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実験体達は完成品となる夢をみるか?  作者: 愛憎少女
第1章 Experimental Body
2/10

#1 白い死神

────1人の少女は、暗い部屋で窓の向こうに映る空を眺める。


暗くなった夜空には欠けた月が妖しく輝き、窓際に立つ少女の長い髪──まるで陽の光の様に美しい金の髪は、窓から差し込む月明かりに照らされ、きらきらと星屑の様に淡い輝きを放つ。


月明かりによって映し出される、彼女の顔立ちは端正で、陶器の様に白い肌は生気が無いように感じられる。

そんな彼女は、その顔立ちと金の髪に良く似合う、白を基調としたドレスを身につけていた。


白いドレスを身につけ、月明かりに照らされる少女の姿は、まるで絵画に描かれる天使の様に美しいのだが。



──けれど、そのドレスは所々赤く(・・)、彼女の手には背丈程ある紅く染まった、死神が持つであろう大きな鎌を手に持っていた。





少女の足元には人が倒れ込んでおり、床は紅い──否、赤黒い血が広がっていく。

普通はその血を気にするだろうが、彼女は気にも止めず窓に手を伸ばし、窓の鍵に触れる。

カチャリ、という鍵の開く音が静かな部屋に響き渡り。窓を開けば同時に部屋に冷たい風が入り、風によって彼女の長い髪はゆらりとなびく。

白く、所々赤く染まったドレスは風でふわりと浮くが、少女は気にせず、ただ窓の向こうの夜空を見つめていた。


そしてゆっくりと、少女は窓の向こう側にあるベランダに足を踏み入れ、手すりの上に立ち上がる。

手すりの上に乗るという行為が危ないというのに、更に彼女が今居る場所は地面が遠く。少しでもバランスを崩したら真っ逆さまに落ちてしまいそうなのだが、上手くバランスをとっているらしく、落ちる様子は微塵も無かった。


そして、彼女はゆっくりと足を虚空へ伸ばし────────





手すりから足を離し、飛び降りる。

真っ逆さまに堕ちてゆく彼女の表情は何も感じていないのか、人形の様に無表情で、もう少しで地に背が衝突するという時に────彼女の背からは大きな白い翼──天使の様に純白な翼が現れ、彼女はその翼を広げ、1回大きくはためかせる。

ばさり、という音と共に、彼女は一気に大空を飛び、暗闇に溶けていく。

地面に、数枚の純白な羽根を落として──────







────しばし飛び、少女は暗い森の奥深くに降り立つ。

大きな翼が木々にぶつからないように配慮しながらゆっくりと降り。ぐしゃ、という白いブーツが落ち葉を踏み鳴らす音が静かな森に響く。

遠くからは狼の遠吠えが聴こえ、少女以外に誰も居ない森の空気はとても冷たかった。


彼女は背にはえていた翼をしまい、まるで手品の様に一瞬で手に持っていた大鎌をしまう。そして落ち葉を踏みながら、ある場所へと歩き出した。




──少し歩き、少女は木々の間が他より少し広がっている場所で立ち止まるとしゃがみこみ、華奢な手──否、白い手袋をはめている両手で落ち葉を払い除ける。

段々と落ち葉が無くなってゆき、土が見えると思いきや────そこに現れたのは何かの扉(・・・・)だった。

扉は誰にも見つからない様にする為なのか、暗い色をしており、重そうな扉だと簡単に判断出来るものだった。

少女はゆっくりとその扉を開くと、そこには地中へと続く階段があった。


階段の先は暗くて見えないが、彼女は気にせずその階段を数段降り、頭をぶつけないようにしながら扉を閉めると、壁に手をつきながら更に奥へと進んでいく。

扉を閉めた為に、外界からの光は遮断されたのだが、階段の足元には等間隔に僅かに灯りがついており、少女のブーツのヒールの音が階段に響き渡る。




どのくらい歩いたのだろう。

長い階段を降り、暗い廊下を渡ると、少女の視界は一気に明るくなり、彼女はその眩しさに少し目を細める。



視界が光に慣れてゆき、少女の視界に映るのは、一面が白で囲まれた簡素な廊下。

彼女の足元の床も、高い天井も、壁も、等間隔にある扉も──何もかもが少女の服装と同じ、清潔な白で統一された場所。

少女は廊下を歩き、ある扉の前で立ち止まると、ゆっくりとその扉を開けた。



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