少年の朝?
ある一軒家の部屋の窓に朝日の光が差し込んで、ベットの上でパジャマ姿で寝ている少年の顔をてらした。少年は日の光があたらないように布団に潜りこんだ。
この様子だとまだ起きることはなさそうだ。
ピンポーン
その時、インターホンがなったが少年には聞こえてないらしく反応がまったくない。その数秒後、ガチャと玄関のドアが開く音がした後ドン、ドン、ドンとわざとらしく音をたてながら歩く音がだんだん近づいてくる。
バンッ!!
部屋の扉が勢いよく開いた。
「ちょっと、潤!なんで出てくれないのよ!?って、まだ寝てるの!?」
紺のブラウスにデニムのホットパンツ姿の少女がインターホンをならしても返事がなかったことにご立腹の様子だ。
潤と呼ばれた彼の名は榮倉潤。
「ん・・んん」
今の騒ぎでちょっと寝返りをうっただけのようだ。
「いつまで寝てるのよ、起きなさい!」
ガバッ
掛け布団を思いっきり剥いだ。しかし、そこには誰もいない。
「あれ?って何張りつてんのよ!離しなさい!こ、この・・・あっ」
潤は布団にしがみついたまま寝ていたが、少女が布団を揺さぶったはいいが誤って手を放してしまいその結果・・・
ドスン
「いってー!!背中が、背中がー!!!!」
「ごめん、今のは私が悪かったわ」
「なんで沙由梨謝るんだ?俺がベットから落ちただけだろ?」
沙由梨と呼ばれた彼女の名は神楽沙由梨。
「あれ、気づいてないの?私が・・・」
「まあなんでもいいから、そんなことよりパン焼いてきてくれないか?腹減った」
潤は顔を顰めつつ背中をさすりながら言った。どうやら背中の痛みがまだひかないのだろう。
「はいはい、ついでにコーヒーとかもいれるけどいる?」
「うん、そうだね、頼むよ」
「じゃあ痛みがひいたら下に降りてきてよね」
沙由梨は下に降りて壁にかけてあるエプロンつけ、ポットのお湯を沸かし、トースターにパンをセットし、焼ける間に、ベーコンエッグ、レタスと大根がメインのサラダを作り出した。お詫びのつもりか2品多めにつくるようだ。
ポットのお湯が沸くころには、料理はテーブルに並べられていたが潤がまだおりてきていない。
「じゅーん、まだー?」
二階にまで届くような声をあげたが返事がない。
(まだ動けないのかしら?)
再び2階に行き部屋を覗いた沙由梨は本日2回目のお怒り状態に陥り始めた。
潤は2度寝していたのである。
沙由梨は潤の耳元に口を近づけた。
「すぅ・・起きろー!!!!」
「うわわわわわわわあああああああああああああ!!??」
潤の情けない叫びが部屋中に響き渡る。
「ごはん作れって言っておきながら何寝てるのよ!」
「これにはちゃんとわけがあるから聞いてくれ、そして落ち着いてくれ」
「な、なによわけって」
沙由梨は腕を組んでムスッとした顔でいる。
「昨日、久しぶりに掛け布団を干したんだ、それで思いのほか、すげー布団がふかふかになって超気持ちよかったんだが、もう1度だけあじわいたくて・・・そのまま寝てしまったというわけだ」
「はあー、もういいわ、早くごはん食べましょ」
沙由梨の怒りは潤のくだらない言い訳を聞いてどこかにいってしまった。
「おお、そうだったな、ご飯が冷めてしまう」
「誰のせいだと思ってるのよ」
沙由梨は語調を強めて言った。どこかにいっていた怒りが戻ってきたような雰囲気である。
「誰のせい?・・・俺のせいだな」
「知ってるわよ!」
そんなやりとりをして2人は下に降りて行った。
「あーもうっ、ホントに冷めちゃってるじゃない、温めなおすから椅子に座って待ってて」
「んー、ついでにコーヒーも入れなおしてくれー」
潤はテーブルに突っ伏して寝ながら言った。また寝てしまいそうな雰囲気である。
「もう、それくらい自分でやりなさいよ」
「無理、眠い」
「次寝たら冷蔵庫にあるプリン全部食べるから」
「すいません、もう寝ません、勘弁してください」
潤は手のひらをテーブルにつけ頭を下げて眠気が一切感じられない口調で言った。
切り返しが早い。
そして潤の謝罪直後に
ピー、ピー
電子レンジの音が鳴り響いた。沙由梨は温めたベーコンエッグをテーブルに置いた。
「プリン食べたかったけど許してあげるわ、さて、さっさと食べちゃいましょ。コーヒーも入れなおしたし」
黒い液体の入ったコーヒーカップが潤の前に出された。湯気がたあっていたので間違いなく入れなおしたであろう。
「嘘っ! いつのまに!? 毎日思うが一瞬すぎる!」
「そんなことより早く食べましょ。2回目よ」
「はい」
逆らうとまたプリンが狙われるであろうと考えた潤は2つ返事だった。
「そういえば、今日はどうするの?」
沙由梨がパンにかぶりつきながら訊ねた。
「今日は集会場の方に足を運ぶつもりだ、真那と連絡をとって今日の昼に会うことになってる。例の件についてな」
言い忘れていたがこの2人もハンターでありパーティを組んでいる。
潤の夢は大金持ちになって一生を遊んで暮らすこと。そのため、ハンターという職業で生活しているが、大金持ちという夢には程遠いというのが今の現状である。そして沙由梨はその夢につきあっている。ただ単に潤のことが気になるということだろうが、潤はそのことを知らない。
「昼にって・・・今がその昼よ」
それを聞いた途端、真剣な顔つきだった潤の顔が一瞬にして真っ青になった。
「食ってる場合じゃない!すぐに行くぞ!」
「ええ!?ちょ、ちょっと!」
2人は食事を中断して家を飛び出していった。
ちなみに言っておくが、潤はパジャマを着たまま、沙由梨はエプロンをつけたままである。