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二百九十八話

(´・ω・`)エピローグ的な

「心に決めた人が居るとは聞いていたけれど……まさか二人だなんて思ってもみなかったわ」

「ははは……突然すみません、ミスティさん」

「構わないわ。じゃあもうすぐお店も終わるから、それまで二階にいて頂戴」


 一先ずミスティさんの店へと身を寄せ、皆が寝静まる深夜まで匿ってもらう事になった。

 ダリアが動いている以上、そこまで大規模な捜索が行われるとは思っていない。

 だが、万が一にもアークライト卿に被害が及んではいけないからと、こうして隠れ潜んでいるという訳だ。

 店の二階は、元々旦那さんが寝泊まりする為の場所であり、今では倉庫代わりになっているそうだ。

 二人を椅子に座らせ、こちらは古びたベッドに腰掛ける。


「とりあえず一息つけたかな」

「な、なかなか貴重な体験が出来ましたね……余り何度も体験はしたくありませんが」

「そうかい? なんだか自分の身一つで空を飛んでいるみたいで凄く面白かったじゃないか」


 やはり、この大陸に来てすぐに眠ってしまったリュエだ。

 無邪気に笑うその姿を見て、どこか安心する反面、かすかな寂しさを感じる。

 けれども――まるでこちらの考えを見透かしたように、彼女がじっとこちらを見つめる。

 青い瞳がうっすらと輝く。ただ静かに、こちらを見つめている。


「……カイくん。私は、ずっとここにいるよ」

「リュエ……」

「まだ、全部が終わったわけじゃないけれど、それでも、たぶん私の中でケジメをつける事が出来たから、ね」


 少しでも、あるべき姿に近づいたのだから。

 心のままに生を謳歌出来る、いつもの彼女に戻ったのだから。

 そして、今もここに確かに『彼女』は存在しているのだから。


「……そうだね。けれども言わせてくれ。おかえり、リュエ」

「ふふ、ただいま、カイくん」


 無邪気に笑う君が、やはり俺は好きなのだと、改めて思い知らされる。

 つい、レイスが見ている前だというのに、無性に抱きしめたくなってしまう。

 けれども――先にレイスが抱きしめてしまった。


「ぐぇ」

「リュエ……」

「ぐるじい……胸が……」

「大変……でしたね……」


 むしろ現在進行系で大変そうなのでそろそろ離してあげてください。

 うらやまけしからん。


 こちらも一段落ついたところで、今後の動きについて相談する。

 ダリアが自らこちらに向かうと言っていたが、それはアークライト卿の元へと向かうという意味なのだろうか?

 だが、もうフェンネルに目をつけられてしまっている以上、あの屋敷で密会するのも難しいと思っている。

 こちらだって最低限の挨拶を済ませ次第、すぐにでもこの都市から立ち去るつもりでいるのだから。

 伝言でも残しておくべきだろうか。


「一度隠れ里に戻るのは確定しているのですし、もしかしたらダリアさんもそちらに向かうのでは?」

「里長を目覚めさせるんだよね。アマミが喜ぶ姿が目に浮かぶね」

「うーん……あのいけ好かないガキが横槍を入れるかもしれないし、そんなにすぐに動けるとは思えないんだよなぁ」

「カイくん今ナチュラルにフェンネルの悪口言ったね?」

「つい」


 ともあれ、どのみちアマミと合流する必要もあるのだし、深夜を待ってアークライト卿の元へと向かう事にした。




 深夜。酒が回り気持ちよさげに鼻歌を鳴らす人や、駆け足で家に戻ろうとしているであろう人、この時間でもやっているお店を探す集団が、夜の静寂を少しだけ賑やかす。

 そんな最中『ここまで暗ければ大丈夫かな』と、白髪を隠さずに出歩こうとするリュエに、こちらが無理やりマントをかぶせながら、一路貴族街へと向かう。

 やはり、特別多く騎士が出歩いている訳でもなく、最低限の巡回の騎士を見かける程度。

 ならば必要以上にこそこそする必要はないからと、いつものようにアークライト卿の屋敷へと足を運ぶ。

 ……恐らく、明日には再びこの都市を離れる事になる。

 そして、今度こそこの都市に戻る事はないだろう。少なくとも、何か大きな戦いでも起きない限りは。


「リュエが言っていた、フェンネルの企みっていうのはなんなんだい?」

「正確には分からないけれど、ちょっとだけ心当たりがあるんだ。出来れば、ダリアがいる時に説明したいんだけど……今しようか?」

「うんにゃ。そっちの方が都合が良いならそれまで我慢する」

「……あの、ダリアさんは今度こそ信用しても良いのでしょうか」


 すると、レイスが立ち止まりそんな言葉を口にした。

 確かに俺とリュエは思い出が多い分、ダリアに信頼を寄せることが出来る。

 だがレイスからすれば、ダリアは『襲撃者』であり『敵国の聖女』であり、そして何よりも『自分と友人になると言った直後に裏切った相手』なのだ。

 今暫く、ダリアに対する疑念は晴れないのだろう。

 ……仕方のない事だ。だが、今度こそあいつは、俺達の為に動いてくれる。

 少なくともあいつは約束を果たしてくれた。ちゃんと、リュエを国王の元へと連れて行ってくれたのだ。

 その事を今一度彼女に話し、もう一度だけダリアを信じてみてくれと、懇願する。

 悪い人間じゃないんだ。ただどうしてもあいつの立場が、そしてこちらとの関係が、そうさせてしまっただけなのだ。

 勿論、レイスが警戒しているのは、俺やリュエが辛い目に遭う事を心配してくれているからなのだと理解はしているのだが。


「……分かりました。すみません、お二人の友人だというのに、疑ってしまって」

「気持ちは分かるよ。俺だって立場が逆なら心配……どころかたぶんもっと酷い事になってそうだ」




 屋敷が見えてきたところで、一旦物陰に隠れて様子を窺う。

 変わった様子は見られないが、念のため剣を取り出し[ソナー]を発動させる。

 すると、どうやらこの都市を覆う結界に反応しているのか、複雑に反響しあい、マップ上に幾何学的な模様が表示された。

 恐らくこれが術式の一部なのだろう。

 それを凝視しながら、何か不自然な点や隠れ潜む人間がいないを確認していく。


「前から気になっていたのだけど、カイくんはその剣でヒョイーンって波を出した後、自分だけ見えるようにしてメニューを出しているよね? 私にも見せておくれよ」

「そういえば、たまに使っていますよね、そのフイイーンっというのを」

「違うよ、ヒョイーンだよ」

「フイイーンですよ」

「……その議論は平行線を辿りそうなので止めましょう。ほら、これが俺がいつも見ている探索結果だよ」


ちなみに俺は『キイイイイン』派です。

二人にもメニュー画面が見えるように許可を出し、今しがた使用した[ソナー]の探索結果を二人に見せる。

周囲の地形や、木々に潜む小動物、そしてうっすらと浮かぶ都市を覆う術式が映し出されたそれを、二人が熱心に見つめる。

とりわけリュエは瞳を輝かせ、小さな声で『凄い全部丸見えだ』と興奮した様子。

 だがそんな時、マップ状を素早く動く、小動物と呼ぶには大きな反応を見つける。

 どうやらこの辺りを動き回っている様子だが、その姿を捉える事が出来ない。

 それに気がついたレイスが、魔眼を発動させて通りをじっと見つめている。


「……カイさん。人がいます。姿は見えませんが、確かに人の姿をした何かが」

「……追手かもしれない」

「いや、たぶん違うんじゃないかな。魔力の感じが魔術師に類する人のものとは思えないくらい未熟だよ。隠蔽の魔導具? 私も知らない仕組みのアイテムだと思う」


 謎の人物がマップ上の通りを彷徨うのを、息を潜めて観察していると、ようやく目的地でも見つけたのか、一目散の貴族街の外へと向かい駆け出していった。

 そして次の瞬間、本来であれば運河が流れているはずの場所へとその反応が移動し、凄まじい勢いでマップ状から流れ消えてしまった。


「なんだったんだ……今のは」

「……もしかして、お城に忍び込むつもりなのかなぁ? あの川ってお城の下も流れているんだろう?」

「今日の騒ぎに乗じて忍び込む……か?」

「もしかしたら、以前のアマミさんの様に自由騎士団から新たに派遣された諜報員かもしれませんね」

「……本当、想像以上に複雑な国だよ、ここは」


 一先ずこの事は自分達には関係ないだろうと、本来の目的であるアークライト卿の元へと向かうのだった。




 こちらが門番に声をかけると、まるで予め示し合わせていたかのように、直ぐ様屋敷内へと通される。

 待ち構えていたのは、旅支度を済ませたアマミと、これから夜会でも開くつもりなのかと尋ねたくなるような正装を身にまとったアークライト卿とレイラだった。

 どういう事かと二人に尋ねる。


「先程までダリア様がお見えになっていたのだ。それで、言伝を頼まれたのだが……」

「少々、疲れたような顔をしておいででした。なんでも、今すぐ行かなければならない場所があるのだとか……」


 まさか、ここで俺達と落ち合うつもりだったのだろうか?

 今すぐ行かなければならない……里の事だとは思うのだが……。

 すると、旅支度を済ませた様子のアマミが、一通の手紙を手渡してきた。


「一応、伝言内容は『先に向かいます』って言葉だけなんだけど、これも渡して欲しいって」


 恐らく、里長がもうすぐ治ると思い、一足先に出立の準備をしていたのだろう。

 少しだけ急かすような様子で手紙を渡し、彼女自身も今すぐ出立したさそうに、気持ち身体が揺れているように見える。

 封を開け、手紙を取り出し目を通す。

 ……意外な事に、手書きのようだ。メール機能を使えばいいだろうに。


『面倒な事になった。フェンネルが正式にお前達三人を犯罪者として国内に指名手配するつもりらしい。俺は先にあの里の結界の時間制限を早める様に手を加えておくから、そっちも急いで追いかけてきてくれ。

追伸 お前が城でぶっぱなした技、あれはなんのつもりだ?』


……バレてら。さすが元プレイヤーは騙せないか。

だがこちらの指名手配の件を手紙に記し、アークライト卿達にはまだ知らせていない事から、正式に発布されるのはまだ先という事になるのだろう。

 これなら万が一の時も『犯罪者だとは知らずに利用された』と、アークライト卿も言い訳が出来るという訳か。

 ……となると、彼の正式な私兵として雇われているアマミと堂々と行動を共にする事も出来ない。

 ならば――


「アークライト卿。魔車、いや馬車でも構いません。一台、貸してくれませんか」

「ああ、それは勿論だ。ダリア様の元へ向かうのだろう? アマミ君と共に――」

「……いえ、アマミは俺達を更に追いかける形でついて来て貰いたいのです」


 もしもの時『疑わしい者達を私兵に追いかけさせた』と言えるように。

 詳細を今説明する事は出来ないが、それでもこちらの提案にきっと意味があるのだろうと、彼は思案の後に飲んでくれた。

 ……感謝します。アークライト卿。

 状況が飲み込めないアマミに、一先ず一時間遅れでこっちを追いかけてくれと指示を出し、まもなく深夜を周ろうとするにも拘わらず、足早に屋敷を発つのだった。




 夜の王都から飛び出す魔車を、検問の人間が何も言わず通してくれる事などあるはずもなく。

 当然の様に呼び止められ、閉じられた門を開ける素振りも見せず疑いの眼差しを向けてくる。

 こちらの魔車は、足がつかないようにとグレードの低い、行商人に貸し出したりする事もある粗末なものだ。

 アークライト卿が手配してくれたものではあるのだが、これならば万が一にも彼に繋がる事はないと言う。

 だがその反面、もはやこちらに後ろ盾がないという状態だ。

 こちらへと歩み寄る守衛をどうするべきか。

 その答えは簡単だ。

 大量の麦わらと共に布にくるまれ、荷台に積まれているこちらの耳に、御者を勤めているレイスの声が届く。


「この封蝋を。現在、ある方の名を受けています」

「これは……聖女ダリア様の印……その、中身を確認する事は――」

「それをしては、私は貴方の命を奪わなければならなくなります。お願いします、どうかこのまま門を開けてください。そして、今見た物はどうか忘れてください」

「……恐らく、何か特別な事情があるのでしょう、な」


 さすがの演技力である。

 悲壮感の漂う、そして決意を秘めたかのような迫真の演技、そして先程俺が受け取った手紙の印も相まって、疑いよりも先に、なにか責任感や義務感にも似た感情を抱いたであろう門番。

 人は、何か重大な事柄に、それも自分とは程遠い場所で起きている出来事に少しでも関わり、そして秘密を共有する時、不思議な使命感を抱いてしまう事がある。

 その真理をうまく使い、門番に『自分が、聖女様の密命の助けになる事出来る』と思わせることに成功した、と。


「さすがだな……レイス」

「……私じゃダメだったのかい?」

「髪色をごまかせても色々とアウトだと思います」

「むぅ。……まぁここふかふかで気持ちいいから良いけどね」


『通して! ダリアに呼ばれたんだ!』

『聖女様を呼び捨てとは怪しいやつめ!』

 絶対こうなる。


「んー少しチクチクするなぁ」

「ほら、静かに。また魔車が動き出す」


 無事に門を潜れたのか、魔車の振動が大きくなる。

 そろそろ平気だろうと、麦わらから頭を出し、彼女に声をかける。


「レイス、平気かい?」

「はい、問題ありませんでした。では……そうですね、このまま可能な限り距離を稼ぎます。途中で魔物を休ませる関係で野営する事になると思いますが……」

「了解。じゃあ俺が御者を交代するから、レイスは後ろで休んでくれ」

「分かりました。実は、少し眠気が……」

「なんだかんだで今日は色々あったからね。もうリュエは寝息を立てているし、一緒に寝てあげてくれ」

「はい。カイさんも無理をなさらないようにしてくださいね」


 速度を緩め、彼女と位置を交換し、再度速度を上げ街道をひた走る。

 もう結界を抜けたのだろう。まとわりつくような熱気を切り裂きながら、星空の下を駆け抜けていく。

 サーズガルド。俺の最初の目的地であり、因縁の国。

 そして、恐らく未来の敵となるであろう男が暗躍する地。

 ……また、必ず戻るからな。今はまだ、こちらが力を振るう大義が存在しない。

だがリュエは、必ずその時が来ると確信しているのだから――








木をくり抜いたかのような小さな部屋。『神霊宮』

 周囲とは隔絶されたその場所で……いや、隔絶された場所だからこそ、今一人の人間が、他の目を憚らずにその激情を放出し、破壊の限りを尽くしていた。

 八つ当たり。見苦しいだけの行為であるはずなのに、それが生み出す結果の凄惨さが純粋な恐怖を生み出していた。


「……もう止めろ、フェンネル」

「黙りなよ。君達には失望した。たった一人の人間、それも公正の釜まで使ったあげくこのザマだ。手心でも加えたのかい? おかげで、見たくもない物を見せられ、計画の邪魔をされ、あろうことか――あんなどこの馬の骨とも分からない――知能の低そうな――」


 一言一言を区切り、力を入れ、その腕を振り下ろす。

 それが生み出すのは文字通りの粉砕。まるで何度も粉砕機にかけられたかのように、粉塵と化す椅子、テーブル、遊戯の道具達。

 これまでの思い出や、生み出してきたもの等無価値でしかないとでも言いたげなその暴挙を眺めながら、剣士は一人唇を噛みその叱咤を受けていた。


「あれが、僕の憧れた先生、リュエ・セミエールだって? あんな、腑抜けた、腰抜けた、やるべき時にやる事が出来ない、あんな意思の弱い女が!」

「……お前は、何を考えている。あんな挑発までして――」

「お前が知るべきことではないよ。おかげで、おかげで本当に何年分のロスが生まれた事か……取り戻さないと……遅れた分は、絶対に取り戻さないと……」


 狂気をにじませながら、ブツブツと呪詛でも唱えているかのように、フェンネルは俯いたまま、かろうじて原型を止めている椅子へと座り込む。

 剣士、シュンの事などもうどうでもいいと言わんばかりに、ただひたすら思考を巡らせる。

 かつて共に遊んだボードゲームやカードゲームが、塵となり消えていく。

 それを見つめる彼は果たして、どんな心境なのか。

 悲しみか、怒りか、それとも他の何かか。


「……ダリアが城を出た。恐らくカイヴォンのところに行ったのだと思われる」

「ああ、どうでもいいよ。また眠りにつかせるつもりだったんだ。いなくなったってどうって事はない」

「っ! ……俺は、どうすればいい」

「剣を振ることしか出来ない人間に託す事なんて一つしかないだろう。殺せ、もし今度連中が、カイヴォンが僕の前に現れることがあれば躊躇なく殺せ。僕の為に全てを差し出せよ、シュン」

「……分かっている。約束だからな」

「? ああ、そうだったね。約束だ。しっかり働いて僕を次の段階に進めさせてくれよ」


 何かが、変わったと。

 元々何を考えているか分からなかった人間が、更に分からなくなったと、シュンは思った。

 自身の拠り所……むしろ縋っていると言っても良い人物の意図も読めず、そして常に共にあった友が離れ、あげくの果てかつての友と敵対する道を選んだ剣士はただ、それでも剣を振るだけだと、全ての不満や不安を飲み込む。

 それは、十分に狂っていると言える狂気の道。

 きっと、今この場には、正常な思考を持った人間は誰一人として、存在していない。

 千年という時の流れの中で、謀略を巡らせ続けた男、フェンネル。

 かつての師であるリュエをして『邪悪だ』を断じられたこの人物が、どう動くのか。

 どんな災厄を生み出すのか。この国に何をもたらしてしまうのか。

 恐らくきっと、今日という日にこの国の未来は決まってしまったのだろう。

 それがどのような結末になるのかは、今は誰も、きっと神ですら知り得ない。

 だが――恐らくきっと、それを選び、勝ち取る事が出来る人間はいるのだろう。

 この国を去った彼等に、全てはもう託されたのだから。






 だが――謀略を巡らせるのが一人だと、企みを懐き続ける国家が一つだけだという保証等、この世界のどこにもないという事実を、皆が忘れていた。

 フェンネルでさえも、考えていなかった事実。いや、取るに足らないものだと断じ油断していたのかもしれない。

 だが確かに、誰も知らない場所で、一つの企みが、そして一人の意思が動こうとしていた。

 薄暗い地の底で、誰にも見られずに、ただ己の目的を果たそうと、純粋すぎる願いを懐きながら。

 ブライトネスアートを縦断する四つの運河のうちの一つ。

 王城の下を丁度通るその流れに揺られる、今にも沈んでしまいそうな小舟に乗る、ボロ布を纏った人物。

 引き返すことの出来ない流れに乗り、暗闇を進むその姿は、まるでその人物をとりまく環境そのものを表しているかのようで。

 ……流れは、やがて一つになる。

それはこの水の流れか、はたまたそれぞれの運命なのか。


(´・ω・`)十二章の終わり 六巻改稿作業に入るのでしばらくおやすみしまうす

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