのは難しい。

 ロボットやアンドロイドという概念は、恐らくこの世界にないはずだ。

 だがその反面、こうして里長は存在している。ふむ……おかしな話だな。

 一度、どこかで文明がリセットされた……? 分からない、この世界、元はどんな世界だったのだろうか……。


「――イさん? あの、聞こえていますか?」

「ん? あ、ごめんレイス。どうしたんだい?」

「いえ、ですからダリアさんは一人で大丈夫なのでしょうか、と」

「そうだなぁ……むしろ一人じゃないと集中出来ないかもしれない、かな。俺が想像していた以上に里長の身体はデリケートみたいなんだ」

「そこまで大変なのですか……」


 一同の表情が曇る。いや、これはちょっと言い方が悪かった。訂正せねば。


「別に治療が難航するっていう意味じゃないんだけどね。純粋に難しくて、集中しないといけない作業が続くってだけだから。まぁ逆にいえば、あのダリアが本気で集中して取り掛かっているんだ、大船に乗ったつもりで待っていようか」

「そ、そうだよね! じゃあ、ダリア様が戻ってきたら、ゆっくり休めるように私は寝室の準備をしてくるよ」

「なるほど、バックアップっていう形で手伝える訳だね。じゃあ……私はダリア為に……う~~~ん……何が出来るかなぁ」

「リュエはそうだね、この間言っていた大陸に関係する術式について、考えを纏めるなり、レポートを作っておくといいんじゃないかな? 少しダリアに話したら、だいぶ興味を示していたから」

「あ、そうだね。じゃあカイくん、この間のマップ? あれってまだ表示出来るかい?」

「ああ、保存してあるよ。リュエのメニュー画面にメールで送る」

「おー……そんな事が出来るんだ。便利だねぇ」


 一応、メニュー画面のスクリーンショットだけは撮影可能なんですよね。

 残念ながら背景、風景、そういった画面外の物を撮影する事は出来ないが。

 早速、ブライトネスアーチで表示させたマップの画像を彼女へ送る。

 データを受け取った彼女は、やはりそのマップに気になるところがあるのか、その表情を一瞬で険しいものに変え小さく唸る。

 一瞬で術者、研究者としての顔になった彼女は、そのまま難しい表情を浮かべたまま自室へと戻っていった。


「カイさん、私はどうしましょうか?」

「レイスは俺と一緒に食事の用意をしようか。もう少ししたらお昼の時間だしね」

「分かりました。そうですね、何をするにもまずしっかり食事をとりませんと」

「そういう事。というわけで、アマミ、クーちゃんの二人は食材の調達をお願いします」

「うん、分かった。じゃあちょっとお野菜とか分けてもらってくるね」

「にんにく取ってくる。かいぼん、にんにくで何か新しい料理作って欲しい」


 屋敷から出ていく二人の背中を見送り、一息つく。

 いつも通りで良い。慌てたり、色めき立つ必要なんてない。ただ、普通に過ごし、その時が、ダリアが里長を治すその時を待てば良いのだ。

 頭では分かっているのだがね。ただ、皆の期待を裏切ってしまうかもしれないと、一瞬でもそれが脳裏を過ぎると、たまらなく胸が苦しくなる事があるのだ。

 ……苦手だな、やっぱりこういう場面は。


「カイさん、食材が揃うまでの間、少しお話しませんか?」

「ん? 勿論良いけれど、どうしたんだい?」


 ふいに、彼女が提案する。ただ話すだけならいつでも始められる。だが、こうして前置きをするとなると――話したいことや聞きたい事があるのだろう。

 少しだけ身構えながら、彼女と共に応接室へと向かうのだった。




「カイさん、お疲れ様です」


 部屋のソファーに座り、最初にレイスが口にしたのがその言葉だった。

 恐らく里長の物と思われる、見知らぬ本や道具の飾られた応接室。

 そんな場所でも気負わずに自然体で振る舞う彼女は、まるでここの主のように見えた。

 それはもしかしたら、彼女の屋敷とこの場所が少し似ている所為なのかもしれない。


「ははは、別にそこまで疲れていないよ」

「ふふ、本人は気がついていないだけだと思いますよ。本当に……色々ありましたから」

「……確かに色々あったね」

「はい。特にカイさんは……沢山、沢山背負い込んでいましたから」


 そう言いながら、彼女は儚げに笑う。まるで、こちらを心配しすぎて、自分が参ってしまったような、そんな気疲れを滲ませるような儚い顔をする。


「リュエの事。エルフの王族の事。アマミの事。里長の事。自分が戦ってしまった相手の事。そして……この先の敵の事。カイさん、貴方は少し、一人で抱えすぎだと思います」

「それは……」


 全て、言い当てられてしまう。そして改めて羅列されたその数々に、自分でも無理をしすぎだと、自覚させられる。


「きっと、カイさんでないと背負えない問題ばかりなんだと思います。それを私に分けて欲しいとは、言えません。ですが――誰かが自分の辛さを、思いを知っている。それだけで、少しは軽くなる事もあるはずですよ。少なくとも、私は知っています。貴方が背負いすぎている事を」

「……そうだね。ああ、そうだ。俺は、少し今無理をしている」

「……リュエの事は、一旦大丈夫だと割り切ってください。彼女は、強い人です。そしてエルフ全体の事。これは、今はどうにもならない事ですよね?」

「……ああ、そうだね」


 諭される。俺の独善的な思考や行動を。それが、少しだけ心地よくて。

 こうして心配してくれる人がいる。時には咎めてくれる、信頼出来る相手がいる。

 ああ、たしかにそれだけで、気持ちが楽になっていくのを感じる。


「アマミの事は……正直、私もイクスの事があるので、同じような気持ちです。運命が少しずれていたら、彼女も私の娘に、なっていたかもしれないのですから」

「確かに、そうだね。これも、今考えるべきことじゃないのかもしれない」

「はい。これらは、全てが終わった後に、始めて動き出す問題です。だから――今はもう少し、貴方は背負っている物を下ろすべきなんです」


 この会話の最中に、胸が軽くなっていくのを感じる。

 それはつまり、本来ならば人に相談するだけで解決できた物を、一人で抱えてきた自分が愚かだと、浮き彫りになるようなもので。

 ……まだまだだな。俺は、周囲に頼るのが苦手なままだったようだ。

『あの日』から何も変わっちゃいない。自分で全部やってやろうと、誰も望んでいないのに一人意気込み、潰れていったあの頃から。


「……本当に、未熟者だ。今は近くに、君がいるのに」

「ふふ、そうですよ? 私は、貴方と共に歩む者です。貴方がもし、何か面白いもの、辛い場面、見たことのない景色を見たら、側にいる私達に教えてください。いいですか? 『言葉と言うのは思いを伝えるだけじゃない。見た物や風景、そういった物を誰か他の人に伝える事が出来る、素晴らしい物』なんです。これは受け売りなんですけどね」


 そう言いながら、今度は先程とは違う、心からの笑みを浮かべるレイス。

 ……思いだけじゃなく、見た物や風景を教える。……それは、言葉通りの意味ではないのかもしれない。つまり『ちゃんと口に出して伝える事の大切さ』それを現しているのだろう。

 そうだな。きっとそれが、今の俺に足りない物なのかもしれないな。


「誰かに伝える事が出来る……か。肝に銘じておくよ。いい言葉だ。誰の受け売りだい?」

「ふふふ……ダリアさんですよ。あの収穫祭の最中に、そう教えられたんです」

「んな……一体どんな話をしたのか、凄く気になるんだけど」


 そういえばレイスは、あの大陸で既にダリアとシュン、あの二人と会っていたそうだ。

 偶然……なのだろう。だが、まさかそんな言葉をかけられる程突っ込んだ話をしていたとは夢にも思わなかった。


「秘密です」


 ニコニコと笑う彼女に、コレ以上食い下がることは俺には出来そうにないな――




 その後、レイスと昼食のメニューをどうするか考えていると、丁度アマミが帰ってきたようだった。

 出迎えに玄関へと向かうと、そこには――


「カイヴォン……お祝いというか……景気付けにお肉でもって考えたんだけど……タイミング悪くて、お肉分けてくれる子がいなくて……だから……」


 まるで全てを失ったかのような、絶望に彩られた顔のアマミが、泣きそうになりながら屋敷の扉の影から、一頭の牛を引き連れてきた。


「……牛子、あげる……食べていいよ……この子乳牛だけど……きっと美味しいから」

「……いや、さすがにそれはやめておくよ。なんだか可哀そうだ」


 アマミも、その牛子さんも。

どうして自分がここに連れてこられたか理解していないような、優しいつぶらな目をしたそのホルスタイン模様の牛さんを殺すなんて、さすがにそれは……。


「あの、よろしければ私が〆て――」

「レイス、そうじゃない、そうじゃないんだ……」


 ああ、ほらまた泣きそうになった!

 ほら、その牛さんを解放してあげてくださいな。今日はお肉はなしでいいから!

 そう伝えると、アマミはその牛を手放し、そして牛さんは自分の足でゆっくりと屋敷の階段を降りて去っていった。随分と賢い牛さんだ。


「ただいまー。さっきそこで牛子とすれ違ったけど、どうしたの?」

「あ、おかえりクーちゃん。いや、今ちょっと尊い一つの命が守られたところなんだ」

「うん? よく分からないけど、にんにく持ってきたよ」

「ははは、ありがとう。じゃあ集まった食材と、そうだなぁ、俺の手持ちの食材で何か作れないか考えてみようか」


 集まったのは、この里で採れた野菜達。

 里の魔力を循環させる構造の影響なのか、一般的な野菜より遥かに成長が早く、そして味の濃さや色艶も一級品のこれらを使えば、正直ただのサラダでも食が進むことだろう。

 試しに、大きな拳のような、そしてヘタの周辺まで真っ赤にそまった完熟トマトを一つ、そのまま丸かじりしてみる。

 その瞬間、酸味よりも遥かにまさる甘みが、蓄えられた水分と共に口内に溢れる。

 じゅるじゅると、少し品の無い音を立ててしまいながらも完食だ。


「やっぱりここの野菜めちゃくちゃ美味しいなぁ……」

「そうですよね。特にトマトは、火を通しても甘みが損なわれませんし……ここのトマトで作ったラタトゥイユは、皆さんにも好評でした」

「あ、それいいね。じゃあラタトゥイユと……そうだな、ビシソワーズでも作ろうか」

「びしそわーってなに? にんにく使う?」

「にんにく使わなーい」

「じゃあにんにく分けてあげなーい」

「別な料理に使うから分けてくださーい」

「分けてあげまーす」


 クーちゃん可愛いな。

 ふむ、となるとニンニクを使う料理をもう一つ……やっぱり動物性タンパク質が欲しいところである。肉か魚か。一応、俺のアイテムボックスの中には多少の肉、そしてブライトネスアーチでお店を手伝っていた時代の余りの食材である魚の切り落としやアラがたっぷりと……ふむ、だがどうしても煮込み料理になってしまう。ラタトゥイユでかぶってしまうので却下だ。


「切り身となるとあのカジキマグロっぽいのがあるけど……火を通すのは勿体無いしなぁ」

「……! マ、マグロ! 特別な日のごちそうにとっておきましょう! 魚でしたら、先日川で沢山釣ったじゃありませんか」


 おっと、レイスさんの目の色が変わりだしたぞ。

 やはり彼女にとってマグロは特別な魚なのだろう。んむ、里長の快気祝いにとっておこう。


「そういえばあったね。あれはたぶんマスの仲間だから……うん、ガーリックソテーにニンニクを効かせたフリッターもいいかな」

「なんだか美味しそうな響きだね。私、お魚も大好きだよ」

「よし、じゃあ先に野菜を切るところから始めようか」


 レイス、アマミ、そして意外な事にクーちゃんもまた、包丁の扱いになれており、あっという間に野菜を切り終えてしまった。

 ならばと、そのまま必要な大きさにそれぞれ更にカットしてもらい、その間にこちらは川で大量に釣り上げたマスを捌いていく。

 ……ふむ。生きたままアイテムボックスにしまいこんだ訳だが、やはり死んでいる。

 これは鮮度的にはどうなのだろうか? 釣りたてをそのまま収納するのと、釣りたてをすぐに〆て下処理をしてから収納するのでは、味もかわってくるのだろうか……。


「ふむ……ちょっと気になるな。今度釣りに行って確かめてみるか」

「釣りですか? それでしたらお供します」

「あ、そういえばレイス、いつの間に自前の釣り竿なんて用意したんだい?」

「ふふ、実はこの里の物々交換で手に入れたんです。少しは上達したんですよ?」

「あ、そうだよ。れいすさんねー、毎日川で釣りしてたんだ」

「へー! ここの川でも釣れるんだ。って、レイス、随分釣りにはまったみたいだね」

「お、お恥ずかしい……ついついあの感触が癖になってしまって」


 グランダーレイスの誕生もそう遠くないかもしれない。

ふむ、これは負けていられないな。じゃあ今度一緒に釣りに出かけなくては。


「じゃあレイスはラタトゥイユの監督をお願い。アマミはこっちを手伝ってくれ」

「はいはい。魚捌くんだね? 私そんなに得意じゃないけど」

「俺が三枚に下ろすから、アマミは一人分になるように切り分けるだけでOKだよ」

「なるほど。あ、ならその後どうする? 味付けする?」

「あ、じゃあ塩とコショウとニンニク、小麦粉を振り掛けておいて」


 心得がある人間が四人もいると、やはり作業効率が格段に上がる。

 こちらが魚を捌き終える頃には、もうバットにムニエルになるのを待つだけとなった魚達が並べられ、そしてレイスも既に鍋でコトコトと野菜を煮込み始めているところだった。

 さて……じゃあビシソワーズの準備といきましょうか。


「んじゃ、このじゃがいもともう少し薄く切って水にさらしまーす」

「ビシソワーズを作るのは始めてですね、私も。なかなか手間のかかる料理だと聞いていますが……」

「幸い、この屋敷には調理器具がばっちり揃っているからね。そこまで苦労しないよ」

「里長料理好きだもん。外の商人に、あらゆる道具を取り寄せさせたって言ってたっけ」

「ほほー。里長が戻ったら一緒に料理でもしてみたいもんだなぁ」

「あ、じゃあまたアレ作って。らーめんっていうの」

「あー……確かにまた食べたいな。ダリアにも食わせてやりたいし」

「少し中毒性がある味でしたよね……あのスープ」

「レイスも分かってくれてなによりだよ。あれは、俺の故郷でもかなりの中毒性というか、やみつきになる料理で有名だったんだ」


 とんこつラーメンである。本当、まさかこの世界に来てから食べる事になるとは思いもよらなかったのだが……実際、あの本の著者が出会ったという謎の屋台はなんだったのだろうか。

 どこかでこの世界と日本が繋がっている……? それとも解放者召喚に巻き込まれでもしたのだろうか……。


「カイヴォンの故郷のなの? あの料理って」

「あ……ま、まぁうん。故郷の料理だね」

「ふ~ん、だから再現出来たんだね。美味しかったよラーメン」


 さて、じゃあ引き続き作っていきましょう。

 この里で採れる野菜の種類だが、どうやら最初にここで野菜を生育し始めた人間、恐らく初代里長なのだろうが、手当たり次第野菜を植え、それが徐々にここ場所に最適化されていったのだろう。

 もはや季節感や産地を無視し、ありとあらゆる野菜が育っているようだ。

 今回必要なじゃがいも、タマネギ、ぽろネギにハーブ類まで全て揃っている。

 ……野菜特化型のリュエさんバッグみたいなものじゃないだろうか。

 他にも牛乳、生クリームにバターという乳製品も、アマミが牛を飼っている事から分かるように、畜産業もそれなりに行われているおかげで手に入るときている。

 小麦や米はないが、完全に自給自足が出来ると言えるだろう。

 尤も、それを目指してこの里を作ったのだとは思うが。


「ねーねー、びしそわーずってどんな料理なの? 本当にニンニク使えないの?」

「んー? これは冷たいじゃがいものスープなんだけど……そうだな、じゃあクーちゃんのだけ、少しニンニクの香りがするように工夫してあげようか」

「おー? じゃあそれでお願い」


 小さい子が嬉しそうに台所を覗いてくる光景は心暖まりますな。

 まるで、リュエの家に住み始めてすぐの頃の彼女を思い出す。

 ……そういや……うん、アイツは余り興味を示さなかったっけ。

 最近、時折思い出しそうになっては、脳がそれを拒否して忘れる事がある。

 料理をしていると、ふいに思い出すのだ……日本に残してきた家族の事を。

 器用なもんで、それを忘れて、新しい思い出や人間で上書きしようとする自分の脳。

 けれども……ダリアとの出会いが、俺がヨシキだった時代の友人であるダリアの存在が、忘れかけていた、忘れようとしていた記憶を呼び起こすのだ。

 ……妹を、思い出す。リュエやクーちゃんのように、あまり料理に興味を示さず、どこかクールというべきか、俺とは性格が真逆な妹。

 まぁ、そんな険悪な仲ではなかったのだがね。


「よし。じゃあ薄く切ったタマネギとぽろネギ、そしてじゃがいもをバターで炒めるぞ」

「ちなみにこのバター、私のとこの牛じゃなくて、共和国側の集落にある酪農家のお兄さんに分けて貰ったんだ。私が不在の間の牛子の世話とかお願いしてるの」

「なるほど。じゃあありがたく使わせてもらおうか」


 この料理のポイントは、白さを維持する事にある。

 今回使ったじゃがいもも、僅かな皮の残りや変色も切り捨て、そしてポロネギも白い部分のみを使用している。

 当然、バターで炒める際も、僅かな焦げも許されない。弱火でじっくり、全体にバターが行き渡りネギがしんなりするまでよく混ぜなければ。

 レイスにその作業を任せると、少しだけ緊張した面持ちで、丁寧に木べらを動かす。

 台所に、バターで炒められたネギ類特有の、甘いような、芳醇な香りが漂いだす。

 するとその時、台所の扉が開かれた。


「あ! いい匂いすると思ったらみんなで料理してる! ずるいよ、私も呼んでおくれよ」

「ははは、ごめんリュエ。レポートの方はいいのかい?」

「ある程度進んだし休憩! 私も見る!」


 ぷりぷりと怒りながら、リュエが隣に陣取る。

 それを見て、やはり見慣れていないアマミとクーちゃんが顔を見合わせていた。

 徐々に慣れていってください。これがデフォルトリュエさんなんです。


「で、今日は何を作っているんだい?」

「レイス特製ラタトゥイユと、この間ほら、前に川で釣ったマスのムニエル。そして最後に、今作っているビシソワーズだよ」

「あ、ムニエルなら前にカイくんに作り方を教わったよ! 私に焼かせておくれよ」

「お、それもそうだ。じゃあタイミング的にそろそろ焼いてもらおうかな? アマミ、リュエ、二人で焼いておくれ」

「了解。リュエ、こっちにきて。フライパンが二つあるから一緒に焼こう」

「ふふふ、まかせておくれ。それにしても……多いね? たっぷり食べられそうだ」

「これでもマス六匹分だけなんだけどね。あれ、結構大きかったし三人で大量に釣ったし、後で利用法考えないと」


 さて、じゃあバターが行き渡ったところで、牛乳とスープストック、今回はコンソメでじっくり煮込んでいきましょう。


「カイさんのその瓶の中身って、スープなんですか?」

「イエス。実はアイテムボックスの二割近くはこいつだったりします。リュエの家で作った分とか、野営中に実は余った野菜とかで追加で作って保存しているんだよ」

「なるほど……良いですね、スープストックを文字通りストックしておくなんて」


 スープを加えて、後は野菜たちが柔らかくなるまで煮込みましょう。

 レイスにこのスープストックの作り方を解説しながら、クツクツとなる鍋を眺める。

 地味かもしれないが、こういう時間がなによりの癒やしなんですよね。

 ……やっぱり自分の好きな相手とこうして台所に立つのって、素晴らしいです。




「カイくんそれやらせて! 分かるよ私、それギュイーンって中身をぐちゃぐちゃに混ぜる魔導具でしょ?」

「これ、結構高い魔導具らしいね。ミキサーって便利だし、需要もあるんだからもっと沢山作ればいいのに」


 さて、仕上げに煮込んだ野菜をミキサーにかけ、裏ごしして生クリームで伸ばすだけというところまできたのだが、やりたガールなリュエさんにその役目を譲る。

 なお、ムニエルは見事なきつね色に焼かれ、大皿に並べられております。

 そしてリュエの手により動き出すミキサーに、クーちゃんとアマミが興味をしめす。


「ミキサーは私も持っていたのですが、確かに高かったですね……ちょっとしたテーブルセット並の値段だったと記憶しています」

「ふぅむ……トルクの関係で高出力が必要って事なのかね……そうなると材料に魔石じゃなくて魔力結晶でも使っているのか」


 そういえばギルドに魔力結晶を買い取ってもらったっけ。

もともとあの結晶はサーディス大陸から輸入していたと言っていたし、この大陸ならもう少し安く手に入りそうなものだが。

 この辺りの事もダリアに聞いてみるかね、ちょっと気になる。


「カイくん、出来たんだけど……これ裏ごし出来るの? 見てよこれ」

「おお? なんだこれ、すっごい滑らかじゃないか……里長、かなり良いミキサーを購入したと見た」

「あ、それ里長の自作だよ。そういう魔導具とか、部品作るの得意なんだ」

「なん……だと……そういえばパスタマシーンも作っていたような」


 やはりアンドロイド(?)というのは、機械的な物に強いのだろうか?

 ともあれ、裏ごしの必要がない程になめらかなそれを、生クリームで伸ばしていき、塩と白コショウで味を整えていく。

 今回は冷やすことを考えて、気持ち塩を多めに入れて……あとは冷やすだけだ。


「はい、じゃあ最後は氷の申し子であるリュエさんにお願いしましょう。この完成したスープを、冷たい水くらいまで冷やしてくれるか?」

「スープなのに冷たくするのかい? それならすぐ出来るけれど……」


 すると、リュエがスープの入った容器に両手をそっとあて、一瞬だけ白いモヤに包まれたと思った次の瞬間、立ち上っていた湯気が消えていた。


「よーし。じゃあ食堂に完成した料理を運ぶよー」


 器にスープを注ぎ、みじん切りにしたパセリを一摘み。

 ムニエルは更に二切れずつ並べ、こんがりとした表面に最後の仕上げとしてフライドガーリックを砕いた物をパラリ。

 ラタトゥイユはレイスが皆に取り分け、そこに付け合せのニョッキが添えられる。

 そして最後に、クーちゃんのスープだけ、盛り付ける前に器の内部にスライスしたニンニクをこすりつけ、香りだけを移しておく。

 こうすることで、スープを注いだ際、味を変えずに微かにニンニクの風味を味わえるという訳だ。


「よし完成。じゃあちょっと早いけど昼食にしようか」

「わーい、ニンニクの香りがする料理だ」

「みんなで作るのも楽しいね、カイヴォン」

「ふふふ、アマミの焼いたムニエルと私の焼いたムニエル、少し色が違うね!」

「う……リュエが上手すぎるんだよ? ちょっと皮が焦げちゃっただけだもん」


 賑やかな食卓。料理前、少しだけ悩みをレイスと共有出来たおかげだろうか、いつも以上に晴れやかな気分だ。

 じゃあ早速頂こうと、いつもの挨拶をしようとしたその時だった。

 レイスが突然、はっとしたように立ち上がった。


「あ、あの! ダリアさんの分は……」

「ダリアはたぶん、作業に集中しているから戻ってこないと思うよ」

「そう……なんですか? あの、折角みんなで作ったのですし……」

「ふぅむ……適当にもう何か食べてしまっていると思うけど、呼んでこようか」


 レイスの方は、ダリアに対してそこまで悪感情を抱いている訳ではないのだろうか。

 ……彼女の心の問題、という事なのかね。

 ならば急ごうと席を立った瞬間、食堂の扉が開く。


「それには及ばんよ。なんだよ、俺だってお前の作った飯食いてぇよ。というわけで呼ばれて飛び出てジャジャジャジャン。聖女様の登場だ」

「珍しいな……いつもなら黙ってたら夜まで部屋にこもったりする癖に」

「俺も長い間城で生活しているうちに変わったんだよ。具体的に言うとお付きのメイドに泣きつかれて変わったというべきか」


 ダリア登場。頭に大量の葉っぱと木くず、それに鉄臭さを匂わせながら。

 すると、無言でレイスが立ち上がり、背の低い彼女を抱き上げて食堂の外へと連れ出した。


『うわ……ちょ、やめ……じ、自分で出来るから』

『大人しくしてください。手も洗って……はい、髪にゴミが沢山ついていますよ』

『分かった、分かったから! げ、薬までついてら』


 ……子供とお母さんか。


(´・ω・`)はーまじアマゾンダメね

欲しいゲームはパッケ買う派の人間としてはもうアマゾンでゲーム注文出来ないわ

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