歪
市を指定されていないエリアが存在する。
そして、ここは誰も踏み込んだ事は一切ないといわれる。
地図にも存在しない場所。
そして、この場所を知る者は異能力者以外にはいなかった。
しかし、その場に一人の真っ黒い服を着て フードを深く被り
口元だけしか露出しない者が 歩く。
「──この場所なら、可能ではあるのぅ。」
手を伸ばす、黒い革製の手袋をつけており
パッと開けると手のひらに、うっすらと見える風のような塊が出来る。
「─まだ・・・足りぬか。」
そうつぶやくとパンッ!と弾けて消える。
「・・・もう少し吸収が必要のようじゃな。」
そしてその者は歩いて消えていく。
-2-
B市1区間。
大勢のUmbrella部隊が道を封鎖して、巡回している。
「ねぇねぇ~たっす~ん。
いっぱーい来てるよ、政府の犬ども!」
一人の若い女性が一人の男の手首を掴んで揺さぶる。
眼の下に†の模様を刻んだ男。
TAS...皆はそう呼ぶ。
TAS「さぁて、どうしたものかねぇ。」
「岡崎はどこに行ったんだい・・・セリ。」
たすの手首を子供のようにしっかりとつかんでくっつく女性にニコッとしながら問う
セリ「ん~、分かんない!」
唇に人差し指を置いて、少し考えるも
手を下ろすと同時に満面の笑みを見せながら、明らかに何かをごまかす様子を見せた。
TAS「ハハハハ、わっかりやすいなぁ。
んまぁあいつの事なら大丈夫だろうね、俺とは同等の実力だし。」
-3-
Umbrella部隊の巡回兵が5人で道を歩いている。
その前から、一人の男が向かって歩く。
兵士は当然、不信感を抱き 武器を構える。
刀兵が2人とその後ろには銃兵3人
刀兵「おい、援護射撃を頼む。」
刀兵B「行くぞ。」
刀兵は鞘から出ている柄に手を添えて抜刀する準備をしながら
向かってくる男に 向かいながら歩く
刀兵「そこで止まれ。」
「止まらないと、銃弾をぶち抜くぞ。」
向かってくる男は案外すんなりと足を止める。
刀兵B「両手を上げろ!」
男は言われるがまま両手を上に上げる。
刀兵が男の場所へと徐々に近づいていく。
「....誰相手に指図してるわけ?」
刀兵「は?」
「あー、もう飽きた。
お前等の玩具になるのが飽きたって言ってんのよ。」
刀兵B「おい!手を下ろすな、撃つぞ。」
「あぁ?お前さ誰に命令してんの?」
刀兵が手を大きく振り上げる瞬間
3発の銃声が響き渡り。
男の体を貫いていく銃弾と共に 地面へと仰向けになって倒れる
刀兵「よし、最後は頭に突き刺せばそれでいい。」
刀兵B「俺がやろう。」
刀兵Bが倒れた男へと刀を抜きながら近づいていく。
そして突き刺す瞬間に
男の体全身から青い炎が すごい火力で燃え上がる
刀兵Bは咄嗟に距離を取る。
刀兵「な・・・こいつ!能力者か!?」
「フハハハハハ・・・Crazyに喧嘩売るって
お前等命知らずのバカ共かぁ?」
刀兵B「やるぞ!!!」
二人の刀兵は刀を抜き取って襲い掛かる。
体全身から放出される蒼炎。
両手の平に出かい塊を作り出し
両手を上に振り上げて、一気に振り下ろすと
蒼炎は球体を作りながら 放出され。
勢いよく爆発する。
─ドゴオォォォオッ!!!
刀兵二人は勢いよく吹き飛んで
銃兵の足元で体が止まる
銃兵「大丈夫か!?」
「てめぇの心配してろ。」
─蒼炎剣!!!
右掌に蒼炎が形を作り、燃え盛る剣を具現化し
飛び上がった男は落下しながら体を回転させて銃兵三人を回転斬りで 上半身を刎ねる
─ズバババァアアッ!!
「・・・ったく。」
全身に纏っていた蒼炎が 消える。
┬ ┬
能力:蒼炎鎧
┴ ┴
「おい、いつまでそこで見てんだよ茂地。」
茂地「岡崎はもう少し人の心を持ったらどうだい?
そんな・・・殺すことは無いだろう。」
岡崎「あほかてめぇ、元々こいつらが殺気むき出しにして
俺らの住処に乗り込んでくるからだろーが。」
茂地「真央の情報によれば、15人がここにのりこんできているみたいだけど。」
岡崎「ほぉ・・・」
茂地「・・・あっ」
「おいゴラァ・・・てめぇか?」
岡崎の後ろから威嚇しながら姿を見せる木島
岡崎「ん?お前誰?」
木島「其処に居る奴等殺したのはてめぇかって聞いてんだよ。」
岡崎「だったら何か用か?」
木島「あぁ・・・問題だ、大問題だゴラァ。
政府機関の兵士を殺したってんだからなぁ?」
茂地「・・・これは楽しめそうな気がするなぁ。」
岡崎「おい、茂地邪魔すんじゃねぇぞぉ?」
木島「・・・ぶちのめしてやらぁ。」
木島は両手首にあるボタンを押すと
両手から赤い炎のようなものを放出する
岡崎「便利なお洋服だなぁ。」
「疑似能力ねぇ・・・開発者はすげぇけど・・・本物には劣るぜ?」
木島「なめんなよ・・・てめぇ、ぶっ殺してやらぁ。」
木島は小刻みに飛び跳ねる。
格闘技のステップのようにビョンビョンと飛び跳ねる
岡崎「へぇ・・・おもしれぇえ!」
ニヤァと笑いながら能力を発動させて
全身に蒼炎を纏う。
「私も応戦しよう。」
その岡崎の背後から木島と挟むようにして
もう一人の男が姿を見せた。
木島「おい!!!相沢ぁ!邪魔してくれてんじゃねぇぞ!」
相沢「そう言っていられる状況ではないでしょうが。」
岡崎「2対1かぁ・・・それぐれぇちょうどいいハンディだなぁ。」
茂地「・・・。」
木島「んまぁ・・・俺がぶっ潰すけどなぁあああ!」
凄い脚力で足を踏み込み一踏みで間合いまで一気に詰め寄る。
木島「うるぁあああ!」
上体を捻って一気に押し出し
拳を振るう。
岡崎は首を横に傾けて攻撃を回避して
カウンターで拳を突き出し木島を一殴りして壁に吹き飛ばす。
─ドゴォォッ!!
岡崎「ギャッハハハハァアア!」
「いいねぇ、もっと楽しませろよぉ!!!」
相沢「・・・行きますよ。」
相沢も同じように両足首に突いたボタンを押すと
靴のつま先部分が鋭く尖って
靴底にも短い刃が出現する。
茂地「(足刃・・・脚術と武術のコンビかぁ
面白い戦いをしそうだねぇ・・・疑似的な能力と言えど面白い仕組みだね。)」
岡崎「ほぉ・・・お前の武器も面白そうだなぁ。」
相沢「伸びてませんか?木島さん。」
木島「ッペ・・・バカにしてんじゃねぇぞ。」
口にたまった血を吐き出し、口についた血を拭い
再びぴょんぴょん飛ぶ。
岡崎「フヒヒヒ・・・いいねぇ。」
両手と両足の蒼炎の量を倍増させる。
....ブォンッ!!!
茂地「(木島とやらの一発目の移動力を見る限り
足にかなりの力を送り込むのか、アレは疑似的な能力じゃなく彼らが来ているスーツか?)」
相沢「一気に畳みかけますよ。」
茂地「(もしスーツの力で飛躍した力を送り込んだとすれば
脚術を使うあいつは厄介かもしれないね。)」
二人は挟み撃ちをするようにすさまじい速さで岡崎に飛び掛かる。
武術で戦う 木島は
飛び上がり、落下する勢いを利用し一気に腕を振り下ろす 飛び打ちを繰り出す
岡崎は右頬を守るように、腕を畳、腕枕をするような形にして 木島の攻撃を受ける
想像以上の威力に 岡崎は後ろに押しやられてしまう
...ザザァアアッ!!!
茂地「(岡崎が・・・後ろに押された!?)」
その背後からは相沢が前蹴りを繰り出す。
岡崎は左手ではたき落とす・・・がその勢いで飛び上がりもう片方の足で前蹴りを繰り出す
〝二段蹴り〟
二発目の前蹴りを右胸に命中する。
靴底にできた短い刃がズブっと突き刺さる。
岡崎「ッ!!!!」
木島「ナイスだぁ!!!」
木島は体を落とし込み、浮きあがるようにして
下から突き上げる拳。
〝アッパー〟を岡崎の顎下に向けて放つ。
左手の甲を顎下に突き当てて掌で受け止めるようにする。
両足が地面から離れる
木島「これでどうだぁ!!!」
まっすぐに伸ばした強烈な拳を岡崎の顔面に命中させて
吹き飛ばす。
....ズザザァアアアッ!!!
相沢と木島が並び、構える
岡崎「あぁ・・・最高だねぇ。」
茂地「(あの岡崎が、追い詰められているのは久々に見た。
TASと実力試しした時以来か)」
岡崎「さぁて・・・俺も本気を出すとするかねぇ。」
相沢「先に・・・俺が攻撃を仕掛ける。」
「その次に木島が攻撃を仕掛けて、そっちに注意が言った瞬間に止めを刺しに行く。」
木島「あぁ・・・了解だァ。」
岡崎「さぁて・・・もう遊びはおしまいね。
長時間戦うのめんどくせぇんだよ。」
茂地「(こいつらには感じないだろうが
この圧を放つ岡崎は制御しきれないからね。)」
相沢「攻撃・・・開始!!!!」
相沢が先陣を切って走り出す
相沢「(恐らく・・・二人が打撃主義の攻撃、相手が行うとすれば
ガードだ・・・ここまで殴り続けていて相手は避けずに防ぐ手段を取る・・・
その理由も私の蹴り技を避けてしまえば次に繋げることが出来ない故にガードを選択せざる負えない
それを考えると今回もガードだろう・・・)」
一気に速度を上げて、間合いに詰め寄る
岡崎「(加速した?)」
右足を岡崎の外側を回しこむようにして中段に蹴りを入れる
つま先が尖っているために、岡崎の肉を斬っていく。
地面に足がついたと同時に体を回転させ、左足を軽く浮かせて
回転するその瞬間右足で飛び上がり、一気に岡崎の首元を狙い 蹴り上げる。
〝旋風脚〟
─ビュュンッ!!!
バックステップを繰り出し、相沢の旋風脚の二発目は空を斬る。
木島「それが・・・狙いだくそがぁ!!!」
相沢を跳び箱のようにして 飛び越えながら、
一気に拳を振り下ろす。
岡崎「お前等・・・学ばねぇなぁ?」
岡崎の背中から蒼炎が伸び、木島の背中を飛び越える。
真上から一気に振り下ろされる伸びた蒼炎が木島を叩きつける
─ドゴォォッ!!!
地面をへこませると口を大きく開け胃液と血を吐き出す木島
相沢「おい!!!木島ッ!!!!」
岡崎は飛び上がり、足を伸ばし
伸びた足は相沢の腹部をめり込み、相沢は勢いよく地面を滑り飛んで行く。
...ズザザザザァアアアアッ!!!
岡崎「さっきの威勢はどうしたよ?」
倒れる木島の髪を掴んで
持ち上げる
木島「ガァッ!!!」
岡崎「お前さぁ?」
「この俺に勝てるとでも思ったわけ?」
木島「ヘッ・・・よ・・・ゆうだばかーか!」
木島が体を動かす瞬間に、腹部を殴りつけて吹き飛ばす岡崎
....ズザザザァアアアッ!!!
相沢「木島ッ・・・大丈夫かッ」
木島「あ・・・あぁ、あの・・・能力が厄介だ。」
茂地「(あの二人の攻め方は悪くはない。
あの旋風脚がきれいに命中していれば岡崎も危なかっただろうな。)」
岡崎「んで・・・どうするわけよぉ。」
─蒼炎剣
右手に青い炎で剣の形を具現化させる
茂地「(終わったね。)」
一気に走り出す岡崎。
倒れるUmbrellaの特等二人に近づく寸前で
間に割り込むTAS。
─ピタッ!!!
と動きを止める岡崎は蒼炎鎧を解く。
岡崎「なに邪魔してんだ!!」
TAS「そろそろ時間だ。
遊びすぎちゃ行けないよ。」
木島「ふっ・・・ざけんなぁ!」
TAS「地面に寝そべってる奴がでかい態度を取らないほうがいい
惨めだぞ・・・?」
相沢「俺は・・・立っているぞ。」
相沢は壁に持たれながら立ち上がっていた。
TAS「全く・・・分からない奴だなぁ。」
手をグーにして、下から上にグイっと振り上げると
相沢はアッパーを喰らったように飛び上がって
背中から地面に落ちていく。
─ベチィィッ!!!
TAS「まったく。」
岡崎「おい、俺の敵とってんじゃねぇよ」
TAS「そろそろ撤退の時間だって言ってんだろ~?」
「行くぞ。」
TASは屋根まで飛び上がる。
岡崎も腑に落ちない様子を見せるが渋々屋根に飛び上がり
Crazy達は一瞬にして姿を消した。
Umbrellaの特等は地面に寝転がったまま気を失っていた。