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暇人、魔王の姿で異世界へ ~時々チートなぶらり旅~  作者: 藍敦
八章

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百五話

(´・ω・`)今回のあとがきにてお知らせがあります。

 巨大な街門が開かれ、恐らくほかの街道から来たのであろう人間たちを飲み込んでいく大都市サイエス。

 街の入り口がここしかないらしく、他の街道からきた人間もぐるりと外壁沿いに進み、ここまでやってこなければならないので一苦労だろう。

 さて、そんな大勢の人間が一ヶ所しかない入り口に集中するとどうなるか。


「正解は――」

「出迎えの手筈はしたのですが……」


 混みすぎです。

 行列ですよ行列、大行列です。こんなことならケーニッヒで空を飛んで直接乗り込むんだった。

 けど、それじゃあ本末転倒だしなぁ。

 見たところ通行に必要な手続きそのものはスムーズなようだが、いかんせんこの量だ。

 絶対にもう一つか二つ、入り口を作るべきだろう。


「それでもこの活気は凄いですよ。オインクさんがもし御者席に座っていたらと思うと……」

「ぞっとするね! みんなが押し寄せてきてしまうんじゃないかい?」

「だな。んじゃ豚ちゃんちょっと――」

「あ、ちょっと待ってください、通信が入りました」


 通信魔導具を耳にあてる姿を見ながら、携帯電話の存在を思い出す。

 ううむ、今思えばあの世界の技術って、ちょっとした魔法みたいなものだったんじゃないかね。

 無くなってみて初めて分かる、その存在の偉大さ。懐かしいなぁスマホとか。


「あんまり窓から顔出すなよ? 見られたら事だ」

「この距離だとさすがに魔車の外じゃないと通信が安定しなくて――あああいえ、こちらの話です。ええ、黒い翼竜の魔車です」

「ふむ、迎えが来るのかね」


 少しすると、行列が一斉に横にそれ、魔車一台分が通れそうなスペースが出来上がる。

 すると、街の方から一台の魔車が走ってきた。

 魔車を引くのは、銀のたてがみをなびかせる漆黒のライオンのような魔物。

 威風堂々と、王者の貫禄を出しながらこちらへと疾走してくる。

 ふむ、なかなかかっこいいが、我が家のケーニッヒほどじゃあないな!

 その魔車が速度を下げ、俺たちの隣で停車する。

 そしてそこから現れた一人の男性がこちらへと視線を向けるが、すぐに興味を失ったかのように後ろの客車へと向かう。


「オインク様、お迎えにあがりました」

「……あまり人目につきたくありません、このままでお願いします」

「かしこまりました。おい御者、特例だ、ついてこい」

「おーん?」


 何この人。

 初対面でしかも地位が低そうだからっていきなりそんな態度とっちゃいます?

 豚ちゃん、俺の性格知ってるでしょう。


「すみませんぼんぼん……別な人間がくる予定だったのですが……」

「いいよいいよ」


 ともあれ、この男の魔車の後を追うことに。

 ……このまま後ろから追突したい衝動に駆られますが。

 それでも、この男が有名なのか、それともこの魔車の存在が有名なのか、こんな特例に不満を漏らす人なく順番を大きく無視して街の中へ入ることが出来た。

 巨大な門を抜けた瞬間、目の前に広がる広大な大都市に、思わずうめくように変な声を出してしまった。

 いやはや、外壁もさることながら、この建物の大きさよ……よほど都市全体が潤っているのか、どこを見渡しても三回建て以上の立派な建物ばかりだ。

 そんな光景に圧倒されながら、暴力的なまでの量の人間がひしめく街中を進んでいく。

 大きな馬車や魔車専用の道路は対向車線を含めて六車線と広く、交通整備をする人間も配置され、ぱっとみ都会の道路そのものだ。

 石畳は綺麗に慣らされ、なにか魔術でも施されているのか磨耗した様子もない。

 歩道を見れば、これまた広く両脇に屋台や出店があるにも関わらず、横に広がった人間が肩をぶつけることもなく行き交っている。

 ……本当に凄いところだな。


「め、目が回りそうだよ……絶対一人で出歩かないって決めた」

「右に同じく。ナビでもなきゃ無理だろこれ……」

「あ、でもところどころに標識や案内板もありますし、ほら、見てください」


 何かに気がついたのか、レイスが指差すのは行き交う人々の足元、歩道だ。

 よく見ると何色かに色分けされたレンガが使われており、それがラインとなって続いている。

 なるほど、あれを辿っていけば主要施設にたどり着くということなのか。


「オインク、これもお前が?」

「いえ、これはイグゾウ氏が亡くなる前に書き残した『未来予想図』という名の都市設計図を参考にしたそうですよ」

「……本当何者だよイグゾウさん」


 東京に行くどころか東京並の都市を作り出しているじゃないですか。

 そんな街の様子を眺めながら前を行く魔車を追っていると、ただでさえ大きな通りだったのに、その倍はあろうかという巨大な通りへと出た。

 すでに屋台の姿は目にしていたが、今度はそれに加え、小麦で作られたアーチやリース、そして恐らく野菜をイメージしたであろう、赤や紫、緑の飾りが通り全体に飾り付けられている。

 さらに道路の一部が歩行者天国になっているのか、そこでは曲芸師やら楽器をならす楽師、何かイベントでも開催されているのか、ちょっとしたステージまでもが設置されていた。

 ここまでの規模の祭りなんて、日本にいてもそうお目にかかれるものじゃない。

 年甲斐もなく心ときめかせてしまう自分に、少しだけ苦笑いを浮かべてしまう。


「これが、お前が勝ち取って成長させた国なんだな」

「……はい。沢山の人たちに協力してもらいました。過去の偉人の知恵を借り、そして未来を夢見る若い力を束ねてようやくこぎ着けた、私の夢の第一歩です」

「……すごいよ、オインク。びっくりしちゃったよ」

「私も、かつて訪れた時とはあまりにも……感服しました」


 今回ばかりは、手放してその偉業を称えさせてもらう。

 たいした奴だよ、本当に。


「見えてきましたよ。あそこがセミフィナル冒険者ギルド本部です」

「以外と小さいな? ここまでの大都市だと、エンドレシアの本部より大きくなると思ったが」

「私はあくまで、議員の一人ですからね。ギルドという組織をこの大陸で大きくしすぎたら、ただのギルド国家になってしまいます。あくまで、すべての組織、人間が平等になるように配慮した結果ですよ」


 通りの先、やや細い……と呼ぶには十分に大きい通りだが、その先に見えてきた建物。

 大きさは少し小さなホテル程度しかないが、よくよく考えたら、他の街のギルドの倍以上はある。

 現に窓の数を数えてみたら、少なくとも七階まであるようだし。

 やっぱり比較対象がこの大都市だから小さく見えるのかね。

 職員の誘導に従い、魔車を駐車スペースに停め、俺はすぐさまケーニッヒを連結具から解放する。

 いつものことなのでついやってしまったのだが、やはり本来は危険な行為なのか、職員に見咎められる。


「あの、街の中で外すのは……」

「む、オインク、許可をくれ」

「……実績がありますからね、いいでしょう」

「じゃあケーニッヒ、近隣で悪さをしている魔物でもいたら適当に狩っておけ。自由にしていいぞ」

(御意)


 脳内に声を響かせ、またまた航空力学に喧嘩を売る角度で空へと消えていく我が家のドラゴン様。

 あっけにとられる職員をよそに、オインクがもう一台の魔車、迎えの男の方へと向かう。


「待たせてしまいましたか?」

「いえ! オインク様のためでしたら死の間際まで待ちましょう」

「……相変わらず大げさですね。先に戻っていてください、私はあの方達の案内をしなくてはなりませんので」

「案内ならば、職員に任せてはどうでしょう? オインク様に報告したい案件が溜まって――」

「いいえ、彼らは私自らが。これは決定事項です」


 青年をやや通り過ぎた若者。

 年齢はこの世界ではいまいちわかりかねるが、外見上は俺と同じかそこら。

 淡い赤銅色の髪を逆立てた、いかにも熱そうな印象の男。

 ううむ、初対面の段階で心象がよろしくないので、あまり考えなくてもいいか。

 だが、オインクの命令に不服なのか、案の定こちらへと鋭い眼差しを向けてくる。

 大丈夫、今日の俺は紳士的なので問題ありません。

 ぶっちゃけとっとと街に繰り出したくてしょうがないんです。


「オインク、俺達は後で良い。適当にギルドの中を見て回ったら街に出るさ」

「……この埋め合わせはいずれ」


 そしてすぐ様メールを打つ。

 ふはは、近くに居ると使えるって知らなかっただろオインク。


『後で仮のギルドカードと身分をくれ、動きにくい』

『(´・ω・`)ふぁ!? なんでメール使えるの!?』


 送った瞬間、爆速で返ってくるなつかしの顔文字。

 つい笑みを零してしまいながら、さらに返信を打つ。

 視線を向ければ、離れた場所でオインクが焦ったような顔をしている。


『近くに居る場合のみ使えるみたいだ。たぶん本来中継するはずのサーバーが存在しないからじゃないか?』

『(´・ω・`)なるほど……カードは夜にでも渡します。その時紹介したい人もいますので、是非』


 紹介したい人とな。

 ひとまずこれでいいだろうと、軽く手を振りその場を後にした。




「人多すぎじゃないこれ」

「随分と賑わっていますね……それに冒険者の方だけではないみたいですし」

「本当だ、小さい子供までいる」


 ギルドの中には、武器を装備した人間の他にもエプロンをつけた男性からおばちゃん、筋骨隆々のおじさんから小さな女の子まで千差万別。

 他の街のギルドとは様子が違っていた。

 いや、どちらかと言うとソルトバーグに近いかもしれない。

 あそこは『総合ギルド』と名乗っていたし、ここもそれに近いシステムなのだろう。


「カイくん、なんだか面白そうなものを配っていたからもらってきちゃった」

「リュエ、一人で歩いて危ないですよ、迷子になってしまいますよ、また」

「だな。レイス、しっかり手をつないであげなさい」

「や、やめて、さすがに恥ずかしい」


 暴れるリュエの手には一枚の紙が握られている。

 それをひょいと取り上げ内容に目を通すと――


『セミフィナル大収穫祭日程』


 開催日 七月一五日~八月一五日


 そこには、正式な開催日が記されていた。

 今日は七月七日、あと一週間程で正式な開催だ。

 その下にはさらに、開催期間中に開かれる様々な催しについて記載されていた。




『セミフィナル出店屋台人気コンテスト』


 開催地 中央広場芝生地帯。

 開催期間 七月一五日~七月一八日


 事前に冒険者ギルド収穫祭実行委員受付に登録をお願いします。

 参加者が多い場合、出場権は抽選となります、ご了承下さい。

 なお、ドングリを使用したメニューの場合は無条件で出場可能です。


 優勝商品 一年間のギルド内出店の権利+賞金一○○万ルクス

 準優勝  賞金五○万ルクス


『セミフィナル美男美女コンテスト』


 開催地 セミフィナル冒険者ギルド裏手 大演習場特設会場

 開催期間 七月一八日~七月一九日


 事前に冒険者ギルド収穫祭実行委員受付に登録をお願いします。

 受付にて第一次面接を行い、合格者のみを集めて二次面接への案内が行われます。

 二次面接で受かった人間のみ、コンテストに出場出来ます。


 優勝商品 ミス・ミスターセミフィナルの称号+賞金一○○万

      希望者には救国の英雄オインク様と会食の権利


『セミフィナルパフォーマンスフェスティバル』


 開催地 街門通り

 開催期間 七月二〇日~七月二五日


 街門通り完全交通規制後より開始されます。

 参加は自由ですが、最終日の選考会に出るためには事前登録が必要です。

 また、刃物、魔物、魔術等を使う芸は事前審査が必要です。


 優勝賞品 国内外への興行の完全バックアップ+賞金一○○万ルクス




「すごいな、めちゃくちゃ楽しそうじゃないか」

「だ、だろう? レイスやめ……もう勝手に歩かないから」

「だーめ。とても楽しそうですね、収穫祭の最後まで滞在するつもりなのでしょうか?」

「んーできればそうしたいな」


 そのイベントを余すところなく楽しみたいですし。

 お祭りっていいよね、なんかこう……いいよね。

 花火はないの? ビールと枝豆は?

 残念、これは夏祭りではありません。


「カイくん、裏にも書いているよ」

「まじでか」


 これだけイベントがみっちり詰まっているのにまだ何かあると申すか。

 紙を裏返してみると、そこにもみっちりと文章が書かれていたのだった。

(´・ω・`)11月01日の活動報告の(´・ω・`)←この顔文字の右隣の文字だけを縦読みしてください。

(´・ω・`)とても大切なお知らせですので、普段活動報告を読まない方もお願い致します。

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