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まよなかの窓

作者: やすむ

初投稿となります。

書いたものを読んで頂きたいと思いまして、なんとなく書きたくなったことを書いてみました。

つたない文章で申し訳ありませんが、宜しくお願い致します。

1.メゾンハイム205号室の東向きの窓

なんの収穫のない休日が終わりを告げる。

現時刻0時00分03秒。雨。カーテン越しからでも確認できる雨滴の音。

薄暗い部屋で、一人で稲村は何も考えていない。

スマートフォンの光る画面を眺めるが、もう何も思い浮かばない。画面には顔も声も聞いたことのない、人々の作品が動いたり彩ったりしている。

何かを発している気がするけれど、それは至極一方通行だった。

そう思うたびに自身に今満ちているのが虚無だと思わされる。

元気出せよ、未来は明るい、そう画面から叫ばれても、素直には慣れなかった。

そして、何もしない日々の言い訳に利用した。素直ではないから、何もできなかったと。

いろんなことを言い訳にして、生きてきたとわかっていた。けれど知らないふりをして、日々を浪費してきた。

此処にあるのは、沈黙と多くの闇だけだった。

春になり、冬のように音は良く響かなない。

小さく流れる安眠用のBGMを安物のスピーカーは、籠った音を響かせて呑気に歌っている。その他の音はない。

いつもこのぐらいの時間なら、うとうととしだして眠りの中に沈むはずが、今日は落ちれない。

あくびはしきりに出る。スマートフォンをいじる理由も動く理由は消え失せているはずだ。

明日から始まる日常が、うんざりなのか。

なるほどそれは確かにある、スケジュールやアポイントの調整、人の顔色を窺い、意思疎通を交わさなければならない慌ただしく煩わしい毎日に戻るのだ。人間ができていれば苦にならないだろうが、稲村はその域に達していなかった。

不満を感じるが、明確には言葉に表せない、そんな毎日。


2.こどもの時の歌.

0時30分15秒。

そうだ、と稲村はあることに気が付いた。

引きこもり過ぎて声を出していなかった。

部屋から出ずに映画やネット、読書をしていたのだ。

かといって、いまから会話できる友人など皆無だ。一人ぐらしの難点だ。

外は雨、今から出る元気はもちろんない。

スマートフォンの電源を切ってから30分、眼を閉じて布団の中で目無理が来るのを待ったが眠れないでいた。

観念して、布団から抜け出すと台所へ向かう。

薬缶に火をかけ、しばし待機。

湯が沸いてインスタントコーヒーを作り、リビングのソファに腰かけた。

結局眠れるまで何を行うか、真夜中となれば行動の選択肢は数少ない。

読書、ネットで動画とかを見る、それぐらいだろう。

しかし、その夜は違った。

カフェインがそうさせたのだろうか、稲村は独り言を小声で語りだした。

しなだれかかる横になった格好で、鼻歌交じり、多少の韻を踏んで。

「ねえ、どうおもう。社会に出てから結構な時間が経ったんだよ」

そう口にしたが、稲村自身には実感が湧いていなかった。

「私は、何ができるようになったんだろ」

しばらく考えたが、頭に幾つか羅列したリストを否定した。何一つ、物になっていやしないと稲村は思ったのだ。

「なーんにも、理由がないや」

理由と口にすると、眼を少し開かせ目を泳がせた。

理由、理由、何の、何に対しての理由だと、答えが分かっていながら考えを巡らせる。

そして、不意に思いよぎったアンパンマンテーマを歌った。

サイコロの目は常に前に進む選択肢しかなく盲目的だ。

しかし、彩を添えるのは意思や当人が振った賽の目ではなく、止まったマスの文言だった。

今、稲村は振出しに戻っていると感じていた。

昔、何の気なしに触れていたものが重要な言葉を持っていたのだと、物心を持ったか持ち損なったか分からない大人になって、改めて気が付いた感覚は、長い間放って置いた本やパズルの形が少しだけ分かると少しの後悔めいた温かくも寂しい気持ちにさせた。


3.雨音

部屋の電気を消さずにコーヒーを淹れられたのは、稲村の夜目が効いていたわけではない。

街の街頭が窓の近くに配置されており、薄手のカーテンを閉めても薄明かりで部屋が照らされるのだ。

窓に水滴が打ち付けられ、水滴が線を描く。幾度も幾度も、点が増え、線となる。それが繰り返される。

雨は弱まる気配を見せない。木々が知らせる雨音は次第に早く、強くなっていた。

歌を歌い終わって、しばらく耳を傾けていた。

窓に張り付くような音が不規則に鳴る。

稲村は、雨滴が滴る間隔を測ることにした。

大粒、小粒、大粒、大粒、音がとめどなく降り注ぐ。

区切りなどなく、絶え間なく。

5分ほど耳を澄まして聞いていると、雨音が聞き覚えのある音に聞こえ出す。

さらに数分身動きせずに耳を澄ましていると、正体が少しだけ見えた。

雨音は、通信の音だった。映画やラジオ、トランシーバのような接続と切断の応酬であると。

何処の、誰の、何の為の伝えたいことなのかは解読していない。無論、稲村にはする気などなかった。

どういう内容なのだろうと空想する気分にはなった。

「調子はどうだい」

一つ目を独り言ちる。

「こっちは結構元気だぜ」

二つ目を再び口にする。

なるほど、上と下の関係は悪くはないようだ、と自身の空想に安心する。

だが三つ目の言葉が思い浮かばず、双方の通信内容の空想傍受を断念した。

眠気がまだ襲ってこない稲村は、仕方なくPCの電源を点けることにした。、

01時00分21秒。

画面に表示された時間に、稲村は眠気を覚えるどころか興奮をなぜだか覚えた。


4.眠り

昔の人は、どのようにして夜長を過ごしたのだろうかと考え、稲村は検索してみた。

調べてみると、寄り集まりなどので夜通し騒ぐこともあったとあった。

江戸時代から近代までの話であり、自身の身の回りには影も形もなかった。

もちろん稲村が現在住んでいるアパートにも、そういった集会など皆無だった。

数年住んでいるが近隣人の顔や名前すら知らない。

暗闇の中、PCに顔を照らされながら、このことに気が付くと稲村は少々胸がざわついた。

きっと近隣の人らも同じ気持ちになるだろうとも考えた。

薄い壁と鍵一つで区切られた四方八方には同じような不安を抱える人間が居るかもしれないと。

不安を感じた稲村は目を背けるために、動画を見ることにした。

気のまぎれる明るい、楽しいものが良いと、あれこれ探した結果、辿り着いたのは映画のワンシーンだった。

映画「雨に唄えば」の「Singin' In The Rain」。

至極月並みな選出だと稲村は思っていた。

だが、俳優の朗らかな笑顔、嬉しそうな歌声、見ていて釣られて動きそうになる軽やかなステップをぼんやりと見つめている内に、次第に稲村の感情は柔らかくなる。

そして稲村は思った。

突然、歌って踊りだしたくなるほどの出来事が起こって、そんなときに踊ることが出来たなら。

みんながみんな、そんな機会に恵まれたなら。

少なくとも自身が今夜感じたような不安が襲ってくることは格段に減るだろう、と。

稲村は小さく俯せになりながら画面を見つめて考えた。

01時30分21秒。

小さな寝息、稲村はようやく眠りに落ちた。

窓には雨滴が滴り続けてい、近くの木々の影が揺れている。

雷がいくつか落ち、部屋が一瞬照らされるが、眠りが覚めることはないようだ。

今まで一人で、こんな物語とか面白そうだ、いつか書いてやるとか、思い続けて実現せずに早20年経ってしまいました。なんてこった。重い腰を上げてなけなしのやる気を奮って、投稿させていただきました。

物語づくりはやはり難しく、当人の影響が出てしまうと感じています。

もっと面白いことを考えられる人間にならないと。

今後も色々書いてゆきたいと思っていますので、よろしくお願い致します。


2019.05.03 やすむ

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