30日後に派遣切りにあうモノ
人生はいつだってトゥービーコンティニューである。
1
派遣をしたことはあるかい?
俺はもう結構やってきているけど、派遣において気持ちよくやめれた事はあまりない。
短期契約の派遣なら、終わりがある分、最後も卒業した様に別れられるので、悪くないのだが、長期派遣は大体、気持ち良く辞める事はできない。なんでかって?
それはこれから始まる俺の書いた小説を読めばわかるさ。きっとあなたは派遣の現実を知ることになるだろう。
2
「やっと終わった・・・。」
その日、派遣でデスクワークで文章を書く仕事に勤めていた俺は、伸び悩み、どう文章を構成すればいいのかわからない状態から、あらゆる先輩に聞きに行き、どうにか理解を深め、何度も修正を命じられながらもようやくOKを貰った所だった。
頭は限界、退社時間は残り30分。やり切ったという心地の良い疲れを感じていた時、不意に「安達さん派遣のスタッフさんが呼んでますよ」と声をかけられた。
派遣のスタッフさんとは、派遣の契約を取り付けてくれた派遣元の担当さんの事である。
俺は朦朧とした意識の中、派遣の担当さんのいる休憩所に足を運ぶと第一声でこういわれたんだ。
「伸び悩んでるんですって?」
その通りだったが、今ようやく終わったのでようやくやり方がわかってきたと伝えようとした時、担当者はこう言った。
「今月で契約終了です。」
3
先程までの充実感が嘘の様である。
まるで別世界、今まで一緒に働いてきたメンバーがその宣告を受けてから突然、赤の他人に変わった。何もテンションは上がらない。どうにも元気がでない。
これが派遣ぎりという奴である。
何が嫌かって、もう辞めると決まっているのに、あと1ヶ月こうして、同じ職場に顔を出さないといけないという事である。
派遣は3年で更新満了なのでそれならばまだ仕方がないといえるのだが、まだたった半年では格好がつかない。ただ、実力がたらなかったからクビになっただけである。
なんだよこれ。よくやく仕事覚えたのにこれかよ。
泣きたくなったが、事情を他のメンバーが知らない以上、悲しみを言葉にする事もできなかった。
「今日も疲れたね」
っと他の派遣メンバーが楽しげに話しかける。
俺は無理矢理楽しく振る舞い。
「やっと終わったぜ」なんて言う訳だ。
全く、こんなに無理矢理元気を装ってる事自体に泣きそうになるぜ。
俺は無理矢理平然さを装い、誰とも一緒に帰りたくなかったので、1人になれるルートで帰宅。どうしようこれから、失業保険は半年は働いたのだからでるだろうけども。派遣ってなんなんだ。本当に使い捨てなんだな。気になる子もいたけど、切られちゃえばもうさよならするしかない。派遣なんてみすぼらしいから、女性が付き合いたいなんて思うはずもない。
なんだこれ、派遣なんて無駄に歳食うだけじゃないか。これまでのここに勤めていた半年間はかなり充実したものになっていたが、いっき悲しみしかなくなっていったのだった。
4
おいおい、この小説悲しすぎるって?
見てらんないと思ったかい?
しかし、派遣はこういうものである。
人間誰しもミスをするよな。でも派遣でミスをした場合はクビが危ういんだ。
少しのミスが命取り、ゲームとかだとミスしてどんどん意味を理解してできなかったことができてきてステージクリアしていくだろ?
あれが派遣ではなかなかできないのだ。
さて、その後の事を少し話そう。
次の日から俺は派遣先の会社に朝礼で1ヶ月後に契約が終わることを社員に伝えた。
去るまでは耐える日々だ。
最終日まで早く終われと願う日々である。
当然気になるあの子も社会的対応で幕を閉じた。
「ふー」
深呼吸を一つ。生きていこう。
これが、社会で生きていくってことなんだ。