百五十九話
(´・ω・` )おまたせ
「あら……貴方、どこかで会いまして?」
「いいや、初対面だ」
「では何故私の名を?」
「この施設を設立した人間に、名前だけ聞いていた」
彼女は俺に『けしかけた』と言った。
そして『悔しい』とも。
そんな事を言う人間は、限られてくる。
だからこそ俺は、この施設に深く関わりつつも、その存在が謎に包まれていた存在の名を彼女に告げた。
そしてその予想は、見事的中していたようだ。
彼女は声をあげ、そのベールごしからでも分かるほど口を大きく開き驚きを露わにしている。
「なるほどなるほど、それでも咄嗟によく言い当てられましたわね? ふふ、なるほどなるほど、中々面白い人のようですわね」
「訓練中にあんな目に合わされたんだ、少しくらいこっちの要件に答えてくれてもいいだろう?」
「私が何者か……暇を持て余した錬金術の神様、とでも思ってくだされば」
「ちょっと賢者の石と黄金生み出してみてくれ、記念に欲しいから」
「それは無理ですわ。材料がないので時間がかかってしまいますもの」
材料があれば出来るのかよ。というかなくても時間さえあれば作れちゃうのかよ。
そんなツッコミが口から出る前に、彼女が先に口を開く。
「貴方、少しおかしいですわね? 先程から探ろうとしているのに、情報が出てきませんわ」
「なに恐ろしい事サラリと言ってるの貴女」
俺もすかさず、カウンターとばかりに[詳細鑑定]を自身に付与する。
そして映されたのは――
【Name】レイニ-・なネアるほ
【種族】ど、こ??
【職業】錬金ちらを
【レベル】___??探る
【称号】?&5087程度には
【スキル】力もあるようですね
【アビリティ】カイヴォンさん?
身の毛もよだつってのはこういう事を言うのか。
表示されたステータスに含まれていたこちらへのメッセージに、ざわりと全身に悪寒が走り、すぐにステータス表示を解除した。
……マズい、マズいマズい、これは今までにないパターンだ、ちょっと分が悪いぞ。
「あら? もうやめてしまわれるのですか? なかなか面白いアプローチで興味深かったのですが」
「……なぁ、本当に神様なのか」
「ふふ、そんな急に怖がらなくてもいいじゃありませんか。別に取って食べるわけでもないのですし」
「!?」
唐突に耳元で囁かれ、慌てて飛び退る。
いつのまにか背後に移動していた彼女に、今度こそ恐怖を覚える。
そしてクスクスと楽しそうに笑う姿に、だんだんと恐怖以外の感情も湧いてくる。
馬鹿にするな、何様だ、どういうつもりだ。
そのポジションに立っていいのは俺だ。
こちらを見下すような、からかうような位置にいつまでもいられると思うな。
湧き出す怒りが、じわりじわりと表層へと染み出してくる。
「あら?」
「……なんの用事で俺の前に出てきた」
「そうですわね、少々興味が湧いたので、どんな方か見てみたいと思いまして」
「で、満足したのか? こっちも予定になかったとはいい戦いが出来て満足していたんだが」
「そうですわね、このままもう少しお付き合い願いたい気持ちもあるのですが……さすがに、これ以上はこちらも身の危険を感じてしまいそうですわね」
「正解だ」
【ウェポンアビリティ】
[生命力極限強化]
[絶対強者]
[簒奪者の証(闘)]
[簒奪者の証(剣)]
[龍神の加護]
[与ダメージ+30%]
[クリティカル率+35%]
[攻撃力+30%]
[アビリティ効果2倍]
[硬直軽減]
【カースギフト】(対象者 カイヴォン)
[攻撃力変換](反転付与)
瞬間的に、全ての装備とアビリティ構成を現在持ちうる最強の構成に組み替える。
魔力も全て攻撃力に変換した状態、恐らく即効性ならばこれ以上ない最強の組み合わせだ。
ここは術式内部で、こちらの力もある程度相手側にいじられてしまう可能性もあるだろう。
だが、この状態でもその優位を保てる?
今まで感じたことのないほどの力の奔流を体内に感じながら、奪命剣を彼女へと突きつける。
「っつ!? ……どうやら軽い気持ちで対面すべき方ではなかったようですわね」
「あまりおちょくられるのに慣れてないものでね。アンタ、何者だ。もう軽く流せると思うなよ?」
女性の姿をしているが、ここは術式内部だ、どんな正体を隠しているか分かったものじゃない。
警戒と同時に、最大の攻撃に移れるように準備をする。
だが同時に、向こうもこちらを警戒しているようで、先程までとは身にまとう雰囲気に遊びがなくなっているように感じる。
そして、そのベールの向こう側に見える口を、ゆっくりと開く。
「……錬金術の神様、みたいなものですわ」
「そうかい」
再び提示されたその答えに、まともにこちらの質問に応えるつもりはないのだと判断し、剣を構え脅しをかける。
表示されたステータスは、いわばメニュー画面の延長だ。
いくら術式内部とはいえ、そこにハッキングのように侵入など出来るものか。
疑いと敵意の篭った目を向けても、彼女は表情を微塵も崩さない。
だが次の瞬間、少しだけ彼女の隠された面差しが下を向いた。
「もはや、そうとしか名乗る事が許されていませんもの」
そして漏らされた呟きに、ようやく愉悦以外の感情が込められていたように感じた。
それは、まるで叱られた子供が言い訳をするような、そんないじましさが含まれているようだった。
急激に場の空気が萎んでいくような、張り詰めた糸が緩むような気配を感じ、俺も少しだけ警戒を緩め問う。
「なんだ、退屈だったのかアンタ」
「そうですわね。せっかく面白そうな人が来たんですもの。少しおふざけがすぎてしまいましたけれどね」
そう告げながら、彼女は手を伸ばし、何やら呪文を唱える。
すると、地面に丸い魔法陣のようなものが浮かび上がり、光を放つ。
「お引き止めして申し訳ありませんでした。これにて訓練終了ですわ。本来でしたら三◯体で終了なのですけれどね?」
「マジでか。これタイムも計測されてるのに余計な時間とられたのか俺」
「ふふ、それでもかなりの好タイムでしたわ。外に出てからのお楽しみ、ですわね」
まだ聞きたいこともあるが、どうもこの相手はこちらの思い通りにいかないような、そんな厄介そうな空気を醸し出している。
あまり深追いはしない方が良さそうだな、少なくともこの場所では。
俺は諦めて魔王セット一式を解除し、奪命剣をしまい込む。
だがさすがに女性の目の前で服を着替えるわけにもいかないな、服はこのままでいいか。
今日のところは追求を諦め、大人しくその魔法陣へと入り込む。
すると光が一層強くなり、徐々に彼女の姿を見えなくなっていく。
だが、最後にちらりと見えた彼女の顔は、とても満足そうに見えた。
上品に手を振る彼女に見送られながら、視界を白く覆われる。
そして次の瞬間、俺はゲート入り口に立っていた。
「……戻ってこられたか」
ゲートの向こうでは、他の冒険者達が真剣な様子でこちらを見ていた。
その視線を感じながらもゲートをくぐり、俺も自分の成績が表示されるのをじっと待つ。
「おかえりお兄さん。かなり早かったね?」
「おっすカイさん。やっぱすげぇな、他の連中も皆結果発表に注目してるぜ?」
「ところで、装備が変わっているけど中で着替えたの? なんか豪華だね?」
「Sランクに入ったからね、秘蔵の防具を解禁したところさ」
外に出ると、知人二人がやや興奮した面持ちでこちらへと掛けより声をかけてくる。
なるほど、やっぱり好成績だったか。だからみんなこっちを見ていたのね?
これは確かに結果発表が楽しみだ。
「……やっぱり俺も防具をかえるべきか? そんなに地味か、俺の装備って」
「正直駈け出しの冒険者の中に混じってても違和感がないくらい地味」
「そうだね、そっちのお兄さんは変わった闘い方するんだし、もうちょっと自分の色を出しなよ」
そんな風に二人でドーソンの見た目について指摘していると、ゲート上の掲示板に文字が表示され始めた。
さぁ、彼のイメチェンについての談義はここまでだ。
『S区画歴代クリアランキング トップ100』
「お、こっちは月間じゃなくて歴代のランキングなのか」
「そうだよ。ふふん私は歴代七位にランクインしたんだから」
「マジでか。凄いなヴィオちゃん。ドーソンはどうだったんだ?」
「ランク外だよコノヤロウ」
「ドンマイ」
さすが歴代ランキング。
恐らく引退したゴルド氏や、戦乱を潜り抜けた方々の記録も残っているのだろう。
それに恐らく、現在の白銀持ちの人間達の記録も。
そして表示される、ランキングの羅列。
自分の名前が表示されるように願いながら、いよいよトップ10の発表へと移る。
ところで、なんで11位までは下から順番に表示してたのにここからは上から表示されるんですかね?
あれか、どうせ上位に新しい名前は入ってこないんだから勿体ぶる必要はないとでも申すのか。
その自信、すぐに崩して差し上げよう。
『難易度S 一位 オインク・アール・アキミヤ クリア階層30 評価S タイム27:19』
「お、一位なのか。やるじゃん」
「やるじゃんって……オインク様だぞ、当たり前だろ」
「ここの一番偉い人が一番強いってすごいよねー? 美人だしさー」
この都市に住むドーソンと、外部から来たヴィオちゃんがそう漏らす。
それが一般的な印象、意見なんですよね。
やはり解せぬ。
ドングリ転がしておほーっって言ってるイメージしかないんですよ俺。
『難易度S 二位 リシャル・リーズロート クリア階層30 評価S タイム27:44』
そして次に表示されたのは、俺がこの先戦う事になる男の名前だった。
彼は、レベル132とオインクより明らかに能力が低いはずの人間。
だが、そのタイム差は微々たるもの。
俺のよく知る仲間。ゲーム時代の知識や技を持つ彼女にすら、レベル差をものともせずに追いすがるその技量。
こいつは中々スリリングな一戦になりそうだと、柄にもなく武者震いのような感覚が全身を駆け巡る。
「あの二人は別格だからな、実際ここ数年はトップ3の変動はなしなんだぜ?」
「そこまでなのか。ちなみにこのタイムっていつ出されたものなんだ?」
「オインク様は十数年前、ここが出来てすぐにテストを兼ねて挑まれたそうだ。で、リシャルさんもその後すぐに挑んでこの結果だ」
「私なんかもうかれこれ九回も挑んでやっと七位なのにさー」
そこなちびっ子さんや、それでも一ケタにランクインするのはかなり難しいのではないだろうか。
その横でランク外のドーソンがとても悔しそうな顔をしておられますが。
本当このちびっ子は何者なのやら。
そして、三位、四位が発表される。
『難易度S 三位 アーカム・フィナル・ランドシルト クリア階層30 評価A タイム17:11』
『難易度S 四位 アルバ クリア階層30 評価S タイム37:47』
え? アイツまでこの施設に挑んだことあるの?
アーカムなにやってんの、お前みたいなのが律儀に他の五つのランクに挑んでわざわざこっちに来たの?
ちょっとシュールすぎやしませんかね?
「あの三位の人凄いよね、タイムだけならぶっちぎりじゃん」
「あの人はこの大陸の三大議長の一角で、ようするにオインク様と同じ地位にいた人だな。少し前に亡くなったらしいぞ」
「で、四位が例の彼か」
そして四位にいるのが、あの肉を頬張りすぎて倒れたと巷で噂されている彼だと。
ふむ、気分的に最低でも三位には入っておきたいな。アーカムの下とか正直胸糞悪い。
そして、次に表示されたのが――
『難易度S 五位 カイ クリア階層## 評価S タイム38:02』
なんと俺でした。
しかし、やはりクリア階層の表示がバグを起こしており、正常に表示されていなかった。
そしてクリアタイムも、本来ならストップするはずだった30階層で止まらず、あのドラゴンゾンビを倒す瞬間まで計測されていたようだ。
……これは、想像以上に悔しいな。よりによって上にいるのがあの二人だ、今すぐにでもリベンジに向かいたいところだが――
ゲートを見やれば、すでに我先にと冒険者達が列をなしている。
回数制限はないが、やはり一度に挑める人間には限界があるため、もう一度挑むためには再び最後尾に並ばなければならない。
これは、時間を置いて人が少なくなってから並び直したほうがいいな。
「……マジかよ……カイさんすげぇぞ! 一体どんな魔物が出たんだ!?」
「うーわ……私なんてようやく当たりを引いて七位になったのに一回でこれ? ずるくない?」
「なに? あの出現する敵ってランダムだったのか?」
「ああ。俺の時はコボルトから始まって、一九戦目のゴブリンナイトの集団で押し切られて終了だった」
「私は相性が良いラビット系が続いたおかげでだいぶタイムを稼げたね。皆は仕留めるのに時間がかかる相手だろうけど、私ならちょろいちょろい」
ということは、俺は序盤からすでに意図的に魔物を操作されていたと見るべきだろうか? それとも、カテゴリごとに順番に出てくるパターンもあるのだろうか?
だが少なくとも、俺はドーソンのように一対多数の戦闘は発生しなかったし、運が良かったとみるべきかね?
しかし、やはり久々に上位ランキングが変動したのは周囲をざわめかせるには十分なインパクトがあったらしく、先ほどから遠目に視線をいくつも感じる。
ちょっといい気分に浸れそうだな、なんて思っていたのだが、どうやらそうもいかないようだ。
その視線を向ける人混みから、にわかにざわめく声が漏れてくる。
すると、人混みの合間からその原因である人物が姿を表した。
やや仏頂面の、だがその瞳に確かな敵愾心を宿した赤髪の男性。
周囲の人間を押しのけるようにし、肩を怒らせ歩み寄ってくる。
「げ……俺はちょいと席外すぜカイさん」
「私も面倒事はパース!」
「あ、ずるいぞ二人共、薄情者め」
そう、彼だ。
現在ランキングで俺の真上に位置する、そして俺と戦いたいと熱望中のアルバが姿を表したのだ。
早歩きでこちらへと近寄り、一瞬ランキングをちらりと覗き、口角を歪ませた後にこちらへと向き直り口を開く。
「ちょっと顔貸せ」
「断る」
「いいから黙って来いって言ってるんだ、分からないのか」
「いいから断るって言ってるんだ、分からないのか?」
喧嘩腰の相手にはらう敬意も示すべき礼儀もありゃしません。
思いっきり煽らせて頂きます。
極力見下すように、ニヤニヤと表情を浮かべて彼の言葉を引用してそう言い返すと、やはり沸点が低いのか、すぐさま手を出してくる。
やだ、襟がビロビロになるのとか勘弁してくださいよ。
軽く身体を反らし避けると、さらにその顔を赤くする。
「顔が赤くて髪との境界が分からなくなってるぞ、少し落ち着いたらどうだ?」
「てめぇ……殺すぞ?」
「え? 今からこの場で空でも飛んで見せるって? いや不可能な事口にするのはやめておけって、お前議員なんだろ?」
何度も、何度も何度も彼の手が腰へと伸び、その度にグっと堪えてこちらを睨む。
抜刀はご法度だからね、もし抜いたらこの場に居る人間全員が証人になってくれるだろう。
だが、ここまできて引くのも彼のプライドが許さないだろう。
「調子に乗んなよ、格下が」
「ああ、ランキング? いや面白いね、あの『お遊び』。今回『初めて』挑んだけど、軽くやるだけであの結果なんてお笑いだよな?」
まさかあんな結果で自分の方が格上だとでも思ってるのかね?
だが、その言葉が彼の琴線に触れてしまったのか、ついに彼の手が腰の剣を握った。
そしてそれを引き抜こうとした次の瞬間、アルバの背後から突然伸びてきた何者かの腕が、抜刀しようとした彼の腕を強く掴んだ。
彼の背後にいつの間にか回りこんだその人物へと視線を向ける。
……なるほど、近くで見ると本当にイケメンですな、俺とそっくりです。
自画自賛じゃないです、客観的な意見です。
「それをここで抜く事は許さない。それは、オインク様の顔に泥を塗る行為だ」
「リシャル! ……放せよ、もう分かった」
「いやはや助かりましたよリシャルさん。危うくこの人に突然切りつけられるところでしたから」
「貴公も貴公だ。逆上させるような発言を繰り返していたように見受けられたが?」
「ん? 一から十までどういう経緯があったか説明します? 最初に彼がなんて話しかけてきたか、どんな態度だったか全部」
優等生さんは苦手なんですよ。
自分の見たものが全てだと疑わない辺りがなんとも。
なのでここは引きません、幸い目撃者がこんなにいるんだ。
「……どうやら嘘はついていないようだ。しかし、先ほどこの訓練をお遊びだと評したのは頂けない。これはオインク様が我々の為に心血を注いで造られた施設、そしてここで訓練をする人間もまた、真剣だ」
「そいつは失礼した。彼が突然ランキングが下の相手を見下すような発言をしたので、そこまで大切で、重要なものだとは思わなかったんだ」
そう言うと、彼は自分が先に失言をしたのだと気がついたのか、自分の足元を見るようにしてうつむいてしまう。
……アルバといいリシャルさんといい、オインク信奉者はアクの強い人間が多すぎやしませんかね。
「ふむ、初めてであの結果ならば、相当な力を持っているのは間違いない、か。最初に言い出された時は、なんの冗談かと思い、ついあのような勝負をふっかけてしまったのだが」
「ん? もしかしてああ言えばこっちが引き下がると思って提案したのか?」
「悪いがそういう心算であった。ふむ……これは我ながら良い判断をしたのかもしれないな」
優等生かと思いきや、中々にジャンキーなご様子。
見れば、うっとりとしながら背後の槍を眺めている。
……まるで、愛しい人の寝顔を見守るような、そんな慈しみと愛しさを濃密に感じさせるその横顔に、全身に鳥肌が立ちそうになる。
やだ……この人本気で武器に愛情傾けてる。
まさかとは思うが、寝る時は一緒の布団とか言いませんよね……。
「おい、なんの話だ! さっきから聞いていれば、まるで――」
「ああ、俺この人とエキシビジョンで戦う事になってるから」
「んな!? リシャル、俺と代われ! お前が代わりにあの女と戦え!」
「ふむ、悪いがそれは出来ぬ。これはイル様、そしてオインク様両名による決定だ。それに、私も彼に興味が湧いた。好きな馳走を、みすみす他人に譲るほど私は無欲ではない」
お? 今食べ物に例えなかった? ちょっと好感度あがりましたよ、さっきの槍への深すぎる愛情を差し引いても好感度アップだ。
そして、自分が戦いたいと、正確には自分の手で叩きのめしたいと言っていたアルバは、さすがにリシャル相手に食って掛かる気はなかったのか、大人しく引き下がる。
やだねぇ、普段横暴な癖して自分が敵わない相手には素直に引き下がるって。
「じゃあそろそろ俺はもう一度並んでくるからこれで失礼するよ。さっきは本調子じゃなかったからね、悪いがリシャルさんの順位を下げさせてもらう」
「ほう、言ったな? ではそうだな、もし私が抜かれたら秘蔵の槍コレクションを見せてあげよう」
「あ、それは遠慮しておきます」
「何故だ……」
鎧だったら喜んで見に行くんですけどね……変装用に。
( ´・ω・` )