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電波塔から降ってきた天使を助けたら、強制的につきまとわれる守護天使になりました。  作者: roku


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第1話 天使現る!

「……あれぇ〜? おかしいなぁ。なんでだろう、ぜんぜん繋がらない……」


 仕事帰り、コンビニ袋を下げた俺がそんな呟きを耳にしたのは、頭上十数メートルの高さからだった。 見上げれば、そこにはあまりに場違いな光景があった。 住宅街にそびえる無機質な携帯基地局。その鉄骨の隙間に、場違いなほど真っ白な羽をバサバサとさせた女の子が挟まっている。


(……見なかったことにしよう)


 この世には、関わった瞬間に人生の平穏がログアウトする案件が存在する。 「少しだけ人より色々見えてしまう」という厄介な体質を抱えて生きてきた俺の防衛本能が、いま全力で警報を鳴らしていた。


「そこのあなたぁ! もしかして私のこと、見えるんですかぁ!? 助けてくださいっ! この基地局、天界の電波がぜんぜん入らないんですぅー!」


(いかん、無視だ。全力で無視しろ)


 思考を遮断し、競歩並みの早足で帰路を急ぐ。しかし――。


「ちょっと待ってくださいいいいいい!」


 鼓膜を突き抜ける絶叫とともに、彼女は電波塔からノーモーションでダイブしてきた。 放っておけばいいのに。 条件反射でコンビニ袋を放り出し、両腕を広げて受け止めてしまった俺は、多分この街で一番の善人だと思う。


「ぐぉっ……!」


「ふぇえ……! あ、ありがとうございますぅ……! なんとお礼を言ったらいいかぁ」


 腕の中に収まったのは、透き通るような金髪と、どこか締まりのない表情をした美少女。 彼女は自分の頭をペタペタと触り、やがて顔面を真っ青に染めて震え出した。


「あ、あれ……? 輪っかが、ない。……ま、まずいですぅ。これがないと天界へのゲートが開けません。どうしよおおおおお、お家に帰れないよぉぉぉ!」


 腕の中でバタバタと暴れる羽が顔に当たって痛い。


「……おい、とりあえず降りてくれないか。重くはないが、暑苦しい」


「は、はいぃ! 失礼しましたぁ!」


 ようやく地面に着地した彼女を、俺は改めて観察した。


「一応聞くが、あんた一体なんなんだ?」


「あ、私は天使の『フワロ』といいますっ! この度は危ないところを助けていただき、本当に、本っとうにありがとうございますっ!」


 丁寧な言葉遣いとは裏腹に、隠しきれないポンコツ臭が漂ってくる。 白い翼に、消えた輪っか。大体予想はついていたが、どうやら本物の天使らしい。


「気にすんな。危ねえからもうあんな所に登んなよ。それじゃあな」


 俺は地面に転がったコンビニ袋を拾い上げ、今度こそこの場を去ろうとした。 しかし、背後からおずおずとした声が追いかけてくる。


「あのぉ! 私のヘイロー……輪っかを探すのを、手伝っていただけませんかぁ……?」


「すまん、明日も仕事なんだ。悪いが他を当たってくれ」


 冷たく言い放ち、一歩、二歩と距離を取る。 だが、フワロは一向に離れる気配がなく、俺の背後にピッタリと張り付いて歩いてくる。 嫌な予感が背筋を駆け抜けた、その時だった。


「すみませぇん、さっき助けていただいたせいで、私、あなたの『守護天使』に設定されちゃったみたいで……! しばらく、あなたから物理的に離れられなくなっちゃいましたぁ! なので、これからよろしくお願いします!藤木・・さん!」


「な、なんだってええええええええ!」


 俺の絶叫は、夜の住宅街にむなしく響き渡った。 こうして俺の平穏な生活は、迷子の天使に物理的にストーキングされるという最悪の形で幕を閉じたのだった。



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