ハプニング
去年の五月から、もう一年以上経つ。
高二になると成樹君ともクラスが分かれ、
私たちの接点はほとんどあの通学路のみ。
実は、成樹君とクラスが別になって、
私は少しホッとした。
四六時中、彼のことを気にしなくてもよく
なったから。
今はあの通学路を下校するのが、私の一番
の楽しみ。
◇◇
今日は成樹君に会えるかなあ。
成樹君のクラスも、私のクラスと同じくら
いにホームルームが終わったから、たぶん
今日も会えるはず・・・。
あっ、成樹君の自転車の音がする。
彼の自転車の車輪とチェーンの軽快な音色
が近づいて来た。
私は背後に神経を集中させる。
だけどその日は、とんでもないハプニング
が起きてしまったの。
前方の角を凄い勢いで曲がって来たバイク
と成樹君の自転車が私の目の前で接触して
しまったの。
『キイイイー、ガッシャンー、ドーン!』
って、物凄い大きな音がした。
私はとっさに道路脇にしゃがみ込んだ。
成樹君は必死でバイクを避けようとしたけ
ど避け切れなかった。
バランスを崩しながら自転車と一緒に住宅
街のコンクリート壁に激突してしまった。
バイクの方も反対側の家の塀に激突。
私の前方にはグシャグシャになった自転車
の横に成樹君が倒れてる。
後方には大破したバイクとライダーが地面
に投げ出されて倒れてた。
私は慌てて、成樹君の方に駆け寄ったの。
脚がガクガク震えてた。
成樹君に近づくのが怖かった。