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モンスターがあふれる世界で最強にならないと生き残れない転生  作者: 一ノ瀬るちあ/エルティ


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第11話 遠見の術式拡張

 数日たった。

 意識するのは常時遠見の術式を発動すること。


 術式への理解が深まるほどに、できることは増えていく。


 最初は自分の部屋を確認することしかできなかった。

 これはおそらく、一番俺の記憶に定着していたから――つまり、一番縁深い場所だったからだ。


 どうやら遠見の術式は、縁を頼りに起動するらしい。

 それは裏返せば、手繰り寄せられる縁のある場所へならば視点を移せることを意味している。


 たとえば、母の旧姓は豊雲(とよくも)だ。

 父、雑賀のもとに嫁いできたことで、雑賀と豊雲の間には縁が結ばれたとも言える。


 そのことに気付いたとき、俺の視点は広がった。


(知らない屋敷の光景だ。これが、母の生まれ育った豊雲の屋敷なのかな?)


 同様に、俺が自ら足を運んだことのある封伐師の総本山である寺社にも視点を飛ばすことができた。

 できたのだが、ここで気づいたことがある。


(縁が強い場所ほど必要とする霊力は少なく、疎遠になればなるほど霊力を消費する感じか)


 付け加えて言うなら、遠見の難度も縁の強さに関係する。

 だから、一番遠見しやすいのは俺の部屋、次点で雑賀の屋敷、半分血を引いている母方豊雲の屋敷、封伐師の総本山と続く感じだ。


 桜守家や壬生家については遠慮しておいた。

 俺が直接的に縁を結んだのはあかねちゃんとときちゃんだ。

 遠見しようとすれば、必然彼女たちを術式の媒介にする必要があり、それはなんかストーカーじみている気がしたからだ。


 現状、術式の練習は縁を手繰り寄せる方向で進めている。

 たとえば、豊雲の屋敷から、豊雲家にゆかりのある場所へ遠見できる範囲を広げていく、なんて風に。

 だから、桜守や壬生と軋轢を生みかねないリスクを冒してまで二人を術式の練習台にする必要に駆られていなかったわけだ。


 縁って言うのはどうやら糸のようなもので連続的につながっている。

 どんなに細い糸だとしても、見逃さずにさかのぼっていけば、世界中どこへだって目を飛ばせる。


 そのことに気付いて、練習を続けて、さらに数日。


 地球の反対、ブラジルまで視点を飛ばせるようになって、この練習をひとまず打ち止めにすることにした。


「細い縁を手繰っていけるのは、化け物じみた霊力量があってこそだよなぁ」


 平均の80億倍の霊力がなければ、訪問したこともないブラジルまで視点を飛ばすことなんてできないだろう。

 その点で言えば、俺は非常に効率よく遠見の術式を活用できる稀有な存在だと表現できるだろう。


(けど、これが本当に本質か?)


 言葉にするのは難しい。


(なんだろう。俺がこの術式を目録で見たときの感覚は、もっとしっくりきたっていうか)


 ただ遠方を望むだけなんてもので済むほど素っ気ないめぐりあわせだとは思わなかったのだ。


「縁、か」


 術式を理解する。

 俺は最初、俺に刻まれた術理を紐解くことが。極めるための唯一の方法だと思っていた。

 だけど、そうではないのかもしれない。


 縁とは何だろう。


 たとえば家族的なつながり。

 兄弟の縁や血縁なんて言葉があるように、縁には血のつながりを意味するニュアンスが含まれる。


 たとえば人と人の関わり合い。

 金の切れ目が縁の切れ間と言うように、縁には関係性を示す意味もある。


 たとえば――因縁。

 結果に対する、間接的な原因。


「たどれる縁ってのは、何も空間的つながりに限定されないんじゃないか?」


 現時刻における俺をAとして、t秒後の俺をA´とする。

 この時、AとA´はやはりどちらも俺だ。

 Aの俺がいるからA´の俺が存在できるのであり、全くの他人と定義するのはおかしいだろう。


 つまり、この異なる時間軸における二人の俺は、因果律という強い縁で結ばれた存在と認識できるのではないだろうか。


(遠いという言葉の意味も、何も空間に限定されない。たとえば数百年未来に起こる出来事を、遠い未来なんて表現することがある)


 俺がほれ込んだ術式、遠見も同じなのではないだろうか。


(遠見の術式の本質は、空間的距離だけでなく時間的距離さえも跳躍して、遠い(・・)景色を覗き見ることこそなんじゃないか?)


 もし、俺の仮説が正しければ、この術式は未来視にも適用可能なはず。


「考えるより実践だな」


 自己という存在に意識を集中させ、そこから伸びる縁を探る。


「うーん」


 思考実験の段階ではうまくいくと思ったのだが、実際にやってみようとするとうまくいかない。

 俺から外へと伸びるどの縁も、空間的なつながりであって時間的なつながりには思えない。


(いや待てよ)


 そもそもの前提認識がおかしいのではないだろうか。


(外へ伸びてるってことは、三次元空間上で異なる座標と結ばれた縁ってことになる)


 俺自身を基準点として考えているにもかかわらず、である。


(俺のXYZ座標をOとすれば、1秒後の俺の座標もやはりO。三次元ベクトルでの距離dは0。外へ伸びてる縁は全部時間的な縁じゃない)


 もし俺の想像通り、いまの俺と未来の俺をつなぐ縁があるとすれば――それは線ではなく点として存在しているはず!


(線を探るのと違って、点は探れそうにないな……けど)


 もしいま三次元ベクトルで認識している空間を、四次元に拡張して時空まで認識を広げれば?


「みつけた」


 俺と俺を結び、しかし長さが0ではない縁。

 それをたどれば。


「できた……! 未来視!」


 遠い未来を見通す術式、遠見の完成である。


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