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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

作者: 便所虫

あまりこういう話を書いたことがなかったのですが、急に書きたくなったので。

少し重めの話かもしれません。

ぼくは夏から抜け出せない。

何度寝て、何度起きても、同じ日を繰り返している。

繰り返すと言っても、ぼくは機械ではない。

同じ言葉を、同じテンポで繰り出し続けることはできない。なので、毎日、少し違う今日を送っている。

ただ、結末はいつも一緒。

悲しくて辛くて、苦しすぎる結末。



一日の終わりはいつも夕方だ。

いつもいつも、何回繰り返しても、幼馴染を殺してしまう。

故意ではない。どんなに試行錯誤しても、何かの手違いで彼女は死んでしまう。

普通ならば考えられないたまたまが、彼女の命を奪っていくのだ。



そもそも、同じ日を繰り返すというのが、普通ではない。

“一日目“となったあの日、ぼくを襲った恐ろしいまでの怒りと憎しみが、このようなおかしな事態を呼び込んだのかもしれない。

はたまた、神の悪戯なのかもしれない。

もしこの世に神がいるなら、悲しい夏の一日という神の作品の一部になってしまったと考えることもできるかもしれない。



街の外に出ることはできなかった。

バスに乗ろうとしても、駅まで歩こうとしても、幼馴染の事故のニュースが舞い込む。

一緒に連れて行こうとしても、不幸にも車が突っ込んでくる。暴漢に襲われる。

彼女は、なんて救われない人間なのだろう。



結局のところ、ぼくは幼馴染を忘れられないのである。無視出来ないのである。

この一日を自由に使うことは出来ない。

幼馴染が死なないように立ち回るのも、無駄だと気づいてしまった。

ただ、彼女が死ぬまでの時間を、一緒に過ごそうとは思う。

毎日毎日死んでいく彼女を見る。飽和しきった日常を送る。明日はどんなことをしてみようか。

いつかきっと、夢は叶う。誰かが言った言葉を信じてみようか。





もう、することもなくなってしまった。


何百年分もの時間を、過ごした。

思いつくことは全てやった。彼女が死なないようにしても、少し時間がズレるだけで、彼女は死ぬ。

彼女が喜ぶこと、楽しむこと。全てわかった。

悲しむことも、何もかもわかった。

笑う顔が、驚く顔が、その表情の全てが愛おしい。ぼくは彼女を愛している。


恋ではない。彼女に贈る、無償の愛。

見返りのいらない無償の愛。

ただ、それだけのはずだったのに、

ぼくは、求めすぎてしまった。



誰かはこうも言った。

必ずいつか、夢が覚める時が来る。


ああ、この時間が続けばいいと思ってしまったがためか。こんな事実に気づいてしまったからか。


“一日目“に、死んだのは彼女じゃない。





落ちたのだ。あの日。崖から。

やり直そう。“一日目“を。

少しも風化することのないあの記憶を、再現するのだ。

取るに足らないやり取りも。くだらない会話︎︎も。


“一日目“から、今に至るまで、全ての記憶が流れ込む。涙が自然と溢れてくる。

そういえば、最初のあの日も泣いていた。

落ちていく彼女を見て流した涙ではなかった。


彼女から離れるのが、怖かったんだ。

悲しかったんだ。寂しかったんだ。



理由に気づくのに、何百年もかかってしまった。

重すぎたんだ。愛は。

重すぎたんだ。罪は。


何百年もの間、育み続けた愛。彼女を殺し続けた罪。


落ち続ける。地に着いても、獄に至るまで。

落ちて、落ちて、墜ちた果てに。


ぼくはぼくで、無くなった。













ピーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


音と共に、亡くなった。


考察でもないですが、好きなように解釈してください。

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