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じだんだ!  作者: ゆきだるま
2/2

コギャルにチクられて

 時間がかかるんですよ、男が女の気持ちわかるようになるまでは。


 何度もキモがられて、何度も馬鹿にされて、それでも女の子が大好きだから頑張るんです。


 隠れて酒飲んだり妄想でカキまくったりそれはそれはしょ〜〜もない気晴らしをしながらね。


 今回は人の話を盗み聞きしてるだけの回です。

「は? ……なんで?」

  

「面白そーじゃねーか!」


 確かに、顔も愛想も良い、ついでにぶりっ子臭い同じクラスの優等生が、学校外でヤンキー臭い奴とつるんでるのは確かに気になる、何か面白いことがありそうだ。


 だけどその気持ちはゴシップ的快楽、そーいうのに騒ぎまくるのってあんまかっこよくないから好きじゃない。


 誰々が〜、〇〇したらしいよ? みたいなことできゃっきゃして喜んで、それで誰かを傷つけて、更にはその傷を見ることからは可能な限り逃げる。そんなのめっちゃダサいからね。


「けどさー、それでなんかおもろいことあったとしてどーすんの? みんなに言うの? 聞いて聞いてあいつよー! みたいな? そういうのはダサいだろ、小物じゃん?」


「ちげーって、なんか面白そうじゃんよ?  ……それに俺にとって、あいつは特別なんだ」


「……え?」


 このスケベぇな野郎、性欲だけは人一倍強い癖に、誰かを好きだとかそういう浮ついた話は一度も聞いたことがない。……俺には言わないだけかも知れんけどね。

 

「なになに? 好きなの?」


 そんな男が初めて言う特別な女、……気になる。あれ、これもゴシップ的快楽? 違うよね? 友達は別だよね?


「いや、なんつーかよ?」


「うん……」


 悔しそうに下を向く雅人。俺の知らないところで車塚さんと何かあったのだろうか?


「……勃たねーんだ」


「は?」


 雅人はすーっと息を吸い込むと、


「勃たねーんだよ! 俺はよ? あらゆる女にチ○コを勃たせることが出来んだよ! 可愛い子はもちろん、ブスはブスで生々しいエロさを見出だせるしよ? ルックスだってSMの女王様みてーな派手なのから、地味〜な女までまた違った良さがあんだよ! それに俺はぶりっ子だっていける口だ! よく見られたくて自分のキャラを綿密に作る女なんてメチャエロいじゃねーかよ? ……けどよ、俺よ、あの女にだけは勃つ気がしねーんだ!   別に全裸にひん剥いてまんぐりがえしたことがあるってわけじゃねーが、そんなシーン想像したってチ○コはむしろ縮まるばかり。……ある意味あいつは生まれて初めて出会った俺のコンプレックスなんだよ」


 そう一気に捲し立てた。


「お、……おう」


 なんか、……聞いてごめんよ?


 まあ、雅人が言いふらす気がないのならいーかも知んない。……コギャルっぽい子も顔は可愛いし。





 ーー俺達は路地の角に隠れ耳を澄ます。


「……そんで〜、なんか最近キモいんすよ? ゆーくんが。ウチの話全然聞いてくんないってゆ〜か? なんかなよっちぃぅてゆ〜か? そのくせ人の話全然聞かないし、マジキモいんすよ?」



「ふーん……、とりあえずあんたそのだるーい喋り方やめなさいよ? なんか言ってる意味理解しにくいし」


「すんませーん、でね、他にも〜……」


 あの喋り方アレだよね? コギャル? みたいなやつ。って感じ〜、まじウケるんですけど〜、とか言いそう。


「へえ、……それってアレね? ストーカーってやつ」


「ストーカーってゆ〜か〜、ゆーくんマジキモいってゆ〜か〜」


「……アンタそれやめないといい加減しばくわよ?」


「す、すんません!」



 

 ーー車塚晶の中学でひとつ下の後輩だった”由美”は、近所の大学生”美園 裕太”にストーカーされているっぽいらしい。裕太は由美の学校帰りを待ち伏せたり、友達と遊んだ帰り道を待ち伏せされたり、基本的にいつも待ち伏せている。そしてちょっとどもりながら『た、たまたまだよゆみちゃん、で、最近どうかな?』とか色々聞いてくるとのこと。


 聞いてる限りちょっとしつこい男って感じだけど、本人的にはかなりキモいらしい。俺もストーカーとか言われんように気ぃつけなきゃ。


「ふーん、女って怖いね?」


「あのギャル……、そそるな!」


「え、そこ?」


 この男、ホントは初めからこの由実って子が目当てなんじゃないの?


「ま、俺もちっと自意識過剰なんじゃねーかとは思うけどよ? 女ってのはあんま無遠慮に近づいてくる男は怖えーもんなんだよ」


「そーいうもんかいねぇ」

 

 なるほどねぇ、ということは女に無遠慮に近づく度胸がはなからない俺なんか全然怖くないじゃん! 優しさの塊じゃん! なんでモテないの?

 


「……ふーん、ま、アタシに任せいてよ?」


「あざまーす!」



「んー、なんかよく見ないね」


「おい、あんま頭だすんじゃねーよ、バレんだろが」


 砂埃舞う廊下の角に俺と雅人は身を潜めている。ここはなんかボロいビルの中。多分もう使われていであろうことは掃除されていない埃っぽい内装から容易に察しが付く。


「んー、なんか探偵みたいだね?」


「いやいや、どー考えても変質者でしかねーだろ」


 俺たちは車塚晶の跡をつけてきていた。車塚晶はなんか広い部屋の中で仁王立ち。その部屋の中だけは漫画とかペットボトルとか落ちててなんかちょっと生活感がある。

 

「……くるぞ」


 雅人に言われ、廊下の向こうを見やると、しょぼくれた男が歩いてくる。こいつがきっと先程ストーカー扱いされていた男なのだろう。


 正直思ってた以上に面白い展開でちょっとワクワクしている。ゴシップに踊り狂う主婦たちの気持ちがちょっとわかるかも。


 男は部屋の中に恐る恐る入ると、腕を組み背筋を反らし男を睨みつける車塚晶を発見すると軽く頭を下げる。律儀か。


「……あの、君がその、由美ちゃんの友達の人?」


「アンタ、由美に二度と近づかないでくれる?」


「……へ?」


 いきなり言われ、オロオロとする男。


「アンタ、もう由美に付きまとわないでって言ってんのよ」


「……へ? つきまとうって?」


 男はキョトンとしながら聞き返す。全く意味がわからないって感じの態度。


「アンタはこんな小娘に何が出来る? とか思ってるのかも知んないケド、アタシを怒らしたらタダじゃ済まないから」


「いや、……あの」


 自分の質問はフルでシカトされ、ただ単に恫喝され男は困惑したまま固まってしまう。


 ……車塚さん、もうちょっとこの人の話聞いてあげようよ。


「ねえ? なんで黙ってんの? キモいんだけど? 死んでくれない? いや、いいわ、アタシが殺すし」


「ちょちょ! その、どうしてそうなるんですか? あの、話が全くわからなくて」


「ストーカーは黙って死んでりゃいいのよ」


「へ? ストーカー? 僕が? 由美ちゃんの?」


 男は、ズズイと歩みを進める車塚晶にビビりながら両手を前でフリフリする。


「いい? アンタのその言葉が、声が、顔が、存在のキモさが、由美を怖がらせたその罪を体で味わうがいいわ!」


 すっごいドヤった顔をした車塚晶は、右手で男の胸ぐらを締め上げる。


「わわ! うっ、その、く、……苦しいよ」


 胸ぐらを締め上げられる男のつま先は地面から離れている。持ち上げてるよ! この人片手で人間持ち上げてるよ!


「ちょ! やばい、やばくない? 車塚さんマジやばいね?」


 そうささやきながら振り向くと、雅人はもう10mほど先にある階段を降りようとしていた。


 読んでくださった方ありがとうございました。


 楽しんで頂いた方も、クソつまんねーから死ねよ? と思いながら我慢して読んで頂いた方も本当に感謝しております。


 もう抱きしめてチューしたいくらい! 


 え? キモい? ……ホントごめんなさいm(_ _)m


 それはともかくキモいって言葉ほど主観的なものって中々ないっすよね? もう完全に感覚ですもんね? 正義でも悪でもなく、キモい! ですからね?


 ひっでー言葉だなって思うけど、ある意味誠実な部分もあるとは思うのです、まあそれも使い方次第なんですが。


 だってほら、『お前は間違っている!』って言われたらブチ切れてオメーの方がおかしいよ! とか言っちゃうけど、『お前はキモい!』って言われたら無条件にシュンとしちゃうバワーがあるじゃない?


 それってどこか、そのキモいって気持ちを肯定しちゃってる部分が言われた側にも芽生えてるってことなんじゃないかな?


 だからさ、みんなあんま人にキモいって言わないでくれよ? 


 ……特に俺にはね。


 言わないで下さいお願いしますm(_ _)m

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