テストの季節2
ザクザクと歩くたびに音がなる。今私は杖 «・»をつくるために森にいる。
まぁ、ゲームの私と違う行動したら巻き込まれないようにならないのだろうかということを考えていたんだが、誰かにつけられているな。恐るべし執念だ。
今回のイベントは婚約者と家族の企みで、主人公を誘拐して婚約者が主人公を助ける乙女ゲームの方のイベントと攻略対象にいじめられていることを自作自演するギャルゲームのイベントがある。
乙女ゲームの方は私が主人公を助けられず攻略対象から責められる。つまり半強制的に今からイベントが始まるのだろう。
よし、杖も今もっていない無力な私はとりあえず杖の素材を探そう。非情な奴というな。杖がなければイベント回避もできない
基本この世界では剣とちがい杖は自分でつくる。そのためこの世界の杖の定義は自分の魔力を込めた石が二つ以上ついたものと言ったずいぶんアバウトなものになっている。つまり魔力の込められている石が二つついていれば‘フライパン’だとか‘箒’といったものから‘剣’や‘槍’なども杖にすることが可能なのだ。実際、扇子ですら杖にしている人もいる。あまりにもオリジナルの杖が多く面白いので、城にいる魔法使い達が杖自慢大会を開いてしまうくらいである。
魔法科の私は実技テストで自分の杖が必須なため木の枝を探している。
私がつくろうとしている杖は簡単にいうとRPGでいう“ひのきのぼう”に魔石をつけるだけである。
他のものでもいいのだが木は強化魔法と相性がいい。
だから“ひのきのぼう”に魔力増幅とか身体能力強化だとか万能結界などをつけれるだけつける。
貴族の社会は危険だ。どうせつくるなら護身用に常備できるような大きさと細さそして実用性がないと。
…魔法使いは剣士と比べると欠点が多く弱いんだ。
のどがダメになったら魔法が使えない、魔法陣が描けなくなると威力半減の消費魔力倍増、その他にも場所によっては使えない魔法もある。例えば火山で氷魔法とか。
そんな欠点を補うのには強化魔法をかけやすい“ひのきのぼう”がちょうどいいんだ。
まぁ、身を守るためならこの世界にない知識も制限をもうけない。普段は鉄砲とかをつくるアイディアになる可能性があるものだとかは気をつけるが防御はそこまで危険な知識もないしほぼオリジナルの魔道具だ。
さて、そうこういっているうちに杖の候補となる枝が十本ほど見つかった。時間もないさっさと完成させよう。
『強化魔法 身体能力、魔力、攻撃力、防御能力を強化』
即興で創る杖だこんなもんでいいだろう。
さて、ヒロイン。私を巻き込んだんだ。イベントのシナリオなんて無視。
とりあえずなぜ、私がここにいることをどうやって知ったか白状してもらうからな?
魔法で私の居場所特定させないようにしているのにわかるとか私より魔力が高い奴でもないとできないのだが。
そんな奴は乙女ゲームにいなかった。ヒロインは誰の力をかりたのか?こういう疑問は放っておくと面倒なフラグが立ちそうだ。そしてなにより私より魔力が多い奴に会いたいんだ。
王族であるトーマくらいしか私の魔力を超す人は今のところいない。だから私の研究を手伝ってくれる様な変わりもので魔力が高い人はトーマしかいないのだ。候補がいるなら会わないと人材不足は解消されない。