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俺の彼女は清楚系

作者:

今日も花が綻ぶような笑顔を振りまき、肩までのサラサラの黒髪ストレートをなびかせ、教室に入ってきた女子生徒。おはよう、と発した声に、周りの男子はデレッとした顔で返事を返した。

彼女は自分の机に荷物を置いて俺の方に近づいてくる。さっきの笑みとは違う笑みを浮かべて。


「サエくん、おはよう」

「おはよ、茜。はい」

机からノートを取り出して手渡した。一時間目の英語の宿題だ。後10分しかないがまぁ、ギリ間に合うだろう。


「ん、いつもありがとね。」

花が周りに散ってるエフェクトが見えるぐらい綺麗で控えめに微笑んでお礼を言う。調子良いこと言うんじゃなくて、宿題をやってくるっていう行動をしてほしいものだ。こうやって甘やかすから宿題をやってこないってわかってるけど、貸さなかったら成績足りずに留年ってことになる可能性大なので仕方がない。

自分の席に戻った茜はびっくりするぐらいのスピードで自分のノートに写していく。絶対内容理解なんてしてないだろうな。成績ば上がらずとも、筆記の速度があがるとは。


「よっ、佐伯(さえき)。今日も羨ましいねぇ。あんなに可愛い子が彼女で」

金髪の軽そうなこの男、いわゆるムードメーカーだそうだ。茜と村岡はこのクラスのバカツートップである。何故か結構な頻度で絡んでくる。

「まぁ」

「気の抜けた返事だなぁ。ほんのちょっと、1ミクロンくらいかっこいいからって調子乗りやがって。早川さんみたいな清楚系女子は貴重なんだぞ」

茜は村岡が思ってるようなやつじゃないと思う。清楚って控えめで奥ゆかしいみたいな人をいうんじゃないだろうか。

村岡に曖昧な返事を返しながら、かばんから電子辞書をとって調べてみる。


【清楚】

[名・形動]飾りけがなく、清らかなこと。





■■



昼ごはんはいつも茜と空き教室で食べている。鍵は前にちょっと借りて合鍵を作ったし、人があまり来ない場所なので、俺たちがここにいるっていうのを知っている人はほぼいないだろう。

つまり、思う存分、茜も素でいれる訳だ。


「うまっ!サエ、今日もあたしの卵焼き最高だろ。」

「ん、今日もおいしいよ。」

「っーーー!」


いや、自分から振っといて照れるなよ。しかも毎回だし。

でも毎度のことながら、耳をほんのり赤く染めて目線をずらす感じがたまらなくそそる。そんなこと考えてる自分もちょっとやばいかもしれないな。


「んなことより!昨日な、堂本に会ったんだよ」


堂本というのは、俺たちの中学の同級生だ、多分。そういう名前のやつがいたかもしれない。

俺たちが通っていた中学は、素行が悪くて有名だった。「○○組」とかみたいに派閥があって、どの派閥が、誰が、そのトップに立つかについて日々を費やし、誰が誰を負かしたとか、誰が誰の女を取ったとかで争っていた。ちなみに、○○組というのは、1組とか2組とかじゃないから。


茜は今は清楚系女子なんて言われてるけど、昔は創立以来3回目の統一を成し遂げた女子のチームの特攻隊隊長だった。もともとのメンバーは1年生の少人数で結成されていたが、ガンガン攻めまくる茜とその他有能なメンバーの成果により、1年もかからずに頂点に立ち上った。その後、彼女らが卒業するまで統一は崩れなかった。今どうなっているかは知らない。



「でさ、あたし今こんなじゃん?だからあたしだってわかんなかったみたいで、『ね〜君可愛いね、すっごい俺のタイプ。そこの店で少しだけ遊んでいかない?』って言われたんだけど、そこの店って言って指差した先がなんとラブホ!ちょっとわらっちゃったよー・・・ってどうした?なに怒ってんの?」



「いや別に?ただ、堂本って奴を最初思い出せなかったけど、今思い出しただけ。茜にしつこく迫って無理やりしようとして茜に急所蹴り上げられた奴だなって。散々のたうち回った挙句、涙目での絞り出した捨て台詞が、『俺の最大の武器をっ!どうしてくれるんだ!』だったなって。また茜に手ェ出そうとするなんて、また教育(・・)が必要なのかな。そういえば『お前みたいなブスな金髪ビッチなんて興味ねぇよ!』とか言ってたような。タイプってことは実はブス専なのかな。ま、そんなことどうでもいいけど。とりあえず、もう一回、調教(・・)しにいくね?」



最初は、あーそんなこともあったねぇ、と懐かしそうにしてた茜が徐々に顔を引きつり出した。あーとかうーとか言ってから、一度深く深呼吸をして、何かを決意したように俺の方を向いた。目を合わせて真剣な面持ちで俺の左手を両手で包むように握った。


「やだ、そんな奴になんか構わないでっ。わたしの側にいて?そんなことする時間があるなら、その時間、わたしに頂戴?」


ちょっと涙目でうるうるさせて上目遣いなんて反則だろ。そんなかわいいお願いされたら、思わず頬が緩むじゃないか。

左手で茜の右手をつかんで引き寄せ、右手は抱きしめるように首にまわし、口を耳元に近づけた。



「俺の時間だけなんて言わずに、俺の全部をあげるから。対価はもちろん、茜だよ?」



俺の前ではちょっと口が悪くて飾り気がなくて、ちょっと抱きしめただけで顔を真っ赤にする清らかさ。

俺の彼女は清楚っていうのもあながち間違いではないらしい。


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