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私の好きな成樹君  作者: 宇目 観月(うめ みづき)
3/12

デートの誘い


初めて見つめ合った時以来、彼は私に興味

を持ったみたいで、時々話しかけて来る。


だけど、私はなるべく取り合わないように

してる。


て言うか、成樹君の前では、妙に緊張して

上手く自分が出せない。


それに『女ったらし』とか『男娼』とか、

彼の悪い噂を色々と耳にしてたから怖いの

もある・・・。



ハッキリ言って私、成樹君のことが好き。

好き過ぎて頭がおかしくなりそうなほど。


だけど容姿もいたって平凡なこんな私と、

成樹君とじゃ釣り合わないと思う。


だから去年、成樹君から初めてデートに誘

われた時も断った。



私たちはその頃、高校生活にもだいぶ慣れ

て来てた。


学校や通学路で会った時なんか、成樹君と

挨拶くらいはするようになってた。

クラスでも必要な時は話してた。


だけど個人的に会話したのは、あの時が初

めて。



◇◇



あれは五月のゴールデンウィーク前、新緑

が眩しい季節だった。


お昼休み。


校舎の三階の渡り廊下ですれ違う時、彼が

いきなり話しかけて来た。


「絵子さん、今度の連休、良かったら俺と

ディズニーシーに行かない? バイト代出

たし、俺が奢るからさあ」


って、成樹君が声をかけて来たの。


私は嬉しくて気絶しそうだった。


でも何て答えれば良いのか分からなくて、

私は成樹君を見上げ、ただ押し黙ってた。


頭の中に色んな考えが渦巻いてた。


「どうした?」


って、成樹君が怪訝そうな顔をしたの。


だから、私は慌てて答えた。


「悪いけど、無理」


自分でもビックリするくらい、キッパリと

した冷たい声だった。



あの時の成樹君の表情が、今でも目に焼き

ついてる。


彼の形の良い眉毛がピクピク動いてた。

痛くフライドを傷つけられたような顔。


「そっかー都合が悪いのかあ。だけどお前

なあ、そんなにツンケンすんなよ。まあ良

いや、またそのうち誘うからな、今度は断

んなよ!」


って言いながら、成樹君は肩を落として、

去って行った。



「ごめんね、成樹君」


って、私は小さく呟いたの。

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