おままごと
私が買い物途中で公園の前を通りかかると、
近所の姉妹がおままごとをしていた。
とても微笑ましい光景に私は足を止めて眺めていた。
姉がママ役で妹がパパ役みたいだ。
「あなた、お帰りなさい、今夜も遅かったのね。」
「あぁ、仕事が忙しくてね」
「仕事って女と飲むのが仕事なのかしら、香水の匂いがぷんぷんよ」
「いやいや、これは接待で付き合いだ」
「私が何も知らないと思ってるの?香苗って女と浮気してる癖に」
「おいおい、そんなに大きな声を出したら子供達が起きちゃうだろう」
「もう、限界なの、殺してやるー」
そこで、姉が妹を刺す動作をしたのだ。
私は背筋が寒くなりその場を足早に立ち去った。
二日後、玄関のチャイムが鳴ったので出て見ると、公園でおままごとをしていた姉妹の母親が立っていた。
「こんにちは、突然来てごめんなさいね、今日はお仕事お休みなのかしら」
「今日はお休みなんで、これから出掛けうと思って」と言いました。
「いつも素敵な香水付けてるけど今日は付けてないのね」
「えぇ、切らしてて違う香水に変えようかと思いまして」
「あら、そうなの、そうそう恥ずかしいお話だけど私、主人と離婚する事になって娘達と実家に帰る事にしたの」
「そうなんですか、寂しくなりますね」
「それで今日は最後のご挨拶に、これ珍しい肉が手に入ったから是非食べてね」
「まぁ、有難う御座います」
「主人もきっとあなたに食べて貰えれば本望でしょう」
そして、背中を向けて一言。
「さようなら、香苗さん」