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一般人六人で異世界無双するそうですよ!?  作者: 宴帝祭白松兎
第三章 ファジネピア火炎舞う宵の謝肉祭
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第三章第十六話 これじゃあ汰空斗と過ごすあまいあっまーい8時間は紅葉のものかな


 「さてと。何事もなくツアーへの参加申し込みが済んだわけだが」


 9人の前に立った汰空斗たくとは後ろに連れているグリフォンに視線を向けた。


 「俺たち10人を乗せて飛ぶグリフォンの数は5匹らしい。計算上1匹に2人で乗るこ――」

 「紅葉あかね様! 私と一緒に乗りましょう」


 娘春こはるは紅葉の手を強く握りしめた。

 言うなればそれは、周囲の人間に対しての威圧。紅葉を他の誰にも渡さないと言う断固たる意思の表れなのだ。

 では何故今それが必要なのか、答えは明解。

 既に戦いの火蓋は切られていたからだ。

 自分の憧れる人と共に8時間を過ごしたいなら誰よりも先に行動せねば。

 汰空斗の言葉は戦いの始まりを意味していたのだ。

 となればそれを皮切りに、


 「私は姫燐きりんお姉様!」

 「じゃあ、俺鉄てつの兄貴!」


 他2人もすぐさま動き出す。

 ここで1人無言の孤々ここのは何をしているのかと言うと、当然紫草蕾しぐれの腕に絡みついている。


 「なんて言うかみんな、みっともないなぁ。同じパーティーメンバーとして恥ずかしいよ」


 そして1人優雅に微笑んで見せた。


 「ま、まさか孤々乃に言われるとは…………」


 娘春はふと我に帰ると自分の情けなさに肩を落とすのだった。


 「ちょっと待ってよ。後余ってるの汰空斗だけだじゃん」

 「彩葉いろはさん。ファイト! です」

 「俺と二人乗りは罰ゲームかよ」

 「い、いや別にそう言う事じゃなくて……」


 何か言いたそうに紅葉に視線を送る彩葉。


 「え? な、なに?」


 視線を感じた紅葉は前髪を気にしながらもぎこちなく返事を返す。


 「え? いいの? 私と汰空斗で」

 「え? 別にいいんじゃないの? そのくらい」

 「ふーん。そのくらい。ね?」


 彩葉は何故かにやけている。にやけながら頷いている。


 「意味深に言わないでよ。別に深い意味はないってば」

 「てへっ」


 彩葉はお決まりのポーズをとり笑ってみせるのだった。


 「盛り上がってるところ悪いが今出来上がったペアは却下だ」

 「な、なんでですか!」

 「よく考えてみろ。このペアじゃ、ペアごとの戦力がバラバラ過ぎる。仮に空中で戦闘が始まったとしよう。そうなるとまず、俺と彩葉に攻撃手段はない。それに鉄とげんのペアは近距離以外の攻撃方法を持たない。もちろん、姫燐もだ。それを踏まえた上で考えると、空中でもまともな戦闘ができるのは紅葉と紫草蕾、孤々乃くらいだろう。ならその3人をもっと有効に配置するべきだ。ただ、娘春と花蓮かれん。俺はお前らのリベレイションについては知らねぇから考慮には入れていない」

 「一応言っておきますけどマジックなら私も花蓮も使えますよ」

 「ならなおさらペアを変える必要が有るだろう。この際だから聞くが、お前ら2人のリベレイションはマジックだけか? あと属性は?」


 汰空斗は鞄からボールペンと手帳型メモ帳を取り出し、慣れた手つきで白紙のページを開いた。


 「花蓮は土属性のマジックとエンチャント。私は水、雷属性のマジックとアタックが使えます」


 メモし終えた汰空斗はペンを一度ノックしてメモ帳の裏表紙に挟む。そして2ページほど前と今しがた書いたページを交互に見比べて頷く。


 「なるほどな。そうなるとペアは──」

 「却下です」

 「まだ何も言ってないだろ」

 「ですからペアの解体そのものに反対なんです」


 紅葉の服の裾をそっとつかんで行動でも反抗を見せる娘春。


 「まあまあ、落ち着いてよ。春ちん。春ちんだって汰空斗の心配もわからなくはないでしょ?」


 紅葉は少しばかりピリッとした娘春の頭に手を置いてやんわりとなだめた。


 「は、はい。まぁ、わからなくはないですけど……」


 そのまま紅葉が頭を撫でると頬を染めながら弱々しい声音になっていく。


 「うん。そうだよね。だけど私、春ちんの気持ちもそうだなぁ。って思うの。だ・か・ら。ここは間をとってくじでペアを決める。なんてどうかな?」

 「すまん、紅葉。それはどこをどうしたら間をとってることになるんだ? むしろ俺の意見も娘春の意見も両方取れてないぞ」


 汰空斗意見の場合、今よりもさらに偏った編成になるかもしれない。それに娘春の意見にしても娘春が紅葉とペアになれるかどうかも定かではないのだ。

 どちらの意見にしても運に左右されるので、間を取れているとも取れていないともいえるだろう。


 「あれ? でもそれならそれでどちらにも平等だし、汰空斗的にも春ちん的にもよくない?」

 「……紅葉様がそうおしゃるのなら」


 そう言った娘春の手がゆっくりと紅葉の服の裾から離れた。


 「俺はよくないんだが」

 「だとしてもせっかくなんだし、普段とは違う組み合わせも面白いでしょ? っていうわけで汰空斗、紙もらうね。あ、あとペンも借りるよ」


 普段はまったくリーダーとしての務めを果たさない紅葉だが、こういう時にだけリーダー権限を行使し場を押し進めてしまう。

 しかも納得していない汰空斗などお構いなしに勝手に鞄を物色した挙句、有無を聞かずに紙とペンを取り出す始末だ。


 「なんと言うか、紅葉さんって結構アバウトっすね……」

 「実はそうでもないのだよ、げん少年や」

 「な、なにがっすか? 彩葉さん」


 突然意味もなく年寄り口調で話し始める彩葉。肩を叩かれた監は対応に戸惑ってしまう。

 だがそんなことを気にもとめない彩葉は、傍らで紙を小さくちぎっている紅葉を見て続ける。


 「これは作戦だよ。紅葉、くじ運すごいからねぇ。これじゃあ汰空斗と過ごすあまいあっまーい8時間は紅葉のものかな」

 「だ、だからそんなつもりないってば! すぐ変なこと言わないでよ」


 ちぎった紙に数字を書く作業をしていた紅葉は思わず力が入り紙を破いてしまった。


 「もう! 彩葉のせいだよ!」

 「きゃはっ」


 頬を染める紅葉を見て笑う彩葉。その笑顔がこの上なく幸せそうなのだから紅葉に同情してしまう。


 「ねぇ、孤々乃ちゃん」


 監に始まり、次に紅葉をからかったと思えば今度は孤々乃の元へと歩みよった彩葉。

 そこまで暇なら紅葉の手伝いでもすればいいだろうに。


 「はい。なんですか?」

 「孤々乃ちゃんはペア替えに納得してたみたいだけど紫草蕾と乗れなくてもいいの?」

 「いいえ。そんなことなかったですよ。正直汰空斗の意見が通るかもって時は焦ってましたし。けど、結局くじ引きになってよかったです」

 「まぁ、くじ引きならまだ可能性は残ってるしね」

 「いえ。くじ引きなら僕と紫蕾草様が離れることはないんで」 

 「そ、その自信はどこから……」

 「え? どこって彩葉はさんには見えないんですか? 僕と紫蕾草様をつないでいるこの赤い糸が」


 孤々乃は自信満々に左手薬指を立てて見せるが当然、彩葉にはそれが見えない。


 「ん?」

 「あ、あれ? ほんとに見えませんか? ほらこっちにも」


 今度は紫蕾草の手を取って自分の手と並べて見せる孤々乃。


 「ご、ごめん。見えない。私がおかしいのかなぁ?」


 それでも見えない彩葉は目を何度もこすってみるがやはり見えない。


 「ふふっ。冗談です」


 ここでようやく暇を潰す気で歩み寄った孤々乃に、逆に弄ばれていたことに気がついた彩葉。

 ミイラ取りがミイラになるとはまさに今の彩葉のことだ。


 「で、ですよね〜。よかったぁ」

 「ですが私と紫草蕾様がペアになるのは本当ですよ? ね? 紫草蕾様」

 「…………すごくそうなってほしくないんだけど、どうしてかそうなる気しかしないんだよね。どうしてかな? 彩葉」


 紫草蕾の憂に浸った目が開いてはいけない悟りを開いてしまったそれにしかみえない。


 「わ、私に聞かれても……」


 これ以上ここに居座ったら危ない。そう思った理由は特にないのだが、おそらくそれが本能と言うものなのだろう。

 そしてその本能にいわれるまま自然と後退してしまった彩葉。

 ただ最後に、紫草蕾の未来が明るい事を祈って————




 数分後、くじを引き終わった10人がペアごとに分かれていた。


 「まぁ、やっぱりこうなったよね……」


 紫草蕾は相変わらず右手が自由に動かせないので左手で頭を抱えた。


 「はい。完璧ですね」


 その横で満足気に笑う孤々乃とは対照的に、苦笑いすら浮かべない紫草蕾。


 「おつです……」


 そんな紫草蕾を小声で労った彩葉は何事もなかったように、そっと視線を逸らすのだった。


 「まぁ、こっちもこっちでやっぱりだよね」


 気を改めた彩葉は、汰空斗とペアになった紅葉に明るく声をかけた。


 「べ、別になりたくてなったわけじゃないってば! たまたまくじ引きでこうなっただけだから!」

 「うんうん。大丈夫、わかってる。わかってるよぉ」


 彩葉はまたも頬が赤くなっている紅葉をにやけながら撫でる。


 「も、もーうぅぅ」


 抵抗する気力もないのか、紅葉は彩葉にされるがままだ。


 「か、可愛いぃぃ……」

 「でしょ! ほらほら、娘春ちゃんもこっち来て一緒に愛でよ?」

 「え? い、いいんですか?」

 「抵抗してこない紅葉なんて今しかないよ? 愛でないのは損だよ」


 先ほどまで9人をまとめていたリーダーがまるでペットのように扱われてしまっている。

 ただ、もとより威厳など一切ないことが唯一の救いだろう。


 「で、では遠慮なく……」


 恐る恐る手を伸ばす娘春。


 「ふ、ふわふわ……」

 「ね。いい毛並みしてるでしょ?」

 「…………は、はい」


 今の娘春には彩葉の『毛並み』っと言う表現にツッコミを入れられるほどの余裕はない。

 ただ手のひら全体の暖かくふんわりした感覚と指の間を滑るツヤツヤで滑らかな髪の感覚。そして鼻腔を満たす甘い香りに酔いしれて頭がまったく働かないのだ。


 「……なんで頭を撫でてるだけなのにこんなに幸せな気分になるのでしょう」

 「それはね、可愛いは正義だからだよ」

 「そうなんですかぁ……」


 そうしてしばらくは、彩葉も娘春も無言のまま紅葉を愛で続けていた。


 「…………い、いつまでそうしてるのさぁ。私、これでもリーダーなのにぃぃ」


 紅葉は未だに赤いままの頬で少しばかり拗ねてみせる。


 「はっ。す、すいません!」


 腰を直角に曲げて謝る娘春だが、彩葉はただ理不尽な言葉を返す。


 「可愛すぎる紅葉が悪いんだよ!」

 「り、理不尽……」


 率直すぎる紅葉の感想に反応することなく彩葉は次のペアに視線を向ける。


 「で、問題はここからだよね」


 今までなるべく気にかけないようにしてはいたが、それでもいつかは正面からぶつかって解決しないといけないこともある。

 その問題と言うのは彩葉の視線の先にいる2人、鉄と姫燐ペアだ。


 「まさかこの2人がペアになるなんてねぇ」


 あの姫燐が広大な芝生の上で膝を抱え縮こまっている。

 そのなんともシュールな光景を前に彩葉でさえどう言葉をかけるべきか悩んでしまう。

 とりあえず近くにしゃがみ込むと、姫燐に肩を掴まれる。


 「い、彩葉……私を…………私を殺してくれ……」


 だがその手は彩葉ですら簡単に振り払えるほど弱々しい。


 「いやいや……」

 「いくらなんでも8時間は限度を超えてる…………死んだ方がマシだ……」

 「ちょ、姫燐。何もそこまで言わなくても」

 「いや、無理だ。私とあいつが8時間という永遠にも似た時間の中、平和に過ごせると思うか?」

 「ま、まぁそれは……」


 冗談でも否定できない彩葉は苦し紛れに鉄に視線を逸らす。

 その鉄はというと、少し離れたところで軽く準備体操をして体をほぐしている最中だ。


 「なぁ、彩葉。私が乗るグリフォンはどのグリフォンだ?」

 「え? 急になんで?」

 「おそらくだが、私とあいつを乗せて飛び立つグリフォンはもうここに帰って来ることはない。ならば先に謝っておいた方がいいだろう」

 「…………」


 諦めないで。

 そんな言葉をかけることすら無責任に思えてしまって声が出てこない。

 結局どうすることも出来ず困り果ててしまった。

 そんな時だ。


 「その心配は無用だな」


 鉄が2人の前に現れ断言したではないか。


 「お前に心配はなくとも私にはある。お前が何をしようと飛び立って数分で墜落するだろうからな」

 「普段のお前の言葉を借りて言わせて貰うが、馬鹿だな。お前」


 姫燐が言葉を返すことはないものの眉がピクリとした。


 「俺たち2人が乗るとグリフォンの方が危ない。なら答えは簡単だろ」

 「そうだよ。ここは無理せず——」

 「決闘だ」

 「え?」


 彩葉が言おうとしたのは無理せずペアを交換しようということだ。

 しかし、どうやら鉄の考えは違ったようだ。


 「どちらか勝った方が1人でグリフォンに乗る。これなら問題ないだろ」

 「なるほどな。馬鹿にしてはいい提案だ」


 姫燐は近くに置いてあった刀を握りしめ立ち上がった。


 「いや、よくないでしょ。それ負けたもう1人はどうするのさ?」

 「もちろん、置いていくに決まってるだろ」

 「馬鹿は鉄の方だよ。私が鉄と変わってあげるからそれでいいでしょ?」


 よくもそんな案で姫燐を馬鹿にしたものだ。

 彩葉は呆れながらも姫燐の手を取った。


 「い、いいのか!?」

 「うん。これが一番丸く収まるでしょ」

 「ちなみにだが彩葉のペアは誰だ?」

 「娘春ちゃんだよ」


 彩葉は振り返ると離れた場所でこちらを眺めている娘春に手を招いた。

 すると首を傾げながらもこちらに駆けて来る娘春。


 「どうしました? 彩葉さん」

 「えっとね。誠に恥ずかしながらうちの鉄と姫燐の仲が良すぎて一緒にグリフォンに乗りたくないんだってさ。だから、悪いけど私と鉄を交換してもいいかな?」

 「よくわかりませんが、わかりました。私が鉄さんと乗ればいいんですね?」

 「うん。そゆこと。ありがとね」

 「いいえ。では鉄さん。よろしくお願いしますね」


 律儀に一礼する娘春。


 「おう」

 「では鉄さん。早速ですが、これからグリフォンに挨拶しに行きましょう」


 なんの気なく鉄の腕を取って歩き出す娘春。


 「お? お、おう」


 鉄は割と長い時間娘春と一緒にいるが大して会話を交わしたことがない。ほぼ初対面とも言っていいくらいだ。

 そこには普通、見えない壁が存在するのだが何故か娘春にはそれがないように思える。


 「なぁ、彩葉。なんで私となんだ? 馬鹿と一緒だなんてあのちっこいのが可哀想だ」


 それよりも出会って4日目にもかかわらず『ちっこいの』扱いの方が可哀想だ。


 「ちっこいのって……ていうかそれ、私なら可哀想でもいいってことじゃん」

 「そうではない。ただあのちっこいのよりはマシだろう」

 「まぁね。でもさ、紅葉も言ってたでしょ? 普段と違う組み合わせも面白いって。だからだよ。姫燐と娘春ちゃんよりも新鮮味があるでしょ?」

 「なるほどな。お前らしい」

 「まぁね。じゃ、私たちも行こっか」


 歩き出した彩葉の先には既にグリフォンに跨った8人の姿があった。



あけましておめでとうございます。

そして今年もよろしくお願い致します。

せっかくの挨拶なので何か他にも言いたいんですけど特に言うことが思いつきません。

ただ今後ともこの「一般人六人で異世界無双するそうですよ!?」をよろしくお願いします。と言うのと新作の制作も始めているのでそちらもよければ読んでみてくださいね。

とは言ってもいつに投稿できるのかわかりませんが……結構まとまった量かけたら揚げます。


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