FileⅤ.処刑人
3人は一つの机を囲む用に座り、沙耶に話を聞く。
淳「この世界は何?
見たところ家具も全てそろっているし」
沙耶「すまないけど、それは分からないの。
私もここにきて何もできなかったときに彼らの団体に救われた身。」
鬼瓦「だが、恩人である奴らと対立していたようにも見受けるが。」
沙耶は少し俯いてコップを強く握りしめた
沙耶「・・・彼らは〝処刑人〟と呼ばれる団体だったの。
能力を開花出来ない蘇生者はただの人間と同じ。
そしてあなた(淳)が戦ったそいつは、その人間の一人なの。」
淳「つまり、能力を開花出来ずに殺された?」
沙耶「正式に言えば、蝕まれた。」
「影人は死んだ人間の体内に入り込むことができるの。」
鬼瓦「それをするとどうなる?」
沙耶「聞いた話だから・・・詳しくは話せないけど
死んだ人間は彼らにとって〝器〟なの・・・つまり、その器がデカければデカいほど
彼らは強くなる。」
淳「・・・例えば鬼瓦さんにとりついたとしたらどうなるの?」
沙耶「あなたの力をそのまま利用できる。」
鬼瓦は背凭れに凭れ掛かりながら
頭の後ろに両腕を組む。
鬼瓦「んー・・・良く分からないな。」
「んで、その処刑人は一体何をしてお前は離れようと考えたんだ。」
沙耶「ある日、変わらずに私は単独で人影を駆除していたの。
そこに男女の一組が居て、私のフード姿を見るといきなり攻撃を仕掛けてきた。」
鬼瓦「ふむ。」
沙耶「私は殺さずに、無力化を図った・・・
でも、勝てなかったのよ・・・その男は私にこう言ったの」
─何故、殺す気も持たないお前が処刑人をしている?
沙耶「この言葉に私は応答することなく、質問に質問を重ねた。」
「〝処刑人〟って何のこと?って。」
鬼瓦「それでそいつを信じたというのか?」
沙耶「決定的な証拠があったのよ。」
「女のほうには能力があって、見た記憶の一部を周囲に再生させることができる能力。」
「そこには顔見知りのメンバーが無慈悲に人間を虐殺していた様を見せられた。」
淳「だけど、それすらを偽造できる能力もあるんじゃないのか?」
沙耶「能力を行使するれば気が周囲に放出されているの。
馴れれば何れわかるだろうけど、その気を感じたのは彼女からの能力のみだった」
淳「つまり、その処刑人ってグループがこの世界の黒幕か。」
沙耶「おそらく違うと思うわ。
彼らは飽く迄自分の能力を行使して弱者を狩る犯罪者集団よ。」
鬼瓦「・・・黒幕にはまだ届かないか。」
沙耶「処刑人は蝕まれた奴を下に着けて集団を作る。
その記憶がなくなった警備兵はその下っ端よ。」
淳「・・・そうか。」
鬼瓦は話を聞きながら、話を聞く淳をじっと眺めていた。
沙耶「spadeに属するKingは千堂 Queenの要 Jackの銀丸。」
「heartに属するKingは戸愚呂 Queenの鮫 Jackの夕凪」
「diaに属するKingはレイヴン Queenの一場 Jackの壱問」
「crabに属するKingはアレイ Queenのジェノス Jackであるさっき戦った月尾」
淳「数が多すぎるぞ・・・」
沙耶「これは飽く迄も隊の上層者、ほかには下っ端は数十人と構えているの。
そして彼らを束ねる2枚のjoker・・・あろく・あくろのツーコンビよ。」
鬼瓦「なるほど・・・そんな強敵からお前は一人で逃げるつもりか?」
沙耶「これは私が蒔いた種だからね。」
淳はふと席から立ちあがった
淳「それはさせないよ。」
「俺はもう無力じゃないし、君が彼らのやっていることに反したってことは
君は敵側の人間じゃない、人を守ろうとする意志がある。」
沙耶「・・・。」
鬼瓦「警備兵らしくなったじゃねぇかぁ。」
淳「共に戦ってくれないかな?」
沙耶「・・・でも、死ぬかもしれないのよ。」
鬼瓦「お嬢ちゃん、俺たちは常に死ぬかもしれない壇上で戦ってきたんだ
この世界でもそれは変わりはしねぇよ。」
淳「うん、だから一緒にこの街を築いてほしいんだ。」
沙耶「この街・・・」
淳「グリーンタウンを・・・俺は守りたい。」
─ドン!と机をたたきながら立ち上がる鬼瓦
鬼瓦「いいじゃねぇか!乗ったぜ!!!」
沙耶「・・・無理はしないで。」
「できる限りはサポートする。」
3人は手を出し合って、誓った。
そして再び席に着く。
鬼瓦「あっ・・・そうだ嬢ちゃん
Ⅰ式しか行使できないとか言ってたな、あれは何だ?」
沙耶「能力には主体があってそこから複数の派生が生まれるの。」
「こっちにきて。」
沙耶は2人を外に誘導する。
沙耶「見ててね」
沙耶は能力を行使して黒手爪を見せつける
沙耶「これはⅠ式・・・つまり主体なの
これで殴りつけるなり斬るなりすれば、それだけでも確かに強力」
鬼瓦「・・・俺で言えば火剣か。」
沙耶「Ⅱ式・・・黒針!!!」
黒手爪になった右手を振り下ろすと、無数の黒い針が前方一直線に吹き飛んでいく
沙耶「これがⅡ式。」
淳「つまり、スキルのようなものか。」
「最大それはいくつまであるんだ?」
沙耶「それは分からないけど、聞いたところによると
基本はⅢ式が限界みたい。」
鬼瓦「つーことは、火剣から更になにか産まれるのか。」
「そういえば淳、お前の能力は何だ?」
淳「はい・・・見ていてください」
淳は鞘に冷たい水色のオーラを集中させる。
淳「氷刀!!!!」
浮き出た柄を掴み、鞘から抜き取る。
鬼瓦「火と氷か!いいじゃねぇかぁ!」
沙耶「無駄に使いすぎると、体力を消耗して
戦えなくなるから気を付けてね。」
その言葉を聞いた瞬間能力を解除する。
鬼瓦「取り合えずは、この3人で今後何をするかだな。」
淳「・・・特に何もないですよね。」
沙耶「すべての民家から食料になるものと飲料になるものを
一つの場所に集めましょう。」
鬼瓦「確かに、そいつはいいかもな!」
「おい、淳・・・」
淳「はい?」
鬼瓦「お前が仕切ってみろ!」
淳「へっ!?」
二人の視線は淳を見つめていた。
淳「いやいやいやいや!僕警備兵ですよ!?
ふつうは教官がするものじゃないですか!?」
沙耶「でもねぇ・・・その教官があんたにやってみろって言ってんだからさ。」
淳「・・・じゃ、じゃあ・・・」
淳は鬼瓦には命令しずらいのか、言葉を詰まらせていた。
鬼瓦「ったく・・・どうしようもねぇなぁ。」
「んじゃぁ俺は力には自信があるからよぉ、食料を担当する
淳は飲料を頼むぞ、んで沙耶・・・お前は医療具を回収してくれ!」
沙耶「どこに集合するの?」
鬼瓦「グリーンタウンで一番でけぇ酒場だ!」
「そこをギルド本部とする!!!」
3人は各バラバラの民家を手あたり次第探り
3つのアイテムを 酒場に集めていく。
-2-
月尾「・・・アレイさん、沙耶は本格的に裏切ったようです。」
アレイ「・・・ふーん。」
─crab・King。
月尾「大変申し訳ありません。」
アレイ「気にすることは無いんじゃない?
アマが一人抜けたところで、支障なんてないだろう?」
千堂「だが、情報を掴まれている以上
野放しには出来んのも事実だが。」
─spade・King。
戸愚呂「・・・まぁ、結局はあろく様次第だ
我々がどうこう言っても仕方がなかろう。」
─heart・King。
レイヴン「王達は何処に?」
─dia・King。
千堂「・・・恐らく、休まれているのだろう。」
アレイ「月尾・・・アマの位置特定は出来ているんだろうねぇ?」
月尾「・・・淳という男と鬼瓦という男と共にA市2区のグリーンタウンに居ました
が・・・次の奇襲を恐れて別の場所に移動したかと思われます。」
壱問「それはあり得ないでしょう。」
「恐らく、そこを拠点にしていると思いますが。」
眼鏡を掛けて瞳孔を赤く変わった色をした男。
レイヴン「壱問・・・何故そう思うのか答えろ。」
壱問「僕の感ですけど。」
ニコっと微笑み、答える壱問
千堂「感に頼るなど・・・愚行だ。
入念に的確な情報を手に入れてから動くべきだ。」
壱問「んー・・・片付けてしまえばそれでいいと思いますけど。」
千堂が壱問を鋭くにらみつける。
それだけで場の空気が凍り付く。
壱問「じょ、冗談ですよ、怖いですねぇ。」
千堂「次は無い、発言に気をつけろ。」
-3-
淳「ふぅ・・・これで15件ぐらいの民家は回ったぞ。」
「後は・・・35件程か。」
淳は飲料を再び回収しに外へと出ていく
沙耶は一つの民家の中に飾られていた写真を眺める。
そこには満面の笑みで映る子供と夫婦
沙耶「・・・どうか、こんな腐った世界には来ないでね。」
そっとなぞり丁寧に元あった場所に戻し医療具を回収して
民家を後にした。
鬼瓦「・・・この民家だけで大体3週間ほどは持つ分の食料があるな。」
鬼瓦は大量に詰め込んで、背負い酒場に向かう。
3人はそれを幾度となく繰り返して5時間以上の時間を費やし
酒場に集まった。
淳「ふぅ・・・もうだめっ・・・づがれだぁ。」
淳は机の上にダラァと顎を載せてだらけていた。
沙耶は回収した物を全て収納して奇麗にしていく。
鬼瓦「ここは酒場件自宅ともあってな
風呂場もあるみたいだ、あせを流したければ流すといい、広いらしいぞ!」
淳「てか・・・なんで鬼瓦教官はそんなこと知ってるんですかぁ。」
鬼瓦「ここのマスターは何度か俺が面倒見ていたからな。」
「ガッハハハハ!」
沙耶「二人は元々知り合いだったんだね。」
淳「あぁ・・・俺が警備兵になる前まではこの人の下で訓練していたんで。」
鬼瓦「そうだ、こいつの昔話でもしてやろうかぁ!」
3人は淳の過去の話で盛り上がって時間をつぶした。