嵐、遭難、あるはずのない島
「風が強くなってきた」
ベテランの船長は他船員1名と、十名の客に言った。
「大丈夫ですよ、このあたりは巨大な嵐が起こった事は有りません、たとえそうでも、沈みはしませんよ」
船員は自信なさげに言ったがベテランの船乗りである船長は自信なさげだった。
【案の定】強い嵐は異様な大嵐へと、変貌を遂げた。
只この船はそれだけはしっかりしていた。
頑強な鉄の中には空気が入っていて、転覆はまずはしない、そして転覆しようが浮くのは浮く、しかしまるでそうなるべきであったかのように、誰かの意図でもあるかのように、
「エンジンがもう壊れて動きません」
船長に船員が必死に言った。
無理もないだろう。
武骨な船に旧式の舵取りが付いているならまだしも、エンジンも舵取りもレーダーも最新式なのだ。
壊れたのは自明の理、只まあこの船でもこの國では最近はまだましだった。
そこは船長はと、船員の人柄だから誰も二人を咎めなかった…。
本場三郎が叫ぶ、
「オールで漕いで岸まで戻るしかない!」
船長が俯いて言う。
「無理、駄目だ」
「どうして!?」
「組合の威光でオールは昔破棄されたんじゃ」
だが優しい性格の三郎は、言った。
「…それはどうしようもなかったんですか?」
船長は言う。
「いや、ワシが悪いんじゃ、三郎君、だがこのまま流されると…」
「え!?」
「三郎君、ワシなんか庇ってはいかん!」
食料は最低限船に有った。
そして案外丈夫な船室で夜に星を見た。
だが朝に成り目が覚めたら…、
…とある砂浜に、船は流れ着いていた。
家や明かりが見えた。
船が揺れた際の打ち身だらけで三郎は一人船から降りた。
住人らしい人々を見つけて叫ぶ、
「助けてくれ!ここは國の何処だ!?」
!!!
住人に動揺が走る、そして言った。
「この【島は】入っては駄目よ!」




