大神殿への帰還・神々の戸惑い
「ふぅ……。とりあえず、お前の眷属達への指示は出し終わったが、まだ面倒事は終わってない、と」
「すまない、ソル……、皆。己の守護地で起きた問題を自分の手で始末も出来ないとは……、私は、私は……、いっそ今すぐに消えてしまいたいっ」
「はぁ……。お前が消えたらさらに困る事態になるだろうが」
創氷の地で起きた騒動。無事に収束したのはいいのだが……、真面目過ぎるリュシン・フレイスの面倒な暴走が、ソリュ・フェイトにとっては頭痛の種だ。
こういう生真面目なタイプは、小さな罪も大罪レベルで自身を苦しめる毒とするだろう。
リュシン・フレイスの神殿にて、客室にあるソファーに腰を下ろしていたソリュ・フェイトは、疲れきった溜息を吐き出しながら、運ばれてきた茶に口を付けた。
「で? 結局、民が争う事になった原因は、あの体内にあった黒い靄のようだが……、トゥレーナ・ツァルト、あれは一体何だ?」
はじまりの神々が誕生して長いが、……今までに一度も、あんなものは見た事がない。
人が抱く負という感情から生み出される悪しき力になら心当たりがあるが、それはあくまで、思考と感情を抱く生命が人生を歩む上で、多少なりとも生んでしまうものだ。
それとも違う、人を狂わせる原因となった、正体不明の力……。
今わかっている事は、この世界の者達にとって、望まれていないものだという事だけだ。
窓辺の側にある壁に額をぶつけながら暗くなっているリュシン・フレイスの方を見やった若草色の女神は、憂い気配を纏いながらこう言った。
「あれは……、人も、動物も、生命在る者全てを惑わし、破滅に導く存在です。触れてしまえば心を食われ、誰かを傷付けにはいられなくなる、恐ろしい力……。負の感情から生まれるその力よりも、さらに色濃いもの」
「僕達で消滅させる事が出来たけど、もしかして……」
「また、生まれちゃったりするの……? トゥレーナ姉」
「一応、私達の干渉によって消滅してからは、新たに生まれる気配はないようですが……。これからの経過を見てみないと、何とも。申し訳ありません、ソル……」
申し訳なさそうにソリュ・フェイトへと頭を下げた女神だが、彼女はよくやってくれている。
この世界を愛し、数多の生命や存在に心を配り、その研究心で成果を出してくれている彼女のお蔭で、今回の騒動を収束させる事が出来たのだから。
その礼を告げたソリュ・フェイトは、さらに罪悪感をグレードアップさせて落ち込んでいる男神の傍へと近付き、力強い手刀を叩き下ろす。
ダメージを受けた苦痛の声が漏れ聞こえ、ほんのりと涙を浮かべたリュシン・フレイスがこちらを向いた。「うぅっ……」と、必死に自分を押し潰そうとしてくる感情を堪えている顔が、何とも言えない。ぽん、と、生真面目な男神の肩に両手を添え、尋ねる。
「これから、各地で同じ異変が起こっていないか調べる予定だが……、お前の地で今日の事が起こる前、何か前兆みたいなものを感じたりはしなかったか?」
ガルヴァの地で起きた異変もまた、民が血塗れた争いに発展するようなものだった。
(鈍感気質なガルヴァは、あの石が地上に顔を出すまで何も感じず、民が争い始めてから、ようやく動いた……。だが、シンならば、何かを感じていたはずだ。異変に繋がる何かを)
「特に、不穏を感じるような何かは……」
「決定的な何かでなくとも構わん。少しでも気になった事があれば話せ」
「……何か、何か、う~ん……、うぅっ、う~ん」
一体どこまで記憶を遡っているのかは不明だが、リュシン・フレイスの顔は渋面となり、非常に焦れったい時間が五分ほど過ぎた。
無理か……。そうソリュ・フェイトが諦めかけたその時。
『……、……し、て、……だ、れ、……か』
「ん? ……何だ、今の声は」
「ソル兄様、どうしたの~? シン兄様の胸倉掴んだままキョロキョロしちゃって」
「少し黙っていろ」
今、確かに何かが聞こえた……。途切れ途切れな音だったが、小さな子供の声が。
不思議がっているレヴェリィ達を静かにさせると、ソリュ・フェイトは神経を研ぎ澄ませ、室内に意識を澄ませた。
外からではない……。かなり、近くから聞こえた。
「ソル……、一体どうしたんだ?」
「……また、聞こえた」
「私には何も聞こえませんが……」
「僕も~」
「オレも……。オレ達以外の音なんて、何も」
自分の目の前にいるリュシン・フレイスにも視線を向けてみるが、皆と同じだと首を縦に振られてしまう。試しに窓を開けて、日差しの降り注ぐ庭を眺めてみたが、やはり、誰の姿もない。
「ソル兄……、疲れてるんじゃないかな?」
「うんうん、さっきの騒動のせいで、気疲れしちゃったんだよ、きっと」
「ふぅ……、気のせいだったようだな……。すまない、戸惑わせた」
意味のわからない騒動を目の当たりにし、その収束の為に気疲れをした事は事実だ。
神に身体的な老いも寿命もない自分が、幻聴を覚えてしまったとは……。
らしくもなく、ソリュ・フェイトの唇からは自嘲の笑みが零れる。
「とりあえず、大神殿の方に行くとするか。この地で起こった異変に関する話し合いもせねばならんし、下手をすれば、また連続して大騒動が起こる可能性もある」
「干渉方法はわかったのですから、何か起こったとしても、それがたとえ、各地で同時に発生したとしても、十二神全員が力を合わせれば、すぐに対処にあたれますね」
「あぁ……。だが、不測の事態も想定し、全員、気を抜かずに事にあたれるように心を定めておいてくれ」
「りょ~かい!!」
「うん……」
「わかりました」
「了解した」
創氷の地に同じ異変が起こるか、それはリュシン・フレイスの眷属に監視を任せているから、何かあれば、すぐに連絡が入るだろう。
先日の『赤い石』をきっかけに起こった一件といい、今回の件……。
(この世界が生まれてから千年……、その間にも色々とあったが、また今回も頭を悩ませる事になりそうだな)
大神殿に戻る前の僅かな休息を過ごすと、ソリュ・フェイト達は大神殿へと戻った。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「おやおや、それはまた……。厄介な新参者が現れてしまったものですねぇ」
大神殿に帰還し、今度こそ十二神が勢揃いした最奥の間。
それぞれの神を意味する紋様が蔦のように絡み合った光のテーブルを囲み、創氷の地で見たものを説明し終えると、黄昏の夕陽色を纏う髪の男神が、くすりと笑みを零した。
笑える部分などひとつもなかったのだが、この男神……、人々の間では医術の神として信仰されている、トワイ・リーフェルにとっては、また面白い事が始まったというところなのだろう。
「トワイ・リーフェル、地上の民が大勢死んでいるのです……。そのような態度は不謹慎ではありませんか?」
「ふふ、それは申し訳ない。けれど、俺にとっては、永い時の中での退屈しのぎのひとつなんですよ。この世界の在り方や、地上の民が起こす下らない諍いもねぇ」
どちらも、この世界を形作る存在や生命に対して、特に強い興味を抱き、観察を続けている者同士だが……、見ての通り、根本の考え方や価値観が違う為、顔を合わせると必ず口論へと発展する二人だ。
人々の生命を尊いと想っているトゥレーナ・ツァルトが、自分の斜め前の方に座っている男神を睨み付けながら奥歯を噛み締めている。
(まぁ、……フェルの場合は悪趣味な冗談も多いが、やる事はやっている)
トゥレーナ・ツァルトは絶対に呼ばないが、一部の神々は彼の事をフェルと愛称で呼んでいる。
地上の民を愚かだと嗤いながらも、神として導きの役目を果たしているトワイ・リーフェル。
その毒を含む嘲笑と物言いとは裏腹に、彼は神としての道を踏み外すような真似はしていない。
民が神殿にやって来れば、その悩みを解消する為に手を貸しているし、その為の行動も果たしている。たとえ、心の中で何を思っていたとしても……。
その事を把握しているソリュ・フェイトは、トワイ・リーフェルの事を心中でこう評している。
――狐、と。神々に見せる顔と、民に見せる面が違う事が由来だろう。
「お前達、喧嘩をするなら外に行け。それと、フェルは言葉に気を付けろ。流石に注意をするのも疲れてきた」
「おやおや、すみませんねぇ。生まれつきこうなので、どうかご容赦を。一の神兄殿」
「申し訳ありませんでした、ソル……」
相反する二人の神を諫めると、ソリュ・フェイトは他の神々にも尋ねてみた。
何か、自分の守護する地において、奇妙な異変はないか、と。
けれど、彼らの口に上るのは、今回のような類とは違うものばかり……。
この五千年程の間に起きたものと似通った話ばかりだった。
つまり、今のところは、他の場所は大丈夫だという事だ。
(だが、神々が気付いていないだけで、何かが起こりかけている可能性もあるが……)
神々の間に重苦しい沈黙が落ちる。
歓迎出来ない新しい存在……、万が一、また同じ地で、いや、他の場所でもそれが芽吹いたとしたら、それが、これからもずっと頻繁に発生するものだとしたら。
「……各自、どんな些細な事にも注意を向け、地上に心を配ってくれ。今までは問題が起きた場合や必要な場合にのみ、この大神殿に集まっていたが、今後は、一ヶ月に一度の集まりを義務とする。異論はあるか?」
同意の声が重なると、今度はガルヴァの地で回収した赤い石についての話し合いが始まった。
突然地上に顔を出し、人々が争いを繰り広げるきっかけとなった、奇妙な、宝石のような、石。
光の円卓が消えると、巨大な赤い卵のような石がその場に現れた。
「クンクン……。あぁ、やっぱりだ。この前よりも、匂いが強くなってるぞ」
赤い石に近寄り、獣的な仕草で何かを嗅ぎとったガルヴァが、また首を傾げる。
匂いに関しては、ソリュ・フェイトを含めた他の神々はよくわからないようだが、末神の鼻は信用出来る。野性的な意味で……。
興味津々といった様子で、トゥレーナ・ツァルトが近付いてみるが、それよりも早くに、彼女の天敵であるトワイ・リーフェルが一歩先に出て、石に触れた。
「ふむ……。表面は地上の鉱山で採掘されている原石を加工したかのように透き通っていますが、中身の奥の方はよく見えませんねぇ。これは興味深い」
「う、迂闊に触れるのは良くありませんよ、トワイ・リーフェル」
先を越された事を悔しがっているのか、若草色を纏う女神は咎めるような気配を含ませてそう言った。しかし……、これもいつもの事だが、
「あぁ、ご心配なく、心優しき女神殿。俺は危険な物には人一倍、いや、千倍程敏感ですから、触れていいものかどうかは、すぐにわかるんですよ。はっはっはっ」
「ぐっ……。そ、そうですか。それは、余計なお世話をいたしました」
見事に毒を倍返しされたようだ。
のほほんと笑顔でトゥレーナ・ツァルトに向けた音には、「黙れ、偽善者女神」と、確実に嫌味が含まれていたと思う。
その光景を他の神々と視界に映しながら、また全員がやれやれと息を吐く。
「トゥレーナ姉様の神殿に、さ……、あるよね。……フェル兄様の名前が書かれた、なんか変な血みどろの人形。すっごく大きかった」
「あったね……。オレも前に見た事あるよ。トゥレーナ姉が、フェル兄への罵倒連打で……、人形に木の杭を刺しまくってたところ」
「お前達……、それは本当か?」
流石にそれは知らなかった。幼子の姿をしている兄弟神の隣で、ソリュ・フェルトがひくりと恐怖に引き攣った。リュシン・フレイスの方は……、あぁ、また凄まじく青ざめて、微かに震えているようだ。恐らく、若草の女神に対するイメージが一瞬でぶち壊されてしまったのだろう。
どれだけの時が経ってもわからない事はある。そんなしみじみとした言葉が、彼らの頭の中によぎった。
「……ソル、これ、生きてますよ」
「何?」
トゥレーナ・ツァルトと同じく、研究職のような事もしているトワイ・リーフェルが、ぽつりと零した。……生きている? この赤い石が?
眼鏡の奥で強い好奇心の光を強めた夕陽色を纏う男神は、コンコン、と、赤い石を小突く。
「正確には、生きている何かを、この石が包み込んで守っているんですよ。見かけどおり、まさに卵そのものだ」
「どういう存在が中にいるのか、わかるか?」
「それは、これから調べなければ何とも、といったところですかねぇ。まずは簡単な干渉を仕掛けてみながら、中身を調べてみますよ」
ならば、トワイ・リーフェルに任せてみるか。
巨大な赤い石の中を見つめながら両腕を胸の前で組んでいたソリュ・フェイトが、彼に一任する言葉を発しようとしたその瞬間。
「なら、私も一緒にやりましょう。この神だけに任せておくのは、危険ですので」
「ははっ、大嫌いな俺の傍にいたいなんて、もしかして……、本当は好きの裏返しですかぁ?」
「おほほほっ、貴方のような男神を好きになる方なんて、この世界のどこにいるのでしょうね? 必要がなければ記憶からでも抹殺してしまいたいと思っていますのにっ」
「おやおや、ツンデレってやつですか? あぁ、俺も貴女のような女性はぜんっぜん、好みじゃないので、全力でお断りしますが。土下座して頼むなら、百年くらいなら付き合ってあげますよ?」
やっぱりこうなった。また全員の頭の中でげんなりと声が重なった。
……だから、喧嘩をするなら時と場所を選べと。
(はぁ……、誕生から今日まで……、仲は深まるどころか、親の仇以上の面倒さになっているな)
どんな嫌味や毒を塗りたくって攻撃しようが、勝てないとわかっているだろうに。
一度この二人の関係性の修復案……、いや、元から仲が悪いのだから、修復という言葉はおかしいか。ともかく、二つの件が落ち着いた頃を見計らって、少しでも仲が良くなるように神々の統括者として努力を……。ソリュ・フェイトが本気でそう考え始めていたその時。
「――っ。な、なんだ?」
「どうした、シン」
自分の左側に立っていたリュシン・フレイスが、自分の右手の中指に嵌めていた指輪を凝視している姿が、ソリュ・フェイトの目に映った。
深い青色の宝石に、銀色の装飾が施されている指輪……。
「お前、そんな物、着けていたか?」
「あ、あぁ……。三日前に、民から献上された品だ。俺のイメージに合うからと、氷樹の近くで掘り出された石を指輪にしてくれたんだ」
ぎゃんぎゃんと響いてくる二人の喧嘩を無視し、リュシン・フレイスが身に着けているその指輪を観察してみると、……何やら黒く淡い光が宝石の中に宿っているのが見えた。
その光は徐々に大きくなってゆき、ソリュ・フェイトとリュシン・フレイスが顔を近付けて同時に声を上げた瞬間、とんでもない異変が起きた。
「な、なんだこれは……!!」
異常事態に大声を上げたリュシン・フレイスが自分の中指から指輪を引き抜くと、それは地に叩き付けられる前に、宙へと飛び上がる。
そして、青く透き通っている宝石の中から黒い光を帯びている靄が溢れ出し、神聖なる十二神の間を覆い尽くした。
「ちょおおっ!! 何なんだよ、これぇ~!!」
「げほっ、こほっ、……前が、見えないっ。レヴェリィっ」
「フォルメリィ、これヤバイよ~!!」
「おやおや、何が起きているんでしょうかねぇ」
「面白がってる場合じゃないでしょう!! ソル!! これは、シンの地で見たものと同じです!!」
そこかしこから焦りの声が聞こえ、十二神の間は騒然となった。
肌を這いまわるように触れてくる黒い光を帯びた靄……。
それは、地上の民だけでなく、神々であるソリュ・フェイトにも不快で吐き気のするような存在だった。トゥレーナ・ツァルトの叫びに、瞬時にあの時の干渉法を発動させ、収束に動く。
創氷の地とは違い、この場所ひとつを浄化するには大して時間はかからなかった。
十二神の間を穢す存在は瞬く間に消し去られ、神々は視界を取り戻す。
「はぁ……、シン。あったじゃないか、異変の前兆がっ」
「す、すまない……。とても美しい宝石だとは思っていたが、こんな事は一度も」
「あの地の民と同じく、シンの指輪にも巣食っていたという事、でしょうか……」
「というよりも、……多分、その指輪が騒動の根源なんじゃないですかね? ほら、あれを見てくださいよ」
静寂を取り戻したかに見えた十二神の間で、一人だけのほほんとしているトワイ・リーフェルが、巨大な赤い石の側を指さした。
リュシン・フレイスの指から外されたこの騒動の原因らしき指輪。
それがいまだに黒い光と靄を生みながら、――突然、神々の視界を焼くような輝きを放った。
「くっ……、一体、何が起こっているっ」
「うがぁああああっ!! 眩しいぞぉおおおおおおっ!!」
「もうっ!! 次は何なんだよ~!!」
「――ソル、あれを見てくれ!!」
すぐに光を遮断し、ダメージを防ぐ力を発動させた神々だったが、リュシン・フレイスの言葉と、自分達の目に映り込んだ『変化』に、思考が止まった。
「おやおや、これはまた……」
「どういう事だ……?」
彼らの視線の先に『生まれた』存在……。
それは、――無垢なる幼き、赤子。
ふよふよと空中で丸まりながら浮いているそれは、青と黒の色彩を抱く髪色をしていた。
「俺達も同じようなものですが、あれは同胞と見るべきか、それとも……」
「おい!! 赤ん坊が落ちてくるぞ!!」
役目を終えたかのように黒い光と靄が消え去ると、赤子は宙に浮く力を失ったのか、真下に落ちてきた。それを、リュシン・フレイスが寸でのところで救い、その腕の中へと収めた。
「ふぅ……。間に合って良かった」
「シン……、見せてみろ」
ほっと息を吐き出している男神に声をかけ、ソリュ・フェイトは赤子を覗き込む。
瞼を閉じ、すやすやと心地良さそうに眠っている、一見して……、無害そうに見える存在。
けれど、神々はわかっていた。この赤子が、――あの指輪から生まれ出でた事を。
この世界における神とは、はじまりの十二神と、彼らの眷属と呼ばれる、その恩恵から生まれた者達だけ。ならば、この赤子は何だろうか?
地上の民の生まれ方とも違う、『何か』。
ただ石から生まれ出でただけなら、「あぁ、そういう生まれ方も出来たのか」と流せるのだが、この赤子は普通ではない。
地上の民を黒い靄と、その負なる影響によって支配し、騒動を引き起こした……、恐らくは、この赤子こそ、元凶。
これは偶然か? ガルヴァの地では、赤い石が騒動の原因であり、人々は記憶を操られていた。
二つの異変に共通しているのは、『石』。
だとしたら……。
(この赤い石も、何かの力を秘めている、という事か……)
被害が甚大だったのは青い石の件の方だが、もしも、同じような存在なのだとしたら……。
ソリュ・フェイトは難しい顔つきで考え込んだ後、そっと……、赤子の頬を撫でた。