表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
112/414

百六話

(´・ω・`)たくさんの激励のコメント、ありがとうございます。

『大闘技大会 七星杯』


 開催地 旧王宮内闘技場

 開催期間 八月一日~最終日


 今年は七星祭と収穫祭の間が大きく空いてしまうため、既に通知された通り早めの開催となっております。

 事前登録不要、初日に大規模なバトルロワイヤル、それがすべてです。

 勝ち残った三○名によるトーナメントを行います。

 出場資格は特にありませんが、戦闘可能か確認する場合がございます。

 また、白銀持ちの方の出場は原則禁止となっております。


 ※期間中、デモンストレーションでエキシビジョンマッチを行います。

  白銀持ちで出場しても良いという方がおりましたら、受付までお願い致します。


 優勝賞金 五〇〇万ルクス+白銀持ちへの挑戦権およびギルド所属者へは昇格ボーナス

 白銀持ちに勝利した場合、質疑応答を行い、合格した場合Sランクへ無条件昇格。


『公開中央議会』


 開催は収穫祭終了後となります。

 傍聴希望者は事前に申請して下さい。希望者の多い場合は抽選となります。

 会議中はお静かにお願い致します。




 最後だけ盛り下がるというか、心惹かれないのは何故なのか。

 これ、ここに書かないほうがいいんじゃないか?

 そんな事より、闘技大会とな。

 これまたお約束というか、心躍るというか、ある意味必須イベントというか。

 俺知ってる、主人公が出場して、決勝でライバルポジションの男とぶつかる奴だ。

 その勝敗で仲間になるかならないかのフラグが決まったり、もしくは絶対に負けるイベントだったりするんだろ?

 楽しそうである。実に楽しそうである。とてもとても楽しそうである。

 が! 駄目! 白銀持ちは出られないと――


「あ、私達は白銀じゃなくて青色だから出られるんだよね? カイくん、やったね」

「リュエ、それは屁理屈ですよ。カイさんも言ってあげ――どうしてそれもそうだって顔をしているんですか」

「え、だって」

「駄目ですよ?」

「けど白銀じゃ」

「けどではありませんよ?」

「先生、僕も大会に出てもいいですか?」

「駄目です」


 レイスのお母さんっぷりに完全敗北したSSランク冒険者二人組の図。

 ぐぬぬ、じゃあエキシビジョンマッチにでも……。


「ですが、ここに白銀持ちではない、Aランクの冒険者がいます」

「どこどこ、どこにいるんだい」


 それはフリなのか。ならばこう言うしかあるまい。


「私だ」

「カイくんだったのか」

「暇を持て余したSSランクの――」

「浮かれすぎですよカイさん。私が出るという話です。これ見てください、無条件で昇格とあります。これで私も一歩カイさん達に近づけると思ったのですが……」


 そういえば、いつもリュエと肩を並べて戦っている所為ですっかり忘れていた。

 白銀持ちになるには、ギルドへの貢献度と知名度、そして長期に渡る査定が必要だ。

 活動拠点を持たず、各地を移動している俺達では、正規の方法で昇格するのは難しいだろう。

 ううむ、別にランクなんて関係なく、レイスはもう隣に並んでいると思っていたのだが。


「レイス、危ないよ?」

「大丈夫ですよ。私もそろそろ、もう少し実力をつけないといけないと思っていましたし、出場してもいいでしょうか?」

「……よし、レイスの意思は尊重しよう。絶対、危ないと思ったら棄権するって約束してくれるなら」

「もちろんです! ありがとうございますカイさん」


 現状、レイスのレベルを超えている人間は俺とリュエ、イクスさんにオインク、そして俺が倒したアーカムのみだ。

 だが、ある意味戦乱を乗り越えたこの大陸には、魔物こそ少なく冒険者のレベルも低いが、激動の時代の生き残りや、その教えを受けたであろう精鋭だって残っているはず。

 ましてや、俺達のようにエンドレシアからも強者が訪れているかもしれない。

 そんな渦中に飛び込むのを止めたい気持ちももちろんあるが、それで彼女が納得するのならば。

 それに闘技大会ならば、なにかしらの安全策も講じられているはずだ。

 俺があまり心配しすぎて重荷になるのもね?


「じゃあ、特訓でもしようか? 私が全部避けるから、頑張って狙うとか……」

「いえ、私の手札は余り人目につかせたくありませんから」

「それもそうだな」


 そしてレイスの『魔弓闘士』もまた、特殊な武器を手に入れなければ就くことが出来ないユニークジョブだ。

 彼女の言うとおり、情報が少ないことそのものが大きなアドバンテージになるのだし、ここで手の内を晒すのは愚策か。

 なら、基礎的な動きや近接戦闘の特訓こそが課題かね。


「カイさん、私は個人的に、屋台コンテストにも是非出てみたいのですが……」

「え、食べ歩くだけじゃ駄目なのか」

「せっかくですし、三人で思い出でも作れたらと……」

「あ、出たい! カイくんここでお金を稼ごうよ、この街のノルマをこれで達成しちゃおう」

「そういえば宿決めてなかったな。けど屋台か~……」


 個人で料理を楽しむのは別に良いんですけどね……。

 それを商売にするとなると、こうね、色々と思うところがあるわけです。

 ほら、俺って転職中の身だったわけですし、色々と察していただけると幸いなんです。

 言ってもしょがない事ですけどね、知っていますとも。


「楽しそうだなぁ……みんなが楽しみにして並んで、それで目の前で食べてくれるんだよ。それにお店側なら待たなくても食べられるじゃないか……」

「リュエが売り子で、私とカイさんが作るんです。どうでしょう、楽しそうだと思うのですが……」

「まぁ、楽しいとは思うよ」


 メニューの試作、材料の調達と供給。

 作業効率を上げるためにどこまで下ごしらえをするか、機材を屋外の限られたスペースにどう配置するか。

 値段設定と客一人にかける時間をどの程度にするか。

 考えれば考える程、だんだんと気持ちが落ち込んでくるんですがどうすればいいですか。

 いやまぁでもしかし、しがらみなんてあってないようなものだしなぁ……。


「よし、んじゃ登録するか」


 いいや、好きにやらせてもらえるのなら、そんな気負わなくてもいいか、

 細かい調整は客商売のプロであるレイスもいるのだし、なんとでもなるさ。


「ありがとうございます! では、登録してきますね!」

「ああ、まかせたよ。俺はちょっと掲示板の方に行ってるから」

「……カイくん、随分と悩んでいたけど、乗り気じゃないのかい?」

「そういうわけじゃないんだ。まぁ色々あるんだよ」

「そっか。じゃあ、後でいろいろ考えないとね」


 そうだな。

 幸いにして、俺には家族がいる。

 姉のような妹のようなリュエと、妹のような母のようなレイス。

 家族が傍にいるだけで、お兄さんはどこまでも強く在れるのですよ。


 人混みを抜け掲示板にたどり着くと、ボードが見えなくなるくらい大量の依頼が張り出されていた。

 そのほとんどが戦闘に関係のない、収穫祭関連のものばかりだ。

 中には交通整備の仕事まであるじゃないか。


「交通整備……なんだろうそれ」

「ああ、恐らく目立つ棒を振って、馬車や魔車の通行を制限したり管理する仕事じゃないかな」

「なんだって! 棒を振るだけでお金がもえるなんて……」

「いや、そう甘いものじゃないんだけど」


 脳内にありありと思い浮かぶ、好き勝手に振り回して渋滞を作り出すリュエの姿。

 やめてください、人が大勢犠牲になってしまいます。

 これだけはやらせないようにしないと……まぁ今回はイベントを見て回ったり出場をしたりと、依頼をしている暇はなさそうだ。


「ちょっと見えねぇはむ、どいてはむ」


 するとそこへ、子供が割り込んできた。

 割り込むといっても、小さいので足の隙間から出てきただけだが。

 ……はむ?

 目線を下げると、大きな麦藁帽子がゆれている。この子が声の主だろうか?

 いやいや、どいたところでその身長じゃ見えないだろう。


「見えないはむ……」


 ほら見たことか。

 すると、麦藁帽子がくるりとまわり、こちらを見上げてくる。

 黒いくりくりとした瞳の、かわいらしい女の子。

 茶色の髪がぼさぼさと跳ねていて、一瞬あの謎種族『ハムネズミ族』を彷彿させる。


「じぃ……」

「口言うな口で。どうしたんだ君」

「なんもめねはむ」

「なん……だと……」

「うん? どうしたんだい君?」

「白いねーちゃんはむ。はむも掲示板みたいはむ」

「はむ……どこかで聞いたような。よし、じゃあおねえちゃんが持ち上げてあげよう」


 こちらの様子に気がついたリュエが、期待をこめた声色で提案すると、この少女も嬉しそうに抱きかかえてもらう体勢になる。

 やっぱり子供好きなのかリュエは。


「かるいなぁ……ちっちゃいなあ」

「おー、これはむかー。ありがとはむー」

「あっ」


 目当ての依頼を見つけたのか、ぴょんとリュエの腕から逃れた少女は、そのまま人の足の隙間を縫うように消えていった。

 いやぁ、まさかアキダル訛りを話すとは。

『なんもめねはむ』は『何も見えないはむ』という意味だ。

 もしかしてアキダルから来たのだろうか?


「アキダルね……イグゾウ氏の人気も凄まじいし、いけるか?」


 とりあえず、こういうひらめきは大事だと思うんです。


「行っちゃった……かわいい子だったね、すごくいいにおいもしたよ」

「む、おしゃまさんめ、香水でもつけていたのか」

「どうだろう? なんだかこう、お日様のにおいというか、お花畑のようなにおいだった」

「知ってるか、お日様の匂いって――いや、なんでもない」


 夢を壊すのはやめよう、ぼんぼんとの約束だよ!

 俺の中であの子の呼び名は『太陽少女』に決定。

 それから少しすると、エントリーに向かったレイスが戻ってきた。

 どうやら出店する場所を決めるくじ引きがあるらしく、今日の夕方には始まるらしい。

 機材の貸し出しや細かいルール設定についての書類も渡されたらしく、少し作戦を練りたいそうだ。

 レイスさん本気ですね、ちょっとその熱意が俺にも伝わってきました。

 いいや、ごちゃごちゃ面倒な事やらなにやらは、全部前の世界に置いてきたんだ、関係あるかい。


「予定変更、どこか落ち着ける場所で作戦会議だ」


 リサーチ? 知らんそんなもん。メニューがかぶろうがなんだろうが、やっちまえばいいんですよ。

(´・ω・`)次回更新は明後日となっております。

(´・ω・`)某オーケストラを聞きに行くのでもしかしたら遅れてしまうかもしれません。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ