状況確認
目が覚めるとそこは白銀の世界だった。
辺りはまばゆい“白”に埋め尽くされ、光の反射により、それが一層際立つ要因となっている。既に葉が散ってしまった枯れ木が三々五々林立し、そこに“白”が覆い被さることで幻想的なイメージを抱かせている。
太陽光が通らないどんよりとした空から“白”が舞い降りてくる。
天から降る“白”は舞踏会でダンスを踊るように少しずつゆっくりとした速度で近づき、やがて地に降り立ち、同じく“白”い大地に溶け込んでしまった。
それはまるで王子と踊ったシンデレラが十二時の鐘で魔法が解けてしまったように。
“白”いそれは時間の経過と共に仲間を増やし、大勢の仲間と共に複数の舞踏会を形成している。
ここは雪山だった。
僕は自分が置かれている状況について考えた。
自分はどうしてここにいるのだろうか、と。
次第に曖昧だった記憶が鮮明になり、記憶が蘇ってきた。
家族と一緒にスキーを楽しむ自分。調子にのって上級コースを滑り、崖から滑落する自分。
記憶が戻り、はっと気付き、辺りを見渡すと真ん中から折れたスキー板と不自然に曲がったストックを見つけた。だがお互い一本ずつしかなく本来の目的を果たせそうにない。そもそも折れている時点で使えないのだが。
着用しているスキーウェアも転落の際に木々にぶつかって破れたのか大きな傷があった。中に着込んでいるトレーナーが透けて見え、傷の深さを物語っている。よく見ると他にもあちこちに傷があり、そこに雪が溜まり、身体から体温を奪っていた。
僕はふと思った。
ああ、これは死ぬな、と。