二十話
(´;ω;`)投稿する話間違えた
「冗談はさておき。現状、この世界は非常に安定していますが、外部世界……と言うより日本から人が召喚されているようです」
「ああ、レンって奴ならもう会った。なんでも七星の開放を目的としてるらしいぞ」
「そうです。この大陸にも1体封印されているのですが、それを開放しようとする動きが見られます」
……まだ言わないでおこう。
「七星の開放がどんな意味を持っているのかは正確にはわかりませんが、開放に協力的ではない国が幾つもあることから、もしかしたらゲーム時代同様、ボスとしてこの世界に脅威をもたらすのでは、と考えているのですが……」
「でも開放された場所では大地が豊かになったって報告もあるらしいぞ」
「ええ、それも事実です。ですが、創世記を生きた人の話を聞く限り……私にはこれら全てが餌、何かを隠すために人類に餌を与えてるように思えてなりません」
「まぁ、そうだろうな」
とりあえずオインクも開放には否定的と。
これなら敵対する事もなさそうだ。
それに、やっぱりプレイヤー目線から言わせたら、開放して実り豊かになるってのはどうも胡散臭い。
「なぁ、ちょっと教えておきたい事があるんだけど聞いてくれるか?」
「なになに? ……なんでしょう」
豚のクセが抜けきっていないなコイツ。
リュエが封印していた事、そしてクロムウェルさんとの話を聞かせる事にした。
無論、俺が七星の七を倒したという事も。
「…………はまじ」
「豚語が出るくらい呆れたか」
「ええ。話はわかりましたけど、瞬殺って……最終日のバランス崩壊アビリティがまさかこんな形で……」
「そして伝説として残ってると言う」
「なんでぼんぼんだけ伝説になってるんでしょうね、不公平です」
「ボス前マラソンおつかれーっす」
「やんやん?」
「んじゃ現状は様子見、開放しようとする動きがあればリュエと一緒に俺が様子を見るって形でいいか?」
「そうなりますね。私の方で動きを探ってみますけど、少なくともこの大陸ではもうやる事はなさそうです」
「首都とやらを軽く見たら、隣の大陸に渡ってみるわ」
隣の大陸はすでに七星が開放され、不毛の大地だった筈が今では緑が生い茂り、農林大国としての地位を長年保ち続けている国だそうだ。
俺の今いる大陸は『エンドレシア』と呼ばれ、鉱山資源と塩がある反面、作物が育ちにくい場所なのだそうだ。
もしかしたら、七星を開放出来ていたら隣の大陸のようになっていたのかもしれないな。
まぁだからこそ、国が七星の開放に協力的で、解放者としてレンを召喚したのだろう。
そして、俺は一番聞きたかった事を聞く。
「シュンとダリアは今、何処にいるんだ?」
「それは……」
何故か言い淀む。
最悪が脳裏を掠めるが、俺と同じプレイヤーならば、そう簡単に死ぬとは思えない。
オインクを見る限り、寿命を迎えるという事もなさそうだし。
「教えてくれ、頼む」
「シュンはダリアと一緒にいますよ。二人共、この大陸から2つ隣の大陸にいます」
「そうか、随分遠くなんだな。連絡はとれないのか?」
「連絡を取るのは不可能ですね……あの、どうか二人を、ダリアを悪く思わないで下さい。ダリアは今、エルフの国にいます」
「それが?」
「リュエのお話を聞く限り、当時の長達が興した国が、その場所です。恐らくダリアはその国で高い地位に居るはず、なのでどうか」
「報復に国を攻撃するのはやめろと? 俺とダリア、シュンが争うのは見たくないか」
あの二人の事だ、恐らく一緒にいる事だろう。
そして、俺の性格的にエルフの国になんの報復もしないとは思えないと。
大正解。殺意とまではいかないが、別に許してやるつもりなんてさらさらない。
当時のエルフ達は恐らくもう生きてはいないだろうし、その子孫を責めるのはお門違いだろう。
しかしそんな事は知らんがな。
俺が気に入らないから責任を取らせる。それだけだ。
「その顔を見るに、穏便に済ませるつもりはなさそうですね」
「今も昔も俺にとっては『敵か味方の二択』だからなぁ」
「極端すぎです。けれども、お二人は『味方』ですよね、一番の」
「まぁな。あいつらなら解ってくれるさ。もし俺が本気で国相手に戦争でも仕掛けよう物なら、きっと俺のために自分の国を裏切る位はしてくれる」
「すごい自信ですね。お二人は私より先にこの世界にきていたそうですよ。現実世界よりも、こっちの世界で過ごした年月の方が長い筈です。それでもお二人がついてきてくれると?」
「まぁ……もし敵対するようなら、力づくで?」
「お二人もぼんぼん程じゃありませんけど、カンストまで育成した猛者ですよ」
「私のレベルは399です」
「なにそれ恐い」
「いやぁ、この世界に来てからまたアビリティ増えたんだよなー」
「……お願いだから世界を滅ばさないでくだしあ」
「了解」
というか『責任をとらせる=戦争』という解釈をどうにかしてくれませんか。
別に頭下げて貰えたらそれでいいんですよこっちは。
下げたくないならその時は武力に物を言わせずとも、いつか協力を求められてもつっぱねるだけの話だ。
恐らくだが、今世界は動き始めている。
この先どうあがいても動乱の時代に突入するだろう。
何せ、伝説では俺は『見えざる神と共に消えた』事になっているのだから。
俺が遅れてこの世界にやって来た以上、その神とやらだって戻ってきていると考えておいた方がいいだろう。
「んじゃ俺は近いうちに首都に向かってみるけど、オインクはどうする?」
「私は折角ですし、ソルトバーグへ視察へ向かう事にします」
「あ、そうだ」
ついでだし、あの街の一件も報告しておこう。
上に報告すると統括も言っていたが、どうも信用ならん。
それにあの領主の事だってある。
「なんとも楽しそうなイベントが発生したみたいですね」
「やっぱ報告いってなかったか」
「領主も含めて一度人員の再編成をした方が良いかもしれませんね。私共の不手際でぼんぼんには迷惑をかけてしまいました」
「……なぁ、総長ってこの大陸で一番偉いって事なのか?」
「いえ、隣の大陸までが私の管轄ですよ。そこからはまた別な組織です」
「マジかよ……ヘタすりゃ王様より偉かったり?」
「戦争になったら私が勝つ程度には力があるとだけ」
わーお。そんな人間をさっきから蹴ったり叩いたりしていたのか俺。
しかし、こんな美人さんに暴力とか、ちょっと酷いな俺。
「んじゃ飯も食ったしそろそろ行くとするわ」
「勘定はまかせろー」
「任せた」
「思ってたのと違うんだけど!?」
だってお金あるんでしょ君。
「んじゃ俺は宿に戻るけど、後でリュエとも話してやってくれ。認識は違うかもしれないが、あいつにとってもお前は仲間で、会いたがっていた相手なんだ」
「勿論。私も気になることがありますし、同性で対等な友人は貴重ですから」
「雌豚の友達か……」
「あやまって?」
「悪い悪い。ついな」
「まったく……けれども本当、会えて嬉しかったですよ。また機会がありましたら是非」
「あ、そうだ。オインクの権限で俺のギルドカードも白銀にしてくれないか? 一応今黒色なんだけど」
「黒色なんて珍しいですね。権力的にはそっちの方が上ですよ?」
「んじゃ黒も兼ねた白銀で」
「新しいカードを作れと?」
「頼むよ豚ちゃん、ドングリ上げるから」
「しょうがないにゃあ……」
マジかよ、言ってみるもんだな。
尚ドングリは本当に持っていた模様。
リュエの家に住んでいた時に集めたやつだ。
実は結構山菜とかキノコとかも入ってたりする。
「んじゃ今度こそまたな」
「はい、また近いうちに。カードはそうですね……首都で受け取れるように手をまわしておきます」
去り際もどこか余裕があるというか、本当に俺の知っているオインクとは違って見えた。
現実世界で知り合いだった訳じゃないのだから、それくらい当たり前だとは思うのだが、それでも考えてしまう。
俺の親友である二人も、どこか変わってしまっているのではないか、と。
「まったく……ぼんぼんは変わっていませんね、相手がリュエでは私に勝ち目はなさそうです」