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モンスターがあふれる世界で最強にならないと生き残れない転生  作者: 一ノ瀬るちあ/エルティ


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第28話 壬生家の尋問

 懇親会はお開きになった。

 大量の『災禍』が桜守の管轄地に出現したことで、やらなければならない仕事が増えたことが原因だ。


 ひとまず、ほっと息をつく。

 鼻が曲がるほど強烈な死臭のする戦場だった。

 だけど、生きて帰ってこれた。


 それと、俺にとってはこっちの方が大事なことだけど、婚約云々の件はうやむやになった。

 途中から何となく気づいていたけれど、あれ、ガチだ。

 下手に口を滑らせてたら大変なことになっていたと思う。


 ある意味ではこっちも死臭漂う戦場であり、今日一日で二回も修羅場を潜り抜けたわけだ。

 そう考えると、なんだかどっと疲労が噴き出した。


 まあ、あとは帰るだけだ。

 さすがにこれ以上の問題は起こるまいて。

 ははは。


「さ、帰るわよソラ」


 あの、ときちゃん?

 どうして俺の手を握ってるんですか?


「なにぼーっとしてるのよ。壬生家は雑賀の護衛を依頼されてるんだから、一緒に帰るに決まってるでしょ」


 あ、あー、それは、確かにそう。

 でも俺的には、いまはちょっとクールタイムが欲しいって言うか、朱音ちゃんと口論をヒートアップさせたときちゃんと一緒に行動するのは不安って言うか。


 あ、そうだ。


「ほ、ほら。母さん、封伐に関して吹っ切れたみたいだし、実際、あの場にいた他の封伐師が誰も倒せなかった『災禍』を一人で倒したわけだし、雑賀だけで十分なのに、これ以上壬生に迷惑かけるわけには……」

「おい雑賀の」


 必死に回していた舌が、男の言葉に凍り付く。

 スキンヘッドに、目の上の傷。

 どこの組の者かと不安になるこわもてのアニキが、冷たい殺気交じりに俺を詰っていた。


「もしや、お嬢と一緒に帰るのが嫌っちゅうんちゃうやろなぁ?」


 こいつ、マジだ。

 俺が下手なこと言ったら、殺す気だ……。


「い、いえ。そんなこと、ありませんよ?」

「ほんだら何も問題ないな? うちも義理と人情を売りにしとるんや。受け取らんなんて言わんやろ?」

「は……はい」


 俺、弱い。


  ◇  ◇  ◇


 清水さんの送りで、雑賀の屋敷に向かって車で移動している。

 まだ桜守家の管轄地で、住宅街の中、ときちゃんが不思議そうに、不安そうに、声を絞り出した。


「なんでソラが、私の飯綱(いづな)を使えるの……?」

「あ、いや、それは、えっと」

「ねえ、どうして? ねえ?」


 ときちゃんが笑顔をこちらに向けている。

 でも俺にはわかる。

 これ笑ってない。

 目が全く笑ってない。


(ごめん! 特訓の途中に解析させてもらった!)


 だって便利なんだもんこの術式。

 遠見で縁を見抜き、飯綱(いづな)で遠距離から敵を仕留める。

 最強コンボじゃないですか。

 俺だって使えるなら使いたい。


 いやまあ、水とか炎とか、そういうそもそも斬撃が効かない相手には効果がないみたいだけど、それでも強力だ。

 遠見によるターゲット捕捉能力と、遠距離攻撃可能な飯綱(いづな)は相性が抜群すぎる。


 強いて言うなら、雑賀の一子相伝の術式は斬るだけじゃなく、弾いたり、引き寄せたりできる分上位互換だ。

 俺が継承した際には使わなくなるかもしれないけれど、父がしばらく伝授してくれる気配がないのだから代替品として需要は高い。


 そりゃ、学習の機会があれば学習するというものである。


 打ち明けるつもりは無かったけど。


「はぁ、まあいいわ」


 答えられない俺に、呆れたときちゃんがため息をこぼす。


「ソラ、あんたしばらくうちで厄介になりなさい」

「は?」

飯綱(いづな)の威力は術式の使い手の剣技に左右される。剣において壬生家は最強よ。悪い話じゃないでしょう?」


 え、えーっと。


(いやまあ確かにそうなんだろうけど)


 無理だ。それは絶対無理。


(これでほいほいついて行ったら、知らないうちに外堀埋められてる、俺にはわかる)


 未来視を使うまでもない。


(かと言って大きな理由もなく断ったら、それはそれで壬生家と角が立つし……)


 今日一日でわかった。

 壬生家はやべーところだ。

 敵に回したら臓器がいくつあっても足りない。


「ごめんなさいね。(とき)ちゃん」


 どう答えたものかと悩んでいると、母が助け舟を出してくれた。


「ソラは雑賀の秘伝の術式を覚えないといけないの。すっごく難しい術式よ?」

「え?」


 俺が見た未来だと、しばらく教えてもらえなかったはずなのに、どうして?


「だから、せっかくのお誘いで申し訳ないんだけど、ソラのためだと思って、許してくれる?」

「……むぅ」


 母が優しく微笑みかけると、ときちゃんが口をとがらせて腕を組む。

 そして難しい顔で、護衛のこわもてアニキの方を見る。


「お嬢、しかたありやせん。またの機会を待ちやしょう」

「でも……!」

「日本では昔から果報は寝て待てと言いやす。それに、駆け引きってのは押すだけじゃごぜえやせん」

「うー」


 ほっぺたを膨らませて、ときちゃんがふいっと顔をそむけた。


「わ、わかったわよ。でも、たまには遊びに来なさい。それくらい、いいでしょ?」


 え、壬生家に?

 ちょっとそれは遠慮願いたい……。


「雑賀の、構わんよなぁ?」

「あ、はい」


 こわもてアニキに凄まれて、俺は何も言い返せなかった。


(ま、まあ。たまにはだし。数年に一回。数年に一回なら……)


 数年に一回で済むかな?

 済めばいいな……。


 車は市街をかけていく。

 俺たち封伐師を乗せて、雑賀の屋敷に向けて。


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