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プロローグ2

 まだまだ続くよプロローグ

『簒奪者の証(龍)』

『簒奪者の証(闘)』

『簒奪者の証(妖)』

『簒奪者の証(天)』

『簒奪者の証(剣)』

『簒奪者の証(魔)』


 あれから11時間、寝ずにひたすら大ボスに挑んだ結果だ。

 ん? 仕事とかいいのかって? 現在転職活動中だ言わせんな。


 ボスに分類される敵は数多くいるが、『七星』という言葉にあてはまりそうな強敵にしぼって挑み続けた結果がコレだ。

 あれからチームメンバーがログインしてきたので、状況を説明して各所のボスエリアを確保してもらい、挑み続けた結果だ。

 お陰で確信が持てた、最終日だからって運営が色々はっちゃけているらしい。

 誰を倒してもアビリティがゲット出来てしまう。

 おかげさまで俺の所持アビリティが166から299まで増えてしまった。

 どんな組み合わせが出来るか、どんな事が出来るか考えるだけで楽しいのだが、いかんせんそれを試す時間がもう残り僅かしかない。


Kaivon:みんなありがとうな、そろそろセントラルタウンでカウントダウンイベント始まるだろ?

Oink:ぶうぶう先に行くけど、ぼんぼんこないの?

Syun:もう結構あつまってんぞ? こんだけ集まったの5年ぶりくらいじゃね

Daria:タウンで人多くて通行出来ないとかゲーム始まって以来じゃ


 どうやら既にユーザーが集まり始めているらしい。

 クソゲーだなんだ言われていても、みんなこのゲームが好きだったんだという事を再認識し、嬉しくなる。

 だって、戦闘だけはこのゲームの自由度を上回る作品は未だに無いと言われているのだから。

 尤も、それ以外が適当なのでみんな去ってしまったのだが。


 買い物の値段のインフレから始まり、バランス調整の甘さ、そして背景や街の手抜き。

 見えている場所なのに通行出来ない『見えない壁』なんて日常茶飯事だ。

 それ故に皆、離れていく。

 戦闘は楽しいが、敵の行動が単調なので自分の動きに敵がついてこられない、なんて事だってある。

 だが、それを差し引いても俺は面白いと思えてしまう。


El:相変わらずカイさんはマンチプレイしまくりで笑いました

Gu-Nya:そして見た目がついに魔王様になっててワロタww 本気でコーディネイトした結果がそれかよw

Kaivon:中二病も極まれば芸術だろ? どっからどうみてもラスボスだ



 新たにログインしてきた二人のプレイヤー。

 生産系に楽しさを見出すも、作れる種類、組み合わせの少なさに早々に去ってしまった二人だ。

 Gu-Nyaは鎧や服を作る事に楽しさを見出し、そして話の合う人間を集めて俺達のチームを結成した初代チームマスター様である。

 尤も、殆どログインしなくなったのでその地位はSyunに譲っている訳だが。


 もう一人のElは、生産と言うよりは、現実世界の生産にこのゲームを利用しているプレイヤーだ。

 ゲーム内でSSスクリーンショットを撮影し、それを元にイラストを描いて楽しむというスタイルだった。


 さて、では俺が作ったキャラの見た目の話をしよう。

 銀色の長髪に、切れ長の鋭い目のイケメン。

 長身で線の細い、白人のモデル体型。

 どこぞの堕ちた英雄様よろしく服装は黒系統でございます。


 いやぁ、こういう現実離れしたキャラっていいじゃん?

 実際にはこのキャラクリを利用してロリやらエロお姉さん作る人ばっかなんだけど。

 今頃人で溢れかえっているタウンの男女比率がひどい事になっているだろう。

 恐らく男と女で2:8とかそんな感じだぞ。

 尚現実世界の性別に直すと数字が逆転する模様。


Kaivon:きっかけはあのコートでした

Gu-Nya:俺のかよw たまたまネタで作ったらお前が食いついたんだろw

Kaivon:黒いコートに鎧のパーツを組み込むとか、俺の大好物です

Gu-Nya:それが何故魔王になったし

Kaivon:色々拾ったから


 現在、俺の背中には2対の大きな蝙蝠のような、悪魔のような羽根が生えている。

 そして頭上には黄金のヤギの角に、顔の右、目と頬を隠すような白を基調としたマスク、目の部分は深紅だ。

 まさに悪役、それも結構上のポジションってな具合だ。

 さらに瞳は虹彩を赤、白目部分を漆黒という完全に人間という種族を逸脱した状態である。


 この状態でひたすら敵を狩っているため、一部では俺をNPCだと勘違いしている人間がいる。

 そして、今まさに俺は本当の魔王になろうとしている。


Kaivon:とにかく、俺は最後のアビリティゲットのために神界エリアに行ってくるわ

Syun:時間的にアビ習得と同時にサービス終了の予感

Daria:カウントダウンしねーの? なんか運営から発表あるかもしれんよ

Oink:ぶうぶうキャプチャソフトで動画撮影しといてあげるわよー

Kaivon:サンキュ、じゃあちょっくら神殺しに挑戦してくる


 さぁ、魔王様VS神の大一番だ。







Syun:しかしこのキャラともお別れか……フィギュア化とかしてくんねーかな

Daria:SS保存して資料作っとけ、いつか3Dプリンタで作れるかもしれんだろ

Oink:公式でやってくれないかしら

Gu-Nya:そんな気の利いた運営ならそもそもこんな過疎ってねーw

El:でも、この子が電子の海に消えちゃうのって悲しいです、私

Syun:だよなー。俺こいつファーストキャラだけど、セカンドとかサードキャラも最後の瞬間に立ちあって欲しいし

El:そうなんですよ! この子だけ最後まで一緒で、他の子が誰もいないところでひっそりと消えるのが凄く可哀想で










 アビリティ構成どうすっかな。

 最後に挑むのは『創造神アストラル』という、人型の敵だ。

 こいつだけは特効アビリティがないので、長期戦を覚悟した構成にせざるを得ない。

 今日手に入れた『証』系も、ほとんどが特効やら特定種族に対して効果がある物ばかりだ。

 まぁ、中には常用していける物もあったが。


『簒奪者の証(闘)』

『戦闘中の行動速度が2.5倍になる MP自然回復の速度にも適用される 攻撃が連続で当たる度に攻撃速度が3%上がる(上限は150%)』


 通常の攻撃の他に、剣術やその他カテゴリごとの技を発動するにはMPを消費するが、割と早い自然回復でどんどん連発が出来る。

 だが、それでもMP切れで行動が止まるのは避けられない。が、これはその止まるはずのテンポをほぼ0にしてくれる。

 自然回復の速度が、技を組み込んだ一連のコンボの消費MPとほぼ同じなのだ。

 何も考えなしに技を連打すればさすがに尽きるが、これはかなり大きい。

 そしてもう一つがこれだ。


『簒奪者の証(剣)』

『習得アビリティの数×2だけ武器の攻撃力に加算する』


 これである。

 つまり『299×2+25=623』武器の攻撃力が623まで上がるのだ。

 出来ればこのアビリティ、もっと序盤で欲しかった。

 ……そうすれば努力とともに成長する剣、みたいな感じだったのに。

 まぁそれでも、同型に分類される長剣の上位武器の攻撃力に届かないんですけどね。

 しかし忘れてはいけない、この武器のアビリティセット可能な数が8つだと言う事を。


 残念ながら『証』系はアビリティ名に数字が設定されているわけではないので『アビリティ効果2倍』が適用されない。

 それでも、この道中で結構な壊れアビリティを入手出来たので問題ない。

 今なら創造神だろうがそこまで苦戦はしなさそうだ。

 サービス終了時間まで残り3時間をきったところだし、さっさとアビリティ構成を決めよう。





『吸生剣』

『クリティカル率+35%』

『与ダメージ+30%』

『衝波烈風刃』

『被ダメージ-30%』

『アビリティ効果2倍』

『簒奪者の証(闘)』

『簒奪者の証(剣)』


 ハイ出来ました。

 『吸生剣』は、クリティカル時に与えたダメージの5%をHPに変換するという物だ。

 その特性故、今までアビリティ枠を1つさいてまで使う価値がほとんどなかったのだが、道中で拾った今まで使っていたアビリティの上位互換のおかげで日の目を見る。

 ましてや『簒奪者の証(剣)』で攻撃力が大幅に上がっている今、その5%の吸収で下位の回復薬くらいは回復出来てしまう。

 『衝波烈風刃』は攻撃に衝撃波を追加してくれるアビリティで、その威力はこちらの与えたダメージの10%と控えめだが、そのかわり多段ヒットする。

 しかも、当たり方次第では合計ダメージが剣本体の攻撃を上回る場合もある。

 難点として、これは通常攻撃にしか発生しないという点だろうか?

 だが、これは複数体にヒットするので、敵に囲まれた場合でも活躍してくれる。

 さらにクリティカルヒット判定が全ての衝撃波に行われる。

 つまり衝撃波を全て当てることが出来れば、ほぼ毎回クリティカルが発生し、HPを吸収してくれる。

 勿論、それは剣の攻撃にくらべて微々たる回復量にすぎないが、チリも積もれば、だ。

 そして今回はさらに防御系のアビリティもセットし、2倍効果が適用されてダメージ6割カットだ。

 とりあえず即興で手に入れたばかりのアビリティを組み合わせてみたが、正直かなりの仕上がりだ。

 もう何も恐くない!


Kaivon:君らなにしんみりしてるの、俺が今から最後のアビリティゲットするから、見とけよ見とけよー

Syun:おう、あくしろよ

Daria:フラグ乙

El:早く終わらせて、こっちに来て下さいね?

Gu-Nya:唐突なネタでこの空気かえようとしたんだろw

Oink:優しいわねぼんぼん

Kaivon:うるせぇだまってろ!11111


 くそう、コイツら。




 そんなやり取りをしつつも、最後の扉に手をかける。

 目の前には、金色の円形のステージ。

 そして中央に立つのは、金髪碧眼の壮年の男。

 純白のローブを身に纏い、メビウスの輪のような飾りのついた黄金の杖を手に持ち佇んでいる。

 身体からうっすらオーラがはなたれており――


「はい、どーん!!!!」


 全力で駆けて、切る。

 その瞬間戦闘モードに移行するも、そのまま杖の輪に剣を差し込み思いっきり振りかぶる。

 すると、相手の手から杖がすっぽ抜け、一瞬創造神の動きが止まる。


 神は大きく下がり、両手を突き出し自分の手の中に光を生み出し、それが杖となる。

 その瞬間俺は――


「はいもういっかーい!」


 以下略。


 このゲームは、なんでも出来てしまう。

 攻撃の瞬間に視点をFPSモードのようにし、攻撃を当てる箇所を細かく指定出来るのだ。

 それを使い、こんな事まで出来てしまう。

 そりゃあこちとら代わり映えのない世界で何年も戦ってんだ、パターンも暗記済みだ。

 さらに判っているならこの程度のエイミングは余裕である。

 こうして杖再召喚を誘発して隙を作り、後衛がチビチビとダメージを蓄積させる。

 それがこいつの必勝法。

 が、今回は違う。

 俺の剣からは衝撃波が飛び、そのダメージも小さいとは言え、徐々に蓄積されていく。

 少なくとも、弓や速度重視の魔法よりは遥かに大きなダメージ。それが無数にヒットしているのだ。

 さらに、俺の見た目だけの装備ではこの神……ボスから発生するオーラを防げずにスリップダメージを受けているが、それもすぐに回復。

 まさに、こいつを殺すためだけのアビリティ構成だ。


 目の前でHPが半分以下になった神は、攻撃速度を上げる。

 こうなると、パターンが崩され事故率が上がってくる。なので、今回は念のため防御系のアビリティをセットしてきた。

 だがそれも……。


「連続で攻撃当てるの、こいつだけは簡単だからなー」


 毎回杖に当て、すると相手はいちいちバックステップをし、動きを止めて杖を召喚。

 外す要素がない。そしてその結果『簒奪者の証(闘)』が発動、限度があったが、攻撃速度がとんでもない事になっている。

 これはもう時間の問題か。


 某最後の物語の七作目くらいに出てきたあの人風。

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