ドルチェーヌのイタズラ
今は何時だろうか?この世界の時計は高い。スラムに住む貧乏人には手が出せない高級品だ。
あいにくドルチェーヌ様は時計が好きではないらしくこの部屋には置いていないそうだ。
空を見上げると日がちょうど沈もうとしているから五時ぐらいだろう
空を見ているとドルチェーヌ様が話しかけてきた
「リィーノ。片付けは終わりとしよう。どうせすぐ汚くなるからのぅ。今日のところは泊まれ」
そう今は私が荒らしてしまった部屋を綺麗にしている。幸い部屋にあるもの全てに強化魔法をかけているので壊してはいないがそれにしても少しやり過ぎた。
「城に泊まれと?」
「あぁ、そうだ。客室なら腐るほどある。まぁ安心せい。一週間以内にはお前の部屋を用意させる。研究職は何かと泊まり込みになるからな。
あぁ後、お前さんとライル君とティーアちゃんは私の養子にすることにしたから」
本当に城ってやることが規格外だと思う。たかが私のために部屋を用意するって。て、まてサラッと言われたが“ようし”ってあの養子か?
「“ようし”ってあの養子ですか!?」
「当たり前だろう。そう警戒するなお前さん達の“秘密”については問題ない
お前さん達を見下したり馬鹿にするような使用人などおらん。」
私は“秘密”の言葉を聞いた瞬間固まった。
「なぜっ!?なぜ私達の“秘密”を知っているのですかっ!?」
「お主は“ゲーム”とやらの設定ではフィリア、だろ?王子に聞いたぞ。
そこが分かればすぐにその可能性くらいは思い付く」
「まぁ、私は結婚していないのでな後継ぎがいない。それに今後お前一人では守りきれなくなってくるぞ?この秘密は」
私には、この人の言葉に頷くしかできなかった。この人の言っていることは私が考えていたことでもあったし
この人は暗にバラしちてもいいんだぞの目が語っていたから。
ドルチェーヌさんの養子になれば秘密は守られるけど、それと同時に私のさわなる巻き込まれ生活の幕開けでもあった。
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ふかふかの布団に枕。布はシルクらしい
しかも私が三人寝れると言うセレブ仕様。
全くもって昨日までは考えられない暮らしだ
昨日までは石畳の上にわらを敷き、後はその辺に捨ててあったボロ布をかけて寝る。
……何か言ってて悲しくなってくるな。ここまで差があるとは。まぁ布だってちゃんと洗濯しているし、お風呂もちゃんと入っているぞ?
ちなみにここは城。そう王様が住んでるところだ。ドルチェーヌさんに言われるがままにお世話になっている
まぁこの城の主は王様なんだけどさ。なぜかドルチェーヌさんはメイドさんにてきぱき指示を出していた。
ちなみに我が弟達はドルチェーヌさんの屋敷にもういるらしい
さて着替えなければ。私は前も言った通り自分のことは自分でやるがモットーだ
メイドさんの仕事を奪うことになるが着替えとお風呂は譲れない。私は人に肌を見せるのが嫌だ。だから夏でも基本長袖。
自分の周りだけクーラーのようなオリジナル魔法をかけているので熱中症の問題はないしな。
メイドさんにドルチェーヌさんが頼んでいたので長袖はの服はあった。
これなら自分でも着れそうだけどコレは…
黒の可愛らしいフリフリのワンピース?ドレス?で自分だったら絶対に着ない……着たくないモノだ。
正直却下したいところだが
今日はドルチェーヌさんが根回ししていたようで夜にお披露目パーティがある
要は逃げないようにするためだろう
一体いつからこの計画が出来上がっていたのだろうか?
まぁそれは置いといて、仕事がないため動きやすい格好でなくても特に問題はないのだ。
それを見越してあの婆さん…ごほん
ドルチェーヌさんはこんな服を用意させた。ご丁寧に私の服は昨日全て洗濯すると言ってとられている
メイドさんに迷惑はかけられない。着るしかないだろう
カツラまであるが私はそこまではさすがに出来ない。
うーん、メイドさんにお化粧とカツラの付け方を教えて貰おう
……。メイドさんってすごい。カツラつけて緩く髪を結ぶ。あとは仕上げに薄化粧しただけなのに所要時間たったの三十分。しかもまるでどこかのお嬢様みたいに仕上がってる。まぁお嬢様見たいじゃなくて今日から本当にお嬢様になるのだが
カツラと化粧ひとつでここまで化けられるのか
これは逃亡するときに思っていたより簡単に変装出来るかもしれないな。
……ごほんごほん。何でもないぞ?
最近よく咳をするなぁ……。風邪でも流行っているのだろうか
「リィーノ様。ドルチェーヌ様が研究室に支度が終わったら来るようにと仰っておりました。」
……。今度はあの人は何をするつもりなのだろうか。嫌な予感しかしない。
「わかりました。今から行きます。」
面倒ごとは早く済ますこれが一番だ。
ちゃっちゃと終わらしてしまおう。
コンコン。と控えめのノックをする
お嬢様は本以上重いものを持ったことがなく虫も殺せないと言うのが普通らしい。間違っても素を研究室以外で出すなと昨日散々言われた。
「誰だ。」
私のノックに答えたのは男の声。部屋を間違えただろうか?と言うか少し恥ずかしいが間違いであってほしい
なんであなた(王子)がいるんですか?
は・め・ら・れ・た!!
ドルチェーヌにはめられた!!
間違えた。ドルチェーヌ“さん”にはめられた。
「誰だ。」
ガチャ。とドアが開けられる。
「すいません。部屋を間違えてしまったようです。申し訳ございません。」
「見ない顔だな。お前は誰だ?」
うわー。カツラと化粧って凄い偉大だ。私だってバレてない。王子、いつでも剣を抜けるように構えちゃってるよ。
「私の名前はドルチェーヌ・クエスターナの娘リィー//」
「ドルチェーヌさんの娘だと!?ドルチェーヌさんに娘などは居ないはずだが」
諦めて自己紹介しようとしたのに途中で遮られてしまった。と言うかいきなりその剣で切ろうとするなお願いだから。内心びびっていることを顔には出さずに言う
「はい。正しく言いますと私はドルチェーヌの養子でございます。」
暫しの沈黙。それを先に破ったのは王子だった
「ちっ!」
しかも舌打ちで。と言うか王子が舌打ちって。なんか乙女の夢壊しそうだなー。
まぁ、私も物語の登場人物だが全然ゲームとは性格が違うな。
それに、お伽噺の中の登場人物なんていたら困る。と言うか現在進行形で困っているし、あぁどうしようサーラ・トレニア。現実ちゃんと見てくれないかなぁ。
「おい、いいかよく聞け。俺とお前はドルチェーヌさんにはめられた。」
「そう、みたいですね。」
はぁ~、面倒だ。このまま私ってことを隠していこう。もしかしたら今日パーティでバレるかもしれないが。
どうやら王子は私の話を聞く気無いみたいだしな。
「多分、あの人のことだからこの部屋に二人きりとかにさせて“イタズラ”を発動させる気なんだろう
何か用事があったのかも知れないがとりあえず自室に戻ってくれないか。」
「わかりました。それでは失礼します。」
イタズラは防げたのだろうか?
まだ何かありそうだがとりあえずここから逃げよう。