13/55
高橋の場合
*
望夢が低空飛行を続けるのに対し高橋は、順調に成績を上げていった。
好きこそものの上手なれと言うべきか、実弾射撃経験者というだけでなく、天賦の才と言うと少々大袈裟だが、彼には確かに才能というか素質があった。
普段から精巧にできたモデルガンをいじくりまわしているせいか、銃に慣れるのが誰よりも早く、望夢が死ぬほど苦労しているガク引きもなく、反動に負けるような華奢な体もしていない。大口径の銃であろうと、他の隊員が反動を押さえ込むのに苦労しているのを尻目にばかすか撃っても平然としていた。
おまけにコイツ、机上の弾道計算はさっぱりなくせに、いざ外で実弾を撃ってみるとこれがまあ当たる当たる。
風が吹こうが距離が遠かろうが狙ったところに面白いように当てて、教官が真剣な目をして自衛隊の特別狙撃手に推薦してやろうかと声をかけることが幾度となくあった。
そんな冗談とも本気ともつかぬ教官の誘いを高橋は、「男だらけの汗臭い組織に入り直す気はさらさらない」と無碍に断ると、さらに成績を伸ばしてとうとう銃火器クラスのトップに躍り出た。
そうして拳銃から始まった実弾射撃訓練は、機関銃、長距離狙撃銃、果ては擲弾発射機や無反動砲を経て、いよいよ実戦訓練へと移り変わった。




